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ヒュドラ討伐作戦! (準備編)

段取り八分という言葉がある。


仕事の成否の八割は準備の段階で決まってしまう、もしくは仕事の準備をしっかりとやっておけばその仕事は八割完了したも同然、という意味だ。


要するに、事前の準備は大事だねーという話である。

という訳でヒュドラ討伐に向けて準備をする。



場所はギルドの裏、いつもの場所だ。

いつもより遅い昼食を済ませて市場で買い物をした後、いつものように人がいないギルドの裏にトーチカを作って、シルヴィアとクレアには中でお昼寝をしてもらっている。


土魔法でテーブルとベンチを作り、俺とビアンカ、エクレールが座っている。

その周りにはシュバルツとノワール、アルジェンティーナがいる。


「では第1回ヒュドラ討伐作戦会議を始めたいと思います。司会は私、セシリアが担当いたします」


「まず最初に確認すべき重要な点は、今回の討伐は私、セシリアとビアンカさんが主体となって行うものであるという事です」


「えっ!?」


「はいっ、ビアンカさん、ご意見があればどうぞ」


「あの、私達が、ですか?」


「そうです。なぜならシュバルツ達が主体だとすぐに倒してしまうので、私達には活躍の余地がなく、その結果私達にはお金が入らないからです」


経験値(的なもの)も入らないし、レベルを上げたい俺には都合が悪いのだ。


「でもシュバルツさんやノワールさんは『黒いゴーレム』なんでしょう? お二人に前面で戦ってもらった方がいいのでは?」


ビアンカには既にパーティーメンバーを紹介済みである。

紹介する度にいちいち驚いてビビッていたがすぐに慣れるだろう。


「それにエクレールさんはドラゴンなんでしょう? 私達の活躍の余地なんて無いのでは?」


「話を聞いてなかったのですか、ビアンカさん? それだと私達には分配金が無いのですよ? レベルも上がらないし! それとも全く何もしないでお金を貰えると思っているのですか?」


「い、いえ、さすがに何もしないでお金を貰えるとは思ってないですよ! でも、それだと皆さんは何をするのですか?」


「勿論皆にはそれぞれ役割を果たしてもらいます。まず、最も重要な役割はシュバルツとノワールに担当してもらいたいと思います。それは、もし私達がヒュドラを倒す事ができずに困ってしまった場合に、代わりに倒してもらう、という大事な役です」


「えー……」


そう、これこそがヒュドラ討伐における最重要な点、「先生、お願いします!」だ!

何も難しく考える事はないのだ。

俺達で倒す事ができれば良し、できなければシュバルツとノワールに倒してもらえばいいのである。


「という訳なのでシュバルツ、ノワール。今回は『最初は』私達に任せて欲しい。私達が成長する為に! でもダメだった時や危ない時は助けて欲しい。という事で頼んでもいいだろうか?」


両者からは肯定的な雰囲気が感じられる。良さそうだ。


「シュバルツとノワールの同意を得られたので次にいきます」


「えっ!? そうなんですか?」


「そうなんです」


「次に、エクレールにはヒュドラの探索を担当して欲しい。かなり広い範囲になるのだけど頼んでいいかな?」


パチパチ。


「広い範囲の中から見つけられるかな?」


パチパチ。


自信ありげだ。


「ありがとう。エクレールも最初は攻撃しないで見ていてね」


パチパチ。


ヘレンがヒュドラに関する情報をくれたのだが、予想されるヒュドラの位置というのが大雑把過ぎる。


見せてもらった地図の縮尺がいい加減なので正確ではないのだが、ヒュドラの目撃情報から想定される生息範囲というのがおそらくだが、50km四方ぐらいある。

そんな広い範囲でどうやって絞り込めというのだ?


だが、ドラゴン幼女であるエクレールが広い範囲でも探知できる(らしい)というのなら問題無いのだ!


