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異世界で『魔法幼女』になりました  作者: 藤咲ユージ
第6章 開拓する幼女
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ミラと(エクレールと)貴族といっしょ

 MK-Ⅲの前席にミラを乗せて公園の隅っこまで移動してから離陸。ぽかんとした顔で見上げている子供達に軽く手を振って東へ向かう。


「おー、速ーい! 力あるんだね、せっしー!」

「そうかな?」

「この回転してるの何? 武器?」

「それはローター。飛ぶ為に必要なもの」

「ろーたー?」

「ミラは空を飛んだ経験があるの? 慣れているみたいに見えるけど」

「時々ヴィヴィの魔石獣に乗るよ?」


 そんな会話をしているうちにエクレールが合流。すいーっと飛んできて華麗に体を捻ると水平尾翼の上にちょこんと後ろ向きに座る。そこ好きだなー。


「今、誰か乗ってきたよ!?」

「後で紹介する」


 町を出て3分ほどで目的地に到着。


「え? ここ、どこ?」

「ここは試験飛行会場」

「え?」


 試作飛行ゴーレムの試験飛行には広い空間が必要だ。シオリスの町から10㎞も離れればそういう場所はいくらでもある。


 今回も垂直離着陸が可能な仕様に魔改造するのだが、「Tu-95」はC-2やAn-225よりも主翼の後退角が大きいから、ティルトウィングにすると主翼を垂直に立ち上げる途中で翼端が地面に当たってしまう。なのでティルトプロペラにするつもりだったのだが、頭の中で水平にしたプロペラをイメージした時に「リフトファン」を思い出したので、今回はこの方式を採用してみよう。


 F-35Bみたいに胴体内部にファンを設置する事で垂直離着陸が可能になる……筈。




 赤茶けた大地に降り立つ俺達。本当に何も無くて、人もいないから都合がいい。


「ねぇ、さっき合流してきたこの子、せっしーの仲間だよね? 空を飛べるって事は風魔法使いなんだ。名前を教えて?」


 MK-Ⅲから降りて俺の隣にいるエクレールの前にしゃがみ込んで、じっと見つめるミラ。


「エクレールだよ」

「可愛い名前だね! よろしく、エーちゃん!」

(えーちゃん?)

(エクレールの事じゃね?)


 また勝手にあだ名を付けているけど、別にいいんじゃない? ロックな感じがするね! エーちゃん!


(ろっく?)


 ロックのイメージ(モデルは歌うエーちゃん)を伝えてみたが通じなかった。胡乱な目で見つめてくるエクレール。まぁいい。Tu-95を作ろう。


 機体の重心、主翼の辺りに設置するリフトファンの直径は2m。胴体の直径が約3mなのでこれ以上大きくできない。一基では浮き上らない気がするので縦一列に三基連ねてみよう。リフトファンの上下に左右に開く扉を付けて、操縦室と尾部の銃座はいらないから無くして細く絞り込もう。大体こんな感じか。


 よし、イメージイメージ!


「クリエイトゴーレム!」


 もこもこもこもこもこもこもこもこ……。


 地面の上に細長いシルエットが現れる。An-225ほどではないが、この機体も大きい! 全長全幅共に50mぐらいあるからな。後退角がついた長い主翼と細めの胴体がシュッとしてはりますわぁー。カッコイイ!


「これ何?」

「これも空を飛ぶやつ。開拓地へはこれに乗っていくから」

「こんな大きいのが飛ぶの!? もしかして、飛空船!?」


 Tu-95型飛行ゴーレムを見上げて、こぼれんばかりに目を大きく見開いているミラ。


「違います。これもゴーレム」

「ゴーレム!? えっ、でもでもー……」


 出来たばかりの機体を指差してわたわたしているミラは放っておいて、同じくTu-95を見上げているエクレールに話し掛ける。


(エクレール、こいつを飛ばしてくれる?)


 リフトファンの使い方を伝えると、ふわっと飛んで機体の上に乗ったエクレールは胴体の上下の扉を開くと、ファンを始動させた。

 おっと、いけない。離陸に備えないと!


「アースウォール!」


 土壁を作成してその陰に隠れる。


「ミラ、こっちに来て!」

「えー? 何してるのー?」


 ミラを呼んだのにこっちに来ない。風に飛ばされるぞ!?


 フォオオオオ。ふわっ。


 Tu-95型飛行ゴーレムが軽やかに浮き上がる。離陸が早い!


「凄い凄-い!」


 するすると上昇していく機体を見上げてはしゃぐミラ。おかしい。リフトファンから強烈な風が発生して周囲に吹き出している筈なのに、ミラは平然としている。赤い髪もほとんど揺れていない……なぜだ?


