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異世界で『魔法幼女』になりました  作者: 藤咲ユージ
第1章 土の中の幼女
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異世界で幼女になったので魔法を使ってみる

 目が覚めたら幼女になっていた。何を言っているのかわから(以下略)。




 俺は……自分の名前を思い出せない。何でだ!? 他は……わからなくもない。


 俺は大学で畜産学を学んでいて、将来は実家の畜産農家を継ぐつもりだった。

 昨日はサークルの友達と遊んで……その後どうなった? 記憶が……無い。


 はぁ……。一体、何が起きているんだ。ここはどこなんだ?

 気温が高く感じる……今は冬の筈なんだが、日本じゃないのか?


 そして、どうして俺は幼女になっているんだ?




 引き続き辺りをうろつく。

 土と草の匂い。見上げるとそこには抜けるような青い空、白い雲。季節は夏、か?


 雑草だらけで荒れ果てた耕作放棄地の端、村の外れと思われる所まで歩くと、道は更にその先、村の外へと続いていた。


 この幼女はここで一人で生活していたのだろうか?

俺にはこの幼女として生きてきた記憶は無いのだから、俺とは別人の筈だ。


 もう一度自分の体を見てみる。

 やせ細った体、薄汚れた服。何となく臭うような? ……そうだ、井戸があったな。ちょっと服と体を洗ってやろう。この気温だ。風邪を引く心配は無いだろう。


 井戸から水を汲む。

 水汲みは力の要る作業ではあるが、それにしてもこの体は非力だな!

 1回水を汲むだけでヘトヘトになるぞ。大丈夫か?


 盥のような物は無いので、水を汲んだ桶に脱いだ服を突っ込んで洗う。

 下着は身に着けていなかった。


 汚れた水を捨ててもう一度水を汲んで体にぶっかけた後、絞った服をタオル代わりにして体を拭く。さらに水を汲んで髪も洗う。

 長くてボサボサの髪はこげ茶色でぱっとしない感じだ。


 桶に張った水を鏡の代わりにして自分の顔を確認する。

 いまいちよく分からないが、目が大きくて頬がこけているのは分かった。健康状態が良くなれば可愛くなるかもしれないな。


 そういえば、お腹が空いてきたな。小屋の中には食べ物は見当たらなかった。

 まず食べ物を確保しなければならない、という事に気が付いた。


 この娘がいつからここで暮らしていたのか不明だが、何か食べていた筈だ。

村の中には何も無かったが、近くに森があるのが見えたから森で何か木の実や果物を調達していたのかもしれない。食べ物を探しに行くか。




 森の中は木々の枝葉が生い茂っていて、昼間でも薄暗い。

 地面は平坦で下草もほとんど生えていないので裸足でも歩きやすいのは助かるな。


 森の中に入って10分ほど歩くと、木の上に赤い実がいくつかなっているのを見つけた。


 木に登って実をもぎ取って一口食べてみる。ほんのりと甘い。味は梨に似ている。

 これを15個もぎ取って地面に落として下に降りる。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 つ、疲れる。


 とりあえず、これを当面の食料にすればいいだろう。他に何か食材になるものをもう少し探してみるか?

 梨(?)は木の根元にまとめておいて、俺は森の奥へ進む事にした。




 更に20分ほど歩いたが何も見つからない……代わりに何か音が聞こえた。何か、動物の鳴き声のような……動物!?

 迂闊だった! 危険な獣がいる可能性を失念していた!


 この幼女の体ではちょっとした獣でも襲われたら重傷を負う可能性がある。

 自分は男の大学生だという意識があったからか、いや、獣の大きさによっては大人でも危ないだろうに!

 マズい、今すぐ逃げるか、隠れないと!


 子供の足の速さでは、相手にもよるけど走っても逃げ切れないかもしれない。それより木に登ってやり過ごした方がいいだろう。

 俺は手近な木に急いで登って、木の上で息を潜めた。


やがて……何かが姿を現した。

 その『何か』は人のような形をしているが人ではない。子供のように小さくて全身が緑色。服を着ていない。

 凶悪そうな顔付きで手には棍棒や槍のような物を持っている。


 どこからどうみても『ゴブリン』。ゲームでは定番の……ゴブリン!?


