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異世界で『魔法幼女』になりました  作者: 藤咲ユージ
第1章 土の中の幼女
3/122

魔法が使えるようになったので魔物に挑んでみる

暗い穴の中で目が覚めた。穴を覆う板をずらして外に出る。


朝かな? 明るくなった小屋の中で自分の手を見る。小さな子供の手。

起きたら元に戻っていてやっぱり夢だったんだ! とか、そんな事は無かった。

認めざるを得ない……これは現実、俺は異世界で幼女になったんだ!


気持ちを切り替えて朝食をとる。梨モドキと水。

他の食材も探さないと、いつまでもこれだけという訳にはいかない。


ステータスを確認。


HP 30/30

MP 60/60


MPが60になっている。一晩寝ると回復するというのはとてもありがたいが、ではなぜHPは2だったんだ? 何か理由があるのだろうか。

……考えてもわからない事は後回しにしよう。


小屋の外へ出て、もう一度村の中を調べてみる。


廃屋の中や耕作放棄地の周り等を入念に調べた結果、いくつか入手できた物があった。

材質はよくわからないが、ナイフと鎌のような道具、大小ふたつの袋。竈の近くには火打石と火打金らしき物、そして薪もあった。


火口を用意して試しに火打石を使ってみると、想像以上にたくさんの火花が飛んで、まるでライターのように簡単に火をつける事ができた。


火打石って、もっと手間が掛かる物だったような気がするんだけど、この世界ではこれが普通なのか。

でもこれでお湯を沸かしたり、料理もできるかもしれない。

机や椅子もあった。




森へ行く前にもう少し魔法の練習をしたい。まずは地面に穴を掘る魔法だ。

穴を掘って、そこに魔物を落とす、みたいな。できるかな?

えーと、穴を掘る、落とし穴。穴はホールだよな……あれ? 『穴を掘る』って、英語で何て言うんだっけ。落とし穴は? ……思い出せない。


 何とか思い出そうと地面を見ながら穴を掘るイメージを思い浮かべていたら、


ぽこっ。


 ぽっかりと地面に穴が開いた。おや? 魔法名を言ってないのに魔法が発動したぞ? イメージだけでいいのか?

 もう一度試してみる。


ぽこっ。


 やはり、イメージしただけで穴ができた。魔法名なんていらなかったんや!

 ……でも、魔法名を叫ぶ方が格好いいよな?


 穴の大きさは直径1mぐらいの円形で、深さも1mぐらいだった。

 同じ穴に魔法を繰り返し掛けるとどうなるか試してみると、穴を大きくしたり深くする事ができた。『重ね掛け』だな。


 この魔法も土槍や土壁と同じぐらい早いし、これなら戦闘で使えるかもしれない。土壁で足を引っ掛けるより深い穴に落とす方がいいかも。その穴の底に土槍を設置しておけば……上手くいくかな? 機会があれば試してみたい。


 次に、土を固めて『弾』を作って撃つ魔法を試してみよう。

 土と言うよりは石かな? 固さとしては石ではなく鋼鉄ぐらいの硬度があるといいのだが。イメージイメージ……よし。


「ストーンバレット!」


 弾のような物が土から作成されて空中に浮かび、標的にした家の壁を撃ち抜く。威力は申し分ないが、少し時間が掛かる。

 遠距離攻撃なら使ってもいいけど、近距離なら土槍の方がいい。

 どの魔法も1回につき消費MPは1だった。わかりやすくていいな。




 袋に昼食の梨モドキとナイフ、鎌を入れて森へ向けて歩く。

 昨日ゴブリンと遭遇した辺りまで慎重に近付いていく。


 ゴブリンはいなかった。他の魔物もいない。他にも魔物はいるのだろうか? いるんだろうな、たぶん。

 木に登って魔物がやってくるのを待つ事にする。




 木の上で梨モドキを食べながら待ち続けていると、昼近くになってようやく何かが近付いてくる気配がした。


 現れたのは猪みたいな獣だった。かなり大きい! 2mぐらいあるぞ!?


 そいつはゆっくりと歩いて来ると、近くの木の根元を掘り返し始めた。何かあるのかな?