「アルジェンティーナには前回のようにヒュドラの注意を引きつけたり、牽制する役割をしてもらいたい」


特に返事は無いが伝わっている筈なので問題無い。


「そしてビアンカさん。攻撃の主体はあなたと土ゴーレムで、武器は『槍』を想定しています。槍を使った事はありますか?」


「槍ですか? 使った事はありますが、単に突く事ができるというだけで、得意という訳ではないです」


「そうですか。今回は槍を投げてもらいます。後で槍を試作するので試してみてください」


「投げる? 試作?」


「そうです。ヒュドラの魔法防御に負荷をかける為に魔法を使用すると、ヒュドラより先に私のMPが尽きてしまうかもしれません。なので予め大量に槍を用意して、ビアンカさんにはその槍をひたすらヒュドラにぶつけてヒュドラにMPを消費させて欲しいのです」


主にビアンカが怪我をする可能性を考えるとMPはできるだけ温存したい。

場合によってはエクスヒールを使う可能性もあるかもしれない。


「今回のヒュドラは火魔法を使うらしいのでビアンカさんに接近戦をさせる訳にはいかないのです。接近戦は槍を持たせた土ゴーレムで行います」


土ゴーレムならヒュドラのブレスでも無傷だったし、おそらく火魔法でも耐えられるだろう。


「ヒュドラの魔法防御が切れるまで槍による攻撃を続けて、切れたところで土魔法で攻撃をします。何か質問はありますか?」


「その槍は何本用意するんですか?」


「最低でも100本は用意します」


「どんな槍か見てみたいです」


「では、試作してみましょう」



考えているのはやり投げで使われる「槍」だ。

ただし大きさは全く違う。長さは5mぐらい、太さも5倍ぐらいある物にするつもりだ。

手で持つ部分だけ細くしてビアンカの手で持てるようにする。


イメージイメージ!


にょきっ。


とりあえず2本作ってみる。

なぜか土槍みたいな感じで出てきたが、勿論土槍とは違って手で持てるようになっている。


5号機に持たせてみる。

何の飾りも無いが固さには自信がある。バランス的にはどうなんだろう?

次はビアンカに持ってもらう。


「どうですか? 実際に持ってみて重さやバランスは?」


ゴーレムで持つと重さが分からない。


「そうですね、持つのは問題無いのですが、上手く投げられるかは試してみないと」


軽々と持ち上げているビアンカ。もっと大きくしてもいいのかな?

ギルドの裏は結構広いし、人もいないからここで試してもいいだろう。



前に見たヒュドラを土魔法で作ってみる。

大きさも同じぐらいで距離は20mほど先。


もこもこもこ。


ふむ、細部のデザインは適当だが一応ヒュドラだと分かるからまぁいいだろう。

動かそうとしてみたが全く反応が無い。ゴーレムではないからか?

そして念の為に土ヒュドラの後ろに土壁を作っておく。


「わぁ! 凄い! あれはヒュドラですね! こんなに短い時間で出来るんですね!」


時間の早さを褒められた。そこが褒めるポイントなの?


「ではまず土ゴーレムで試してみます」


やり投げのように槍を持って投げつける。ただしやり投げとは違って直線的に!


ヒュン!

スカッ。

ガスッ!


「あれ?」


土ゴーレムが投げた槍は標的のヒュドラには当たらず、後ろの土壁に当たった。

この距離で当たらないのか?


「なるほど、分かりました。やってみます!」


土ゴーレムが投げるところを見ていたビアンカが同じように構えて槍を投げつける。


「えいっ!」


ヒュン!

ドガッ!


見事命中! 標的に当たった!

同じ固さだから刺さりはしないが土ヒュドラの首の根元辺りに槍が当たった。


「すぐに当てられるなんて凄いね!」


「はい! 弓を使う時のイメージで投げてみました!」


「えっ? そうなの?」


弓と槍に共通するところなんてあるのか?