 土壁からちょっと手を出してみる……うぉっ!? 手が持っていかれる! やはり風は吹いているな。音もびゅーびゅーいってるし……どういう事?


「ミラ、ちょっといいかな? 強い風が吹いているのに何で平気なの?」

「あ、それ風除けだったんだ。私も風除けしてるよ? 風魔法で」

「何だとぅ……」


 こいつ、火魔法しか使えないんじゃなかったのか?


 余所見をしている間にTu-95は水平飛行に移っていた。直径約5m、4翅の二重反転プロペラが機体を力強く前進させている。


(エクレール、最高速まで試してきて)

(わかった)


 Tu-95の後ろ姿が小さくなっていく。しばらく待機だな。




 待っている間また空を飛びたいというミラをMK-Ⅲに乗せて遊んでいたら、10分ほどでエクレールが戻ってきた。早いな。


(エクレール、どんな感じ?)

(いい感じ)


 どうやら試験飛行は成功のようだ。では開拓地に向けて出発!

 土魔法でタラップを作成してTu-95型飛行ゴーレムの機内に乗り込む。中は真っ暗……。


「暗いねー。明かりは?」

「そうだね……」


 今回は今までよりもかなり速度が速くなる筈なので、安全の為に窓は無しにした。俺だけなら明かりが無くても構わないけど……C-2輸送機を作った時に機内で使う照明の魔道具の事を考えていたのに、忘れていたな。また忘れないようにちゃんと手帳に書いておかないと……暗くて書けなぁい! それはともかく、どうしよう?


ほわっ。


 機内が明るくなった。握り拳ほどの大きさの光る球がふよふよ浮いている。おお!


「ミラの魔法?」

「まー、これぐらいなら魔法とは言わないかなー」


 前にビアンカがそんな事言ってたな。生活魔法とか名付ければいいのに。


「広いねー」

「そうだねー」


 Tu-95の中はリフトファンユニット以外には何も無い。ユニットの前は長さ16~17m、後ろは25mぐらいかな?


「そりゃ!」


 変な掛け声と共に勢い良く機体の後方へ走り出すミラ。何やってんの……。


「ねー、いつ飛ぶの?」

「もう飛んでるよ」


 搭乗口が閉まると同時に離陸している。エクレールはやる事が早い。


「そうなんだ。外が見えないとつまらないねー」

「そうだねー」


 エクレールが「操縦」している時は機首のゴーレムの視覚を使えないから俺も外の様子がわからない。確かにつまらないな。


「てぇい!」


 ミラが今度は横にダッシュを始めた。丸い側壁を駆け上るつもりらしい。ハムスターか。回し車じゃないんだから……落ち着きのないやつ。


 ミラが遊んでいるうちに飛行速度を調べよう。開拓地までの距離がわかるコンパスの魔道具と時計を見比べて……コンパスの数字が減る速さが凄い。1分で14㎞。2分で28㎞も減った。という事は……時速840㎞!? 本物には及ばないが十分な速度だ。


「何してるのー?」


 もう飽きたらしいミラが近寄ってきた。


「速度を調べてた。開拓地まで後15分ぐらいだよ」

「速いねー! どうしてそんなに速いのー?」

「どうしてと言われましても。魔法だからとしか言いようがないんだけど」

「せっしーは魔法学院で学んでないよね? 自分で考えたの?」

「まぁ……」

「凄-い!」


 考えたというか、そういう知識があるというだけなので、賞賛の目で見られるのは落ち着かないわ。


「火魔法じゃ空飛べないからさー」


 ミラは羨ましそうだが、火魔法でも飛べる可能性はある。「ジェットエンジン」だ。

 土魔法では「燃焼」ができないからジェットエンジンを作っても動かせないが、火魔法でエンジン内部に高温の燃焼ガスを継続して作る事ができれば、あるいは……。


「せっしー何か悪い事考えてない? 目つきがヤバいよ?」

「そんな事ないよー」


 失礼な。ちょっとミラを実験台に……いや、実験に協力してもらおうかなと思っただけだ。


「さっき風魔法使ったって言ってたけど、ミラは火魔法しか使えないんじゃなかったの? 他の魔法も使えたんだ」

「あぁ、あれね。正確には『使い物になるのは火魔法だけ』っていう意味だよー。魔法学院で他の魔法も学んだけどいまいち身に付かなくて、私にとってはあまり役に立たないんだー」

