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異世界で『魔法幼女』になりました  作者: 藤咲ユージ
第3章 旅する幼女
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旅行ですか? いいえ

る気満々のヒュドラ。


もしかして、休んでいる所を邪魔されて怒ったのか?

それなら、俺達今すぐ立ち去るから……


狼や黒いゴーレムの方を見る。


狼もる気満々だ! 低い姿勢で構えている!

なぜにお前はウェイト差を考えないのか!

大きさが違い過ぎるでしょう? 自重して!


黒のゴーレムを見ると目の色がいつもは優しい青色なのに、今は赤く光っている!

こちらもる気に満ちているご様子!

どうしてそんなに好戦的なのか!


「「「グォアアアアアアアア!」」」


ヒュドラの咆哮!

呼応するように狼が突っ込んでいく! ちょっ、待てよ!


ヒュドラの真ん中の首が一段と高く持ち上がると、その口が大きく開かれた。

まさかっ!?

とっさに3号機を左へ走らせる。


「ジャッ!」


ズシャッ!! ドゴォオオオ!!


森を大きく削り取るブレス! やはりか! 狼は!?


狼は大きく右へかわしていた。ヒュドラの後ろへ回り込もうとしている!


狼に気を取られているヒュドラ。

そこへ黒のゴーレムが突進していく!


左の頭が黒のゴーレムに気付いた!

黒のゴーレムを睨み付けるような目で見たヒュドラが口を開く。またブレスか!?


ガッシャアアアアアア!!


轟音と共に閃光が落ちる! これはサンダー!!

こいつ魔法を使うのか! 俺の目がぁあああ!


「ヒール!」


はぁ、はぁ、はぁ……そうだ! 黒のゴーレムは!? サンダーの直撃を食らってないか!? 食らって……いないのか?


黒のゴーレムは健在だった。

ヒュドラの下腹部に左ストレートを叩き込んでいる!


ドカッ!


「ガアアアア!?」


叫ぶヒュドラ! 再びサンダーが落ちる!


ガッシャアアアアアア!!


ぐはっ! また目が!


「ヒール!」


今のは間違いなく直撃していたぞ? だが黒のゴーレムは平然としている!

これが魔法無効という事なのか!


グシャッ!


次は右手による攻撃! 黒のゴーレムの指が何か、刃物のような? 形状になっている。

その指でヒュドラのボディを抉るように切り付けて、鮮血と肉片を撒き散らしている!


今、ヒュドラの体表に何か魔法のようなエフェクトが見えたが、あれは魔法防御?

だが黒のゴーレムの攻撃を全く防げていない。

自分が攻撃する時も相手の魔法を無効にできるのか? 強過ぎるだろう?


「ギャァアアアアアア!」


悲鳴のような声を上げるヒュドラ。


黒のゴーレムは高々と舞い上がり、ヒュドラの中央の頭、大きく口を開けたその中に左手を突き入れると、


ドシュッ!!!


何か出た! 

ヒュドラの頭、後頭部辺りから何か黒くて長い、槍のような物が……

あれは槍というより、杭だな。槍というには太過ぎる。

そんな杭が突き出している!

あれは、「パイルバンカー」!?

マジか! そんな武器まで!?


軽やかに着地する黒のゴーレム。

そこへ左右の首が口を広げ、噛み砕かんとするような勢いで迫る!

だが、


グシャッ!


黒のゴーレムは左右の手をそれぞれ両サイドのヒュドラの口の中に突き入れると、


ドシュッ!


パイルバンカー!! 後頭部へと突き抜ける黒い杭!


「「ギャアアアアアア!!」」


絶叫を上げたヒュドラの体が前のめりに倒れていく。


ドスゥゥン!


地響きを轟かせて倒れ伏すヒュドラ!


黒ゴーレムTUEEEE! 強過ぎるわ!



ビクビクと痙攣しているヒュドラの体。

それをビクビクしながら見ている俺。


倒したんだよな? でもすぐには近付きたくない。

そうだ、他のゴーレムはどうなった?

とっさに3号機は動かす事ができたが、同時に2号機と隊長機を動かすのは無理だった。

たぶん、ブレスにやられてしまった筈……ブレスに抉られた方を見る。


2体が転がっている。あれ? 原形を留めているぞ?

