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異世界で『魔法幼女』になりました  作者: 藤咲ユージ
第6章 開拓する幼女
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幼女の休日の過ごし方 2

今日から3日間はお休みだ。だからといって家でダラダラしていたらぽっこりお腹が更にぽっこりしてしまうので、とりあえず外出して歩く。



町の外へ出る気はないし、休み気分を強調したかったので今日はギルドの制服ではなく前に作ったひらひらのリゾートっぽい花柄ワンピースを着ている。シルヴィアも同じデザインの服だから手を繋いで並んで歩いていると姉妹に見え……ないか。全然似てないし。


家を出て少し歩くと表通りに入る。朝の忙しい時間帯は過ぎているのに人がたくさん歩いている。何でこんなにいるのかな? 皆どこへ行こうというのか。


背の低い幼女な俺は道を行く人々によってさっそく視界を遮られてイラッとするけど、我慢我慢。これはトレーニングなんだし、大らかな気持ちで散歩を楽しまなければ。見通しが悪いのなんて気にしない。しないったらしない。


「どこにいくの?」


ゴーレムに乗りたい気持ちをぐっと堪えていると、シルヴィアに行き先を聞かれた。どこに行こうかな? 適当にその辺を歩くだけでもいいのだが。


「しーちゃんはどこか行きたい所ある?」


「こうえん」


「公園? 公園なんてあるんだ」


この町に公園があったとは! 知らなかったぜ。では子供らしく公園で遊ぶか。


「どっち? 案内してくれる?」


「こっち」


シルヴィアが俺を引っ張って歩き始める。アルジェンティーナも首の辺り、ふさふさの毛を鷲掴みにされて引っ張られているのだが、痛くないの? それ。


(平気です!)


そうなんだ。




何となく近くにあるんじゃないかと思いながら歩いていたのだが、近くない。どこまで歩くの? もう10分以上歩いているんだけど。

俺達を引っ張っていたシルヴィアの足が止まる。どうした? もしかして、道がわからなくなったとか?


「つかれた」


「え、もう疲れたの?」


まだ1㎞も歩いてないのに。早過ぎない?

立ち止まったシルヴィアの前にアルジェンティーナが回り込んで「伏せ」の態勢になる。何?


シルヴィアが低い姿勢のアルジェンティーナによじ登ってその背に跨った。いつもそうやって乗せているのか?


(そうです!)


シルヴィアも運動が足りていないのかもしれない。しかも俺と同じ理由で!

ゆったりとした足取りで歩き始めるアルジェンティーナ。道わかっているの?


(わかります!)


行った事あるのか。




密集した建物の間の道を外壁方向へ更に5分ほど歩くと、急に開けた空間が現れた。

ここが公園……? 20~30mぐらいの広さがあって、雑草も無く整地されているけど遊具の類は何も無い。ただの空き地に見える。結構な数の子供が何かをして遊んでいるので、空き地を遊び場として利用しているだけなのかもしれない。


「あ、シルヴィアだ」


子供達の中の1人がこちらに気付いて駆け寄ってきた。


「しーちゃん、知ってる子?」


「サラちゃん」


シルヴィアは前に会った事があるらしい。シルヴィアより少し大きな女の子だ。


「アルも一緒だねー」


女の子はシルヴィアが降り易いように姿勢を低くしているアルジェンティーナの頭を優しく撫でている。その間に他の子も近付いてきた。


「誰? シルヴィアのお姉ちゃん?」


おっと、子供達に取り囲まれてしまった。初登場の俺に注目が集まっている。


「私はセシリア。シルヴィアと一緒に住んでいるの。よろしくね」


「ふーん。一緒に遊ぶ? 追いかけっこしてるのよ」


鬼ごっこみたいな? ここ何も無いからそういう遊びしかできないか。

 

「走るの苦手だから見ているよ。シルヴィアと遊んであげてね」


「そう? じゃあシルヴィアはこっち」


シルヴィアはサラと手を繋いで走っていった。アルジェンティーナも一緒だ。

あれ、アルも参加するの? 子供達すぐに狩られちゃう……じゃなかった、すぐに捕まっちゃうんじゃないの?


