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ソード・ダンジョン 第1層 → 第2層

「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!」


ドシュッ!


「ビュギャッ?!」


ハミルの快進撃は続く。

今も8本の長い脚を広げた巨大な蜘蛛のような魔物を一撃で倒したところだ。

そう、一撃。


オラオラ言ってるからまるで何回も突いているみたいだが、実際は一撃で屠っている。

こいつ、ちょっと前から技名を言わなくなっている。

代わりにオラオラ言っているのだが、もしかして、ゴーストさんの助言があったのでは?


「あの幼女がツッコミいれてくるから、技名言うの止めた方がいいよー」


とか。

正しい助言だ。俺と友達にならないか?


そしてハミル。

どんな魔物でも一撃なんだから、オラオラ言わなくてもいいんじゃないか?

「オラ!」でいいんじゃないか? オラ!


オラって確かポルトガル語で「お元気ですか!」という意味じゃなかったか?

今から殺そうとしている相手に「お元気ですか!」なんて鬼畜過ぎるだろう?

血も涙もないわ。さすがAランク。違うか。


さすがにこれは考え過ぎ……


「オラッ!」


ドシュッ!


「ギョエエエエエエエ!」


新たに現れた魔物を一撃で屠るハミル。


「オラッ! (お元気ですか!)」


ドシュッ!


それはどうかと思うわ。ハミル。



ソード・ダンジョン 第1層 

俺達はダンジョンの中を歩いていた。



無双を続けるハミル、いや「ランサー」の後ろを歩いていく俺達。

何もする事がない。

俺なんて歩いてすらいない。ヘレンの背中で運ばれている。


最初は少し緊張していた俺も、Aランクのあまりの強さにいつしかリラックス状態で、まるで動物園で動物を見ているような気分で次々と現れる魔物を眺めていた。


でもこのダンジョン魔物園、魔物が次々と死んでいくんだけど。

幼女にとってはきっとトラウマ級の出来事! みたいな。


「ギョショアアアアア!」


「オラァア!」


ドシュッ!


またランサーが魔物を屠った。

馬の体に虎の頭を乗せた魔物。何て間が悪いんだ! なぜ出て来る!


「ジュディ!」


「何かしら」


「今の魔物、何て名前?」


「今のはウマトラゥよ」


「惜しい」


「何が?」


なぜ逆にした。作為を感じる。

もしくはこの世界の悪意。


倒れた魔物を捨て置いて、さっさと先へ進む俺達。

そういえば、


「ジュディ」


「何かしら」


「魔物というのは解体して素材になる所や魔石や魔核といった物を手に入れたりするものではないのか?」


「そうね。普通はするわね」


「なぜ俺達はしないんだ?」


今頃気付いたが、俺達はランサーが屠った魔物を全て放置している。

勿体無くないか?


「先を急ぐからよ」


「しかし、金になるんだろう?」


「そうね」


そうね、じゃねーよ。なぜしない?


「お金なら貴族からたっぷり貰えるのだから」


「ちょっと待って! 今大事な事を言っているよね?」


全く聞き捨てられないわ!


「たっぷり?」


「ええ、たっぷりよ」


「いくらくらい?」


「それは答えられないわ」


「何でだよ!」


今まで何でも答えてくれたのに! 嘘だと言ってよジューディー!


「私にも答えられない事はあるのよ」


聞き出すにはどうすればいい? 何か考えないと。


「ランサーが前金を貰っていると言っていたのだが」


「らんさー?」


「すまない、ハミルの事だ」


「1文字も合ってないじゃない」


こいつ! まさかジュディに突っ込まれるとは!


「……すまない」


なんという屈辱。


「それはいくらなのか、よかったら教えてもらえないだろうか」


「普通はそういう事を教えないんだけど、まぁいいわ。金貨200枚よ」


2000万だと! 