だが実際に当てているのだからきっと素人(俺)には分からないコツのようなものがあるのだろう。


「バランス的にはどう? 何か変えた方がいいかな?」


「これでいいと思います。投げ難いという感じはしません」


「そう。距離については? もっと離れた方が安全かな?」


「むしろもっと近付いていいと思います。セシリアさんの盾があれば火魔法も防げると思うので」


「そうかな? じゃあ次は片手で盾を持ちながら投げてみて」


「はい」


タワーシールドを持ちながら槍を構えるビアンカ。


「えいっ!」


ヒュン!

ドガッ!


問題無く当たる。後は持久力だな。


にょきにょきにょきにょきにょき。


とりあえず50本作って地面に並べる。


「ビアンカさん、槍を50本作ったので連続して投げてください。疲れるまでやって欲しいのですが、お願いしてもいいですか?」


「はい! やります!」


「同時に土ゴーレムも攻撃するけど気にしないでください」


「分かりました」


早速投げ始めるビアンカ。

その間に土ゴーレムに槍を持たせて土ヒュドラに突っ込ませる練習をする。

土ヒュドラの側面に回り込んで槍を突き入れる!


ガシッ!


刺さらないが問題無い。

これをひたすら続けていれば、最終的には魔法防御を失わせる事ができる筈だ。

問題は手数だな。もっと多くのゴーレムがあればより良いと言えるだろう。

そこで、


スキルポイント 6


ポイントを使う時がきた。ポチッとな。


土魔法 Lv 6


土魔法のレベルを上げて土ゴーレムの同時使用可能数を増やすのだ。

これで同時に5体動かせる筈。

2号機を5体並べて確認をする。うむ、動かせるな。


ん? 何だろう? もっと多く動かせる気がする。

とりあえず5体で試そう。

5体全てに槍を持たせて同時に土ヒュドラを攻撃する。


ガシッ! ガシッ! ガシッ! ガシッ! ガシッ! ドガッ! ドガッ!


ビアンカの槍もどんどん飛んで来る。


ゴロッ。

ゴロッ。

ゴロッ。


ビアンカの投げた槍が標的の周りに転がりだした。

実戦の時も回収係がいるな。土ゴーレムを1体回すか。



ビアンカが50回投げ終わった。

ずっと見ていたが、あちこち移動しながら投げたり、横へ走りながら、あるいは様々な姿勢から投げたりと実戦を想定していろいろ工夫していた。

そしてほとんど外さない。

見事なものだ。腕前も、熱心さも。


「ビアンカさん、どう? 疲れた?」


「まだまだ大丈夫です!」


「そう、試しにヒールをかけてみるね」


「えっ?」


「ヒール!」


ぽやん。


多少は疲れているか。全く疲れていない訳はないよな。


「どうかな? 疲れはどの程度回復した?」


「凄いです! 凄く楽になりました!」


「そう」


ヒールによる疲労回復は様子を見ながら、というやり方になるな。


「標的との間に遮蔽物があったらどうかな? 投げ難くなる?」


「遮蔽物ですか?」


「そう。アースウォール!」


土ヒュドラとの間に高さ2mの土壁を4つ、適当に設置してみる。


「ヒュドラの動きを妨げたり、火魔法を防いだりするのに役に立つかな?」


「そうですね、いいと思います」


ビアンカが土壁を盾にした位置取りで標的に向き合って、槍を構えて投げつける!


ヒュン!

ドガッ!


良さそうだ。


「セシリアさんの土魔法は発動が凄く早いので実戦でも有効だと思います」


「そう? それじゃもう少し練習しよう」


「はい!」


「もう一つ試したい事がある。アースランス!」


ドンッ!


レベルが上がったので土槍の高さを確認する。

さっき土壁を作った時、もっと高い壁を作れそうな気がしたんだよね。


土槍で最大値を確認してみる。

20m以上高くする事ができたが、何でだ? 急に高くなっているな?

でも、ここまでの高さは必要ないかな?


「アースランス!」


ドンッ!


7mの高さ、9本の土槍で土ヒュドラを檻のように囲ってみる。

消費MPは3。


「この土槍で囲うやり方を一つのアイデアとして試しておきたい。この状態で間を狙って槍を標的に当てる事はできる?」


「やってみます」


ビアンカが槍を構えて投げる。


ヒュン!

