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小部屋の中

「その手は何だ?」

「銀貨1枚よ」

「お値打ち価格だな。買ってもいいぞ?」

「あなたの冗談はつまらないわね」


 幼女部下に金を要求するブラック上司。その名はジュディ。


 いつかそういう日が来ると思ってました。さすがに初日からとは思ってなかったけど!

 本当はどういう事なんだよ?


「銀貨1枚の意味は何だ?」

「ヒール1回で銀貨2枚。ギルドと折半と言ったでしょう? 今日あなたが治療した分を寄越しなさいという意味よ」


 ……本当に、どういう事なんだよ。


「まだ1人も治療してないんだが」

「ギルドの中ではそうね。もちろん、火傷の治療の事よ」

「……なぜ知っているんだ?」

「あなたには監視がつけられているのよ。あなたの事は『隠密』スキル持ちが見ているの」

「何だと!」


 隠密! 何て格好良い響き! そんなスキルがあるのか! いや喜んでる場合じゃないわ。


「何だと!」

「なぜ2回言ったの?」

「大事な事だからさ」


 本当にどういう事なんだよ!


「隠密とは何だ?」

「隠れて密かに情報を集める者の事よ」


 そのままじゃねーか。


「なぜ俺に?」

「あなたのような人を野放しにする筈がないでしょう? あなたには最初から監視がつけられていたのよ」

「最初?」


 それに、『あなたのような人』とは?


「あなたがこの町に来た時からよ」

「何だと!!」


 どういう事なんだよ!


「見慣れない子供が1人でやって来れば、警戒の対象になるわ。この辺りでは子供は1人では旅をしないのよ。近くの村から来る時でも大人が付き添うの」


 1人ではない。狼と一緒だった。何かマズいのか? まだ分からない。


「門の兵士達はこの辺りの全ての村の住人の顔を知っているの。子供も含めてね。つまり、見慣れない顔というのはこの近くには住んでいない、どこか遠くから来た人という事になるわ。この町の周辺は割と安全よ? でも少し離れれば危険な獣や魔物がいる世界なの。そんな所を遠くから子供がどうやって1人で旅をする事ができたの?」

「魔法を使ったんだ。知っているだろう? 俺は魔法が使えるんだ」

「いいえ。知らないわ」

「何だと?」

「この世界では平民の子供は魔法を使う事はできないわ。私は魔法を使える平民の子供なんて知らないの。貴族は別よ? 貴族の子供は10歳になると『魔法学院』の中で魔法を使い始めるそうよ。指導者に厳重に監督されながら、だけど」

「ちなみに魔法学院の『外』で使う事が許されるのは13歳以上らしいわ」


 魔法学院? 素敵なワードを聞かされたが、今はそれについて聞ける雰囲気じゃないな。

 何か、マズい気がする。要するに、『お前は10歳にも13歳にも見えねーぞ?』と言いたいのだろう。それ以前に貴族じゃないけど。


「あなたは何歳なの? セシリア?」

「……俺は自分の歳を知らないんだ」


 この娘はたぶん5歳から7歳の間、ぐらいの筈だ。おそらく栄養不足で発育不良だったから、はっきりとは分からない。


「あなたはたぶん、5歳ぐらいの筈よ。例え貴族の子供だったとしても、あなたのような小さな子供に魔法が使える筈はないのよ」

「それなら、なぜ今までその事を言わなかったんだ?」

「うちの治療魔法使いが休んでいるって話したでしょう? あれこれ追及して、働いてくれなくなったら困るわ」


 そんなに雇いたかったのか? いや、それだけじゃないだろ? そこまで疑問を持っていたのなら……。


「とりあえず不審な幼女の身柄を抑えとく、みたいな話だったのか?」

「保護の話もしたでしょう?」


 職員を守るってやつ? 確かにこちらもそれを期待していたが。


「……魔法が使えないって話だけど、例外があるかもしれないだろう?」

「いいえ、ないわ。あなたはこの世界の魔法について、よく知らないようね?」


 知らない。俺が知っているのはセシリアの魔法だけだ。


「良かったら教えてくれないか?」


 お前はいろいろと教えてくれるだろう?


「ええ、いいわよ」


 俺は彼女の手のひらの上に銀貨を2枚置いた。


「1枚は折半の分ね」

「もう1枚は授業料だ。小さな子供が魔法を使えない理由を教えてくれ」

「教えないわ」

「はぁ?」


 いや、教えてくれよ? 金払っただろ!


「それは今重要ではないわ。あなたに教えたいのはもっと重要な、『治癒魔法』の話」

「治癒魔法?」

「ええ、そうよ。あなたの『治癒魔法』の事」

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