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異世界で『魔法幼女』になりました  作者: 藤咲ユージ
第3章 旅する幼女
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シオリスに向かって出発できない

さて、朝食が済んだらドラゴン幼女改めエクレールの為に服を作らねばならない。


翼が出るように背中の部分が少し開いたデザインなので、ちょっとだけ大人っぽい感じのワンピースになった。

裁縫スキルのお陰ですぐに出来上がる。念の為2着作っておこう。


「どうかな? この服の形は。気に入ってくれるかな?」


パチパチ。


いいみたいだ。早速着てもらう。

エクレールは服の着方を知らなかったが、予備の服を使ってお手本を見せるとすぐに理解して自分で着る事ができた。

うむ、服を着ていると普通に可愛い女の子に見えるな。角さえ無ければ。


では出発だ。今日中にはシオリスに着くだろう。

順調にいってもまた借金が増える、という今後の展開を考えるとため息をつきたくなるが、前へ進まなければならない。

そうだ、楽しい事や良い事を考えよう。少なくとも1つは良い事があった。


セシリア


Lv 6


HP 60/60

MP 116/120


ドラゴン幼女の件に比べれば霞んでしまうような事だが、俺のレベルが6に上がった。

HPは増えても60とか相変わらず少ないが、MPが120というのは嬉しい。

魔法使いなのだから少しでもMPは多い方がいいからな。


土魔法のレベルも上がった事だし、少しずつでも確実に強くなっているというのは嬉しい事だ。

何かまた新しい魔法に挑戦してみようかな?

その前にゴーレムの改良や操作できる数を増やせるか試してみようか。

こういう事を考えていると楽しくなってくるな。うむ、前向きでいいじゃないか!



出発前に少し試してみる。

ゴーレムの数を増やしてみよう。もう1体出して4体を同時に動かせるかな?

3号機を出して動かしてみる……動かせるな。よし、もう1体! ……ダメだ、動かせない。

増やせるのは1体だけか。計4体。少しでも進歩した事を喜ぶべきか。


エクレールを3号機に乗せようとしたらなぜか嫌がられてしまって、彼女は5号機の肩の部分に乗ってしまった。

乗る時に少しだけ飛んでいたけど羽は動いていない。翼の意味って何だろう。



クレアを抱っこひもの中に入れて、シルヴィアを乗せてさぁ出発! と思ったらゴーレム達が横並びのまま動こうとしない。

いつもなら既に隊列を組む為に動き始めているのだが、どうした?


ゴーレム達から何やら不満そうな雰囲気が伝わってくる。本当にどうしたの?


「どうかした?」


すると黒のゴーレムが動き出して、おもむろに地面に絵を描き始めた。

絵? それは何の……エクレール?


黒のゴーレムは簡単に分かり易いドラゴン幼女の絵を描いた。それがどうかした?

次に自分自身の絵を描く。……どういう事?


エクレールの絵を指差す黒のゴーレム。


「エクレール?」


次に自分自身の絵を指差す。


「黒のゴーレム?」


ここで不満げな雰囲気。えっ? どういう事?

……もしかして、


「『黒のゴーレム』という呼び方に不満があるという事?」


肯定的な雰囲気。まさか!? でも今の、非常に分かり易い雰囲気だった!

なぜ今になって? もしかして、足長も?


足長の方を見る。

全く動いていないが見ただけで分かった。同じ意見らしい。なぜに!?


再びエクレールの絵を指差す黒のゴーレム。あぁ、なるほど。

何となくだけど分かったわ。


「ドラゴンに『エクレール』という名前を付けたのに、なぜ自分達には名前を付けないのか? という意味?」


肯定的な雰囲気。うーむ。


今までいわゆる「名前付け」をしなかったのは、おそらくゴーレム達には既に名前があるんじゃないか? と思っていたからだ。

今は何らかの理由で分からないというだけで、将来は「本当の名前」を知る機会があるんじゃないかと勝手に思っていたのだが、違うのか?


明らかに「名前を付けろ」という雰囲気なんだが、いいのか?

