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エルフ娘が奴隷になりたそうな目でこちらを見ている

「もう一つ教えて欲しい事がある」


「何かしら」


「受付嬢の給料が高いのはなぜ?」


「……それは今、知らなければならない事なのかしら?」


「むしろ今、知らなければならない事なんだ」


ヘレンのやつ、もう3杯もかき氷を食べている。

もちろん、自分の金なら好きにすればいいのだが、そうでないのなら。


「……受付担当に限らず、ギルド職員は皆高給を得ているわ」


「それはなぜ?」


「簡単に言えばハンター達に舐められない為よ。正確にはハンター達に舐められない人材を集めた結果、その人材には高給が必要だった、という事なのだけど」


「意味が分からない」


「ハンター達は基本的に荒っぽい人達よ。受付だけでなく職員もレベルが高くないと、こちらの言う事を聞かなかったり、理不尽な要求をしてきたりして、まともに業務ができなくなるのよ」


ハンターギルドってそんなに荒っぽい所だったのか?


「それで主に高レベルのハンターをスカウトしてギルド職員にするのよ。当然高い給料じゃないと引き受けてもらえないわ」


うーむ。


「その分危険度の高い仕事もあるわ。ドラゴン討伐がいい例ね。ギルド職員も参加していたでしょう? あれも業務の一環なのよ」


「では、ヘレンの給料が高いのも……」


「ヘレン? そうね、彼女も元ハンターよ。『固い』事で有名だったのよ」


「固い? 盾役という事?」


「そうよ。うちでは一番固いわ。だから誰かを、あるいは何かを守る時には彼女をつけるのよ」


うーむ、そうなのか。



ジュディと一緒に部屋を出る。

シュバルツ達は話を聞いても特に反応はしなかったんだけど、これはどう受け止めればいいのかな……


俺達はロビーへ戻った。


「しーちゃん、お待たせ。かき氷は美味しかった?」


「おいしかった!」


にこにこ笑顔のシルヴィア。そうかそうか、それは良かった。


「私も美味しかったです! 冷たくて甘くて素敵でした!」


「それは良かった」


ビアンカも嬉しそうだ。


「私もぉ、美味しかったけどぉ、もう一杯食べてもいいかなぁ?」


「なぜ私に許可を求める?」


こいつまさか。


「シルヴィアちゃんにもぉビアンカちゃんにもぉセシリアが奢るんでしょうぅ? 私にも奢って欲しいのぉ」


「嫌なんですけど」


なぜ高給取りのお前に借金持ちの俺が奢ってやらねばならんのか。


「セシリアはお金を稼ぎたいんでしょう?」


「そうだけど」


突然なんだよ。


「奢ってくれたらぁ、いい話を教えてあげるよぅ。いい稼ぎになる話なのよぉ」


「ほう、聞かせてもらおうじゃないか」


「もう一杯食べてもいいかなぁ?」


「……いいとも」


情報料だと思えば……もちろん内容によるが。


「今、高レベルハンター達が出払っていて、難易度が高くて危険だから掲示板から外しているものが一つあって、それがセシリアには『うってつけ』なの」


普通に喋りだしたヘレン。それが素なのか?


「具体的には?」


「ヒュドラの討伐よ」


「おい」


何が「いい話」だよ。俺のレベルでどうにかできる魔物じゃないだろう?

