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反省と検討会

反省材料はたくさんあるが、とりあえずこの場から離脱だ。


「アルジェンティーナ、ありがとう。助かったよ」


(俺にとっては)手強い敵を易々と倒したアルジェンティーナに礼を言ってホーンラビットを魔法袋に入れた後、エクレールからクレアを受け取りシルヴィアを5号機に乗せる。


「エクレール、先導をお願い。シュバルツ、ノワール、この後敵がいたら全て倒して欲しい」


また強敵と出会うかもしれない。正直心の余裕が無いわ。


「ビアンカさん、乗ってください。なるべく早くこの森から出ましょう」


「分かりました」


ヒュドラを倒した時の高揚感など最早どこにもない。苦い思いを抱いたまま、その場を後にした。



エクレールのおかげですぐに森を抜けて街道に出る事ができた。

街道を進んでいる間、今回の件を考えてみる。


事前に十分な準備をして、自分達に有利な形に持ち込めば大物でも倒す事ができると分かったが、狩りの現場で常に相手を選べるとは限らない。


今回はこの森の中に他にどんな魔物がいるか調べてもいなかったし、十分な用意も無いのに適当に狩りを始めて大苦戦。

事前の準備が大事、なんて言っていながらこのありさま。

考えも足りていなかったが、経験も足りていない。


レベルアップの為にも狩り自体は続けなければならないが、今のやり方は危うい。

何が必要だ? ハンターとしての経験を得る為には同じハンターに学ぶのが最善だろうか?


「どうしました?」


5号機の肩に乗っているビアンカが心配そうな顔で覗き込んできた。


「ビアンカさんは狩りの経験があるよね? いろいろ助言や意見を聞かせてもらおうかな、と思って」


「確かに狩りはハンターになる前からしていましたけど、主に弓を使っていましたし、ハンターになってからは盾役をしていた期間の方が長いくらいで、あまりお役に立てるような事は言えないと思います」


「そうなの?」


「それにセシリアさんのような魔法使いの場合、戦い方が私とは全く違うので参考になるような事が言えないです」


うーむ。ならば他のハンター、それも魔法メインのハンターを探すべきか。


「湖に着いたら今後の方針について一緒に考えてみよう。後、反省会もしないと」


「はい」



湖畔に到着した。


今日の船便は既に出た後らしい。帰りもエクレールが乗せてくれるようだから別に構わないが。

船着場周辺にはちょっとした集落があって、休憩所や宿泊施設、食事処もある。

ここで夜まで休んでいくか。



食事処の店内は閑散としている。中途半端な時間帯だからかな。


「何か飲み物を頼む? 果物を搾った飲料があるみたいだよ」


「では、それにします」


「シルヴィアは何がいい?」


「おなじのがいい」


「エクレールも同じでいいかな?」


パチパチ。


アルジェンティーナも同じでいいよね。


出された飲み物はマンゴーに似た味で甘くて美味しい。冷たい飲み物を飲んで少し気持ちが落ち着いたわ。


「さっきは反省会と言ったけど、反省すべきは私だけなんだよね。ビアンカさんはホーンラビットを倒してくれたし、あの森についてよく調べてなかったのに『狩りをしよう』なんて言い出したのは私だから、実際は謝罪すべきなんだ。ごめんね、ビアンカさん」


「セシリアさんは悪くないですよ! ホーンラビットを見つけてしまったのは私ですし!」


わたわたと手を動かして俺をかばってくれるビアンカ。


「獲物を見つけるのはいい事だし、それは問題じゃないよ。問題は私にその獲物を狩る力がなかったという点だよ」


「ホーンラビットは特殊な魔物です。あまり気にしなくてもいいのでは?」


「……そうだとしても、判断のまずさは反省しないと。十分な用意もないのに森で狩りをしたのは間違いだった」


最終的にはシュバルツ達が何とかしてくれるだろうという甘えがあったのかもしれない。

俺達の手に負えない敵はそうするしかないが、実際に助けてもらった場合、経験値 (のようなもの)が十分に得られず、レベルアップに時間がかかる。


「自分達のレベルに見合った魔物を狩っていればより安全だが、それだとレベルを上げるのは難しい」


「そうですね、どこまで危険を受け入れるのかというのはそれぞれの判断になりますけれど、安全過ぎても、危険過ぎてもダメですね」


「その判断を今後どうしていくか」


「セシリアさんは強くなりたいのでしょう? 私もです。多少は危険でもいいのでは?」


「うーん」


ヒュドラに関してはリスクコントロールができていたが、自分でコントロールできないリスクをどこまで許容できるのか。


地道に経験を積み上げていく、では間に合わない可能性が高いし、ビアンカは覚悟があるようだからつきあわせてもいいが、シルヴィアとクレアは……毎回のようにエクレールに任せるという訳にはいかない気がする。


