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後片付け

壁の上から泥付きヴァイパーを見ていると完全に動きが止まった後、体の透明化が解除? されて見えなかった部分が現れ始めた。

全長は15mぐらいかな。色は……白?


ヴァイパーって灰色じゃなかったか? 資料に書いてあったのと違うぞ?


「クリス、ヴァイパーの色が……」


「白ね。こんなの聞いた事がない」


階段を降りてから階段と壁を解除する。

ヴァイパーに近付こうとしたら、


「んあ、あぁー、あー」


クレアが泣き出した。

これはきっとおむつの泣き方だ。

戦闘が終わってから泣き出すとは気配り上手だな。そんな訳ないか。

手早くおむつ交換をしているとゼルが変な顔でこちらを見ていた。


「何をしているんだ?」


「おむつ交換だけど」


「戦闘中に子供が泣き出したらどうするつもりだったんだ?」


「速やかにおむつ交換をする?」


「ふざけているのか?」


ゼルの言いたい事は分かるが、むぅ、今回もトーチカに篭っていた方がよかったか?

これまでクレアが戦闘中に泣き出した事は無かったが、これからも無いとは言えない。

戦闘の仕方を再検討する必要があるかもしれない。


子供連れで戦うなんて無理があるのは当然だけど、他にいい考えが思い浮かばないんだよね。



土槍で串刺し状態のヴァイパーを近くで見る。

こうして見ると口が異様に大きいな。口の部分だけで2mぐらいあるんじゃないか? バランスが悪くて気持ち悪い。

お腹? の辺りが膨らんでいるのは飲み込まれたという馬がいるからか?


シルヴィアが熱心に見ているけど、こんな気持ち悪い魔物なんてそんなに見なくてもいいよ?


穴だらけではあるが、無傷の所も当然あるのだから少しでも借金返済の足しになるようにそれなりの値で売れて欲しい。

こんな魔物を間近で見ても恐ろしさを感じるよりお金の事を考えられるようになるとは、俺も場慣れしてきたという事だろうか。


「クリス、このヴァイパーはいくらぐらいで売れるかな?」


「少し小さいけど、たぶん白金貨1枚ぐらいはあるんじゃないかな? でも、もしかしたらこれは希少種かもしれないからその場合はもっと高くなるかも」


「希少種?」


「ええ。だって白いヴァイパーなんて今まで聞いた事がないから、もしかしたら、だけど」


高く売れるのなら嬉しいね。

あ! もう1体のヴァイパーがそのままだ。あちらも片付けないと。


「シュバルツ、このヴァイパーを収納して欲しい」


土槍を解除してシュバルツにしまってもらう。



最初のヴァイパーの所では階段の上でノワールが手持ち無沙汰な感じで佇んでいた。


「ごめん、ノワール」


1体目のヴァイパーも白かった。

これも希少種だろうか? 高値で売れるといいな。

こちらも壁、階段、土槍を解除してノワールにヴァイパーを収納してもらう。


「後は畑や水路を元に戻さないといけないのだけど、どんな形だったっけ?」


今一覚えていないわ。これはマズいかも。


「村人にヴァイパー討伐を伝える方が先だろう?」


呆れたようなゼルの声。


「えっと、どうすれば? 村長の所へいけばいいのかな?」


「……ついて来い」


ゼルに先導されて村長の家に行く。



「お前が村長か。2体のヴァイパーを討伐した。おそらく2体のみであろうから、他の村人に安全になったと伝えるがいい」


「それは本当でしょうか!?」


家から出てきた村長は半信半疑な様子。

戦っている所は見えなかっただろうから分からなくもない。

そして、ゼルはなぜこんなにも偉そうなのか? まるでゼルが倒したみたいに見えるが、お前は何もしてないだろう?


「見せてやれ」


さらに偉そう! 見せた方がいいというのは同意だけど!


「シュバルツ、ノワール。お願い」


村長の家の前に2体のヴァイパーを並べて見せる。


「おおっ! 何と、これがヴァイパー! 本当に倒して頂けたのか!」


「分かったら直ちに村中に伝えるがいい」


「はっ、直ちに!」


何か上司と部下みたいなやり取りだ。



カーーン!


鐘の音が響いた。

何? 今の。

村長の家の上に鐘楼のようなものがあって、そこの鐘が鳴ったみたいだ。


「今の鐘の音が合図?」


「そう。大きく1回鳴らすのは危険な状況が終了した、という意味なの。ちなみに危険を知らせる時は3回連続して鳴らすの」


クリスが教えてくれた。


「へー、知らなかった」


「町でも同じだから覚えておいてね」


たぶん常識というやつなんだろうな。

他にも鐘の使い方はあるんじゃないかな? 後で教えてもらおう。


カーーン!