……もしかして、


「それは黒いゴーレム達の力を当てにしているという話?」


「ドラゴンもいるでしょう? セシリア達なら簡単に討伐できるわ」


うーむ、それは。

倒せる事は間違いないが、シュバルツ達が倒してしまうと俺の金にはならないし、経験値的なものも得られないから嬉しくないのだが。


「ヒュドラに関する情報、目撃された場所などをセシリアに提供してもいいのよ?」


「うーむ」


試してみるか? だがハンターの助言が欲しい。


「黒いゴーレムやドラゴンの力抜きで私にヒュドラを倒せるかな?」


「攻撃はセシリアの魔法でもいけると思うけど、防御はどうするの?」


「トーチカに篭ってしまえばいいんじゃないかと」


「それだと攻撃できないんじゃないの? どうやって攻撃するの?」


「問題無い。土ゴーレムで魔法が使えるから」


その事を知らないのか? 全員が俺の情報を共有している訳ではないのか。


「攻撃の件で助言が欲しい。ヒュドラの魔法防御をどうすればいいのか」


「それはひたすら攻撃を続ければいいのよ」


「魔法で?」


「魔法でも物理でも、とにかく負荷を与え続けて魔力を消費させればいいのよ」


「どの程度負荷を与え続ければいいのか知りたい」


「それは実際にやってみないと分からないわ。個体差もあるし」


うーむ、やってみるか? 試してみてもいいかもしれない。


「あの、セシリアさん! ちょっといいでしょうか!」


「ん?」


今まで黙っていたビアンカが何か言い出した。そういえば、


「ビアンカさんも何か話があるって言ってたね。何だったかな?」


「あのっ、セシリアさん達は狩りに行くんですか?」


「そのつもりだけど」


「お願いします! 私も連れて行ってください! 私をセシリアさんのパーティーに入れてもらえませんか?」


「えっ?」


「助けてもらって、まだお返しができていません。セシリアさんのパーティーの中で頑張って恩返しがしたいんです!」


「えーと」


「それに治療魔法の代金や食事代、服のお金も支払わないといけないです。何なら私を奴隷にしてもらっても構いません。いえ、ぜひそうしてください!」


「突然何言い出しているの!?」


何かおかしな事を言い出しているぞこのエルフ娘!


「何で奴隷?」


「私には全くお金が無いからです」


「それが何の説明になっているの? 意味が分からないんですけど」


「私が説明してあげてもいいよぅ」


ヘレン、説明してくれるのはありがたいんだが。


「普通に喋ってくれていいんだよ?」


「普通って何かなぁ?」


「いや分かっているでしょ」


「ビアンカちゃんが言っているのは普通の奴隷契約の事よ」


「普通って何?」


「平民がお金に困った時に自分自身を担保にしてお金を借りて、何年か働いて返す契約の事よ」


「それを奴隷契約と言うの?」


「そう。仕事先や仕事内容を選べないし、契約魔法で強制力があるから奴隷という言葉が使われるの」


「契約魔法」また気になる言葉が出てきたが、今はそれより、これをどうしよう?


エルフ娘が奴隷になりたそうな目でこちらを見ている。何だそれ!?

そこは「エルフ娘が仲間になりたそうな目でこちらを見ている」だろうに!


「えーと、まず治療魔法の件だけど、それはゴブリンを討伐した時のエクレールの魔法で怪我した訳だから、代金を請求する気は無いし、支払わなくていいのだけれど」


そのエクレールはかき氷を食べている。

全く手が止まらないんだけど、キーンってならないのかな?

ドラゴンだからならないか。

もちろんアルジェンティーナも食べている。


「それは払わなくていい理由にはならないですよ」


「えっ?」


「魔物に襲われた人を助ける時に、助ける側の攻撃でその人が怪我をしたとしても、助けた側が治療費を負担する必要はないのよ」


「えっ?」


「そうじゃないと誰も助けなくなるわ。魔物の数が多かったり、強力だった場合、攻撃する側は手加減なんてできないし、助けた際にその攻撃で怪我をした人に文句なんて言われたら『だったら助けてやらねーよ』という話になってしまうから」


「えー」


ヘレンが説明してくれたが、それは正直どうなんだ? それがこの世界の当たり前なのか?


「だからビアンカちゃんに治療をしたのなら、セシリアはその代金を受け取る事ができるし、受け取るべきなのよ」


「えー……」


「治療魔法は何回受けたの? 服というのは今着ている服の事ね?」


「治療魔法は3回です。服は布から仕立ててもらいました」


「そうするとビアンカちゃんのセシリアに対する借金の額は金貨50枚ぐらいね」


「はい」


「おい」


内訳はどうなっているんだよ。おかしくないか? 500万?


「治療魔法が1回につき金貨5枚、服の値段が金貨4枚、奴隷になる場合は契約魔法の代金が金貨1枚必要で、あとゴブリンの群れから救出した報酬分が金貨30枚といったところね」


「はい」


うーむ、そう言われると特におかしくはないのか?


