黒いゴーレム
えへ、来ちゃった(はぁと)
そんな声が聞こえてきそう。
朝、目を覚まして穴の中から顔を出したら目の前に黒いゴーレムがいた。
爽やかな朝、勤労の1日の始まり。
小脇に土ゴーレムを抱えた黒いゴーレムと俺は見つめ合っていた。
これは夢か? どうなっているのか。
見つめ合う俺達。
とりあえず、ジュディえもんに相談するか……
ソードダンジョンからシオリスの町へ帰ってきた。
俺は疲れていたので、ギルドで出迎えてくれた狼を存分にもふって干し肉を与えた後、ギルドの裏に行って地面に穴を開けてすぐに寝る事にした。
土の穴の中で狼と眠る。夢は見なかった。
そして翌朝、穴から顔を出したら黒いゴーレムがいた。
朝日を浴びながら、でもどこか、くすんで見える黒いゴーレム。
こいつ、何か汚れていないか?
青い目と見つめ合う……ずっと見つめ合っていてもしょうがないわ。
穴から出てゴーレム達の前に立つ。土ゴーレムはどうなっているんだ?
土ゴーレムを見る。動かせるな、これ。
土ゴーレムの制御を取り戻す。
少し体を動かしてみると、黒いゴーレムが手を離した。
ドテッ。
下に落ちた土ゴーレムを立たせて、さらに動かしてみる。
問題無く動く。
黒いゴーレムは土ゴーレムを見た後、また俺を見た。
さて、とりあえずジュディの所に……
「どういう事かしら?」
ジュディが来ていた。ビシッとした制服姿で。
「おはよう、ジュディ。朝から仕事熱心だね!」
「おはようセシリア。どういう事かしら?」
ジュディがキレ気味。何で俺に怒っている風なの?
「私に言われましても。朝起きたらいたんだけど」
「どういう事かしら?」
「私に言われましても」
知らんがな。こっちが聞きたいわ。
「ど・う・い・う・事かしら?」
そんなキレ気味に言われましても!
「私が連れてきた訳じゃないし。知ってるでしょう?」
皆で一緒に帰ってきたでしょう? 黒いゴーレムなんていなかったでしょう?
俺が連れてきた訳じゃない!
ジュディの前で並んでいる俺達。
何この学校で先生の前で怒られているみたいな構図。
「返してきなさい」
「冗談だろ?」
何その拾ってきた猫を元の場所へ返してきなさい、みたいな言い方!
「このゴーレム、どうやって町に入ったのかしら?」
「門からじゃね?」
「冗談でしょう?」
じゃあどこからだよ。壁登ったのか? この体で? 土ゴーレム抱えて?
こいつ、ボルダリング世界チャンピオンになれるんじゃね?
「門からは何の連絡も入っていないし、異常も起きていないわ。そもそも黒の魔物を中に入れる訳がないでしょう?」
「私に言われましても。ジュディはいつ黒いゴーレムに気が付いたんだ?」
まだ呼びに行ってなかったのに。
「ついさっきよ。隠密から連絡があったの。ここに黒いゴーレムがいると」
「もしかして、隠密ってずっと私を見張っているの?」
「そうよ」
「一日中?」
「そうよ」
「なにそれ怖い」
凄まじいほどのブラック! 休みは無いのか! 一日中って!
極黒! 濁りなき黒!! 極黒のブラックギルド!!!
「どうか休みを与えてあげてください」(震え声)
「交替で見ているに決まっているでしょう?」
そうなのか。俺の交代はいつ来るんだ?
「そんな事今はどうでもいいわ。これをどうするのか考えないと」
俺の交代の件はどうでもいい話などではないが、それはともかく、
「どうすると言うの?」
どうにもできないんじゃないのこれ。
「……今、考えているわ」
今更だけど、ジュディは度胸があるな。
黒いゴーレムのすぐ近くまで来ているけど、怖くないのか?
「とりあえず、このゴーレムの気を引いておいて欲しいのだけれど」
「気を引く、ねぇ……」
ラジオ体操でもするか。毎朝の日課だし。
セシリアの健康の為にも欠かさずしておかないと!
「ちゃんちゃんちゃらっちゃっらちゃ! いち、にっ、さん、し! ごーろく、しっちはっち!」
土ゴーレムにも体操をさせる。
「うでをまわしまぁす!」
一緒にラジオ体操をする。
「それは何かしら?」
「ラジオ体操。知らないの?」
「あなたが毎朝おかしな動きをしている、という報告はあったけどそれは何の意味があるの?」
「体の健康に良い、という意味がある」
「……そう」
黒いゴーレムは俺と土ゴーレムの体操をじっと見ている。
ちゃんと気を引いているぞ!
「腕を振って体をねじります!」
おや? 黒いゴーレムが動きを真似し始めたぞ?
「斜め後ろに大きく!」
ビシュッ! ビシュッ!
