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異世界で『魔法幼女』になりました  作者: 藤咲ユージ
第3章 旅する幼女
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突然のドラゴン戦!

ドゴォオオオオオオン!!!


今の音何!?


轟音で目が覚めた。


トーチカの中は明るい。もう朝になっている。

トーチカの中は……異常は無い。シルヴィアもクレアも寝ている。

狼は? いない。外か?


トーチカの外に出る。狼はすぐ近くにいた。狼が見ている先には……


「ドラゴン」がいた。……ドラゴン!?


ドラゴンとゴーレム達が戦っている! えっ……マジで?

急に何だよ!? これは夢か? 


ガッシャアアアアアアン!!!


「ぐはっ!? 目がぁああ!! ヒール!!」


ぽやん。


サンダー!? ドラゴンが放ったサンダーか!


強烈な閃光がゴーレム達を襲う!

大丈夫か!? 大丈夫だ、全く効いていない!

平然と攻撃を続けている。魔法無効が強過ぎるわ!


ドシュッ!


「ギャアアアアアア!?」


黒のゴーレムのパイルバンカーがドラゴンの前脚を破壊した!

脚が引きちぎられたかのように飛ばされている!


あっ! あのドラゴン、魔法防御を使っているぞ!?

今のパイルバンカー攻撃の時、魔法防御のエフェクトが見えた。

魔法無効を攻撃の時にも使える黒のゴーレムに対しては意味が無かったが。

という事はまだMPがあるという事じゃないのか? 何で地上にいるんだ?


ゲシッ!


足長の飛び蹴りのような攻撃! 鱗が飛び散って肉が抉られている!

ぶっ飛ばされるドラゴン!

またドラゴンの体表に魔法防御を表すエフェクトが見えた。

やはりまだ魔法防御はある。もっとも今の攻撃でまたダメージを受けているけど。

力が桁違いだな。


ドガァアアアアアン!


もんどりうって倒れ込むドラゴン!

凄く軽く見えるんだけどそんな筈無いからな。ゴーレム達の攻撃が強過ぎるだけ。


「ガオォオオオオオオ!!」


ドラゴンの咆哮! まだまだやる気みたいだ。タフだなぁ。ドラゴン。

このドラゴンにも翼はあるのだが、なぜ飛ばないんだ?

飛ぶ暇を与えないほど激しく攻撃している、という事なのか?


のんびり眺めている場合ではないのだけれど、逃げても意味無いか。

こんなに広くて見通しのいい、遮る物も無い砂漠地帯で多少距離を取ったところで、ドラゴンの移動速度ならすぐに追い付かれてしまう。

もっとも、あきらかにゴーレム達が優勢だから逃げる必要は無いのかもしれないが。

たぶん逃げるより、ここでトーチカの中にいる方がマシだろう。


狼と一緒にトーチカの中に入って入り口を塞ぐ。

そして外に出していた2号機で戦場へ少しだけ近付く。

2号機の視覚で続きを観戦する。


「グァアアアアアア!!」


ドラゴンがその巨大な牙で足長に噛み付こうとするが、足長はするりっ、とかわして横蹴りをくらわす!

ドラゴンの顔が地面に叩きつけられる! 


「ガアッ!?」


痛そう! これは効いているのでは?


「かわす」という事は「黒いゴーレム」にとってもドラゴンの牙は脅威なんだろうか?

単純に嫌なだけかもしれない。

まぁドラゴンに噛まれて嬉しい、なんてやつはいないだろうが。


大きく口を開くドラゴン! ヤバい、これはブレス!!


「ジャアアアアアア!!」


足長に対して放たれたブレスはしかし、容易くかわされてしまう!

大地を抉り、爆発するような勢いで広がっていくブレスの破壊力!

さすがドラゴン! 威力がヒュドラとは段違いだ! でも当たらない!

すかさず側面から黒のゴーレムが左手を突き出してドラゴンを攻撃する!


ズガッ!

ドゴォオオオオン!!


重々しい音を立てて倒れるドラゴン! これはもう一方的じゃないか?

ドラゴンの攻撃はまるで当たらないか、当たっても効果無し、とか勝負になっていない気さえするわ。


ブレスがこっちにくると怖いから、土壁を10枚ぐらい重ねてトーチカの周りを囲っておこう。

気休めかも知れないが無いよりはいい気がする。


「「「アースウォール!」」」


これでよし。


さっきから見ていると足長の滞空時間が凄く長く感じるんだが。跳躍というより「飛翔」みたいなんだけど、あいつ空を飛べたのか? 気のせいかな? 


