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異世界で『魔法幼女』になりました  作者: 藤咲ユージ
第3章 旅する幼女
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ビアンカ

出来上がった服を着てもらう。いいんじゃないか?

すごくエルフでファンタジーっぽい。


似合っていると思うけど、ビアンカ的にはどうなんだろう?


「どうかな? サイズとか着心地とか、デザインについても変えて欲しい所があれば手直しするよ?」

「素敵です! サイズもちょうどいいですし、着心地も良くて動きやすいです!」


腕を大きく動かしたりして確かめている。

胸元を大きめに開いた、胸の部分を少し強調したデザインにしたけど、胸が大きい人の場合隠そうとするとかえって不自然なんだよねー。

それに完全に覆った状態で可愛くするのは難しかった。デザイン的に。

胸がこぼれ落ちそうなほど、じゃないのだから大丈夫だと思うんだけど。


「デザイン的にはどう?」

「可愛くて素敵です! 凄く気に入りました!」

「そう、それは良かった」


本人が気に入ったのなら問題は無い。問題は無いのだ。


「この服はおいくらなんでしょう? 私、頑張って必ず代金を支払います!」

「えっ?」


あげるつもりだったのだが。


「支払わなくていいですよ。プレゼントです」

「えっ!?」


半裸のままでは困るから作っただけだし、緑色の布は使い道が無くて余っていたからちょうど良かったんだ。


「こんな素敵な服をただで受け取る訳にはいかないですよ!」


プレゼントってただで受け取るものじゃないの? 別に下心なんて無いんだけど!(幼女だから)


「それなら布代だけ払ってもらってもいいですけど、ビアンカさん、お金についてお聞きしてもいいですか?」


見ず知らずの幼女からいきなりプレゼントを貰う事に抵抗があるのかもしれない。

それなら布代ぐらいは貰ってもいいが、お金はあるのだろうか?

今持っていないのは明らかだが、どこかに金を預けているのか? ハンターギルドとか。


「えっと、今はお金は無いんですが、これから稼ぎます! なので支払いは少し待ってもらってもいいですか?」

「どこかにお金を預けているという事は?」

「無いです!」


元気いっぱいに答えるビアンカ。マジかこいつ。


「えっと、全くお金が無いのですか?」

「はい、そうです」


ちょっと元気が無くなるビアンカ。

これからどうやって生きていくつもりだ? 稼ぐと言っても装備だって新たに買う必要があるだろうに。

明日の食事代とか、それすら無いんじゃ? どうするつもりなんだ?


「もしかして、ギルドで借金をするつもりじゃあ……」


それは絶対にやめた方がいいぞ!


「私だと貸してもらえるかどうか分からないですけど、相談はするつもりです」

「えー……」


正気かこいつ……貸してもらえるかどうか? どういう意味だ?


「その言い方だと貸してもらえない事があるみたいに聞こえるけど」

「私みたいな低ランクだと信用が無いのでお金を貸してもらえない事もあるみたいです」

「ビアンカさんは何ランク?」

「Fです」


低くないか? 下から2番目じゃん。


「ビアンカさんはハンターになって何年目?」

「3年目です」


うーむ、どうなんだろう、遅い……ような。でもパーティー次第というのもあるか。

とりあえず、盾を試してもらおう。



丘の上で掘った穴を埋め戻して、「耕す魔法」で均して軽く固める。

ここで試す事にしよう。


前に作ったタワーシールドを2枚魔法袋から取り出して5号機に持たせる。


「ビアンカさん、試しにこの盾を持ってみませんか?」

「はいっ! 凄く立派で丈夫そうな盾ですね!」


5号機から受け取った盾を片手で持ってひょいひょい動かす。

まるで紙で出来た盾みたいに軽々と動かしているが、もちろん軽い訳がない。

正確な重さは不明だが結構、いや、かなり重い筈なんだが。


「重くないんですか?」

「重いですよ?」


片手で動かしている人に言われても。もう1枚のタワーシールドも持ってもらう。


「2枚持ちでも平気ですか?」

「はい、平気です!」


力自慢は伊達ではないようだな。


「次は土ゴーレム相手に実際に盾を使うところを見せてもらってもいいですか?」

「いいですよ」


5号機をビアンカの持つ盾に体当たりさせてみる。最初はゆっくり、怪我をさせないように。


ドンッ!


簡単に受け止めるビアンカ。ほほう、余裕だな。


「もっと強くても平気ですよ?」

「分かりました」


ではもっと強く。少し距離を取って助走して当てる。


ドガッッ!!


やはり簡単に受け止める。しかも片手だ! 今の結構強かったんだが。


「まだいける?」

「はい、いけます!」


よし、全力でいこう。怪我をしたら魔法で治すからね。

さらに距離を取って全力でぶちかます!


ドガァアン!!


まるで車同士がぶつかった時みたいな大きな音がしたが、ビアンカは倒れない! 受け止めている!

マジか、今のを止めるのか!