ドガッ!


「当たりました!」


「見事だねー」


よし! これも実戦で使ってみよう。


俺達の練習を見ていたゴーレムズとエクレールに感想を聞いてみる。


「どうかな? こんな感じでやってみるつもりなんだけど」


シュバルツとノワールからは肯定的な雰囲気が伝わってくる。

そうか、それは嬉しい反応だ!


「エクレールはどう思う? 良さそうかな?」


パチパチ。


「皆ありがとう」


皆が授業参観に来た保護者、みたいな感じだけど気にしない。


あとはエクレールのカバーの件だな。



練習を終えて休憩しているとジュディがやってきた。


「職人を連れてきたわ。一緒に来て」


「えっ? 連れてきた?」


「そう」


いつもの小部屋へエクレールと一緒に入る。

そこには、いかにも職人、といった感じの40代ぐらいの男が1人で待ち構えていた。


「こちらが防具職人のフレディ。私達ギルド職員の制服を作っている工房の親方よ」


「防具職人? 武器ではなくて?」


「オリハルコンの加工なら経験豊富な彼がいいと思って。彼はオリハルコンで複数の防具を作った事があるの」


「なるほど。はじめまして、私はセシリアです。こちらがエクレール」


「はじめまして、フレディです。事情は全てサブマスから聞いています。早速話を始めてもいいですか?」


「ええ」


「エクレールさんの角を近くで見せてもらってもいいですか?」


「エクレール、いいかな?」


パチパチ。


「どうぞ」


フレディさんが厳しい目でエクレールの角を見ている。


「なるほど、彼女の角の付け根部分を鞘の支えにする事ができますね」


「そうなんですか?」


「ええ、他は鋭い刃になっていますが付け根部分は違いますね」


そうなのか。気が付かなかった。

近くで見てみる。

今まで髪に隠れてよく見えなかったが、確かに根元部分は「刃」ではないな。


「刃の部分が鞘の内側に触れないように余裕を持たせて、角の側面を鞘で圧迫する事で動かないようにすればいいでしょう。強度確認はしておいた方がいいと思いますが」


「強度確認?」


「ええ。オリハルコンがドラゴンの角に対してどれだけの強度をもつのか、という確認です」


「なるほど」


フレディさんが白金色の金属らしき物を見せてくれる。

掌より小さなサイズの板だ。厚みは5mmぐらいか。


「これがオリハルコンです」


「ほう」


きらきら光って綺麗な色だ。

何だか凄そうな、オーラのようなものを感じるのは気のせいだろうか?


「これを押し当てて強度を確認するのですが」


「エクレール、いいかな?」


パチパチ。


「いいそうです。お願いします」


「分かりました」


フレディさんがエクレールの角にそっとオリハルコンを押し当てる。

斬れ……ないな。

ぐっと力を込めて押し当てて動かしている。斬れない。

おおっ、斬れないのか! 凄いんじゃないか!?


さらにぐっと力を込めて押し当てて動かして……あっ!?


スパッ。


斬れた! 斬れちゃったぞ!? ダメなのか!?


「いいんじゃないでしょうか」


「えっ? いいの?」


「ええ、かなり力をいれないと斬れなかったので鞘の材質としては十分でしょう。不慮の事故を防ぐ為という目的を果たす事ができると言えます」


「そうですか」


なるほど、そういうものなのか。


「鞘のデザインですが、オリハルコンは細かい装飾を入れる事ができないので飾り模様の無いシンプルな物になるのですが、それで了承してもらえますか?」


エクレールを見る。


パチパチ。


「いいそうです。それでお願いします」


「分かりました。明日には出来上がります」


「早いですね」


「ええ、ほとんどの過程は魔法によるものなので」


「そうなんですか。値段はおいくらですか?」


「白金貨1枚です」


「……分かりました。お願いします」


「はい」


これで準備は整ったと言えるだろう。


さぁ、明日はヒュドラ狩りに行くぞ!

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