動きが激し過ぎてよく分からないところもあるが、足長が上から攻撃して、地面に叩きつけられたドラゴンを黒のゴーレムが下から攻撃しているみたいだ。


更にゴーレム達の攻撃は続く。もはやフルボッコ状態。ドラゴンがかわいそうになってきた。


ドラゴンはなおも暴れ続けているが、魔法攻撃もブレスもしなくなっている。

魔法攻撃をしないのは効果が無いと分かったからか、あるいはMPが残り少ないのかもしれない。

だが、ブレスもしないというのは?

こいつら、いつから戦っていたんだ?


周囲を見回して見る。大地が黒焦げだ。

これは複数回の「サンダーの痕跡」じゃないのか?

「ブレスで抉られた跡」もあちこちにある。

もしかしたら俺が起きるだいぶ前から戦っていたのか?

俺が見始めた時には既に戦いは終盤戦に入っている状態だったのかもしれない。


「ギャアアアアアア!」


足長の蹴りでまた地面に叩きつけられたドラゴンが悲鳴のような声を上げた。

今ので魔法防御が完全に失われているのが分かった。エフェクトが出なくなっていたからな。

体表が抉られ、血が撒き散らされている。

ここから更に攻撃を加え続ける必要がある筈だが、このドラゴン、相当弱っているぞ。

もう限界なんじゃないの?


2号機で更に近付く。

ゴーレム達はまだ攻撃を続けていてドラゴンは穴だらけにされている。

足長の鋭く尖った脚先がザクザクと体表を突き刺している!

黒のゴーレムのパイルバンカーが大きな穴を穿つ!


ドザァアアアアア!


足長に蹴り飛ばされて転がっていくドラゴン。もう勝負はついたんじゃないか?

トーチカの中を見る。シルヴィアもクレアもまだ寝ている。

外に比べればだいぶ音は小さくなるとはいえ、結構派手な音がしているのに起きないとは、2人は大物なのかな。

トーチカの外に出て、一応入り口は塞いでおく。

5号機に乗って土壁の上に登り、壁の上を移動してドラゴンに近付く。



ドラゴンは横たわった状態で動きを止めている。完全に倒したのか?

いや、まだ生きているな。

これだけ穴だらけにされてまだ生きているとは、さすがドラゴンというべきか。


頭の部分にゴーレム達がいる。足長は横になったドラゴンの頭の上、黒のゴーレムは顎の辺りにいて、いつでもパイルバンカーを撃てる体勢だ。


近くで見るドラゴンは体長30~35mぐらい、いつかのドラゴンと比べると半分? 3分の2ぐらいか。

全体は白銀色で所々に青と黒の差し色がある。

そして長大な「角」。角というか剣?

剣のようなド鋭い形をした角が2本、頭から前に突き出している。

凄く長い。10mぐらいあるんじゃないか? この角で攻撃しようとしている場面もあったな。

当然のようにかわされていたけど。


何となく、このドラゴンからは「若い」という印象を受ける。

理由は分からないけれど。


俺が近付くとそれまで閉じられていたドラゴンの眼が開いた。

俺を見ている。知性を感じさせる青い眼。

黒のゴーレムがグイッ、とドラゴンの顎に左手を突きつける。

何だろう、その「大人しくしろ」みたいな動き。

実際にドラゴンは大人しい。もう観念しました、みたいな態度。


ゴーレム達がとどめを刺さないのには何か理由があるのか?

……言葉が通じるのかな? 話をしてみるか?


「こんにちは。私はセシリアといいます。私の言葉は分かりますか?」


ドラゴンは俺を見ているがそれだけだ。どうやって意思の疎通を図ればいいのか?

確かに知性を感じさせる眼をしているのだが。


「私の言葉が分かるのなら目を2回、瞬きをしてください。瞬きって分かりますか?」


パチパチ。


2回の瞬き。通じた!


「人の言葉が分かる?」


パチパチ。


「では『はい』は2回、『いいえ』は3回の瞬きでお願いします。いいですか?」


パチパチ。


「少し私と話をしましょう」


パチパチ。


「ゴーレム達は私の仲間です。まだ私達と敵対する意思はありますか?」


パチパチパチ。


ふむ。ひとまずは安心、かな?


「戦いはあなたから仕掛けたのでしょう?」


パチパチ。


やはり。

空を飛んでいた筈のドラゴンにゴーレム達から攻撃を仕掛ける事ができたとは思えない。


「なぜ戦いを挑んだの? 『黒いゴーレム』の存在を知らないのですか?」


パチパチパチ。


ん? どういう意味? 「知っていた」と言う意味か?