「装備を見直すだけでもずいぶん違うと思います。今回も私が最初から盾を2枚持っていればもっと早く倒せた筈です」


「ん?」


そういえば。

大きなウォーハンマーはいかにも不適切だったが、あの場で適切な武器を作っている余裕はなかった。

予めいろんな種類の武器を作っておけばよかったな。ヒュドラを想定した武器しか用意してなかった。

土魔法で何でも作れる訳ではないが、小回りのきく武器はすぐにでも用意した方がいいか。


「ビアンカさん、もう少し小振りな武器も用意した方がいいよね? 他にもどんな武器がいいか要望を聞かせて欲しい」


「そうですね。より小さなハンマーと盾があると相手によって使い分けできていいと思います」


「じゃあ、休憩が終わったら早速作ろうか。試して意見を聞かせてね」


「はい!」



船着場から少し離れると誰もいない所がたくさんあるので、そこでシルヴィアにはボール遊びをしてもらおう。シュバルツとノワールなら上手く相手をしてくれる。

エクレールとアルジェンティーナはお昼寝のようだ。


土ゴーレム一体を含めて遊び始めたのを見ながら新たな武器作成を考える。


「小さなハンマーってどれぐらいの大きさかな? 頭の大きさと全体の長さを手で表してみて」


「これぐらいがいいです」


頭は60~70cm、全長は1.3mぐらい? 試作してみる。


にょきにょき。


大型のウォーハンマーと形はほぼ同じで縮小したようなハンマーができた。


「試しに振ってみて」


ぶんぶん振り回すビアンカ。


「いい感じです! 素早い獣や魔物にはこのハンマーでいけると思います!」


「それはよかった。予備でもう一つ作っておくよ。盾はどんな物がいいの?」


「このハンマーの全長と同じ大きさで円形の物、あと少し長めで五角形の物がいいです」


「五角形?」


ビアンカが地面に絵を描いてくれた。五角形というか長方形の下に三角形をくっつけたような形だ。


「この形の意図は?」


「この尖った部分で攻撃します」


「ああ、そういう……」


そういう使い方があるのか。この部分は形状に気を使う必要があるな。


にょきにょき。


2つの盾が完成した。五角形の方は長さ1.5mぐらい。タワーシルドよりも薄くして、重量が軽くなるように意識してみた。

ビアンカが2つの盾を手に持って確かめている。


「どう?」


「すみません。円盾は大き過ぎでした」


「了解」


直径1mぐらいの円盾を作る。


にょき。


「これはちょうどいい大きさです」


「これで練習をしてみる?」


「はい!」


土ゴーレムを2体使って「素早い敵」を再現してみる。

1体をビアンカの正面に置いて攻撃させて、側面に置いたもう1体を「素早く動いた後」と想定して反撃する、という練習だ。


2体のゴーレムにも小型のハンマーを持たせて、まず正面のゴーレムがビアンカを攻撃する!


ガシッ!


ゴーレムの攻撃を五角形の盾で防いで、素早く体の向きを変えて側面のゴーレムをハンマーで叩く!


ゴン!


むぅ、十分に速い動きに見えたが、本人的にはどうなんだろう?


「どうかな? ビアンカさん?」


「軽くて短い分、取り回しが良くて扱いやすいです。動きも速いと思います」


「そう。どこか変えたい所は? バランスとか長さ、重量は?」


「これでいいです」


「そう? じゃあ次は2体とも動かしながら時間差で攻撃するよ」


「はいっ!」


位置や距離を様々に変えながら攻撃してみるが、ビアンカは盾とハンマーを巧みに使いこなして隙を見せない。

ホーンラビットを意識して低い位置や足元も攻撃してみるが全て防がれる。

そして「素早く動いた後」の位置にいるゴーレムにもよく攻撃が当たる。


ビアンカ強いぞ! この装備ならビアンカはもっと早くホーンラビットを倒せていたんじゃないか?


