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ソード・ダンジョン 第2層 → 第3層

「あれはどうすればいい?」


「ハミルにお任せよ」


「届かないんじゃね?」


ソード・ダンジョン 第2層


その中で俺達、違った。私達は塔を見上げていた。正確には塔の壁面。

塔の上高く、壁面部分に張り付いている魔物を。



もうこの世界の主人公はハミルでいいんじゃないかな?

そう思えるほどにハミル無双が続く。


数多の水棲の魔物達を鎧袖一触。

巨大なサメ型もウミヘビ型もイソギンチャクのような魔物も全て一撃!

私達はそれを見てるだけ。何かやる事ないかな?


水魔法 Lv 2


私には水魔法があるんだけど、攻撃に使うイメージが湧かない。

ここには腐るほど水があるけど、何かできないかな?


「ソラァア! ソラァア!!」


ドシュッ!


「ジュディさん」


「……何かしら」


「ここの水を使った攻撃的な魔法について、何か良いアイデアはないかな? 自分では思いつかなくて」


「ここの水は魔物以外を拒絶するのよ。説明したでしょう? この水を利用する事はできないわ。水魔法を使いたいのなら自分で水を出せばいいわ」


「そうなの?」


単に入れないだけでなく、動かす事もできないのか?


「ちょっと試してみたいんだけど、MP使っていい? 1ポイントだけ、1ポイントだけだから!」


「……いいわよ」


よし! この水面から水を吸い上げてウォーターボールを生成してみよう。


「ウォーターボール!」


スッ。


静かに水面からウォーターボールが浮き上がってきた。

成功! 簡単だな。


「まさか」


ジュディが驚愕の表情で呟いている。どうした?


水を使って攻撃するにしても、その前にSPを使って水魔法のレベルを上げておいた方がいいかな?


スキルポイント 4


4? 4だと!? いつ4になった!?

ずっと3だったろ? ポイントを得られるような事はしていないだろう?


魔物を倒す機会がなくてずっと3だったのに!


「どうしたの?」


「それはこっちのセリフなんだが」


しまったつい男言葉が。

ジュディはとりあえず放っておいて、このSP、どうするか。


4あれば土魔法をレベル4に上げる事ができる。


この第2層では出番がないが、こんな特殊なダンジョンはそういくつもないだろう。

仮にあったとしても、どうせ俺は当分の間ダンジョンには入れない。

ならば上げるべきは水魔法ではなく、土魔法だ!

ポチっとな!


土魔法 Lv 4


よし! このレベルで何ができるか早速試す……だめだ。

たった今1ポイントだけって頼んだばかりだ。さらに使わせてくれとは言い難い。


イメージトレーニングにしておくか……どうせ土無いし。


「セィヤー! セィヤー!」


ドッシュゥッ!!



ヘレンに背負われながら考える。

ふぅむ……背負う? 

閃いた! 「ゴーレム」だ! ゴーレムをつくろう!


ゴーレムを作って背負ってもらうというのはいい考えじゃね?

自分で歩かなければ体力を温存できる上に移動速度を速くする事ができる。

もちろん攻撃も、俺を守る壁役もできるだろう!

これは我ながらナイスな着眼点! 


なぜもっと早く気が付かなかったのか! 俺のバカバカ! 

土魔法といえばゴーレムだろうに!

……ここでは試せないな。土無いし。


「ドッセイヤァー!!」


ドシュッ!



塔に着いた。


「塔」といっても外観は真っ白で窓が無く、装飾も無いただの円柱のようだ。

入り口が一つだけぽっかりと口を開けている。扉すら無い。

見上げても雲に隠れて頂点が見えない。どんだけ高いのか。

塔の直径はたぶん50mぐらい。かなりデカい。


「この塔は第1層に繋がっているの?」


「いいえ」


「上には何が?」


「この塔もダンジョンの一部で、中は魔物がいるけど上に行くほど弱くなるのよ。私達は下へ行くから関係ないわ」


「つまり、この塔の1階が第3層への入り口?」


「そうよ」


という訳で早速中へ入ろうとしたのだが。


ビシュッ! ビシュッ! ビシュッ! 


塔の壁面、入り口の上のかなり高い位置に張り付いた魔物が上から攻撃してくる。


ヤモリとウニが合体したような姿で棘のような物を打ち出しているんだが、これが結構な勢いで水面に突き刺さって飲み込まれていく。


「近づけないわ」


「そうね」


「あれはどうすればいい?」


「ハミルにお任せよ」


「届かないんじゃね?」


魔物がいる所まで300mぐらいあるんじゃないだろうか?

どうみても槍の届く距離じゃないだろう?


「どうやら俺様の出番のようだな」


「気は確かか?」


ずっとお前の出番しかなかっただろ! 本当に何を言っているのか。


「どうやって攻撃を?」


「お前達は運がいい。俺様の必殺技を見る事ができるんだからな」


「へぇ」


どうせ間違った技名を叫ぶだけだろ? マジどうするんだよ?


ハミルが構える。

おや? 今までとは違う構え。

まぁ上を狙うなら当然かもしれないが。


「いくぜっ! 必殺の! ボルッ!! ダリングッ!!!」


「何だとう!?」


ズッシャァアアア!!!


鋭く放たれた長大な槍が矢のように上へと突き進む!


ブホッツ!!


「シャァアアアア!?」


胴体の真ん中に槍が突き刺さった魔物が絶叫し、衝撃で体の表面にあった大量の棘々がバラバラに飛び散っていく!

そして撒き散らされる魔物の血が! 汚い花火だぜ!!


