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休み時間

「あ、そうそう、討伐の分配金だけどビアンカの取り分は白金貨5枚だよ」


「えっ?」


「白金貨5枚」


「えっと……え? ……ええっ!?」


「ビアンカの口座に振り込まれている筈だから後で確認しておいてね」


呆然としているビアンカ。まぁ大金だからね。


「あの、白金貨というのはもしかして、あの白金貨、の事なんでしょうか?」


「あの白金貨と言われても」


白金貨って見た事ないわ。


「金貨1000枚分の価値のあるお金の事です!」


「それで合ってるよ。1000枚じゃなくて5000枚だけど」


白金貨5枚だからね。


あわあわ言い出したビアンカ。しっかりしろ、気を確かに持つんだ。


「確認しておいてね」


「わ、分かりました、すぐにいってきます!」


すっ飛んでいくビアンカ。たぶん振り込まれていると思うけど。


「アルジェンティーナの取り分も白金貨5枚だよ」


特に反応はないが聞こえているだろう。


(エクレールの分は白金貨22枚と金貨500枚だよ。私が預かっておくけど、必要な時はいつでも言ってね)


(分かった。私は昼寝をする)


気の無い返事。あまり興味が無いのだろうか?

アルジェンティーナと一緒にトーチカの中へ入っていくエクレールを見送る。アルもお昼寝か。


「シュバルツは白金貨5枚。ノワールは白金貨22枚と金貨500枚。後で渡すよ」


両者から了承の雰囲気が返ってくる。

シュバルツとノワールはミニプールに足湯みたいに足を入れているが少し退屈そうだ。

今日はもうする事ないし、久しぶりにボール遊びをしようかな?



魔法袋からボールを取り出すと、それに気付いたゴーレムズがこっちへやってきた。


「今日はPKをやってみようか?」


土魔法でゴールを作る。作ったはいいが……


「ゴールネットが無い」


土魔法でネットは作れないらしい。イメージはしたんだが。


このままではボールが突き抜けて拾いに行くのが面倒だな。

後ろに球拾い用の土ゴーレムを配置しておくか? それよりゴールの後ろに壁を作っておく方がいいか。


土壁を作ろうとして気が付いた。


MP 1/200


MPが残り1になった。今までMPを使い切った事は一度もない。

0になったら気絶するとかダルくなるとか、そういうのはあるのだろうか?


一度は確認しておく必要があるが今試すのは都合が悪い。1は残しておくとして、ゴールの後ろはどうしようかな? やはり球拾いゴーレムか?


ノワールからどうした? みたいな雰囲気が伝わってきた。


「MPが残り1しかないから、ゴール裏に壁を作りたかったけどどうしようかな? って」


するとノワールが前の脚(もしくは腕)を伸ばして俺の肩の辺りに軽く触れる。


「ん? 何?」


すぐに離れる。今の何?

ノワールがゴール裏の方を指し示す。作って。 みたいな雰囲気なんだけど、MPが……


MP 200/200


「何だと!?」


MPが全回復している!! なぜだ!? まさか、今の?


「ノワールがMPを全回復してくれたの? ヒールみたいに?」


否定の雰囲気。あれ?


「違うの? でも何かしたでしょう?」


ノワールから「譲る」というイメージが伝わってきた。


「ノワールが自分のMPを譲渡してくれた?」


肯定の雰囲気。マジですか!

これだと戦い方がだいぶ変わってくるぞ? MPが2倍になるという事じゃないか!

もしかして、


「シュバルツも同じ事ができる?」


肯定の雰囲気。マジか! 3倍ですわ。


「それ何回できる?」


ん? 明確な返事がこない。何で?


「分からないという事?」


肯定。何でやねん。

重ねて聞こうとしたらビアンカが戻ってきた。


「セシリアさん!! お金が! お金がぁああ!」


「落ち着け、どうした? まだ入金されてなかった?」


まだ早かったのか?


「は、入っていました! 金貨5000枚も!!」


入ってたならいいじゃん。

白金貨ではなく金貨になっているのは使い勝手が考慮されているからか?