「この辺でいいかな。ビアンカさん、申し分の無い動きだよ」


「はい、ありがとうございます!」


「他には何が必要だろう? 何かある?」


「できれば弓が欲しいです」


「弓か……」


弓は土魔法では無理だ。土は固くする事はできるが、弾力をもたせる事なんてできないし、弦も作れない。


「弓は作れないから買うしかないね。ヒュドラを売って得たお金で買おう」


「はい」


ビアンカの装備はとりあえずこんなところか。

俺の方はゴーレムの改良だ。


改良といってもできることは限られている。なぜなら土魔法のレベルが上がったにもかかわらず、ゴーレムを大きくする事ができないからだ。なぜなのか?

できればゴーレムの中に入ってしまえばより安全なのだが、今の大きさでは無理だ。

それ以前に胴体に空間を作っても動くのだろうか? 試してみないと。


「クリエイトゴーレム!」


もこもこ。


背中側に大きな穴を空けたゴーレムができた。

俺が入れる大きさではないが、ともかく動かしてみよう。


……動かない。

全く動く気がしない。これはダメだな。


ならば5号機のシート周りを「箱」で覆ってしまうというのはどうだろう?

試作してみよう。


「クリエイトゴーレム!」


もこもこ。


背中に箱を背負った5号機型ゴーレムができた。

箱の後ろの部分をスライド式にして、そこから中に入る方式だ。


「よっこらせ」


箱の中に入ってみる。

シートもちゃんとあるが、出入り口をスライドさせて閉めると当然真っ暗である。


「……」


外はゴーレムの視覚を使えばいいので問題無く見えるが、この中にシルヴィアが入ったら泣いてしまうかもしれない。

クレアは……抱っこひもの中で寝ていた。


前だけ開けてそこを鉄格子にしてみよう。この場合は土格子か。


「……」


明るくはなったが、これはどうなんだろう? 動物園の檻みたいだな。

側面も半分だけ土格子にしてみる。視界は広くなったがますます……

安全な形かもしれないが、強度を確認してみないと。


「ビアンカさん、この格子の部分を大型ハンマーで全力で叩いてみてください」


「いいんですか?」


「もちろん。……ちょっと待ってね」


外に出る。さすがに中に入ったままは怖いわ。


「えいっ! やあ!」


ガン! ゴン! ドカン!


ぶっ叩きまくるビアンカ。だが格子部分が壊れる感じはしない。いけそうだな。


「ありがとう、ビアンカさん」


強度は問題ないが、見た目が……このアイデアはもう少し煮詰める必要があるな。

ゴーレムを魔法袋にしまっておく。この試作機はベータと名付けよう。

もっと洗練させたいが、どうすればいいかな……



夜、人がいなくなってからエクレールに乗せてもらって再び空の旅だ。


「エクレール、帰りはシオリスの手前まで飛んでね」


パチパチ。


前回と同様に景色は真っ暗で何も見えないが、ビアンカは凄く嬉しそうだ。


「空を飛ぶって素敵ですね! セシリアさん、次はいつエクレールさんに乗せてもらう事ができるんでしょう?」


「えっ、次? さぁ……」


「次は昼間に乗せてもらいたいです!」


「昼はダメでしょ、目立ち過ぎるから」


「人のいない所ならいいのでは? 人のいない所なんていくらでもありますよ!」


「それはそうだけど」


それはただの遊覧飛行だろう? 俺も明るい空の中で景色を見てみたいけど。


「エクレールさんにお願いしてみましょう!」


「そうだねー」


頼みを聞いてくれるといいなー。



湖を越えると地上の様子が僅かに見える。

月と星の明かりの下で森が延々と続くだけ、という景色なので面白みという点では今一かな。

それでも世界は広いなー、というのは感じられる。


「やはり昼の明るい時じゃないと!」


「そうだねー」



一気にシオリスのすぐ近くまで飛んでもらったので想定よりも早くシオリスの町に帰り着く事ができた。


門は閉まっていたが、俺の制服に気付いた見張りの兵士が門の横にある小さな出入り口を開けてくれたので中に入る事ができた。


いつものようにギルド裏にトーチカを作って寝る準備をしていると、ジュディがやってきた。


「お帰りなさい。セシリア」


「ただいまジュディ。こんな時間まで仕事?」


「あなたを待っていたのよ。あなたに討伐の依頼をしたいの」


「討伐依頼? 今帰ってきたばかりで疲れているんですけど」


「明日の朝一でヴァイパーを倒してきて欲しいの」


聞けよ、人の話を……ヴァイパー!?


「ヴァイパーだと!?」


寝言は寝てからにして欲しいんですけど。




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