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レベルについて

「今のはエクレールの声?」


(唐揚げが食べたい)


唐揚げは分かったから。質問に答えて?


「主って私の事かな?」


(そう、私の主)


相変わらず無表情で口は全く動いていないが、これ間違いなくエクレールだわ。


唐突にエクレールの声が聞こえるようになっている。どうしてだ?

思い当たる事と言えばレベルアップだろうか。それとも何か新しいスキルが生じたのか?

ステータスを確認してもスキルポイントが4になっている以外変化はなかった。やはりレベルアップが理由か?


確かレベルの差が大きいと意思の疎通が上手くいかないってジュディが言っていたけど、俺のレベルが上がったから差が縮まって会話できるようになった、という事か?


唐揚げはともかく、会話が可能になったのは嬉しい。

話がしやすくなるし、エクレールに聞きたい事もある。


「さっきからどうしたんですか? セシリアさん」


「エクレールの声が聞こえるようになった」


「え? そうなんですか?」


「たぶんレベルが上がったからだと思うんだ。ビアンカさんもレベル上がったんじゃない?」


「はいっ! 17になりました! セシリアさんのおかげです!」


「いやいや、ビアンカさんが頑張ったからだよ」


ビアンカが17か……ドラゴンにもレベルはあるのだろうか? 聞いてみよう。


「エクレール、レベルって分かる? ステータスに……ステータスはある?」


(ある。レベルも分かる)


「エクレールのレベルっていくつ?」


(私のレベルは174)


「ひゃくななじゅう……えっ?……えっ?」


(174)


「174だと!!!」


「どうした?」「どうしたの?」


「えっと、いや……」


すぐ後ろにいるゼルやクリスから声をかけられる。

1人で3号に乗るゼルが会話に参加したいとゴネたので、3号を5号のすぐ後ろまで接近させている。

車間距離ゼロ。違うゴーレム間距離ゼロ。

その分速度を落としているのだが、ゼルがその3号からこちらに乗り移ろうとしている。

おいやめろ。これ以上は無理だと言っただろうが!


「おい、どうしたと聞いている」


「あ、あぁ、エクレールにレベルを聞いたら174だって……」


「何だと!?」


確かに驚きの数値だが、ドラゴンとはそれほど隔絶した存在なのか?

ドラゴンの強さは凄まじいものだった。エクレールの強さも見た。

だが、そのドラゴンでも人の集団に倒されてしまう……いや、当然個体差もあるだろう。あのドラゴンのレベルはどれぐらいだったのか?


「おい、その話は本当なのか!?」


「どうだろう? エクレールがそう言っているのは確かなんだけど」


ゼルがなにやら深刻な顔をしているが、エクレールが俺達にハッタリをかます理由も必要もないのだから信じていいのでは?

どちらにしろ、ドラゴンが圧倒的な存在である事に変わりはない……


「おい! この間のドラゴンのレベルを聞け!」


「え?」


おや? ゼルもそれが気になるのか? だがしかし。


「ゼル、それが人にものを頼む態度か? もう少し言い方というものがあるんじゃないの?」


「何!?」


「何だよ?」


ぐぬぬ。睨み合う俺達。

なぜこいつはこんなに偉そうなのか? 仕事も終わった事だし、こちらも言いたい事は言わせてもらおうじゃないか。


「……そいつに聞いてくれ、頼む」


あまり変わってないような。まぁいい。


「エクレール、私達は最近ドラゴンを倒しているのだけど知っているかな?」


(知らない)


ありゃ、いきなり躓いた。どうしよう?


「えーと、この辺りにエクレールの知り合いのドラゴンはいたかな?」


(いない)


「どうした?」


「エクレールは知らないみたい」


「そんな筈はないだろう! 同じドラゴンだぞ!?」


「私に言われましても。えーと、シオリスの郊外? もっと遠くかもしれないけど、それとソードの町で人と戦ったドラゴンがいたんだけど、全然知らない?」


(知らない)


「知らないってさ」


「……なら、ドラゴンのレベルについて聞いてくれ。他のドラゴンはどれぐらいのレベルなんだ? 皆そんなに高いレベルなのか」


直接聞けばいいんじゃないか?