魔法が効かず、魔法防御が意味を成さない黒いゴーレム達に戦いを挑むのは無謀だと思うのだが。

もう一度聞いてみよう。


「『黒いゴーレム』を知っていた、という意味?」


パチパチ。


マジか。

こいつ、無謀過ぎないか? ドラゴンにとってはそうでもないのか?

でもこいつ、フルボッコにされたんだけど。


「勝てると思ったの?」


パチパチパチ。


何でやねん。どういう意味なんだよ。


「えっと、勝てないと思ったのに挑戦したの?」


パチパチパチ。


意味が分からん……もしかして。


「『黒いゴーレム』とは分からずに攻撃した、という意味?」


パチパチ。


こいつアホか。どこからどう見ても「黒いゴーレム」にしか見えないだろうに。


「戦い始めてから『黒いゴーレム』だと分かった、で合っている?」


パチパチ。


うーむ。


「飛んで逃げようと思わなかったの?」


パチパチパチ。


ん? どっちの意味だ、これ? 聞き方が悪かったな。


「逃げるつもりはあった?」


パチパチ。


「逃げられなかった?」


パチパチ。


マジか。

ドラゴンを逃がさないとはどれだけ強いのか……まぁ、その強さは見ていたけど。



さて、どうしたものか。

何だかこのドラゴンの事、かわいそうで逆に可愛く見えてきたわ。

ちょっとバカっぽいところがあるように見えるし。


ゴーレム達が倒したのだから生殺与奪の権利はゴーレム達にあるのだが、どうするつもりなのか。

まだ生かしているという事は、完全に倒してしまう気はない、という事か?


「もう終わりでいいの?」


どちらも反応しない。どうするのか決めていないのか?


「とどめを刺す気が無いならこっちにきて」


足長も黒のゴーレムも俺の傍に来た。それでいいのか。


足長から「どうよ?」みたいな雰囲気を感じる。これは気のせいではないような。

俺に見せたかったとでも言わんばかり。マジか。

まさか、本当にドラゴン戦を見せられるとは! まさに狂気だわ。

これで絵を描けるだろう? という事か? そうなのか?


……まぁ、絵は描こう。

しかし、こいつらとはもっと十分に意思の疎通を図らねばなるまい。

初めて会ったドラゴンの方がよっぽど意思の疎通ができている気がするわ。


ドラゴンはぐったりしている。

さすがのドラゴンもこれだけ穴だらけにされて血を流しまくったら大丈夫という訳にはいかないか。

自業自得とはいえ、少しかわいそうだな。

絵を描いて欲しい、という足長の都合でボコボコにされていた感もある。治療してやるか。

ただし、


「あなたに治癒魔法を使ってもいいけど、治した後私達に敵対しない、攻撃しないというのが条件です。約束できますか?」


パチパチ。


ふむ、いいだろう。

ここには他に人間はいない。(シルヴィア達は寝ているし)

エクスヒールを使っても問題は無い。


「じゃあ使うよ? エクスヒール!」


しょわ・しょわ・しょわ・しょわ・しょわ・しょわ


細かい光の粒がドラゴンの体を覆うように少しづつ増えていく。

光の粒が全体を覆い尽くすと、体にあるたくさんの穴や抉り取られた跡が綺麗に治っていった。

破壊されて失われた前脚も新しく生えている。


MP 78/100


これだけ大きな体で1回のエクスヒールで足りるのか? もう1回やっとくか?


外見を見る限り傷は治っているようだが、流した血はかなりの量になる筈だ。

それはどうすればいいんだ? やはりもう1回かな?


「エクスヒール!」


光らない。必要無いという事か?


ドラゴンはゆっくりと体を起こして姿勢を正した。

こうして見ると格好良いドラゴンだな。ド鋭い角も広がった翼も迫力があっていいぞ!

でも以前ドラゴンを見た時のような恐怖は感じない。どうしてなんだろうな?


「お前は格好良い姿をしているね!」


ドラゴンに声をかけたが特に反応は無かった。高い位置から俺を見下ろしている。

ドラゴンには「格好良い」という概念は無いのかな?


「それじゃ私達は行くけど、お前も元気で。……できれば人を襲わないでくれると嬉しい」


ドラゴンにも自由はあるだろうが、頼むくらいはいいだろう。


「じゃあね」


ゴーレム達と一緒にトーチカに戻る。朝食の支度をしないと。


あぁ、足長から圧力を感じる。

「絵は?」みたいな雰囲気。そんなところだけ明確に伝えてくるなんて!

朝食の後に描くよ。

強烈だったからね、お前達の戦い振りは。


きっといい絵が描けるだろう。




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