また鳴った。


鐘の音を聞いた村人達が家から出て外の様子を窺っているのが見えた。


「おい、見ろ! 村長の家の前に大きな魔物が倒れているぞ!」


「本当だ! あれが魔物なんだな!」


大きな声で騒いでいる人が何人かいて、その声を聞いてこちらへやって来る人達が増えてきている。


「どうする? しばらくヴァイパーを出しておいた方がいい? あまり出していると傷んでしまうかもしれないけど、村の人達は自分の目で見て安心したいかな? 血抜きだけやっとく?」」


「ふむ、ならば冷却の魔法を使おう」


「えっ?」


ゼルが手をかざすとヴァイパーの周りにうっすらと白い煙のようなものが纏わりついて全体を覆った。

ひんやりとした空気が辺りに漂ってくる。


「おぉ、冷やす魔法か!? いいなー」


羨ましい! 冷却魔法があればいろいろと捗る事があるのに!


「これで傷みはある程度抑えられるだろう」


「ゼルは魔法使いだったのか? そんな事一言も言ってなかったような」


「ああ。俺は剣を得意としているからな」


「剣を使いながら魔法も使う事ができる?」


「もちろんだ」


それは「魔法剣士」!? 格好良いな! ……そういえば剣なんて持っていないようだけど、魔法袋にでも入れているのか?


「ところで、冷却魔法のスクロールってあるかな?」


「知らないな。無いんじゃないか?」


それは残念だ。……ゼルが知らないだけかも。諦めるのはまだ早い!



「次は戦闘跡の修復と補償についてだけど」


「補償については俺が村長と話をするから、お前は畑の持ち主に聞いて可能な範囲でいいから元の状態に戻しておけ」


「了解です」


ギルドが責任を負うならゼルに任せておけばいいだろう。

ぺこぺこと頭を下げている村長と話始めたゼル。

さて、できるだけ元の状態に近づけたいのだけど、できるかな?


先にため池から流れた水の行き先を確認しておこう。

用水路を辿っていくと一部の畑に大量の水が流れ込んでいた。


急いで水魔法で水を抜いて排水路に流すが、これ作物は大丈夫なのかな?

何の野菜か分からないけど、手遅れだろうか?


「どう思う? ビアンカさん」


「私は農業についてはあまり知識がないので……仮にダメになっていたとしても、ギルドが補償してくれるのならそれでよしとするしかないのでは?」


「まぁ、そうなんだけど」


一応できるだけの事はしておこう……


最初の戦闘場所は畑の持ち主が完全に元通りの形に戻さなくてもいいと言ってくれたので、持ち主のリクエスト通りに新たな畑の形に手直しする事で理解を得られたので良かった。


土魔法で畑や途切れた用水路などを作っていく。


「土魔法がこんなに早いのですか!?」


「ええ、まあ」


一般的な土魔法はどうやら時間がかかるものらしい。「一般的」っていう言い方が適切なのか分からないけど。


「確かに早過ぎるな。壁の件といい、土槍の発動もそうだ。なぜそんなに早く完成するのだ?」


いつの間にかゼルが来ていた。


「それに魔力もおかしいぞ? あれほど大きな壁を作って攻撃までして、まだ使えるのか? 後どれくらいあるんだ? 多過ぎないか?」


MP 84/200


「まだ多少は使えるかな」


200という事は。


Lv 10


レベルが上がった。

ついにレベル10か! 一つの節目というやつだろうか。

いやー、めでたい!


「話し合いは終わったの?」


「ああ。一部の畑の作物については、将来における実際の収穫状況を確認した上での判断になった。後はお前が魔法で修復すればそれでいい」


「ここはもう終わったから、後はため池に水を入れれば完了かな」


「おい、俺の質問に答えろ」


「そんな事聞かれましても」


俺も知らないんだけど。



ため池に戻る。

ゲートを閉じて空になった池にウォーターボールで水を注いでいくが、いっぱいにする事ができるかな? MPが足りるだろうか?


水球を投入し続けていると村人が集まってきて、水球が池に落ちる度に歓声が上がる。

見ていて面白いのかな?

子供も何人か来たので、サービスで小さな水球を作って遊ばせてあげた。


「つめたいね!」

「浮いてるよ!?」

「あはははは!」


「しーちゃんも一緒に遊んだらどう?」


シルヴィアに村の子供と遊ぶ事を勧めてみたけど、俺の後ろで服にしがみついている。

あれ? シルヴィアは恥ずかしがりだったのか?

同世代の子供に会うのは初めてなのかな?

急に知らない子と遊べと言われても困るのかもしれないな。


空いているスペースにミニプールを作って水を注ぐ。


「ここで遊んでみる? しーちゃん?」


頷くシルヴィア。前にミニプールで遊んだ事があるから大丈夫だろう。

池への水球投入も続けつつ、シルヴィアと一緒に遊ぶ。

水を掛け合いっこするのは楽しいね!