さすがにその場で留まる事は出来ずに大きく後ろに後退して足元の土が抉れているが、凄まじいパワーだな、これでFランクなのか?


「ビアンカさん! 大丈夫ですか!?」

「平気です! この盾は凄いですね! こんなに強い当たりでも全く壊れないなんて!」


いや、どう見てもビアンカの方がスゲーよ。

ビアンカの傍まで近付く。


「一応ヒールかけておきますね。ヒール!」


光らない。

ノーダメージとか、ありえないだろ。どれだけ丈夫なんだよ、このエルフ娘。


「大丈夫ですよ? これだけ丈夫な盾があればダメージなんて受けないです!」


そうかなぁ。ビアンカが頑丈過ぎるだけじゃないの?


土ゴーレムにもダメージは無い。もう少し試すか。


「今度はシールドバッシュを試してもらっていいですか?」

「分かりました」


さっきと同じ様に助走をつけて、全力で当たる!


ドガァアン!!


「やぁっ!」


ガシッッ!!

ゴロンゴロンゴロンドガッ!


片方の盾で5号機を受け止めて、もう片方の盾で横殴りで5号機をぶっ飛ばした!

5号機は横倒しになって転がり、木に当たって止まった。


土ゴーレムはかなり重い筈なんだが、すごい勢いで転がっていったな……


ビアンカにぶっ飛ばされた5号機を起き上がらせる。ダメージは……無いな。

だが、ぶっ飛ばすだけでも大したものだ。


土ゴーレムの力はファングボアの突進を止めてぶっ飛ばせるほどなのに、ビアンカには同等のパワーがあるという事だぞ。

今の一撃には十分な威力があった。


ビアンカにこの盾があれば、大型の獣、ファングボアとかリザードを1人で狩る事ができるだろう。

やったね! ビアンカ。お肉食べ放題だよ!


これほどの力があるのにゴブリンに捕まるのか? 戦いは数だよ、というやつだろうか。


「ビアンカさん、ちょっと聞いてもいいですか?」

「はいっ! なんでしょう?」

「森でゴブリンと遭遇した時、盾は持っていましたか?」

「はい。持っていました。ゴブリンと戦った時に壊れてしまったんですけど」

「どんな盾?」

「木の盾です」

「おい」


なんで木製の盾なんて使っているんだよ! アホか!


「仕方ないんです。何度も盾を壊していくうちにお金が無くなって木の盾しか買えなくなってしまったんです」


自分の命がかかっているのに……


「少数のゴブリンなら問題無かったんですけど、数が多かったので」


うーむ。こういうの、負のスパイラルというやつだろうか? 悪循環に陥っているんだな。

それにしても要領が悪いというか、生きるのがヘタなんじゃね?

俺も人の事は言えないが。


ビアンカの足元を見る。裸足だ。

さすがに靴は作れないのでビアンカは今裸足なんだが、さっき足が地面にめり込んでいたけど、ヒールで光らなかったんだから足も怪我はしていない筈だ。


俺も最初は裸足で歩いていたな……

こいつは何年もハンターをやっていて、今、裸足になっている。

エクレールの雷撃をくらったからだが、靴を一足買う金すらない。


仲間をつくれなくて1人で森に入って、ゴブリンに捕まって死にかけて、再起する為の金も無い。

生き方がヘタクソ過ぎるだろう、ビアンカ。


「ビアンカさん。その盾をあげ……」


「あげる」と言ったらまた遠慮して断るんだろうか? 金を払うというのだろうか?

厚かましくないのは美徳かもしれないし、そういうのは嫌いではないが少しは図々しくないと生きていけないぞ。


「ビアンカさん。その盾をしばらく貸してもいいですよ? 私は使っていないので」

「えっ!? でも……」


「商品として売り出そうと思ってゴーレムで試していたのですが、ビアンカさんが使って感想を聞かせてもらえると商品化する時役に立ちます。売る相手もハンターを想定しているので」


「協力してもらえるのなら謝礼をお支払いします。お金に余裕が無いので、謝礼は食べ物で受け取って貰えると助かるのですが、干し肉やベーコンが大量にあるので、それでお願いしてもいいでしょうか?」


「セシリアさん……」


「昔、偉い人がこう言ったそうです。『幸運の神には前髪しか無い』機会を逃さず得てこそ、自らの道が切り開かれる、という意味です。ご存知かもしれませんが」


「自分の道が切り開かれる……」


幼女が言うと偉そうで生意気だな。そこは大目に見てもらいたい! ……これって元の世界の言葉だからビアンカが知ってる訳ないわ。

でもこの世界にもきっと似たような言葉がある筈!


「いかがでしょう? ビアンカさん」

「セシリアさん、あの、その、あ、ありがとうございます。嬉しいです」

「引き受けてもらえますか?」

「はい!」


それは良かった。

次に会うのはいつになるか分からないけど、それまでにいっぱい狩りをして、お金を稼いで装備を整えて、新しい仲間を見つけるといいよ。


嬉しいのなら笑えばいいんだぜ。

泣かなくていいんだぞ、ビアンカ。




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