だがこういう場合、「名前無いの?」と聞いたところで……一応聞いてみるか。


「えっと、黒のゴーレムには『自分の名前』は無いの?」


無反応。あるのか無いのか全く分からない。


「足長は? 無いの?」


こちらも無反応。やはり……


「えーと、じゃあ名前を付けるよ?」


肯定的な雰囲気。とはいえ急に言われても。『黒』に関する表現……うーん。


「黒のゴーレムの事は『シュヴァルツ』、足長の事は『ノワール』と呼ぶ事にするよ。どうかな?」


……いいみたいだ。

安易過ぎる気もするけど、すぐに気の利いた名前を思いつくなんて無理ですわ。

何か問題があったら改名すればいいか……


「しーちゃんも覚えておいてね。シュヴァルツとノワールだよ」

「しゅ?」

「そう、小さい方がシュヴァルツ」

「しゅーちゃん!」

「まぁ、それでもいいかな。大きい方がノワールね」

「のわちゃん!」

「いいんじゃないかな」


シュヴァルツもノワールも自分の事だと分かるだろう。



では出発するかと思ったら狼がじっと俺を見ている。

自分にも名前を付けろというんですね、分かります。


「狼は『アルジェンティーナ』でいいかな?」


ゆったりと尻尾を揺らす狼。気に入ってくれたのかな。


「狼の事はアルジェンティーナと呼んであげてね」

「あるちゃん!」

「そうだね」



さーて出発するか「魔法使い様!」……誰?


すぐ傍まで女性が近付いて来ている。

女性が近付いている事には気付いていたけど、ただの通行人だと思っていたわ。

話しかけられるとは思わなかった。


「えーと、何かな?」

「ギルドが直接職員の方を派遣してくださったんですね!」

「えーと、えっ?」


急に何? 何の話?


「何の話でしょう? よく分からないのですが」

「ゴブリン討伐にきてくださったのではないのですか?」


ゴブリン? いや知らないし。


「えーと、違うかな?」

「違うのですか!?」


女性はショックを受けている様子。


「私達はこれからシオリスに戻るところで事情を知らないのですが」

「どうか私達の村を救ってください!」

「えーと、えっ?」

「どうか話を聞いていただけないでしょうか?」

「えーと、はい」


何だか必死な感じ。聞かなきゃダメなんだろうな……



女性はネルスス村のエイラと名乗った。


「私達の村から少し離れた所にある廃村にゴブリンが住み着いて、数を大量に増やしているのです。気付いた時にはもう手に負える状態ではなくて、ハンターギルドに討伐を依頼したのですが、ハンターの人達が来てくれないのです!」


涙ぐみながら話すエイラさん。


「『他にもゴブリンが大量に発生した所が複数あって、そちらにハンター達を派遣しているから待って欲しい』と言われたのですが……」

「依頼したのはいつの話ですか?」

「3日前です。今日もう一度ハンターギルドに問い合わせに行ったら、『ハンター達はまだ戻っていないから待て』と言われてしまって」


おかしいな?

シオリスには多くのハンターがいる筈なんだが、一体何人のハンターを派遣しているんだ?


「それで仕方なく村へ帰るところだったんですが、ここでギルドの制服を着た魔法使い様をお見かけしたので、ギルドが職員の方を派遣してくださったのかと思ったのですが」


そう言って俺達を見回す。

このメンバーでゴブリン討伐にきたと本気で思っているのだろうか?


幼女と幼女と(本当はドラゴンの)幼女と赤ん坊にゴーレムがたくさん。


ハンターの集団には見えないだろう? じゃあ何だよと聞かれても困るけど。

職員の制服を着ているというだけで討伐隊に見えてしまうのだろうか?

というか時系列がおかしいだろう? 「待て」と言われてるじゃん。


「事情は分かりましたが、私達はシオリスに戻る途中でギルドから派遣されてきた訳ではないのです。私達だけでゴブリン討伐というのは……」

「お願いします! 数が多くて村の人間では無理なんです。それに、いつ村が襲われてしまうか分かりません! 一刻も早く討伐していただかないと、このままでは村が立ち行かなくなってしまいます! どうか、お願いします!」


縋り付いてくるエイラさん。えー……




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