「見たか! 我が必殺技の力!」


「ああ、スゲェな……」


よくあの高さまで飛ぶなぁ。威力も申し分ない。

必殺技というだけの事はあるな。


「見事ですね! ハミル! 素晴らしい技ですね!」


「そうか、分かるか! お前は見所があるぞ!」


「そして技名も素敵です! ボルダリング!」


正直ナメていたわ。お前のセンス。

壁面に張り付いている魔物を倒す為に使う技の名が「ボルダリング」とは!

きっとクライマーも感涙しているわ。


「あ? 間違っているぞ? セシリア」


「え?」


「技名は『ボルッ! ダリングッ!!』だ。ぼるだりんぐじゃねぇ。大事な事だ、間違えないでくれ」


「そ、そう……」



「間違っているぞ」

世界の誰よりも、お前にだけは言われたくないわ。



魔物ごと壁面を深く抉っていた槍がいつの間にかハミルの手元に戻っている。


「それは?」


「こいつは『魔法具』だからな。どんなに遠くへ投げても必ず俺の所へ戻ってくるのさ」


「へぇ」


ま! ほうぐ! ですね分かりました。


「無駄話はそれぐらいにして。先へ行くわよ」


「了解だぜ」


「……はい」


さっさと中へ入っていくメンバー達。

次は第3層。ようやく目的地だ。



「第3層は第1層と似たような構造をしているの」


「とてもそうは見えないんですけど」


第3層は色彩が爆発していた。


「サイケデリック」で検索すれば、きっと最初のページにこのダンジョンの内部について書かれたサイトがあるに違いない。

異世界インターネット。無いか。


たくさんの色で塗りたくられた内部。何か距離感が狂うんですけど。


「歩き難いです」


視覚的に。


「あなたは歩いていないじゃない」


「気分的な事なので」


色彩の悪夢。本当に気分が悪くなりそう!


「皆は平気なの?」


「この程度、ハンターもギルド職員も慣れているわ」


こんなものに慣れているなんて! だからおかしな人ばかりなのね!


「この第3層に騎士達を圧倒したものがいるかもしれないという事を忘れないで。慎重に行動するのよ」


「……言い難いのですが」


「何かしら」


「ここでゴーレム作成の練習をしたいのですが」


「……私の話を聞いていなかったのかしら」


早めに練習したいんだよ! 入ってすぐなら大丈夫じゃね?


「そこを何とか! 何とかお願いします!」


「……使っていいMPは3までよ。あまり時間はあげられないわ」


「あざーす!」


やったぜ! 3回も練習できる!


この第3層、色こそおかしいが、土と岩でできている。


紫色の土とか青い岩石とか色々おかしいが、とにかく土と岩。

土魔法の領域だ! ここでゴーレムを作るぞ!


「まずは1号機! クリエイトゴーレム!」


ゴーレムの姿をイメージする。

ずんぐりとした体に長い腕と短い足。


もこもこ。


土が盛り上がってゴーレムの姿が徐々に出来上がる。

その形は……


「モビルなスーツ?」


凄くモビルな感じ。水陸両用なやつ。色は茶色。茶色? 


イメージする時にゴーレムと水陸両用なやつは似ているな、と思ったけど、その時思い浮かべたイメージがそのまま形になっちゃったわ。どうしよう?


そんなに強くイメージした訳じゃないんだけど、まぁいいか。

試作第1号なんだし。

異世界では権利関係の問題など起きないだろう。


ごっぐな感じのゴーレムを動かしてみる。右腕、左腕。

こいつ動くぞ!

歩かせてみる。右足、左足。問題無く動く。


簡単だな。自分の体のように自在に動かせる。


視覚の共有はできるのかな? イメージしてみる。可能だ。

ゴーレムの見ているものを自分の視界に映す事ができる。

これは素晴らしい! 使えるぞゴーレム!


「もういいかしら?」


「早いよ!」


まだ1回しか試してないじゃん!


「上手くいっているようだし、これ以上は不要でしょう? 先を急いでいるのよ?」


「あ、はい」


リ-ダーの指示には従いまぁす!


「このゴーレム、連れて行って良い?」


せっかく作ったんだし!


「……いいけど、勝手な事はしないでね? 私の許可なく戦わせてはだめよ?」


「了解です」


さすがに戦わせたりはしないわ。どの程度の力があるかまだ分からないし。

ゴーレムを連れて私達は先へ進む。



うねうねと曲がっていたり、まっすぐだったり、広くなったり狭くなったり。

色彩以外は第1層と似通ったダンジョンの形。

違っているのは……


「おかしいわ。魔物がいない」


ジュディが呟く。


魔物が全くいない。

第1層や第2層では大量の魔物が襲ってきたのに、この第3層には魔物がいない。


「何か異変の予兆なの?」


「そうかもしれないわ」


第3層に入ってから隊列が変わっている。


今まで先頭だったハミルが最後尾に、先頭に探索スキル持ちのクリスとミスティ。

真ん中がヘレンと幼女、前後にジュディとジュガン。

先頭のミスティが貴族から貸し出されたという魔道具を持っている。


この魔道具、箱の上に人形が立っていて、その人形は右腕を前に真っ直ぐ伸ばして前方を指差しているというふざけた形をしている。


箱の中には探したい貴族の魔力が込められた物が入っていて、クルクルと動く人形が指差す先に貴族がいるらしいのだが、何だか玩具みたいだ。


「その魔道具、正しく反応しているの?」


「しているわ」


「じゃあ貴族がその先にいる?」


「……たぶんね」


たぶんって何だよ?



結構な時間歩き続けていると、やがて広い空間に出た。


今までと違い色は2色。赤茶色と白色。

マーブル模様の空間。「ザ・ウェーブ」のような世界。

天井から床まで全てマーブル模様で波のようにうねっている。


その空間の真ん中にぽつりと佇む黒い物体。

あれは何だ?


「最悪だわ」


ジュディが呟く。


「黒いゴーレム」


ゴーレム?




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