「そう?」


 さっきの『風除け』役に立っていたのに。


「他にはどんな事ができる?」

「例えばー……」


 魔法学院時代の話をちょっと聞いているうちに開拓地に到着した。本当に速いわ。




 エクレールが機体を着陸させたのは第一居住区(仮)だった。例のモノリスみたいな壁(という名の板)がぽつんと1枚だけ立っている。寒々しい風景だな。


「わはー! 広いねー!」


 下に降りると早速走り出すミラ。実に落ち着きがない……礫砂漠地帯と大して変わらないと思うんだが。

 

 さて、アシュリーは……いない。どこいった? 来ればすぐに会えると思っていたけど、よく考えたらここ100平方㎞もあるんだった。遮蔽物は一切無いとはいえ、探すとなると容易ではないかも……。


「せっしー! 何か来るよ!」

「えっ?」


 ミラが杖を構えて警戒するような姿勢をとっている。何だ? ……ミラが見ている方向から何か接近してくる。あれは……パワードスーツ! じゃなかった、魔石獣に乗ったクローディアと、もこもこな羊さんに乗ったアシュリーだった。


「あれは貴族だよ」

「えっ……あっ!?」


 2人の貴族はすぐ傍まで飛んできて、ふわっと優雅に着地する。うーむ。やはり、クローディアとアシュリーが着ている服の方が上質でお高い物のように見えるな。


「ようこそセシリア様。お会いできて嬉しいですわ」

「ごきげんよう、セシリア様。今日はどうされました? まだお休みだったのでは?」

「こんにちは。仕事中すみません。ちょっと教えてもらいたい事があるのですが、後でお時間頂けますか?」

「もちろんですわ。どういった事でしょう? 何でも聞いてくださいませ」

「仕事が終わった後でいいんですけど」

「ちょうど今、休憩しようと思っていたところですわ。セシリア様、お茶はいかがですか? お話を聞かせてください」

「あ、どうも。ありがとうございます」


 クローディアが気を遣ってくれた。では遠慮なくお願いしよう。


「セシリア様。そちらの方は?」

「えっと、彼女は……何してるの? ミラ」


 静かだなと思っていたらミラが跪いて頭を下げている。おい、どうした?


「パーティーメンバーの方ですの?」

「あ、いえ、えーと……知り合いです。開拓地を見たいというので連れてきました」

「まぁ。そうなんですの」


 ミラは微動だにしない。急にどうした? 相手が貴族だから?


(主。遊びに行っていい?)

(エクレール? いいけど、そんなに時間は掛からないから、あまり遠くへは行くなよ?)

(わかった)


 何だか嬉しそうだな……新しい機体が気に入ったのか?

 すぐに浮上するTu-95。おっと、風除けしないと! 土壁で素早く風を遮る。

 機体の上でエクレールが前傾姿勢になっているのが見えた。それ、空気抵抗を意識しているの? 機内に入ればいいのに。


「エクレール様はどちらに?」


 飛び去ったTu-95を眺めている間にアシュリーが既にお茶の用意を済ませていた。例によって唐突に現れた椅子と机の上に4つのティーカップが置かれている。


「遊びに行ったのでエクレールの分はいらないです」

「そうですか」

「セシリア様、どうぞこちらの席へ……そちらの方も席に座りなさい」

「は、はい!」


 クローディアに促されてお茶の席に座るミラ。顔色が悪い! 本当にどうした?


 アシュリーが静かにお茶を淹れている。何だか雰囲気が微妙……どことなく冷たいような? 何これ。


「セシリア様。お話の前に、こちらの方を紹介していただけますか?」


 クローディアも何か雰囲気が違う……。


「彼女はミラ。火魔法が得意なAランクハンターです」

「そうですか……ミラ、発言を許します」

「……お初にお目にかかります。ミラと申します」


 ミラが突然別人のように態度が変わって丁寧な挨拶をしている。クローディアも「うむ」みたいな感じで頷いていて、何だか偉そう! 発言を許します、とか言ってるし……あ、偉いのか。クローディアはお貴族様だからな。


 それにしても、ちょっと話を聞きに来ただけの筈なのに、何だか様子が変なんですけど!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 基本がほんわかするファンタジーでなんとか頑張る姿は楽しいです。 [一言] 単なる職場訪問が、「風雲急を告げる」になって、なんだかヒュドラ戦よりキナ臭くなってます…
[良い点] 更新ありがとうございます [気になる点] 貴族が様付けで扱う平民のセシリアに対して、ミラがこの場でセシリアをどのような話し方で対応するのか気になる 終始敬語なのか、雑な話し方をしてクローデ…
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