「エクレール、ゼルの言っているの聞こえた?」


(聞こえた。同族の力は個によって違う。私より強いものもいれば、私より劣るものもいる)


まぁ、当たり前の話だな。


「強いのもいれば弱いのもいる、だって」


「……そうか」


あまり答えにはなっていないけど、しょうがないよな。

人間だって全然知らないやつの事を聞かれて「あいつの事、知ってるだろ? 同じ人間なんだから」なんて言われたら困るだろう。


個体数はどれぐらいなんだ? それも聞いてみるか。


「ドラゴンってどれぐらいいるの?」


(私が知っているのは20)


少ないような。「エクレールが知っている」数だからそれが全てのドラゴンという訳ではないだろうけど。

その数だと一般的なドラゴンの強さ、なんて聞くのは意味がないか。

一般的という表現が適切なのか分からないが。

それならば、


「ドラゴンが現れた時に鑑定スキル持ちに鑑定させればいいんじゃないの?」


「鑑定スキルは相手とのレベル差が大きいとスキルが弾かれて見えない事がある。ドラゴンの場合、レベルが分かった例は少ないんだ」


「そうなのか」


鑑定は常に有効という訳ではないのか。


しかし、レベルか。今まで他人のレベルがどれくらいかなんて気にしていなかったけど、これからはそういう訳にはいかない。

ちょっと聞いてみるか。参考になるかも。


「ゼルのレベルはいくつなんだ? 頼みを聞いてやったのだから、教えてくれてもいいんじゃないかな?」


大して役に立つ答えではなかったという点は大目にみてもらおう。


「大して役に立つ答えではなかったがな。まぁいい。俺のレベルは71だ」


「何だとう……」


71! そんなにか! エクレールとの比較は意味がないかもしれないが、ビアンカと比べても……ビアンカと比較するのもあまり意味はないか。

だが、高いレベルなんだよな? という事はもしかして、


「ゼルはAランク?」


「……まぁ、そうだ」


何今の変な間は。ゼルはハミル級の強さがあるのか? だとすると相当強いという事になるが、その割りに全く何もしなかったけど、それはどうなのか。


……今回の戦い方だと剣が得意と言っていたゼルの出番はなかったかな。

危険度の高いヴァイパー討伐に帯同してくれただけでも感謝すべきか。

いや、こいつはギルド職員なのだから、仕事だよな。別に感謝はいらないか。


クリスを見つめてみる。


「え? 私も言わないといけないみたいな流れになっているね? 別に隠すようなレベルじゃないけど。私は32よ。これでいいかな?」


「催促したみたいでごめんね? クリス」


Bランクのクリスが32。ゼルとの差が大き過ぎるような? 

Aが突出して強いという事なのか?

まてよ? ヴァイパーの推定レベルは40から50ではなかったか?

ゼルにとっては脅威ではないのでは?

だがAランクでも危険、とあったような? よく分からない。


「ヴァイパーのレベルでAランクでも危険とされるのはなぜ?」


「魔物の脅威度はレベルの高低だけで判断される訳ではないわ。ヴァイパーの場合だと『見えない』『分からない』というのが厄介なのよ。種としての特性、それに『潜伏』というスキルね。それでよりレベルの高い相手でも倒してしまうの」


そうか、確かに今日の戦いでも一度あったな。

ヴァイパーが全く見えなくて、襲ってきた事自体に気が付かなかった。

あれは怖い。ビアンカとクリスがいてくれて助かったわ。


レベルの意味について一度確認する必要があるな。

あるいは、レベル差の価値について。


「クリス、レベルの差がどの程度戦いに影響すると考えられているのかな?」


俺自身はレベルの差が絶対的なものだとは考えていないが、どの程度の意味があると考えられているのか。


「それは答えにくい質問ね。大抵の場合、戦いは複数で行われるものでしょう? だから個のレベルの違いだけを比較してもあまり意味はないし、勝敗を決める要素はレベル以外にもたくさんあるから。でも、セシリアが聞きたい事は分からなくもないわ」


「レベルの差が絶対という訳ではないけれど、すごく大雑把にいうと、勝負になるのは10以内の差で、10以上あると分かったら戦うよりも逃げる方を選ぶ、20以上の差があったら逃げる事も難しい。こんな感じかな? あ、もちろん相手が魔物の場合の話よ? 対人の場合、相手のレベルは推測するしかないからね」


「……なるほど、教えてくれてありがとう」


何か、レベル10になってちょっと喜んでいた自分が馬鹿みたいな気がしてくる。

大した事ないよな、10って。

遠くない将来、いや、すぐ先に起きるかもしれない「敵との戦い」に備える為にはもっともっと高いレベル、強い力が必要だ。

Aランクハンターが70台だというのならそれと同等、あるいはそれ以上のレベルに少しでも早く到達しなければ!

