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異世界で『魔法幼女』になりました  作者: 藤咲ユージ
第6章 開拓する幼女
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初日終了!

 森を10㎞四方に渡って切り開いて開拓地を作る、という大事業が仲間達の圧倒的な力によって初日で半分ぐらいまで進んでしまった。超早いわー。

 そして作業を終えたエクレールとシュバルツは飛行型ゴーレム『An-225』に乗ってどこかへ遊びに行ってしまった。

 一区切りついた今、時間は余っているぐらいなので遊びに行くのは一向に構わないのだが、エクレール、シュバルツに続いてノワールまで飛行型ゴーレムを操縦したいと言い出した。

 しかしノワールよ、お前は自力で空飛べるじゃん……エクレールもだけど。


 頑張ってくれたノワールを労う為に飛行型ゴーレムを作る事自体は問題無いのだが、既に重量軽減の魔石は2個とも使ってしまっている。魔石無しで巨大な『An-225』を飛ばすのは無理があるので……ノワール、小さいのでいい?


(否定)


 じゃあC-2は? ダメ? 皆と同じのがいいらしい。むぅ……『何とかして』という雰囲気が伝わってくるが、何とかって、うーん。


 どこかに重量軽減の魔石を持った魔物がいないかなー? 大蟹みたいなやつ。もしくは飛行型ヒュドラとか。

 飛空石があれば、より高性能な飛行型ゴーレムを作れるだろう。欲しいよなー。だが今は魔石無しでどうにかせねば。むーん。

 軽くできないのなら、『推力』を増やすしかない。


1.ローターを大きくする

2.ローターの数を増やす

3.ローターを「二重反転式」にする


 3はまだやった事がないから、これを試してみよう。




「クリエイトゴーレム!」


もこもこもこもこ……。


 今回は200m以上離れた所に『An-225』を作成する。同じ過ちは繰り返さないのだよ! でも念の為、土壁の陰に隠れておこう……。


 ふわり、と飛行して機体に近寄るとしばらく検分するかのように眺めた後、なぜか主翼の後ろに乗るノワール。そこでいいのか?


 ぐいっ、と巨大な主翼が壁のように垂直に立ち上がり、上向きになった6基の二重反転式ローターが回転し始める。


 魔石ありの機体と比べて時間が掛かるのかと思っていたら、さほど変わらない感じで離陸していく。おや? 水平飛行に移行した後の動きも悪くない。

 同じ、とまでは言えないが『二重反転式』は想像以上に高性能だった。MK-Ⅲにも採用しよう。そうしよう。




「セシリア様」


 飛び去っていくAn-225を眺めているとクローディアが近付いてきた。


「まだ魔力に余力がおありですか?」


 巨大なゴーレムを立て続けに作っているからこいつまだ余裕ある、と思われているのかもしれない。何て答えよう? 余力はあるが、今後の労働条件を悪くしない為にも正直に言う必要はない。


「えーと、今日はここまでで終わりにしていいですか?」

「えぇ、勿論です。お疲れさまでした。たった1日でこれほど進むとは思いませんでしたわ。セシリア様は大変強い力をお持ちですのね」

「どちらかというと仲間達の力の方が凄くて、私はそれ程でも」

「まぁ。ご謙遜なさらなくてもよろしいのですわ」


クローディアは柔らかい雰囲気だが、釣られてはいけない。ここからが重要だ。気を引き締めていかねば。


「次回以降についてですが、魔力は、えーと……」

「えぇ、魔力の回復に時間が必要ですわね。どの程度お休みになられますか?」


 この幼女は一晩寝れば魔力は最大値分まで回復するが、魔力の回復速度は魔力量と同じぐらい重要な情報だ。教えるつもりはないが、他の魔法使いが魔力回復にどの程度時間を必要とするのかわからない。数日? 不自然じゃない程度の間隔で答えないと。


「初めての開拓作業でちょっと気疲れしてしまったので、3、4日ぐらい? 休みたいのですが……」


 上目遣いで、できるだけ可愛く言ってみる。どや?


「わかりました。では、次は4日後でよろしいでしょうか?」

「はい」


 素直に了承しておく。たぶんこれでいい筈だ。


 しばらくするとアシュリーが戻ってきて、またクローディアとくっついて何やら話している。




「セシリア様、確認できました。今すぐにでも種まきが可能です」

「作物について、何かご希望はおありですか?」

「え?」


 長めの話し合いが終わったと思ったら、2人から思いがけない提案が。早過ぎない?