「ご、ごせんまいい、ご、ご」


「落ち着け」


突然5億だと宝くじに当たった! みたいになるのかもしれないが。


「それは正当な取り分だし、受け取っていいんだよ」


「で、でもっ、こんな大きなお金!」


「ビアンカが頑張ったからだよ」


そう言うとビアンカの目がうるうるし始めた。


「う、うぇ、せ、セシリアさんがパーティーに入れてくれたから、ふ、服と武器も、しょ、食事も、お、お」


泣きそうだ! 落ち着け!


「たす、助けてくれたから、こんな、大金を、を、うえーん!」


泣いてしまった! どうしよう? こういう場合どうしたらいいんだ!?

シュバルツとノワールに意見を……どうしたらいい? ……返事が無い!


「こ、こんな、こんなに大きなお金は、わ、うけとれ、うえーえっ」


「受け取っていいから。等分にするって言ったでしょう? 私も同じ額だから」


俺の分はほとんど借金の返済に回ってしまったけど。


「で、でもっ」


「お金があったら買いたい物って、あるでしょう? 好きに使えばいいんだよ」


「うえっ、うぇぇぇええーん」


泣き続けるビアンカ。

そのビアンカを慰めるように寄り添い、優しく背中をさすってやったりしているシュバルツとノワール。仲間思いの優しいやつらだ。


だが、そんなやつらが時折俺の方をちらちら見るのは何だ?

おい、その立ち位置だとまるで俺が泣かせている悪者みたいなんですけど。

何その「泣-かせたー」みたいな雰囲気!


何とかビアンカを宥める。


「ヒュドラを倒せたのはビアンカが一生懸命槍攻撃を続けてれくれたからだと思うんだ」


「見えないヴァイパーの攻撃から守ってくれた姿は頼もしかったよー」


「さっきも言ったけど、頑張った成果としてビアンカには受け取る権利があるんだよ! 思う存分、好きに使えばいいと思うよ」


「は、はいっ! 本当にありがとうございます!」


だいぶ落ち着いたみたいだ。


「こちらこそありがとう」


よし、これでいいだろう。


「私、欲しかった物があるんです。早速買いにいってきます!」


「いってらっしゃい」


すっ飛んでいくビアンカ。元気だねー。

さて、何だったかな? 何か重要な事があったような。……そうだ、MP!


シュバルツとノワールはゴール前でパス練習を始めている。

……まぁ、いいか。

極めて重要な事ではあるのだが、分からないというならとりあえずは「3倍もMPが使える」でいいだろう。

それだけでも大きな価値のある話だ。



ゴール裏に高さ4mの土壁を作る。

2体の土ゴーレムを使ってPKを見せればたぶん分かるだろう。

キッカーの土ゴーレムとゴールキーパーの土ゴーレムを正対させて実際にシュートを打ってみる。


ドカッ! バシッ!


横っ飛びしたキーパーゴーレムの手の届かないシュートが決まって、ゴールを通過したボールが後ろの壁に当たって跳ね返る。

やはりネットが欲しいな。

球拾い係のゴーレムでボールを追いかけて拾う。

次は甘いシュートを打ってキーパーが止めるところを見せる。


シュバルツとノワールは2回見ただけで理解したみたいだ。

ボールを蹴りたそうな雰囲気だったのでキッカーをシュバルツと交代する。

キーパーゴーレムの視覚でシュバルツを見る。両腕を広げてアピール!

さぁ、打ってくるがいい!


ドガァアン!


シュバルツが蹴ったボールが爆発するような音を立ててゴールを通過、壁に当たって跳ね返る。

おい、ボールが全く見えないんですけど。

壁に当たったボールが転がらずにその場でぺしゃんこに! 破裂してますわ。


「シュバルツ、次やったら弁償だからね」


一回目はしょうがない。今まで全力でボールを蹴る機会はなかったからな。

でも次からは弁償してもらおう。安くはないんですよ、このボール。

予備のボールを取り出して警告を与える。


「ボールを破壊しないように気を付けて。壊したら弁償してもらうよ」


ボールを渡すとシュバルツは足で上からぐいぐい押して強度を確かめ始めた。

何でボールの強度の限界に挑もうとするのか。ノワールまでぐいぐい押して確かめている。


今度はノワールの番。


ドガッ!


