新しい服
まだ何かを判断するタイミングではない。簡単に決められる事でもないし。
この町だけではなく、他の町にある施設を見るというのもありなんじゃないか?
もう少し時間をかけてもいいだろう。
「話を聞かせてくださってありがとうございます。どうすればいいかもう少し考えてみます」
「お役に立てず申し訳ありません」
「いいえ」
子供達の様子を見せてもらう。何かの勉強をしているみたい。
「今の時間は簡単な読み書きや計算の勉強をしています。もう少ししたら裏にある庭で遊ぶ時間です」
子供達は特に問題は無さそうに見える。
不健康だとか、痩せているという事もないし、表情も悪くない。
建物の中も清掃が行き届いている。
ここの職員はきっと子供達を大切に育てているのだろう。
しかし、何となく余裕を感じないのは話を聞いたからだろうか? みすぼらしいという事はないのだが、金銭的には苦しいのだろうか。
「町の人から寄付を受けているというお話でしたが、日々の生活には十分なのでしょうか?」
ぼかして聞いてみる。
「ええ、何とかやれています」
施設長の顔を見る……ギリギリなんだろうか?
とはいえ、俺もそれほど余裕は無い。特にお金に関しては!
これ以上聞いても何ができるという訳でもない……
子供達が裏庭へ移動し始めたのでついていく。
遊んでいる所を見たら帰ろうと思ったのだが、凄い見られている。ゴーレムが。
男の子達はゴーレムに関心がある様子。女の子達は狼に興味があるみたいだ。
「子供達と少し遊んでもいいですか?」
「ええ、どうぞ。お願いします」
子供達の方へ近付く。
「こんにちは。セシリアです。ゴーレムと一緒に遊んでもらえますか?」
「ゴーレム?」「怖くない?」
「大丈夫ですよ。お願いしていいですか?」
「「「いいよー」」」
子供達が早速ゴーレムに取り付く。凄い数! 何人いるんだ?
ゴーレムから降りていると目線が低くなるので、周りに背が高い子供が何人かいると様子がよく分からない。
隊長機と5号機の視覚を使って周りを見る。全員と上手く遊べるだろうか?
とりあえず子供を手で掴んで持ち上げてみる。
「うわー、すげー!」「力強いねー」「格好いい!」「きゃははは!」
ゴーレム2体で同時に4人。6回やれば男の子は全員持ち上げられるな。
女の子達は狼をチヤホヤしている。いつもの光景。狼も慣れたものである。
何回か男の子達を持ち上げたり、腕を水平に伸ばしてグルグル回転したりする。
女の子も何人か参加しに来た。狼を触りに行く男の子もいる。
まぁまぁ楽しんでくれたかな? ほどほどに交流して引き上げる。
帰る前に施設長と厨房に寄る。
「食べ物の寄付は可能でしょうか? 肉ならたくさんあります」
「それは大変ありがたいです」
「では、こちらを」
魔法袋からファングボアの肉を出す。100kgほど。
「肉の保管はどうされているのですか? 魔法袋ですか?」
「地下に保管庫があるので、そこで保管できます」
地下深くまで掘って、年中低温に保つ事ができる食料保管庫があるらしい。
地下深く、ってたぶん魔法じゃないかな? きっと土魔法に違いない!
施設長に別れの挨拶をして外に出る。一応もう1つの施設も見に行こう。
もう1つの施設でも話の内容は同じだった。ここにも肉を寄付しておく。
130kgぐらい。(こちらの方が人数が多かった)
そろそろシルヴィアが起きる頃合だ。ギルドに帰ろう。
ついでに市場に寄って挽肉を買っていくか。今日の夕食はハンバーグにしよう!
