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ソード・ダンジョン 第1層

今日も客は少ない。

1日平均4~5人ぐらい。



悪くはない。銀貨4~5枚というのは決して悪くない数字だ。

幼女の稼ぎとしては破格といってもいい。

そもそも幼女は働けない。誰も雇ってはくれないから。


「フリーで治療をする」というのは、ジュディの話を聞いた後ではリスクがある、と考えざるを得ない。


そう考えると、ギルドで働くというのはベストではないがベターではある。

いつまでもいたい訳ではないが。


それに怪我人が少ないというのは本来は喜ばしい事だ。

俺だって怪我人がたくさんいて欲しいわけじゃない。(本当だ)


あれから部位欠損の場合にどうするのか、についてジュディの説明があった。


「部位欠損者が運ばれてきたらとりあえずヒールをかけなさい。その間にその人の仲間やギルドの人間がちぎれた腕や脚を持ってくるから」


「既に失われていた場合は? 持ってこられなかった、あるいは見つからなかったとか、魔物に食われたとか」


「いいえ、見つかるわ。『見つかった』事にするの。あなたはそれを『治療』するのよ」


「そんなんで通るのか?」


治癒魔法で再生しても治療魔法で繋げた事にするとか、ザル過ぎないか?


「もちろんよ」


「その治療をロビーでするのか?」


バレバレだろう?


「その場合は奥へ運んでするのよ」


「ギルド職員はともかく、ハンター達は黙っていないだろう?」


「ハンターこそ口が堅いわ。自分や仲間の命を救ってくれる魔法使いを売ったりはしないわ。絶対にね」



衣食住も確保できている今、そう悪くはないんじゃないかと思えなくもない。

借金さえなければ。

今のペースでは完済までどれだけかかる事か。

もう少し、こう、何かないものだろうか? 金策が。


「なぁ、ジュディ」


「何かしら」


「俺の給料はいくらになったんだ? まだ決まらないのか?」


「あなたの給料は金貨3枚よ」


30万。悪くはない。悪くはないんだが。


「なぁ、ジュディ」


「何かしら」


「何か金になる話はないだろうか? 治療以外で」


「なくはないわ」


「本当か!」


「ええ」


そして今、俺達はダンジョンにいる。



「救出?」


「ええ、そうよ」


いつもの小部屋。

金策について相談したら、いつものようにジュディに部屋に運ばれた。


HP 50/50


なんて素敵! HPが減らない! もうこの制服は手放せませんわ! 


「この町の貴族がソードのダンジョンに入ったまま、戻って来ないの。その貴族の捜索、そして救出を依頼されたのよ」


ダンジョン! 


「ダンジョンがあるのか……貴族がダンジョンに入るのか?」


「訓練の為に入る事はあるけど、普通は入らないわ」


「じゃあその貴族は何の為に入ったんだ?」


「分からないわ。向こうも理由は言わなかったから。普通は貴族がハンターギルドに依頼する事はないの。自分達で助けられるでしょうから」


「ではなぜ?」


「救出に向かった騎士の分隊も戻って来ないそうよ。こんな事態はありえないらしいわ」


「分隊って何人?」


「10人よ」


それは多いのか少ないのか?


「ダンジョンと魔法は相性が良いとは言えないけれど、それでも10人も騎士がいればダンジョンの第3層程度で問題が起きる筈がないのだけれど」


「いろいろと説明が必要だと思うのだが」


「どの辺りかしら」


「全部だ。まずダンジョンと魔法は相性が良いとは言えない、の部分を詳しく」


「ダンジョンは狭くて、いわゆる閉鎖空間である事が多いわ。そういう所では強力な魔法は使い辛いの。例えばこの間のファイアーボールを思い出してみて。あれをダンジョンの中で使ったらどうなると思う?」


地上に落ちてきた太陽みたいな巨大な火球。

あんなものが狭い所で炸裂したら。


「魔物も人間も皆死ぬわ」


「そうね。全く使えない訳ではないのだけれど」


「いや使うなよ」


「強力ではない魔法なら使ってもいいけど、それは魔物にはあまり効かないわ」


「なるほど。なら騎士ならいいんじゃね?」


「騎士は魔法使いよ」


「はぁ?」


騎士と魔法使いは普通違うんじゃね?