さっきよりは控えめな音。だが超速い事に変わりはなかった。

こんなの無理。一歩も動けませんわ。

壁に当たったボールが転がっていく。破裂はしていないな。


キッカーを交代。今度は俺がシュートを打つぜ!

正確には俺が動かしているゴーレムだけど。キーパーはシュバルツ。


いくぜ! 


ガシッ!


ゴール右下、隅ギリギリを狙ったボールはしかし、シュバルツにやすやすと止められてしまう。

くっ、いい動きをしているじゃないか。


キーパーがノワールに替わる。今度は左上を狙って打ったがこちらも止められてしまった。

これはダメだな。こいつら動きが良過ぎて勝負にならないわ。


「次はシュバルツとノワールで勝負するといいよ」


キッカーはシュバルツ、キーパーがノワール。さぁ、どうなる?


ドカンッ!


強烈なシュート! だが横っ飛びしたノワールの長い脚(もしくは腕)に止められる!


「おおっ!」


なんて速い動きなんだ! 今のは見応えがあったぞ!

攻守が入れ替わる。キッカーはノワール、キーパーがシュバルツ。


ドゴッ!


超高速シュート! しかし止められる! シュバルツも長い腕でやすやすとゴールを守った! 見事な動き!

……これ決着がつかない系じゃないの? 何かそんな予感がするわ。



1回毎に入れ替わって続くPK戦。大変見応えがあるがゴールが割れる気配がない。両者ともありえないほど動きが速い。

たぶん決着はつかないんだろうけど、シュバルツもノワールも楽しいみたいだからいいか。

俺は観戦と球拾いですわ。


しばらく見ていると、どうやらローカルルールが発生しているらしい、という事に気付いた。


ボールをキャッチした場合は成功だが、はじいた場合は失敗らしい。

どちらもルールとしてはノーゴールで違いはないのだが。

はじいて止めた場合は何となく悔しそうな雰囲気が伝わってくる。

ゴールしたら勝ち、だと永久に決着はつきそうにないからそれもありだろう。


次はFKにしようかな? 回転をかけたシュートと無回転シュートも教えた方がいいな。



遊んでいるとクリスが来た。


「はい、これがセシリアのカードよ」


「ありがとう」


クリスが持ってきてくれたカードは真っ白で何も書かれていない。これがカード?

裏に「シオリス所属 セシリア」と書いてある。


「これ、どうやって使うの?」


クリスの説明によるとカードを手に持つと表に残高が表示されるという素敵機能と、ATMではなく職員がお金を出すという点以外はキャッシュカードと同じだった。(さすがにATMは無いらしい)簡単でいいな。


「教えてくれてありがとう」


「どういたしまして。ところであれは何をしているの?」


シュバルツとノワールの動きが気になるらしい。


「ボール遊びだけど」


クリスも混ざりたいのかな?