次の日は一日中シルヴィアと遊ぶ。
ボール遊びに挑戦したり、一緒に絵を描いたり、即興でお話を作って、描いた絵を見せながら紙芝居をしてみたり。
ギルドに泊まって3日目、調査結果が出た。
「女性の身元は分かりませんでした。この町の人間ではなく、近隣の村の出身でもないです。もっと遠い所からこの町にやって来る途中で病に倒れた、という事ではないでしょうか? 更に調査範囲を広げますか?」
「いいえ」
たぶん、見つかってもいい結果にはならないのだろう。
「どうされるのですか?」
「とりあえず、シオリスに戻ります」
「そうですか。分かりました」
まだ、判断がつかない。
「ここからシオリスまでどれぐらいかかりますか?」
「歩いて7日ほどです」
ゴーレムなら1日だな。いや、もっとゆっくりでいい。
小さな子供達がいるのだから。
「間に町はありますか?」
「ありますが、いわゆる宿場町なのでこの町やシオリスのような大きな町ではないです」
一応寄ってみるか。
「明日、町を出ます」
「分かりました。ヒュドラの代金については金額が確定次第、シオリスのギルドへ連絡します。支払い方法もその時のお話でよろしいでしょうか?」
「ええ」
部屋に戻る。
「しーちゃん、明日町を出るよ。シオリスという町へ行くんだ。みんな一緒だよ」
「……お母さんは?」
「お母さんも一緒だよ」
頷くシルヴィア。
旅に備えて新しい服を作ろう。シルヴィアの服を。
シルヴィアが今着ている服は生地が少し厚手なんだよね。もう少し薄い布で涼しい服に着替えた方がいいと思うんだ。
裁縫スキルで可愛いワンピースを作るぞ!
袖の部分は大きめにして、腰の部分に少し多めに布を集めてひだを作る。ギャザーというやつ。
上手くできたと思う。
シルヴィアに着てもらおうとしたら、服を脱ぐ事を嫌がる。どうして?
「お母さんの服」
……ああ、この服はお母さんに作ってもらった服なんだな。
「しーちゃん、服もお休みしないと疲れちゃうんだよ。今着ている服も少しお休みさせてあげようよ」
「また着る?」
「もちろんだよ」
服を脱ごうとするが上手くできない。ちょっとだけ手伝おう。
シルヴィアが新しい服を着てくれた。
「よく似合っているよ」
多少は喜んでくれているみたいだ。
「お母さんは?」
「ん?」
「お母さんもお休みしてるの?」
「……そうだね」
シルヴィアが着ていた服を見る。
所々補修の跡がある。丁寧な手縫いの跡。
親の愛情を感じる。
この服は魔法袋にしまっておくよ。
もう少し涼しい季節になったら、また着るといいよ。
……クレアの服も作らないと。可愛く作るよ!
服を作ってクレアに着せてみる。大変よろしいんじゃないでしょうか。
似合っているよ!
夕食を済ませてシルヴィアが寝た後、久しぶりにステータスを確認してみる。
SP 5
なぜ増えているのか、なんて事はもう考えない。
これで土魔法のレベルを上げられるぞ! と思ったら、
土魔法 Lv 5
既に上がっていた。結構使っていたからか?
レベルが上がる事自体は歓迎すべき事なんだけど、SPの使い方に悩むな……
温存するか、水魔法か治癒魔法に使うか、うーん、どうしよう?
最近忘れがちだったが、自分が治癒魔法使いであるが故に陥るかもしれない厄介事から自分自身を守る為に、あらゆる干渉を撥ね退けられるぐらいに強くなる必要がある。
そう、できれば「最強」と呼ばれるぐらいにまで強く。
でもその為に現状でできる事といえば、土魔法のレベルを上げる、ぐらいなんだが、そう考えるとやはりここはSPがあと1ポイント増える事を期待して温存すべきだろうか?
だがしかし、治癒魔法や水魔法のレベルも上げておいた方がいい、という気もするんだよな。なぜなのか。
水魔法の可能性も追求した方がいいのだろうか?
何か見落としているような気がするんだが。
考えないといけない事が多いな。SPの使い方については慎重にならないと……
翌朝、エマさんに見送られてマーヴィンの町を出る。
今回は子供連れだから寄り道しないで街道だけを走る! と言いたいところだが、やはり獣や魔物を倒してレベルを上げる事にもこれまで以上に積極的にならないと。
自分のレベルをもう少し上げておかないと困るわ。
レベルが「5」から全然上がっていないんだよなぁ。
HPが「50」というのはいかにもキツイ。制服頼りにも限界はあるだろう。
という訳で今回は多少の寄り道には寛容な精神でいこうじゃないか。
むしろ俺が寄り道したいわ。
またファングボアとか狩りたいなー、肉もだいぶ減ったし。
街道をゆっくり走る。ゆっくりでいこう!