 全部で3体のゴブリンがグギャッ、グギャッと奇妙な鳴き声を上げながらゆっくりと歩いている。

 ゴブリンだと……ここは『異世界』なのか?




 ゴブリン達はすぐに立ち去っていったが、下へ降りる気はなかった。

 あいつらに襲われたら為す術もない。もっと時間がたって、十分に距離が離れたと判断できたら村に戻ろう。


 はぁ……『魔物』がいる世界で幼女になっている俺。『異世界転生』というやつか?


 これは現実なのだろうか。信じたくはないが、夢の中にしてはリアル過ぎる。

 さっき食べた梨モドキの食感も、今、木にしがみついている手の感触も夢の中とは思えない。


 それに……あのゴブリン達から感じた恐怖。今も体が少し震えている。

 これは『現実』なんだと、体が俺に強く警告を発しているかのようだ。


 どうしよう……何かないか? 武器か、あるいは……これが異世界転生だというのなら、魔法やスキルがあってもいいんじゃないか? あって欲しい!


 とりあえず、あれを試してみるべきだろう。そう、例のあれ。

 『ステータス』というやつを。


 頭の中で念じてみる。


(ステータス!)



セシリア


Lv 3


HP 2/30

MP 60/60


土魔法 Lv 1 

水魔法 Lv 1 

治癒魔法 Lv 1


スキルポイント 5



 あっさりと出てきた! それに『魔法』! 魔法が使えるのか!?

 本当にステータスが出た事にも驚いたけど、他にも突っ込み所がたくさんあるぞ、この娘!


 『セシリア』この娘の名前なんだろうが、あの田舎の農村みたいな所にいる娘としては随分エレガントな響きがあるように感じる。気のせいだろうか?


 『Lv 3』というのはどうなんだ? 幼女だから仕方ないのかもしれないが、ずいぶん低いような。この世界ではこれが普通なんだろうか?


『HP 2』って! 何でそんなに低いんだ? 死にかけみたいじゃないか。


 自分の体を見てみる。これといって大きな怪我をしているようには見えない。

 さっき水浴びをして体を拭いた時も異常は無かった。

 特に病気のような症状も感じないんだが、単に弱っているだけ?


 そうだ! 魔法があるのだから、自分に『治癒魔法』をかけてみればいいんじゃないか?

 試しに使ってみよう。『ヒール』でいいのか?


「ヒール!」


 ぽやん、とした感じの光が一瞬体を包み込んだ。おぉ! 魔法が発動したのか?

 ステータスを確認する。



HP 30/30

MP 59/60



 成功だ! 魔法が使えた! これは嬉しい! それで体の調子は……どうなんだ? よくわからん。

 体を動かした時に違いがわかるのかもしれない。


 MPの数値が高いような気がする。魔法使いだから?

 ……だとすると、この娘はなぜ自分に治癒魔法を使わなかったんだ?


 この娘と話をしてみたいが、この娘の意識というか、自我のようなものはどこにあるのだろうか?

 俺が乗っ取ってしまったのか? ……考えてもわからない。


 後は『スキルポイント』か。スキルポイントというのはポイントをスキルに割り振ってレベルを上げる事ができるってやつだな。5ポイントしかないというのがまたしょっぱいが、仕方ない。幼女なんだから

 魔法が使えるという凄い事に比べれば、大した問題ではないだろう。たぶん。きっと後でポイントを稼ぐ事ができる筈だ。


 という訳で早速試す。


 魔法だけでスキルが無いな。魔法に割り振ればいいのか。どうやって割り振ろうか?