「騎士は貴族なのよ。そして貴族は全員魔法使いよ」


「意味が分からない」


「貴族である騎士は魔法で剣と鎧を作り、それで魔物と戦ったりするの。もちろん他の攻撃魔法も使うわ」


「ほぅ、そうなのか。つまり、騎士は強いという事か?」


「ええ、もの凄く強いわ。その強い騎士が10人もいて1人も戻ってこない、というのはおかしいの」


「第3層というのは?」


「最初に入った貴族が目撃された所よ。そこから行方が分からなくなっているの。騎士分隊も第3層へ向かった筈よ」


「ダンジョンは全部で何層なんだ?」


「5層よ」


「浅いんじゃないの?」


「ソードのダンジョンは浅い代わりに一層が広いの」


「どれくらい?」


「ダンジョンは成長しているから正確な広さは分からないけど、大体端から端まで歩いて2日ぐらいよ」


「それは広いな。それに成長するのか」


さすがファンタジー。


「その広いダンジョンの中をたった10人で探しに行ったのか?」


「貴族ならできる筈よ」


「貴族すげぇな」


「でも失敗した。それで私達に依頼がきたのよ」


「ギルド職員が行くのか?」


「ハンターもよ。ダンジョンはハンターの領域なの」


「そんな広い所をどうやって探すんだ?」


「『探索』スキル持ちと『魔道具』を使って探すのよ」


魔道具! 何やら素敵な響き。


「魔道具なんてあるんだ?」


「ええ。貴族側から貴族を探す為の魔道具が貸与されたわ。その魔道具で見つけられる筈よ」


「その救出ミッションに俺を参加させてくれるのか?」


「ええ、そうよ。ぜひ参加して欲しいわ」


「俺がいない間、治療はどうするんだ?」


「戻るまでは他のハンターに危険度の高い仕事の依頼は出さないわ。もし怪我人が出たらポーションで何とかするのよ。後、あなたへの報酬は金貨20枚よ」


「やらせていただきます!」


やったぜ! これでだいぶ借金が減らせる!



という訳で俺達はソードのダンジョンへやって来た。

メンバーは7人。


ギルド職員


ジュディ(リーダー) Bランク

ヘレン Bランク 

クリス Bランク(探索スキル持ち)

ミスティ Cランク(探索スキル持ち)

幼女 ノーランク


ハンター


ハミル Aランク 槍使い

ジュガン Cランク 拳闘士


狼はハンターギルドでお留守番だ。


「この面子で足りるのか?」


「ええ、十分よ」



ソードのダンジョンの入り口には分厚い扉が取り付けられていて(銀行の中の金庫の扉みたいだ)その脇にはソードのダンジョンの管理組合の人間達が待機していた。


ジュディはその人間達と話をしていたが、すぐに俺達の方へ戻って来た。


「中へ入りましょう」


「何の話をしていたんだ?」


「手続きのようなものよ。もう済んだわ」


「ダンジョンに入るには許可がいるのか?」


「勿論よ。誰でも入れる訳ではないわ」


「入れないのは例えばどんな人?」


「低ランクハンターは入れないわ。すぐに死んでしまうから」


「どのランク?」


「ここはF以下は入れないわ」


「ノーランクが入っていいのか?」


俺の事だ!


「特別に許可を貰っているから大丈夫よ」


「そうか」



ダンジョンの中に入る。

ダンジョンの中は意外と明るくて視界はそれほど悪くないが、狭くなったり広くなったりで歩きにくい!

俺は歩く速度が遅いという理由ですぐにヘレンの背中に乗せられてしまった。


「すまないねぇ、ヘレンさん」


「いいって事よぅ」


「なにかお礼をしたい気持ちがあるよ」


「じゃあぁかき氷でぇ」


「却下です」


迂闊な事言うんじゃなかったわ。


知っているんだぞ? お前の給料の額。

金貨30枚! 300万! 年じゃない、月で!