皆わーきゃー言いながら走りまくっている。シルヴィアも頑張っているな。アルは……子供達にじゃれついているだけか。楽しそうではある。


子供達はシルヴィアと同じぐらいの小さい子から10歳ぐらいの子まで、年齢はバラバラだ。男の子は麻っぽい生地のシャツにハーフパンツ、女の子はシンプルな無地のワンピース。皆同じような服を着ている。近所の子達なのかな?


遊んでいる様子を眺めていたら、くいっ、とスカートの裾を引っ張られた。ん?

小さな女の子が俺の足元にしゃがんでスカートの柄を見ている。


「皆と遊ばないの?」


「はしるのにがてなの」


「そうなんだ」


「おはながきれい」


「えっと、そうだね」


柔らかそうな栗色の髪。つぶらな瞳の女の子が赤、青、黄色、鮮やかな色の花柄を熱心に見ている。


「名前は何ていうの?」


「リズ」


「可愛い名前だね」


リズは顔を赤くして照れている。


「せ、せしいあ?」


「セシリアだけど、言い難かったらリアでいいよ」


「りあちゃん!」


「そう」


前にもこんなやり取りがあったなー。そう、プラス村のリナと……あ、そういえば遊びに行く約束してたのに、まだ行ってないわ。行かなくちゃ! ちょうど休みだし、明日にでも行こう。


「おはなのなまえは?」


「え?」


ワンピースに描かれている花の名前? この世界の花の名前なんて知らないぞ? 赤いのはガーベラっぽいんだけど、その名前でいいのだろうか。調べた方がいいかな? でも謎翻訳されるかも。


「えっと、赤いのはガーベラ。青いのはアネモネ。黄色はパンジーだよ」


「すごーい」


何が凄いのかよくわからないけど、通じたのならいいのだろう。たぶん。


リズは花に興味があるみたいなので知っている花の絵を地面に描いてやる。リズも花の絵を描いてくれたが知らない形ばかり……リング形状の花弁なんてあるのか。その花の雄しべや雌しべはどこにあるんだ?



「リズはどんな遊びが好きなの?」


走るのが苦手な子は追いかけっこを楽しめないだろうから、他にどんな遊びをしているのか聞きたかったのだが、リズはもじもじして答えない。何か別の遊びを……ここ、何も無いから何か遊具を作ればいいか。何がいいかな? まずは、ブランコにしよう。


土魔法でブランコを作る。すぐに完成。うむ、前に試作した土鎖を活用できたわ。この土鎖、魔物を拘束するという本来の目的を果たす機会がないな……。


「リズ、これで遊んでみない?」


突然現れたブランコを見てびっくりしているリズを誘ってみる。


「これ、なあに?」


「ブランコっていう遊び道具。こうやって遊ぶんだ」


お手本を見せる。ブランコに乗るなんて子供の時以来だな。今も子供だけど。


「わぁー」


「リズも乗ってみて」


座板に座らせてそっと背中を押す。


「わぁー!」


これは喜んでいる声だな。気に入ってくれたようで何よりだ。


「何それー!?」


遊んでいた子供達が駆け寄ってきた。


「ブランコだよ。皆も乗って遊んでみる?」


「のるのー?」「あそべるの?」「どうやるのー?」「のりたい!」

「さっきまでこんなの無かったのに……えっと、セシリアだっけ? これ、どうしたの?」


子供達の中で一番背の高い男の子が尋ねてきた。リーダーっぽい雰囲気があるな。


「魔法で作った」


「ま、魔法!?」


新たにブランコを3台、6人分追加で作成する。


「すごーい!」「まほーだ!」「まほー!」


はしゃぐ子供達に遊び方を説明するとすぐに理解して元気よく揺らし始めた。


「きゃー!」「わぁー!」「おもしろーい!」


賑やかだなー。


「のりたい」


(乗りたいです!)