 5ポイントしかないから、どれか1つに振った方がいいかな。


 『土魔法』にしてみよう。


 さっきのゴブリンみたいな魔物が存在する世界なら、当然何らかの攻撃手段を持っていたい。

 水魔法か土魔法か……攻撃する、というのはどちらもありそうだが、土魔法の方が『固い』というイメージがある。何かできるような気がするな。自分の勘を信じてみよう。


 ポイントを割り振るというイメージで土魔法に1ポイントを使ってみると表示されているポイントが1減った。使えた! だが、土魔法のレベルは変わらない。もう1ポイント使う。



土魔法 Lv 2



 レベルが上がった!

 2ポイントでレベル2なのか。残り3ポイントを使ってみる。



土魔法 Lv 3



 なるほど。ではレベル4には4ポイント必要という事か。


 さて……そろそろ下に降りても良さそうだ。




 下に降りた後、慎重に周囲の様子に気を配りながら村へ戻った。もちろん梨モドキの回収は忘れずに行った。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 村に戻った俺は疲れてヘトヘトになっていた。幼女弱いな。

 だがすぐに魔法を試す。土魔法がどの程度使えるのか、確認しなければ!


 何がいいだろう? 自分で使いたい魔法をイメージすればいい筈だ。(たぶん)

 まずは防御だ! 魔法で『壁』を作ってみよう。自分を守る壁、丈夫でガッチガチで金属のように固い壁。名前は……土魔法による壁だから『アースウォール』でいいんじゃないか?


「アースウォール!」


ポコッ。


 魔法名を叫んでから一呼吸おいて、地面から土色の壁が突き出してくる。やった、成功だ! 結構早いな! ……これは壁だろうか?


 高さは約50cm、幅は2mぐらい、厚みは15cmぐらいかな。

 壁というにはちょっと低い気がする。


 手でさわってみるとカチカチだ。足で軽く蹴ってみる。ガシッ。びくともしない。……幼女のキックでは強度は判断できないな。

 襲い掛かってくる魔物の足を引っ掛ける、ぐらいはできるかも。


 ステータスを開いて消費MPを確認する。


MP 58/60


 1つの土壁で1ポイント使った。次は3つ同時に出してみる。


「アースウォール!」


 3つ出た。出す位置は任意にコントロールできる。消費MPは3だった。

 次は『槍』を試してみよう。槍も金属のように固くて強力なやつがいいな。


「アースランス!」


 ドスッ、という迫力のある音がして地面から高さ1mぐらいの槍が出てきたけど、なぜか同時に3本出ている。1回で3本? 消費MPを確認すると1だった。ならお得だね! よし、これも成功だな。


 同時に3ヶ所で土槍を使ったら、9本出て消費MPは3だった。

 槍というより棘みたいな感じだが、攻撃力は高そうだ。


 土壁で足を引っ掛けて土槍で攻撃する、というのはどうだろう? いいかもしれない。

 ただ、どちらも実際の強度を確認しなければ危険だな。十分な強度があればいいんだが。

 土壁の強度を確認するのは難しいので土槍の強度を確認してみる。


 村の廃屋の1つを実験台にしよう。

 厚みがあって頑丈そうな家の壁に斜めに土槍を発動する。


「アースランス!」


 ドスッ、という音と共に簡単に壁を貫く。家の中に入って確認すると完全に貫通していた。


 ふむ、これなら十分使えるんじゃないか? ある程度、角度を変えられるというのもいい。

 この2つの魔法の組み合わせが魔物に通用するか、一度試してみよう。


 暗くなってきたから今日はこれぐらいにしておくか。練習を終えて小屋に戻る。

 魔法はどれだけ使っても疲れない。これは助かるな。


 梨モドキを食べて水を飲み、また穴の中へ入って板で覆う。

 この娘が穴の中で寝ていたのは、魔物に襲われる可能性を考慮して隠れる為だったのかもしれないからな。


 一晩寝るとMPが全回復する、だといいのだが。HPが2だった事を考えると望み薄かな?


 おやすみなさい。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] うーん、魔法が使えることがわかった!のはいいんですが、土の壁を作る魔法を使ってみよう、イメージが大事のはず、の流れでアースウォールっていう呪文が浮かぶんですか?なぜ、規格が勝手に決まっ…
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