村の子達も入りたそうにしていたので、誘ってみる。


「一緒に遊ぶ?」


「いいの?」

「入りたい!」


「皆で仲良く遊んでね」


歓声をあげて水遊びを始める子供達。

4m四方で水深は50cmもないくらいだ。溺れる心配はない。


「何をしているんだ?」


「見ての通り、遊んでいるのだけど」


「まだ魔力に余裕があるのか? それなら村人に治療を施してやるといい」


「え? 怪我人がいたの?」


それを早く言えよ!


「いや、ヴァイパーに襲われた訳ではない。病人や怪我人がいるようだから、遊ぶ余裕があるのなら治療してやったらどうだ?」


「別にいいけど、治療を希望しているのかな?」


「村長に確認をとればいい」


MP 44/200


まだ池の水は半分程度しか貯まっていないけど、治療を優先させたいというのならしてもいいけど。


「シルヴィアさんの事は私がみていますよ」


ビアンカがそう言ってくれたのでここは任せて治療にいくとするか。

もうちょっと遊んでいたかったけど、これも仕事だ。

エクレールとアルジェンティーナも水遊びしているから彼女達の事もよろしくね。



ゼルと一緒に村長の家に行く。

家の前には相変わらずたくさんの人がいてヴァイパーを見ていた。

クリスが見張っているが、皆遠巻きにしていて近付く人はいないみたいだな。


「この者は治療魔法が使える。希望者がいるなら治療を施そう」


人だかりの中にいた村長にゼルが告げると集まっていた人達が何人も駆け出していった。

病人や怪我人のいる家に知らせにいったのか?


「おお、それはそれは、大変ありがたい事です。直ぐに呼びましょう」


「呼ぶ?」


村長が家の中の一室で天井から垂れ下がっている紐を2回引っ張ると、


カーーン カーーン


2回鐘が鳴った。


「今のは?」


「この家の前に集まるように、という合図です」


「それ、村全体が対象なんじゃないの?」


「もちろんそうです」


「えー」


関係ない人まで来ちゃうんじゃないの? もっとも既に多くの人が集まっているけど。



治療を希望する人は10人ぐらいだった。

村長の家の一室を借りて治療を始める。


「歳のせいか腰が痛くて真っ直ぐにならなくて」


それは老化現象なのでは? 病気じゃないような。魔法で治せるのか?


「とりあえず魔法かけてみますね。ヒール!」


ぽやん。


「おお! 腰が真っ直ぐに! 痛くない!」


「お大事にー。次の方ー」


「歳のせいか近くが見えづらくて」


それは老眼なのでは。


「ヒール!」


ぽやん。


「ああ! 魔法使い様のお顔がはっきりと見えます!」


近視だったのか?


「肩が痛くて腕が上がらなくて」


四十肩というやつでは?


「ヒール!」


ぽやん。


「肩が! 腕が上がる!」


「お大事にー。次の方ー」


実際に病気や怪我だった人は僅かしかいない。

ただの風邪だったり足首を挫いたとか、その程度。

魔法じゃなくても治るんじゃないか? まぁいいけど、治療代はどうするんだ?


「まだ魔力が尽きないのか? 後どれぐらい治療ができる?」


なぜかずっと治療を見ているゼルに聞かれる。


MP 34/200


「後30人ぐらいかな? でももういないみたいだし、終了でもいいんじゃないの?」


「……そうか」


「治療代について聞いてないけど、これもギルドが負担するの?」


「迷惑料のようなものだ。代金は請求しない」


「えー?」


「お前の魔法による迷惑の話だぞ」


「えー……」


そう言われると……せめて事前に俺の了承を得るべきではないだろうか?

何かおかしいような? 概ね元に戻した筈なのに!

まぁ、いいけどさ。ヴァイパーの買取でかなりのお金になる筈だからな!



残りのMPで再びため池に水を注ぐ。

いっぱいにはできなかったけど、8割ぐらいにはなったからこれで勘弁してもらおう。


MP 4/200


「もうMPが無い。限界だ」


「では撤収する」


ゼルが仕切っているけどクリスも何も言わないし、もう帰るだけだから特に問題は無いね。



ミニプールで村の子達と少しは遊んだらしいシルヴィアは楽しげな表情だ。

やはり同世代の子供と遊ぶ機会をもっと増やした方がいいのだろうな。

これも要検討課題だ。


ビアンカは子供と一緒になって遊んでいたのだろうか? 服がびしょ濡れなんだけど。

シルヴィアに負けないぐらい楽しそうな顔をしている。

う、羨ましくなんかないんだからね!



村人達に見送られて村を出発する。


帰りの道で声が聞こえた。


(主、私は唐揚げが食べたい)


「あるじ? 唐揚げ?」


「何ですか? セシリアさん」


「誰? 今の声」


「えっ?」


可愛らしい声。

今まで聞いた事がない声だけど、すぐ近くで聞こえたような……

前に座っているエクレールが振り向いて俺をまっすぐに見ていた。


(主、唐揚げ)


口は全く動いていないけど、


「エクレール!?」


唐突に何だ、これ!?




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