何で受付嬢がそんな良い給料なんだよ? この世界は間違いしかないのか?



ダンジョンに入ってすぐに気が付いた事がある。

それはダンジョンの内側は全て土や岩で出来ている、という事である。

当たり前だろうって? そうさ。つまり、ここは我が土魔法のフィールドという事だ!


「ちょっといいだろうか? ジュディ」


「何かしら」


「ちょっと土魔法を試してみたいんだが」


「どういう事かしら」


「ダンジョンの中でどれぐらい土魔法が効果的か確認したいんだ。すぐに済むよ」


「いいわよ」



「アースランス!」


ドンッ!


高さ1m、3本の土槍が現れる。

更に、


「アースランス!」


ドンッ!


天井から同じく3本の土槍が現れる。成功だ!


今いる所は天井まで3mもない狭い通路部分だ。

ここで上下からアースランスを出すと、ある程度通路を塞ぐ事ができる。

もちろん完全じゃない。真ん中は開いている。

だが、ある程度の大きさの魔物なら十分足止めする事ができる。

そして、


「アースランス!」


ドンッ!


その後ろに土槍を出す。足止めしたところで追加の土槍で仕留める。

上手くいきそうじゃないか?

さらに、


「アースランス!」


ドンッ!


壁面からも出してやる。これぞオールレンジ攻撃!


上下左右どこからでも土槍が出せる。まさに土魔法使いのフィールド!


広い空間なら長くしてやればいい。

本数は減るが、それは回数を増やせばいい事だ。

いいぞ! これはいけるんじゃね?


「どう思う? ジュディ?」


「そうね、悪くないんじゃないかしら」


「そうだろう?」


よし! これで魔物達を倒しまくってレベルを上げるぞ!


「ふ、ふははははははは! はっ、げほっ」


「でも、私の指示があるまで使ってはだめよ」


「なぜだ!」


「MPが勿体無いからよ」


「何だとぅ……」


「何の為にAランクを連れて来たと思っているの? 魔物は彼に倒してもらうわ。あなたは大人しくしていなさい」


「何だとぅ……」


俺のレベルアップ計画が!


「私がリーダーだと言ったでしょう? 必ず指示に従うと約束したでしょう?」


「あっ、ハイ」


上司の指示には絶対服従。それが社畜の掟!

仕方なかったんだ。だって約束しないと連れては行けないと言うから。

絶対参加して欲しいと言っておきながら!


「仲間が危険な時は使ってもいいだろう?」


「このメンバーでその可能性は低いと思っているのだけど」


「いつまでMPを温存すればいいんだ?」


「勿論帰るまでよ?」


勿論、じゃねーよ! 使わせない気か!


「何の為に俺を連れて来たんだよ?」


「勿論怪我の治療をしてもらう為よ」


「このメンバーは危険な目に遭う可能性は低いんじゃなかったのか?」


「要救助者の方よ」


「生きているのか?」


もう死んでいるんじゃね? 今日で5日目なんだろう?


「生きている可能性もあるのだけれど、分からないわ。何が起きたのかよく分かっていないのだから用心に越した事はないわ。死んでいるとしても遺品は回収しないと。とにかく、MPは温存するのよ」


「じゃあせめて帰り道で!」


「そうね。前向きに検討させていただくわ」


「そんな答弁は聞きたくないんだ! 土魔法に出番を!」


「前向きに検討させていただくわ」



そして、ダンジョン第1層で槍使いの無双が始まった。

俺の出番はまだない。

絶対どこかで使ってやるんだからぁ!




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[良い点] 世界観の説明やスキルが分かる過程が自然で良かったと思います。 [気になる点] 主人公の行動が元が、大学生と思えない。 利用されるだけ利用されて、主体性がなさ過ぎる。 また、全般的にキャラク…
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