治療魔法の金額はポーションの値段を考慮すれば妥当と言ってもいいし、服も店で大人の服を製作してもらった場合、それぐらいの値段でもおかしくはない。

この世界では新品の服は高いからな。(中古の服も安くはないが)


俺の作った服にプロの作った服と同等の価値があるのか? というのはまた別の話だけど。


契約魔法の代金を奴隷になる側が負担する、というのもそれがこの世界の慣習だというのならどうこう言う事でもないし、救出した報酬分というのは俺には算定できないが、ギルド職員のヘレンがそう判断したのなら信用していいだろう。ビアンカも同意しているし。


だがしかし、奴隷というのはよろしくない。主に子供の教育的に。


「びあんかちゃんはどれいなの?」


ほら! さっそくシルヴィアが間違った使い方で覚えてしまっている!


「違うよ、ビアンカちゃんはきっとお友達さ」


「ふぅん?」


そもそも奴隷の意味を分かっているのかな? 今の説明を理解したのだろうか。

危ない、早く何とかしないと。

だがビアンカか……

我がパーティーにおいて、「最も必要ない」のが盾役なんだよな。


黒のゴーレムズは言うまでもなく、そしてドラゴン幼女もシュバルツ達に穴だらけにされてしまったとはいえ、それは魔法無効によるものだし、ドラゴンの魔法防御は十分過ぎるほど固いだろう。


俺自身は紙防御だが、制服もあるし土ゴーレムを盾にする事もできる。

土ゴーレムもそれなりに固くはあるし、トーチカに篭ってしまう、というやり方もある。


そう考えると、盾役としてのビアンカはいらないという事になるのだが。

後衛のアーチャーならいいのだけれど。


「ヒュドラにダメージを与えられるぐらい強力な弓ってどれぐらいするのかな?」


「えっと……」


「それは普通の弓ではなく魔法の弓という事になるから、最低でも金貨500枚以上が必要になるんじゃないかな」


ヘレンが教えてくれた。もちろん買えませんね。


「それを私の借金につける事は可能かな?」


「無理じゃないかな? サブマスに聞いてみる?」


「いえ、いいです」


たぶん無理だろうな。

それは俺の借金じゃなくてビアンカの借金と判断されるだろうから。

俺が買って俺の弓だと主張したうえでビアンカに貸す、そのやり方が通用するとは思えない……まてよ?


弓ではなく、別の物では? 攻撃要員としてビアンカを起用できなくもない、かもしれない。

試してみるか。


「えっと、ビアンカさん。期間限定というかお試しとして私達のパーティーに参加してみませんか? とりあえず、ヒュドラの討伐が成功するまで」


「はいっ! ありがとうございます! 私頑張ります! では早速奴隷契約を……」


「あ、それは結構です」


何で奴隷になりたがるんだよ? 普通に仲間でいいでしょ……



狩りに行くのであれば裸足という訳にはいかない。

ビアンカは靴がなくて裸足なので靴屋へ靴を買いに行く事にした。


靴屋ではすぐに靴を作ってもらう事ができたが、魔法かスキルなのだろうか?

お金に余裕があれば(そして魔法のスクロールがあるのなら)欲しいスキルだ。

お値段は1足金貨1枚と銀貨5枚。


戦闘に耐えうる丈夫な靴と注文したからかもしれないが、高いな。

予備としてもう1足買った。


そしてシルヴィアの靴も作ってもらった。

新しいサンダルと靴2足で銀貨5枚。


エクレールは靴はいらないらしいが、エクレールだけ裸足というのもおかしいのでサンダルを履いてもらう。デザイン違いのサンダルを銀貨2枚で買う。

次はエクレールのカバーだな。


手持ちの金がどんどん減っていき、借金がどんどん増えていく。

ついでに市場でいろいろ買い物していくか……




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― 新着の感想 ―
[良い点] 人型が幼女しかいないというのが新しいと思いましたw [気になる点] 先の方で説明があるのかもしれませんが、気になったので ・52話「私は信じる」というだけのことなら 真贋 で見てもらえば…
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