「うん。シルヴィアはいいとして、アルジェンティーナはちょっと待ってね?」 


そのままでは乗れないから。どういう形にすればいいのか、座板を大きくするだけでいいのかな? 鎖の部分を手で持たないと危ないような。


(大丈夫です!)


本当か? 試しに座板を4本の鎖で吊るした大型のブランコを作ってみる。これでどうだろう?


ひらりと座板に飛び乗ったアルジェンティーナを揺らす……重いな。ずっしりとした重量感。アルよ、ちょっと重くない?


上手く揺らせずに苦心していたら男の子が手伝ってくれた。ありがとう!


ゆーらゆら。ぐいーん。


だんだん大きく揺れていく。どう? アルジェンティーナ?


(ゆらゆらです!)


そうだねー。お座りの姿勢でぶんぶん大きく尻尾を揺らしているから楽しんでいるんだろう。

シルヴィアも他の子にサポートされて乗っている。ブランコはこんな感じでいいか。次はシーソーだな。


シーソーは同時に8人遊べる十字シーソーを作った。

小さい子は喜んだが、大きい子はブランコの方が楽しいらしく反応はいまいちだった。ならば、次は回転式ジャングルジムだ!


ぽこん。


イメージ通り、球形のジャングルジムができた。さっそく回そうとするが動かない。なぜだ?

ゴーレムを作成。2号機で回すと易々と動く。幼女が非力なだけだった……。


「これはどうやってあそぶの?」


「お手本を見せよう」


ジャングルジムの外側に掴まって準備完了。やれ、2号機!

するするするーと滑らかに回転するジャングルジム。だんだん回転速度が速くなって……握力がヤバい!


遠心力でふっ飛ばされそうになったので速度を落として終了。遊び方は十分伝わった筈。

子供達が何人も取り付くが、小さな子もいるからゆっくり回そう。


「きゃははは!」「ぐるぐるしてる!」「みんながまわってる!」


ジャングルジムは好評だった。次は滑り台だな。人数が多いから皆で滑れるワイド滑り台がいいだろう。


どーん。


完成した滑り台は幅10m、高さは3m。迫力満点だ!


「なにこれー!?」


「お手本を見せよう。まずは初級編」


階段を上って上から滑り降りる。すいー。下の滑走部を長めにする事で十分に減速できる、安全に配慮した形だ。うむ、申し分ないな。


「次は上級編」


滑り台の下から勢いを付けて滑り面を登っていく。うぉおおお!

1m、2m、あと少し、3……くっ、と、届かない? バカな!?


ずるっ、びたーん!


足が滑った! 滑り面に顔をぶつけて、ずるずると滑り落ちる俺。何という屈辱。


「今のは失敗だけど、皆はまず初級編から……」


「「「わぁー!」」」


男の子達が一斉に滑り台を下から登り始める。おい、人の話を聞けよ!

だが子供達はあっさりと登り切ってしまう。うぬぅ……。


もう一度チャレンジするが、登れない。何という事でしょう……足腰、弱り過ぎ? 問題はぽっこりお腹だけじゃなかった!

ウォーキングなど生温い。もっとハードなトレーニングをしなくては!


子供達はもう放っておいてもいいだろう。公園の隅へ移動して、まずはスクワットから。10×3セットでいいかな。

さっそく始める。1、2、3……7、8……9…………キツいな、スクワット。10!


「はぁ、はぁ、はぁ」


もうひざが痛い! まだ1セット目なのに!


1、2、3…………よ、4…………。ちょっと休憩しよう。飛ばし過ぎはよくないから。


「なにしてるの?」


リズが近寄ってきた。


「これはスクワット。トレーニングだよ」


「とれーにんぐ?」


「体にいいものだよ」


「わたしもやるー」


なぜかやる気になっているリズ。小さな女の子には不要だと思うが。


「5、6……なな…………は、はち…………」


くっ、足ががくがくしてきた。


「なんかいやるの?」


「さ、30回かな……」


「わかったー。きゅう、じゅう、じゅういち、じゅうに」


リズは軽快な動きでスクワットをこなしていく。ま、負けている……!?