「前金が?」


「そうよ」


どうしよう、涙が出てきそう。それはきっと血の涙。


「俺の報酬は金貨20枚なんだが」


「知っているわ。まさかとは思うけど、実績のあるAランクとノーランクを同列に比較しようというのではないでしょうね? 報酬が違うのは当たり前でしょう?」


「ソウデスヨネー」


正論ってどうしてこんなに耳に痛く聞こえるんだろうね?

心も痛い。張り裂けそうさ……


「で、では成功報酬は?」


「当然結果次第なのだからはっきりとは言えないけれど、金貨200から400枚といったところかしら」


「ハミル1人にそれだけ出せるのなら……」


「だめよ」


「まだ何も言ってないだろう?」


「報酬は引き上げないわ」


「……ハイ」


ナニカイイコトナイカナー。

心が乾いていく。絞られていく。この異世界砂漠。



「そろそろ休憩にしましょう」


ジュディの指示で俺達は第2層への入り口近くで休憩に入った。

俺達は全く疲れていないのでハミルの為の休憩といっていいだろう。

やつを労ってやろう。


「よー、ハミル。お疲れ!」


「あぁ、ありがとう、セシリア。大して疲れちゃいないけどな!」


「そうか、体力があって羨ましいぜ。俺なんて歩くだけで疲れてヒールかけちゃうわ」


「それは体力なさ過ぎだろう」


軽く雑談などしてみる。


「ハミルの槍は買った物なのか?」


「そうだぜ」


「それはいくらぐらいで買えるんだ?」


俺も1本欲しくなってきた。槍格好良いよな槍。


「これは白金貨5枚だぜ」


5億……


槍が5億とか、狂気に果てはないのか。凶器だけに。


「な、なぜそんなに高価なんだ?」(震え声)


「この槍は魔法の武器だからさ。分かるだろう?」


分からないわ。だってお前、ドスドス突いてるだけじゃん。


「そ、そうか。さすがAランクだな」


「どうした? もしかして槍が欲しいのか?」


「ああ、俺も1本欲しいなーなんて」


「あら? だめよ? 女の子は槍なんかより可愛い髪飾りでも買った方がいいわ」


クリスが会話に加わってきた。

クリスは探索スキル持ちのBランク。トップアイドル! みたいな可愛いルックスだが元ハンターという経歴の持ち主だ。


気にかけてくれるのか、クリス。ありがとう。

心配しなくても5億の槍なんて絶対買えないから!


「それにセシリアはいつも髪を適当に流しているけど、三つ編みにした方が可愛いと思うの」


そう言って俺の髪を編み込んでいく。


「女の子はもっと可愛くならないとだめよ?」


むぅ、可愛く、か。


そういった事はあまり意識していなかったな。これはいけない。


「そうか、これから勉強していくよ。よかったら俺にいろいろ教えてくれないか?」


この娘の為に。


「ええ、いいわよ。では早速1つ、いいかしら?」


「何だろう?」


「女の子は自分の事を『俺』なんて言ってはだめよ? 可愛くないわ」


「うっ……それは」


いきなりハードルが高い! どうしよう?


「ま、前向きに検討します」


「そんな答えは聞きたくないわ」


「こ、今後、鋭意努力します」


「ええ、頑張ってね」


どうしよう? 幼女の言葉遣いなんて知らないんだけど!



第2層の入り口前にいた魔物達をハミルが始末する。


「オラァア! オラァア!」


(挨拶は大事だよー)


きっとハミルもゴーストさんの助言を受けたに違いないわ。



俺達は、違った。私達は第2層に入りましたの。こんな感じ?