動かしてみる。

普通に動くぞ。なんて頑丈! 凄いな!


近くまで寄せてみると原形を留めるどころか無傷だった。汚れているだけ。

むぅ、土ゴーレムはヒュドラのブレスに耐えるのか。これは凄いのではないだろうか?


「上手く動かせなくてゴメンな?」


土ゴーレム達を洗浄の魔法で綺麗にする。


しゅわしゅわしゅわ。



そろそろいいだろうか?

ヒュドラの様子を窺いながらゆっくりと近付いていく。


間近で見るヒュドラは凶悪なんてものじゃないな、恐怖そのもの、といった感じ。

よくこんなものに突っ込んで行くよなぁ。キミ達。

血の気が多過ぎない? 


黒のゴーレムは平然とした佇まい。

まるで、


「またつまらぬ物を斬ってしまった」


と言わんばかり! まぁ斬ってはいないけど。突いてるよね。ドシュッと。


「またつまらぬ物を突いてしまった」


今一だな。おっと黒のゴーレムを労わねば!


「お疲れ! 凄く強いね! 感動した!」


黒のゴーレムはいつもの青い目で俺を見返してくる。

むっ、ボディがヒュドラの返り血で汚れているな。洗浄の魔法で綺麗にしてやらねば。


しゅわしゅわしゅわ。


綺麗になった。黒のゴーレムもどことなく満足そう。


「倒してくれてありがとう」


黒のゴーレムは静かに佇んでいる。



狼がじっとヒュドラを見ている。

その目……俺が肉を焼いている時に肉を見る目だよね。

食べられるのか? ヒュドラの肉って。


ヒュドラの巨体を見る。これを解体できるかな?

いつものナイフを取り出してヒュドラの首に突き立ててみる。


グイッ。


全く刺さらない。切れないぞ?


ガシガシ切ろうとしたが全く切れない。ダメだ。どれだけ固いんだよ。これ。

そうだ! 魔法を試してみよう。


「アースランス!」


ドスッ!


……刺さるな。魔法防御を失ったドラゴンと同程度か?

だがそれが分かった所で役には立たないな。土槍で解体はできないし。


そうだ! 黒のゴーレムなら切れるんじゃね?

指を刃物みたいな形にしていたから、きっとできる筈だ。


「ちょっと頼みたい事があるんだけど」


まずは刃物のように変形した手を見せてもらおう。


「さっきの刃物みたいな手を見たい」


自分のナイフを示しつつ、身振りを交えて頼んでみる。

黒のゴーレムは指を刃物状に変形させてくれた。


「うへぇ……」


思わず声が出る。何て物騒な形!

大きくて黒光りする包丁のような形。刃の部分は紙のように薄い。

こんな薄くてよく強度が保てるな。凄い切れそう!


次に、解体について身振り手振りで伝えてみた。

そう、パントマイムのように!


「つまり、こうしてこうしてこのように……」


大雑把ではあるが、何とか伝わっただろうか?


「こんな感じでヒュドラを解体して欲しいのだけど」


黒のゴーレムを見る。

おお、何となく伝わっている気がする!


「では、お願いします!」


ヒュドラに近付いて左腕を構える黒のゴーレム。ん? 構える?


ドシュッ!


パイルバンカー!


ヒュドラの首に大きな穴が穿たれる! 飛び散る鮮血と肉片!!

その黒い杭、掌の真ん中から出ているんだな。

明らかに腕の長さより長く見えるのだが、一体どういう仕組みなんだ?


いや、違う。間違っている。いろいろ間違っているわ。


とりあえず、黒のゴーレムにそれ以上杭を撃たないように頼む。

ボディがまた汚れたので洗浄の魔法をかけてやる。


しゅわしゅわしゅわ。



だくだくだくだく。


黒のゴーレムの一撃で開いた穴から血が流れている。

血抜きするの忘れてたわ。

3つの首の下の地面に穴を開ける。ヒュドラはデカいから深い穴がいいよな。

重ね掛けをして深さを2mにする。

水魔法で血抜きを始めるが、


だくだくだくだく。だくだくだく。


滝のように流れる血の量が多過ぎぃ! もう穴から溢れそう!