「特にご希望がなければ、領主様が指定されると思いますが……」

「ちょっと待って? 今から? まだ1人も村人がいないのに、どうやって種まきをするの?」

「勿論魔法によって、ですわ」


 そうだった。魔法で農業ができるんだったな。しかし。


「その魔法って、お金がかかるのでは?」

「ええ」

「負担するのは……」

「セシリア様ですわ」

「ですよね」


 人が集まれば人力でできるのに、また出費がかさむのか。何魔法か知らんが、安くはないんだろうな。


「そんなに急がなくても、来年の春からでもいいのでは?」

「開拓の進捗状況を報告すれば、恐らく領主様からセシリア様に『トウモロコシ』の種まきの要請があると思われます」

「何で?」

「トウモロコシの収穫量が増えれば、『冬越し』の家畜を増やせるからです」

「あぁ、なるほど」


 家畜の飼料として必要としているのか……トウモロコシを作るのなら種も買わないといけないよな?


「領主様からの要請を受けられるのであれば、種子代に対して補助、もしくは無償提供の場合もあります」


 これだけの広さだと種の代金も相当なものになるだろうから、いい話ではあるが。


「収穫は? 人集めは間に合うのですか?」

「間に合うと思われますが、魔道具による収穫も可能です」

「でも、その魔道具、お高いんでしょう?」

「ご予算に応じて様々なモデルをご用意できますわ」


 クローディアが営業の人みたいな事言ってる。


「セシリア様ならゴーレムによる収穫が可能では?」


 アシュリーがいい事言った。確かにゴーレムを多数動かせるなら可能かもしれない……ん? アシュリーがじっとこちらを見つめている。どうした? 何となく、探るような目で見られているような気が。見つめ返すとやんわりとした笑顔をうかべる。気のせいか?


「年内に収穫を得られれば、それだけ早く投資金を回収できますわ」

「……そうですね」


 いまいちしっくりと来なかったが、畳みかけるようなクローディアの言葉が決め手となって結局、任せる事にした。

 種まきは風魔法と土魔法で行われ、受粉作業も込みの費用は15万ディール。

 大金の筈なのに何だか安く思えてくるのは、数十億という金が入ると聞かされたからかな? 不思議ダネー。




「わたくし達はまだ作業がありますので残りますが、セシリア様はお帰りになられてもよろしいですわ」

「え? そうなんですか?」

「ええ」


 作業の続きは4日後になったから、それまで何もないここにいるよりは帰った方がいいけど、でもしばらく泊まり込むつもりで来たのに、まさかの日帰り!


「お帰りになる前に、もう少し木を出して頂けないでしょうか?」

「木? あぁ、わかりました」


 木と言えば、農地の上でゴーレム達が枝打ちしていたな。あれも移動させないと。

 シュバルツ、聞こえる? こちらリーダー、シュバルツ隊員応答せよ。


(肯定)


 収納した木を居住区に出してほしいんだけど。


(了解)


 空を見渡しても全く見えないけど、どこにいるんだ?


ヴァーーー……。


 何、この音? サイレンのような、どこか不穏な音が聞こえてくる。これは……『急降下爆撃』の音じゃね? まさか!?


 空を見上げると、青空に黒い点のようなものがだんだん大きく……An-225が真っ逆さまに落ちてくる! おぉい!?

 どんどん大きくなるAn-225の姿。こいつはやべぇ! 墜落か、墜落なのか!? シュバルツ!?


 真っ平らな大地へ垂直に落下していたように見えたAn-225はしかし、あっさりと機体を引き起こすと轟音を響かせながら居住区の上を通過していった。

 何だ、ただの急降下か……って、おいシュバルツ! はしゃぎ過ぎだろう! そんなに楽しいのか? しかし、仮にも輸送機だというのに、何という機動性……。




 降りてきたシュバルツが『収納』から取り出した木を居住区に並べていく。

 どんどん並べて……あっという間に山になった。山のように、じゃなくて山。

 大量の木が積み上げられて山になっている! 高さは20、いや30mぐらい? 伐採した木はどれくらいあったんだ? 


(971557)


 シュバルツはすぐに教えてくれた……97万本だと! そんなにか。どうするんだ、そんな数。

 この木の山はまだほんの一部に過ぎないらしい。シュバルツから全部出す? という雰囲気が。ちょっと待って。


「クローディア、これで足りますか?」

「……ええ、ここはこれで十分ですわ。もう1か所にも置いていただけますか?」


 木でできた山を見てだいぶ引き気味のクローディア達だったが、表情を取り繕ってにっこり、と笑う。でもちょっと顔が引き攣ってますよ? 無理しなくてもいいのに。

 クローディアのリクエストに応えるべく移動する。シュバルツ、An-225に乗せて?