第2層は悪夢のような所だった。

土魔法使いにとっての悪夢。


「何じゃこりゃぁああああああ!?」


世界は一面の水景色。

意味が分からないだろう? 俺にも全く分からないわ。


正確には空と水。それが第2層だった。


「じゅでぃえもん」


「じゅでぃえもんって何かしら」


「これは何だ?」(震え声)


「第2層よ」


「これが?」


「ええ」


見渡す限りの水水水水、空空空空。流れる雲。

他に何も無い。見通しが良過ぎて怖いくらいだ。

第1層と違い過ぎる。


「水に見えるのだが」


「そうね」


一面に広がる水面。


「ここはダンジョンの中だろう? なぜ空が見える?」


「ダンジョンは何でもありなのよ」


「しかし……」


空には雲が見える。そんなに高さがあるのか?

それに……


「土はどこに?」


「無いんじゃないかしら?」


「嘘だと言ってよジューディー」


「嘘じゃないわ」


ありえないだろ。世界はどこまで俺を苦しめれば気が済むのか。


「土魔法の出番は!」


「無いんじゃないかしら」


「嘘だっ!」


ヘレンの背中で羊の数でも数えていようかな? 何もする事ないし!

羊が一匹、羊が二匹。(それは睡眠導入効果)

もう、寝ていてもいいよね。


「それで、どうやって先へ進むんだ? 魔法袋に船でも入れてきたのか?」


「歩くのよ」


「はぁ?」


ジュディが水面の上に立つ。おい。


「それは何かのスキルなのか?」


「違うわ」


皆普通に歩いていく。


「俺も歩けるのか?」


「ええ」


ヘレンの背中から下りて水面の上に立つ。立った!

水面はリノリウムの床のように固くて真っ平らだ。全く揺れない。

ダンジョン舐めてたわ。これが異世界ダンジョン!



皆が水面の上を歩く。(俺はヘレンの背中)

水面に空が映り込んでまるで鏡のよう。こういう景色、見た事があるわ。


ウユニ塩湖。


ネットで見た、あのウユニ塩湖の景色に似ている。

いつか行ってみたいと思っていた。自分の目で見てみたいと。


まさかこの異世界で同じような景色を見る事ができるとは。

どこまでも広がる、幻想的で美しい景色。

あまりの美しさに逆に不安になってくる。

ここは現実の筈なのに、まるで現実の世界ではないような不安。


「これは本当に水なのか?」


「そうよ」


「だが沈まないし、固いぞ? なぜだ?」


「この水は魔物以外を拒絶するのよ」


「拒絶?」


「ええ」


「この水の中に入る事ができるのは魔物だけよ」


「魔物? 魔物がいるのか? この中に?」


「ええ、もちろんよ。ここはダンジョンなのだから」


「どうやって戦えばいいんだ?」


「魔物が襲ってくる時は水面の上に出てくるから、そこを叩くのよ」


下を見る。透き通った薄い青色の水。

ここに魔物が潜んでいるのか。


歩く。歩く。ひたすら歩く。


「どこまで歩くんだ? 目的地は?」


「もちろん第3層への入り口よ」


「どこなんだよ」


「あそこよ」


ジュディが指差す先に、うっすらと糸のような……


「あれは何だ?」


「塔よ」


「塔!? あれが!?」


糸のように細い物が空の上まで伸びている。


「あれが塔だというのか? めっちゃ細くない?」


「別に細くはないわ」


「だとすると、遠いのか」


めっちゃ遠くない? あそこ。


「半日もかからないわ」


「そうなのか」


遠くね?



魔物達が襲ってくる。


トビウオに似た魔物。水上に飛び出して胸ビレを広げて空を飛ぶ。

まるでミサイルのように! 

大きさがシャレにならない。2mぐらいある。

あんなデカブツがあの速度で当たったら人間なんてバラバラにされるだろう。


だが関係ないね! ハミルの槍は全てを穿つ!


「ホラホラホラホラァッ!!」


ズシャッ! ズシャッ! ズシャッ! ズシャッ! 


バラバラに吹き飛ぶトビウオモドキ。

もちろん無双は続いている。


hola。hは発音しない。


ちなみにスペイン語のola は「波」という意味です。

ちょっと近いね! このダンジョンには波なんてないけど。




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