だくだくだく。だくだくだく。


ダメだ、深さが足りない。もう一度重ね掛け! ん?


穴を覗き込んで見ると明らかに深い。3mではないような? これ、4mじゃないのか?

血が明らかに深く沈みこんでいる。

何かおかしいような気がするな。

もう一度重ね掛けをする。


穴の深さは更に深くなって血が遠くに感じる。見え難くなるほどだ。

これ何メートル? 7~8mじゃないか?

つまり、


1→2→4→8


こう?

消費MPは全て1なのに、なぜ倍々になっているんだ?

……考えても分からん。誰かに教えてもらわないと。

さすがにこの深さなら足りるだろう……足りるよな?


血抜きはとりあえずこれでいいとして、次は解体の件だが、パントマイムで伝えるというのは無理があったと言わざるをえない。

たぶん、俺が下手だったのだろう。伝わったと思ったのは錯覚だった。


そもそも黒のゴーレムは何も食べないのだから、「解体」なんてしないのかもしれない。必要ないだろうからな。

実際の解体作業を見る機会があればそれを見てやってくれるかもしれないが、今は無理だな。


魔法袋に入れて運ぶか……入るかな? このサイズが入るだろうか?

ギルドの魔法袋はもっと大きなドラゴンが入ったけど、あれは50億もする袋だからなぁ。


魔法袋を取り出して試してみる。

ダメだ、入らない。

中に入れていた土ゴーレムを全部出してもう1度試す。

ダメだ。

このサイズは無理、という事だな。残念。


このヒュドラを諦めるのは惜しいなぁ、何とかならないものか?

ヒュドラの前で考え込んでいると、スッ、と黒のゴーレムが近寄ってきた。ん?


黒のゴーレムがおもむろに左腕をヒュドラに伸ばすと、


フッ。


ヒュドラが消えた! 何!?

巨大なヒュドラが一瞬で消えてしまった! 今の何!?


跡形も無い……まさか、消してしまったのか? 何のスキル!?

いや、何のスキルかなんてどうでもいい!

なぜ消したのか!? 売れたかもしれないのに!!


「どうして消してしまったのぉ!? 勿体無いでしょ!? ああぁ……」


嘆く俺。

黒のゴーレムがまた左腕を伸ばすと、


フッ。


ヒュドラが現れた! 何だとぅ!?


目の前に現れた巨大なヒュドラ。

これはもしかして、「アイテムボックス」というやつでは?

いや、「ボックス」どころではないな。

大きな倉庫のような、あれだ、「ウェアハウス」?


響きがどうも魔法らしくないな。「収納魔法」でいいか。

魔法を無効にするだけではなく、魔法を使う事もできるとは!

もう黒のゴーレムが主役でいいんじゃないかな?



さて、このような人外魔境に長居は無用である。速やかに文明圏に復帰しなければ!


再度、狼に人のいる所へ案内して欲しいと頼む。狼だけが頼りなんだよ!

ん? もしかして、黒のゴーレムにも頼んでみるべき?


主役級の黒のゴーレムなら、道案内もできるかもしれない!


「どうだろう? 人のいる所まで道案内をお願いしてもいいかな?」


狼と黒のゴーレムが並んで歩き出した! おお! 今度はいけそうな予感!



森の中を進む。

その間何度もファングボアが襲ってくる。この森は連中の影が濃い。

大体は黒のゴーレムが片付けてしまう。既に6頭も倒している。

全て瞬殺。

突進してくるファングボアを右手で受け止めて、左手でぐさっ、と首を一突きして終わり。

大変お強いですね。


俺も土ゴーレムを使って1頭だけ倒す事ができた。

黒のゴーレムと同じ事はできないが、まぁまぁの出来だ。

複数制御もだいぶ慣れてきた。


全部で7頭。この数を解体するのはキツいな。

どこか近くに村でもあれば、そこに寄って村の人に解体をお願いしてみよう。

内臓や肉の一部を解体料として提供すればいいんじゃないかな。



更に森の中を1日歩いて、ようやく森の外、道のある所へ出た。

ついに文明圏へ戻ってきた!


ありがとう! 狼と黒のゴーレム!




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