「あれは何? 変な形ね」


ゴールを見ているクリス。


「あれは本来は後ろにネットがあるんだけど」


「ネット?」


「あー、網の事だよ。どこかに売ってないかな?」


ビアンカがゴブリン達に網を投げかけられたと言っていたし、湖で網らしきものを使って漁をしていたからある筈なんだけど。


「網って、漁で使う網の事? あれは漁をする人が自分で作っているんじゃないかな? たぶん」


「そうなの? 自分で作るのは難易度が……裁縫スキルでできるかな?」


「網は無理じゃないかなー。それよりお使いの依頼を出せばいいんじゃない?」


「お使い?」


「そう。掲示板を見た事あるでしょう? 討伐系だけじゃなくて、いろいろ雑用系の依頼もあるから。この場合は網を調達して欲しいっていう依頼を出せばいいの」


「なるほど」


依頼か。網を探す時間や手間を考えたら人に頼んだ方がいいかもしれない。

他にやる事いろいろあるからな。


「いくらぐらいかかるのかな?」


「依頼料は銀貨5枚もあれば十分だよ」


結構高いような。


「セシリアはたくさんお金を稼いだでしょう? そのお金で雑事は他人に任せて、浮いた時間で自分にとって優先すべき事をするといいと思うの。どう?」


なるほど。その考えを採用しよう、そうしよう。


「じゃあ頼もうかな。あのゴールの前面以外を十分な余裕で覆う事が出来る大きさで2セット欲しい。手続きはどうすればいい?」


「手続きは私がやっておくよ。仕事をするのは好きだから任せてね」


にっこり笑うクリス。そうか、仕事が好きなのか。

気を付けないと、クリスを喜ばせたくて依頼をたくさん出してしまいそう。本当に気を付けないと!


「ありがとう、クリス」


「お礼を言うのは私の方だよ。レシピ教えてもらったし! 他にもセシリアにはいっぱい感謝する事あるから!」


ん? 他?


「他に何かあったかな?」


「ヴァイパーだけでなくヒュドラを2体も倒してギルドに卸してくれたでしょう? おかげで私達職員の給料も減らされなくて済むの! 本当にありがとう!」


「どういう事?」


ちらっとシュバルツの方を見るクリス。


「黒いゴーレムが来た時に、ギルドは大規模な即応態勢を整える為にかなり無理をしたの。騎士団が機能しなかったからね。その結果、多大な出費を余儀なくされて財政が危機的といっていいほど悪化したの」


「それなのに領主様は掛かった費用を補填してくれないらしいの! それで、財政危機だからという理由で私達の給料が減らされる、もしくは給料遅配もありうる、なんて話まであったのよ?」


「でもセシリアが大物を狩ってきてくれたおかげで、ギルドの財政問題も解消されて職員の給料も減らさずに済むってサブマスが嬉しそうに話していたわ。危険手当も増額してくれるって! だからセシリアには感謝の気持ちでいっぱいなの!」


「そ、そう」


給料遅配とか、そこまで逼迫していたのか。

まぁ、問題がなくなったのならそれは結構な事だ。

「黒のゴーレム」の件は俺にも一定の責任がある、と言えなくもないからな。


「ところでその服、セシリア用の新しい制服かな? 可愛いわね!」


「そ、そうだね……ん?」


急に話題が変わった!

可愛いデザインなのは確かだけど、それより、ちょっと引っ掛かったぞ? ……「セシリア用」?


「クリス達も来月からこの制服になるんでしょう?」


「ちょっと違うかな? ここまで可愛らしくはないよ?」


「え?」


何だとぅ……?


「現物はまだ見てないけど、私が前に見たデザイン画だとカラーリングは同じだけど、下がスカートじゃなかったし、全体がもう少しシャープなラインだったよ」


「ほぅ……」


「きっとセシリアが可愛いから専用のデザインが採用されたんじゃないかな?」


「ほぅ」


俺もね、ちょっとおかしいかな? と思わなくもなかったんだ。

この新型のデザイン、大人の女性が着るには可愛すぎないか? と。


ジュディなんて美人だけど大人っぽい感じだし、この制服を着るのはビジュアル的にキツいんじゃないか? と思ったんだ。

クリスならぴったりで似合うだろうけど!


仕事着だから文句などないのか、あるいは自分の命を守る物だからそんな事は気にしないのか、などと解釈したのだが。俺だけかよ!


「ジュディは今どこにいるのかな?」


「サブマスと話がしたいの? 今は忙しそうだけど、急ぎの用なの?」


「急ぎじゃないけど」


絶対話を聞かせてもらうからな!



ゴーレム達とFKの練習をしているとビアンカが帰ってきた。


「お帰りー。何を買ってきたの?」


「これです!」


誇らしげに掲げられたのは2つの弓だった。

1つは典型的な弓そのものだったけど、もう1つの方……


それ、「コンパウンドボウ」じゃね?




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