「はぁ、はぁ、はぁ。ヒール!」


ぽやん。


ふう。魔法がなければこれほど過酷なトレーニングは続けられないだろう。よくやった、俺。


「いまひかったよ! なに?」


俺より早く3セットを終えていたリズ。顔が赤くなっているから疲れている筈だ。


「治療魔法だよ。リズにもかけてあげよう。ヒール」


ぽやん。


ん? 今、胸の辺りが光ったぞ?


「リズ、胸のところ、どうかした?」


「ときどきいたくなるの。でもいまはいたくない」


「そう」


怪我でもしていたのか? それとも病気か。もう一度かけてみたら光らなかった。よくわからんが治ったんだろう。


「リズは滑り台どうだった?」


「こわいからしてない」


「え、そう?」


小さい子には迫力があり過ぎたのか。ワイド滑り台の方を見てみると、滑っているのはほとんど大きな子達だな。


「じゃあ小さいの作るね」


高さ1.5mの控えめな滑り台を作る。これならいかな? しかしリズはもじもじして登ろうとしない。


「まだ怖い? 一緒に滑る?」


こっくりと頷いたので2人で階段を上って、前にリズを座らせて後ろから抱えるようにくっついて一緒に滑り降りる。すいー。


「どうだった?」


「たのしい」


それはよかった。

リズが滑っているのを見て他の小さな子達もやって来た。リズと同じようにワイド滑り台は怖くて遊べなかったらしい。これは配慮が足りなかったな。


小さな滑り台で遊びだした子達を見て、もっと穏やかな感じの遊具が必要だと気付いたが、何がいいだろう?


小さい子向きなのはスプリング遊具か。動物や乗り物の形をしていて跨って揺らすやつ。

しかし、土魔法ではスプリングのような「弾力のあるもの」は作れない。うーむ。

動かない物に跨っても楽しくない……あ、ゴーレムなら動くな。だがゴーレムは、うーん。

とりあえず、作ってみるか。


いつもの搭乗型ゴーレムの背中の座席部分をライオンの形にしてみた。うわぁ……ゴーレムが背後からライオンに襲われている! みたいな、ひどい絵面。


ライオンをもっと可愛いデフォルメキャラに……作り直してみたけど、あまり変わらないな。口を開けているのがダメなのか?


「これなぁに?」


まだ試作段階だというのにリズに見られてしまった。


「えっと、これは遊具ゴーレム、かな?」


「ゆ、ゆーぐ?」


「上に乗って遊ぶんだよ」


「のりたい」


まだ未完成なんだけど。体験試乗で意見を聞かせてもらおうかな?

ゴーレムをしゃがませて、後ろに付いているライオンの背中に座らせる。取っ手をしっかり持ってね?


ゴーレムを立ち上がらせて、リズが落ちないようにゆっくりと揺らしてみる。

ぐいーん、ぐいーん。


「わわわ」


「どうかな?」


「おもしろい!」


にぱっ、と笑顔になる。見た目はともかく、動きはいいようだな……はっ! この動き、使えるぞ! こういうフィットネス機器あったわー。

よし、トレーニングの手段として採用しよう。そうしよう。


前に足を延ばした状態で揺らすトレーニング用の椅子、後ろに跨って揺らす鞍型の椅子を付けたゴーレムを作成。


まずは鞍型の椅子をまたいで座る。そしてゴーレムをV字の動きで大きく揺らせば乗っている俺の体も揺れて、バランスを取ろうとする際に筋肉に刺激が入る筈だ。

では、トレーニング開始!


ぐいん! ぐいんぐいんぐいんぐいん! 


「ふぉおおおお!」


効いてる、効いてるよ! お腹周りに効いている! うぉおおおお!

これはきっと、鍛え難いインナーマッスルまでしっかり鍛えられる、というやつでは?


ふはははは! 勝てる……勝てるぞ! これでぽっこりお腹とはおさらばだ!




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