何てキレのいい腕の振り!
あの腕に当たったら命無いんじゃね? ちょっと距離をとるか……
ちょっとだけ離れる。
黒いゴーレムの動きが良くなっているような。
「ちょっといいかしら?」
「何?」
ビシッ! ビシッ!!
「危険な気がするのだけど」
「私に言われましても」
黒いゴーレムに言えよ。
「体操をやめる? 気を引けなくなるかもしれないけど」
「……」
何か言えよ。
長い腕を振り回す黒いゴーレム。
ブゥワッ! ブゥワッ!
ラジオ体操が終わった。いい汗かいたわ! 次は朝食だ!
「今から朝食をとるんだけど、ジュディも食べる? ステーキ焼く? 何枚?」
「あまり食欲がないから、2枚でいいわ」
それが! 朝からステーキを食べる女の言う事か!
食欲が無いんだって。使い方が間違っているわ。
竈を作り、いつもの下準備。野菜スープも作っちゃうんだぜ。
じゅうじゅうじゅう。
ステーキを焼く。見つめる狼。見つめる黒いゴーレム。
まさか……黒いゴーレムも食べるの?
食べませんでした。見ーてーるーだーけー。
ゴーレム達に見つめられながら朝食をとる。
ジュディは度胸あり過ぎじゃないの? 平気そうに食べているけど。
「セシリア、あなた怖くないの? 平気そうだけど。度胸があるのね」
「ジュディに言われたくないわ」
だって魔法使いなんですもの。どうしようもないだろ。
黒いゴーレムがその気ならもうとっくに終わってるだろ、俺達。
ステーキを食べ終えたジュディは足早に立ち去っていった。
忙しいらしい。働き者だねー。
ジュディがどうする気なのかは分からないが、俺はどうしようかな?
黒いゴーレムを見る。
そういえば、何か汚れていたな。こいつ。
「今から魔法を使う。攻撃じゃないよ?」
黒いゴーレムに声をかけて、まずは自分に洗浄魔法を使う。
しゅわしゅわしゅわ。
次は土ゴーレムに。
しゅわしゅわしゅわ。
綺麗になったわ。黒いゴーレムはじっと見ている。
「今からお前に洗浄の魔法を使う。攻撃じゃないよ?」
しゅわしゅわしゅわ。
洗浄して水分を飛ばす。成功だ!
黒光りするボディ。綺麗になった。やはりこいつは格好良いわ!
次はどうしようかな? 遊ぶか。
どうせ朝は客は来ないし。
黒いゴーレムの相手をしてやらないと。
土を固めてボールを作る。サッカーボールぐらいの大きさ。
土ゴーレムに蹴らせてみる。
ゲシッ!
ゴロゴロゴロゴロ。
いい感じだ。
土ゴーレムと向かい合ってパスの練習をしてみよう。
土ゴーレムに蹴らせる。
ゴロゴロゴロゴロ。
転がってきたボールを蹴り返してみる。
ゲシッ!
「痛ってぇえええええええ!」
ゴロゴロゴロゴロ!
足を抱えて転がる俺! 超痛い!!
「ヒール!」
ぽやん。
「はぁ、はぁ、はぁ」
何てバカな俺! なぜ忘れていたんだ?
ゴーレムが蹴っても壊れないようにガッチガチに固めるイメージで作っておいて、その強度を忘れるとは!
「はぁ、はぁ、はぁ」
ボールはどこにいった?
黒いゴーレムの近くにあった。
何だろう? 黒ゴーレムから嘲笑の気配が……きっと気のせい。
自分で蹴るのは危険だ。もう1体ゴーレムを作ってそいつにやらせよう。
次はどんなゴーレムにしようかな? 次もモビルな感じでいこう。
今度は隊長機な感じで、ずごっくでEな感じ。
「クリエイトゴーレム!」
もこもこ。
完成!
パーフェクトな隊長機! 色はグレー。
2号機と名付けよう。
1号機と2号機を向かい合わせにしてパスの練習をする。
ゲシッ!
ドカッ!
パス交換とは思えない音。だがいい感じだ!
ゲシッ!
ドカッ!
2体を同時に動かす事ができる。
これ何体までできるのかな? 試すか?
ゲシッ!
ドカッ!
おや? 黒いゴーレムが仲間になりたそうな目でこちらを見ている。
いいとも! 一緒にやろうじゃないか!
3体で三角形をつくってパス回しをする。
ドカッ!
ゲシッ!
ガシッ!
ボールが回る。
ゴロゴロゴロゴロ。
いい感じだ! 上手いじゃないか、黒いゴーレム!
ゴロゴロゴロゴロ。
ドガァンッッ!
あっ、やっべ! 強く蹴り過ぎた! 土ボールがぶっ飛んでいく!
ドゴンッ!
……やってしまった。ギルドの建物の壁に思いっきり穴が!
どうしよう?