でも気が遠くなるね! 70台なんて!


(敵なら私が相手をしよう。いつでも指示を出すといい)


「うわ!? エクレール!? 何で?」


(聞こえた)


「お、おう、そうなんだ」


聞こえたって言うけど、考えただけだぞ? 話しかけてはいないぞ?

考えた事が丸分かりなのか? 俺のプライバシーはどこに!?

……そんな事言っている場合じゃないわ。

エクレールは武闘派なのか? 何だか強気で勝気な感じが伝わってくるぞ?

それともこれがドラゴンでは普通なんだろうか。


(私に任せればいい。人が敵ならば蹂躙し尽くし、滅ぼしてくれよう)


「いや、そんな事頼まないよ!?」


武闘派どころか過激派だった! 全く任せられないわ!


「エクレール、後でじっくり話をしよう」


(分かった)


危ねぇ、意思の疎通がしやすくなったと喜んだらこのありさまである。

さすがドラゴン。人とは違うぜ。さすどら。


俺の前に座っているエクレールの背中を見る。

小さな背中。足を振り振りしているその姿はまるでご飯を心待ちにしている幼女のように見える。背中の羽に目をつぶれば。

我がパーティーのマスコットキャラ、なんて思いかけていた時期もありました。

だが、頭から突き出している角にまで目をつぶるのは愚かな思考だったと言わざるを得ない。


「ドラゴン」なのだ。「愛らしい幼女」ではない。


取り扱い注意、どころではなかった。


「私からもいいでしょうか? セシリアさん」


「え? 何かな、ビアンカさん」


「それです」


「え?」


「どうして私だけ、『ビアンカさん』なんですか? クリス、ゼル、エクレール、なのに」


「えっと、なぜと言われても」


特に理由はないな、何となく?


「何だか私にだけ他人行儀で寂しいです。ビアンカ、でいいいんですよ?」


「そ、そう? 気を悪くさせてごめんね? これからそうするよ、ビアンカ」


「はいっ!」


満面の笑み。そんなに気にするような事だったのかな? 

えっと、何の話だったかな?


(唐揚げの話)


そうそう唐揚げの、って違うわ! ナチュラルに思考を読むんじゃない!

唐揚げじゃないだろ!


(お粥も食べたい)


唐揚げとお粥があうのか? そうではなくて、えーと、そう、レベルの話だった。


従魔が倒してしまうと経験値(的なもの)が入らないから(入るのならもっと高いレベルになっている筈)できるだけ自分で倒したい訳なんだが……


(あのような小物、私に任せればいい)


またこいつは! 小物ってヴァイパーの事か? 俺にとっては恐るべき敵だったのだが……つまりこれは念話、というやつか? いちいち声に出さなくてもいいのか?


(そう)


これはスキルなのか? 俺の? それともエクレールの?


(知らない)


そこは知っておこうよ、エクレール。従魔契約の力、だろうか。

まぁいいか。たぶん俺の方だろう。

エクレールの方の力ならもっと前から話していた筈だ。

という事は、


「シュバルツ、ノワール、私と話ができるかな?」


できるんじゃないかな? ……返事がない。あれ?


(シュバルツ? ノワール?)


念じてみても返事はない。これは?


(エクレール、シュバルツやノワールと会話ができないのだが)


(私に言われても)


それはそうだな……何だこれ?

レベルアップで差が縮まった事がエクレールと話せるようになった理由だとして、シュバルツ、ノワールと話ができないというのはつまり、シュバルツとノワールはエクレールよりさらに上のレベルだから、という事だろうか?


レベルが上なのはおかしくはないのかもしれない。だってエクレールがボコボコにされていたし。


その時の事を思い出していたら、エクレールからむっとした感情が伝わってきた。ごめんね? 気を悪くさせて。

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