 An-225は搬入口が前にあって、機首が丸ごと持ち上がって開くようになっている。がばり、と上に開いた機首を見上げながらスロープを登って貨物室に入る。


「うわぁ……」


 天井が高い! そして奥行きがめっちゃ長ーい! 何という大空間。

 An-225の貨物室はまるでコンサートホール! 超広いわ。何だこれ。


「広いですわね……」


 一緒に入ってきたクローディアの感嘆したような声が響く。アシュリーは例によってぺたぺたと側面を触って何か確かめている。

 あまりにも広いので、ちょっと貨物室の奥までダッシュで走りたい気分になったけど、ぐっとこらえる。まだ遊ぶ時間ではないからな。


「移動していいですか?」

「ええ、お願いしますわ」


 シュバルツ、頼むわ。


 ゆっくりと音も無く機首が閉まっていく。暗くなる貨物室の中で、機体側面の窓が外から入る光で夜空に浮かぶ月のように見える。その窓にクローディアが吸い寄せられるように近寄っていく。


「外が見えるのですね」


 なぜか嬉しそう。


「ええ、まぁ」


 小さな窓から外を見るのが楽しいのかな?

 その巨体のお陰なのか全く揺れないAn-225に乗って、最初に作った居住区へ向かう。




 ぽつん、と立っている1枚の板(壁)がまるで何かの前衛芸術のよう。

 そんな『第1居住区』(仮称)で、シュバルツがまた同じように木を積み上げ始めたけど、いいのか? また山になっちゃうぞ? クローディア達は何も言わない。いいのか……。


 積み上がった木が居住区の3分の1を占めた辺りでストップが掛かった。


「凄く多いですけど、大丈夫ですか?」

「ええ」


 マジか。これだけ大量にあると加工に時間が掛かりそうだけど、製材の魔道具ってどんなものなんだろうな? ……見せてもらおうか、製材の魔道具の性能とやらを!

 今の、ちょっと少佐のセリフっぽいな。




 さーて、後は帰るだけ。ビアンカ、ビアンカー。ビアンカ隊員応答せよ!


(タイイン? タイインって何ですか?)


 あれ? さっきシュバルツには通じたのに……実は通じてなかった? まぁいいや、今日の作業は終わったので戻ってきて。町へ帰るから。


(え? 帰るんですか?)


 そう、まだ私達には帰れる所があるんだ。こんなに嬉しいことはない!


(えっと、わかりました)


 ……次にパトロール中のゴーレム達に帰還命令を出す。おーい、皆! 早く戻ってこーい!


(わかった)

(了解)


 あら? エクレールとノワールから返事が。一斉送信? そんなつもりはなかったんだけど。

 

 後は……周囲を見渡すと、居住区の外で枝打ち作業を続けているゴーレム達の姿が目に入った。うーむ、あいつらどうしよう? このまま作業を続けさせる……俺がシオリスの町に帰って距離が離れた場合、魔力はどうなるんだ? アシュリー先生に聞いてみよう。


 戻ってきたノワールに木とチェーンソーゴーレム達の回収を頼むと、ひとっ飛びして丸ごと収納してくれた。




「操者がゴーレムから遠く離れた場合、魔力が届かなくなるので内部の魔力を使い切った時点で止まるのですが、セシリア様は遠距離でゴーレム内の魔力残量を感知できますか?」

「えっと、できません」


 遠距離どころか近距離でもできないわ。


「ゴーレムが停止した場所によっては作業に差し障りが生じる可能性があるので、遠距離での制御が難しいのであれば、できればご遠慮いただきたく……」

「そうですか」


 チェーンソーゴーレム達を開拓地に残して、俺がいない状態で作業をさせるという試みについてアシュリーに聞いてみたら、難色を示されてしまった。


 ノワールが収納から出した木を乾燥まで終わった『処理済み』と『未処理』に分けて並べてくれたところで今日の作業は終了。

 じゃあ帰るか。An-225を解除して魔石をMK-Ⅲに……何? エクレール、どうしたの?


(これで帰ればいい)


 エクレールがAn-225の上にべったりとしがみついている。ヤモリか。降りてくれないと解除できないんだけど。

 こっちをじっと見ているが、おもちゃを買ってほしい子供じゃないんだからそんな目で見てもダメですよ?


「わー! 大きいですね! もしかして、あれに乗って帰るんですか?」

「いや、違うよ?」


 戻ってきたビアンカがAn-225を見て目をキラキラさせているが、期待には応えられない。ドラゴンより大きな機体で町に近付いたら未知の魔物と誤認されかねないし、そうなったらパニックになるかもしれないから絶対にダメ!


(がっかり)


 そもそもこの大きさでは町中に降りられないし、また明日飛ばして遊べばいいでしょ?


(いいの?)


 いいですとも。町から遠く離れた所で飛ばすのであれば構わない。


 素直に機体から降りて幼女形態になるエクレール。

 機体に駆け寄って「凄く大きいです!」「素敵です!」などとわーわー騒いでいるビアンカ。

 それはいいとして、他の2機は? 見当たらないんですけど。あんな巨体を見失う筈ないんだが。シュバルツ、ノワール? 収納したのか? したらしい。また明日飛ばしたいからか? ……そんなに気に入ったんだ。

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