 何にせよ、獲物と考えていいだろう。肉を確保したいところだ。

 何の恨みも無いが、我が土槍の餌食となるがいい。

 木の上から魔法を放つ!


「アースランス!」


 その獣の首の下辺りの地面から発動するようにイメージしながら放った魔法は、狙い通りに首と前足を貫く!

 『猪モドキ』は悲鳴のような声を上げて暴れるが、土槍から首を抜く事はできずに串刺し状態のまま……やがて動きを止めた。


 おぉ! やったぜ、大量の肉をゲットだ! こんなに簡単に仕留められるとは! ……食べられる肉だといいな。


 下に降りて成果を確認する。間近で見る猪モドキは巨大で恐ろしくもあるが、本当に恐ろしいのはこんな巨大な獣をあっさりと仕留める魔法の力だ。


『魔物』がいるこの世界でも、魔法を上手く使いこなす事ができれば、幼女の俺でも生き延びられるんじゃないだろうか。

 その前に、まずは食料だ。こいつを処理しなければ。


 土槍を解除して首の下辺りの地面に土魔法で穴を掘る。これで木に吊り下げなくても血抜きができる。後は解体だが……ん?

 何かが近付いてくる気配。これは、昨日と同じ声! ゴブリンか!?

 俺は素早く木に登り、息を潜める。


 やがて現れたのは……やはりゴブリンだった。3体いる。

 昨日と同じやつらだろうか? 持っている武器も同じだった。


 ゴブリン達は倒れている猪モドキを見て興奮しているように見える。

 獲物が楽に手に入った、とでも思っているのだろう。だがそいつを倒したやつがいる、という事には思い至らないのか?

 猪モドキの前で動きが止まっている今なら外す事はない!


「アースランス!」


 3体のゴブリンへ3つの土槍を放つ!

 合計9本の土槍に貫かれたゴブリン達は、僅かな悲鳴を上げただけですぐに動きを止めた。


 下へ降りて慎重に近付く。

 近くで見るゴブリンは人の形に似てはいるが、見た目が凶悪過ぎるせいか、『殺した』という罪悪感は無かった。猪モドキと同じだ。グロくてちょっと怖かったけど。

 土槍を解除して同じ場所に土魔法で穴を掘り、ゴブリン達を埋める。


 大成功だ! 土魔法は動きを止めている相手なら、かなり使えるんじゃないか? なかなか頼りになるな。


 ついでに猪モドキが掘り返していた土の中を確認してみると、トリュフに似た匂いがする黒い塊があった。価値があるかもしれないので持ち帰る事にしよう。


 さて、次は猪モドキを解体しなければ!


 俺は食肉センターで牛や豚の解体を何度も見学しているのでやり方は知っているのだが、実際にやるのは今回が初めてだ。しかも、今は幼女の体になっている……体力の方は治癒魔法で何とかなるかもしれないが、腕力はどうかな? でもやるしかない。


 拾ったナイフを猪モドキの足首に押し当てて切れ味を試してみる。

 おっ? スパッ、と切れるな。これならいけるかも。




 何度も治癒魔法を使って体を回復させながら何とかやり遂げた頃には夕方近くになっていた。

 ゴブリンを倒すより猪モドキを解体する方がよっぽど苦労したわ。

 解体処理の過程や終わった後で汚れた自分の体を洗うのに水魔法が便利だった。


 解体している時、他の魔物や獣が血の臭いに引き寄せられてやって来るんじゃないかと期待したのだが、残念ながら現れなかった。


 大量の肉を一度には運べないから袋に入れて何回かに分けて運ぼうと思ったのだが、森から村まで往復で1時間ぐらいかかるし、もう暗くなりかけている。

 さすがに夜、森の中にいたくはない。全部運ぶのは諦めた。

 

 ふぅ。今日は魔法を使って魔物を倒す事ができたし、肉も手に入れた。上出来ではないだろうか。

 頑張ったよ、幼女の俺!


 梨モドキと水で夕食を済ませると穴の中に入ってすぐに寝た。明日もいい日になるといいな。

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― 新着の感想 ―
[一言] >名前を考えたが「アースホール」はヤバいスラングに似ているので使いたくない。 普通にPitfallとかPitで良いと思う むしろearth holeと言う英語はあるんだろうかw
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