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異世界で『魔法幼女』になりました  作者: 藤咲ユージ
第6章 開拓する幼女
106/122

C-2

居住区(予定)ではクローディアとアシュリーがまたテーブルセットを出してお茶の用意をしていた。エクレールと一緒に席に着く。そういえば角カバーつけてなかったな。まぁ、ここにいる間はつけなくてもいいけど。


周りの景色が地平の果てまで何も無さ過ぎて、大変落ち着かない……いや、ぽつんと壁の一部が建っていたな。まるで「モノリス」。触れたら何かに進化しそう。



ビアンカは今どこら辺にいるのかな? と思っていたら森の中でホバー型ゴーレムが見つけてくれていた。すぐ傍にいるな。偉いぞ、ホバー型! ビアンカも休憩に、ってこれ、どうやって伝えればいいんだ? パントマイム?


(休憩ですか?)


ホバー型ゴーレムの視界の中で、ビアンカがゴーレムの顔を覗き込むような姿勢で普通に返事をしている。ビアンカ、その姿勢だと胸元が、中が見えそうなんだけど……あれ? まだ何もしていないのに伝わった?


(何のお話ですか?)


……もしかして、声が聞こえているの?


(はい、聞こえますよ?)


何ですと!? ゴーレムが向こうの声や音を伝えるのは前からだったけど、こちらの声を伝えてはいなかった筈。いつから? 土魔法のレベルを上げたからか?


えっと、クローディア達がお茶を用意してくれているけど、戻って来られる? 警戒はゴーレムに任せて……


(特に疲れていないので、このまま警戒を続けます)


そう、わかった。そのゴーレムも一緒にいさせるね。


これ便利だな。携帯みたいなものか。通話の魔道具もあるけど、あれは相手が限定されているからな。

他の仲間とは念話で話せていたが、これでビアンカとも距離が離れていても話せるようになった。



「こちらは『リード』という紅茶です。ミルクを入れて飲むと一層美味しくなります」


アシュリーが淹れてくれたのは朝とは違う種類の、見た目はコーヒーみたいなほぼ黒といっていい程濃い赤色の紅茶。芳醇な香りが辺りを漂っている。

お勧めに従いミルクを入れて飲んだ味は……ホットワイン? ブドウのような味がするけど、幼女にワインを飲ませる筈はないし、紅茶って言ってたよな? 温かいグレープジュース、かな。


「大変美味しいです」


「お気に召して頂けて何よりですわ」


エクレールはクピっ、と一息で飲んでしまっているけど、それ味わっているのか? すかさずアシュリーがお代わりを勧めている。


ゆったりとした時間が流れる中、微笑む美少女と美女に見つめられながらお茶を飲んでいる訳だが、会話が止まってしまった。

今日が初対面の、何の接点も無かった女の子(しかも貴族)と何を話せばいいんだ? 話題なんて思い浮かばないわ。どうしよう。


休憩中に仕事の話をするのもなんだけど、他に思いつかないから質問タイムにしよう。


「いくつか教えて欲しい事があるのですが」


「何でしょう?」

「何でも聞いてください」


「この開拓に必要な初期投資額についてまだ何も聞いていないので、大まかな数字でいいので金額を教えてください」


なぜか2人は顔を見合わせて困惑している。そんなに難しい質問をしたつもりはないのだけど。


「どれだけ投資するかはセシリア様がお決めになる事なのですが」


オメーが決めるんだよ、って事? 質問の仕方が間違っていたのか。


「経費について教えてください。村の建物の建設費とか人件費とか」


「建設費は壁も含めて約760万ディールです。人件費は、初年度は270万ディール程度を見込んでください」


今度はすぐに回答が来た。しかし、人件費はともかく建設費が低過ぎるような……1200人が生活するんだろう? アパート、あるいは長屋でも作るのか?


「建設費はそれで大丈夫なんですか?」


「ええ、材料費が掛からないので」


壁に使う「板」を家屋や管理施設(役所)の建築にも使うらしい。壁といえば、


「さっきから何度もゴブリンやファングボアを倒しているんですけど、この辺は他にどんな魔物がいるんですか? あまり強力なのがいるようだと壁の強度が気になるので」


こうして話している間にもまたゴブリンが! 今度は自分で操作せずゴーレムに「視界に入った3体のゴブリンを倒せ」と命令してみると、


ズバッ!


すぐに倒してくれたのだが、なぜ「縦に」切る? さっきファングボアを倒したのとは別のゴーレムなんだけど、同じような動きだった。経験を共有するのか?

はぁ。また、グロいの見てしまった……。


「御心配には及びませんわ。この辺りには強い魔物はいません。調査済みです」

「魔力濃度にさえ気を付けていただければ危険な魔物を引き寄せる事もないでしょうから、何の問題もありません」


うーん、そうなのか。でも農地は無防備だから農作業中にゴブリンやファングボアに襲われたら平民の村人には危険じゃね? と聞いたら「走って逃げればいい」って、それ本気で言ってるの? ゴブリンはまだしも、ファングボアはかなり脚が速いぞ?


「魔力強化のできる平民を採用して居住区から遠い農地を担当させるのです。魔物が現れたら走って居住区に戻ればいいのですよ。2~3分程度ならそれなりの速さで走れますから」


マジだった。


「どうしても、というのであれば、厚みを増した板を作って外周を囲う事で対応できますが、先ほどお話ししたように、その分家屋の建設が遅れます」


同じ材料を使うからか。


「なら、製材の魔道具をたくさん借りるというのは?」


「現状では8セットが限界です」


「それだけしかないの?」


「いえ、魔道具自体はあるのですが、転送の魔法に使える魔力に限りがあるのです」


あぁ、そんな話だったな。輸送か……ん?


「その魔道具、魔法袋か収納に入れて運ぶ事はできないんですか?」


「できません。製材の魔道具には空間魔法が組み込まれているのですが、同じ空間魔法の中に入れるとその魔法が壊れてしまうのです」


「そうなんですか!?」


「ええ。空間魔法に空間魔法を内包する事が可能になれば輸送能力が各段に上がるのですが、まだ成功した事が無いのです」


そういえばそうだな。魔法袋の中に魔法袋を入れられるのならいくらでも収容量を増やせるという事になる。というか、俺が思い付く事をこの世界の人間が思い付かない筈がないか。陸送の場合は「特別な台車」を使う、というので察してしかるべきだった。


陸送の場合……では、「空輸」は? その特別な台車ごと魔道具を載せられるような輸送機を作ってみたらどうだろう? 試す価値はありそう。上手くいけば輸送費も削れるし!


「その魔道具と台車の大きさと重さを教えてください」


「製材の魔道具は格納形態時で長さ3m 幅1.8m 高さ1.5m、台車は長さ3.5m 幅2.5m 高さ90㎝、重さは共に約700㎏です」


結構大きくて重い! 後、「格納形態」という表現が気になる。まさか、変形するのか?


台車に載せて運ぶ場合は2段に積むそうなので、高さは実質3.9mになる。むぅ……これは相当大きな輸送機じゃないと入らないな。

輸送機で大きいのというと、ガンペリーとかミデア……ダメだ、見た目でもう空気抵抗が大きいとわかる形だ。アニメの中ならよくてもリアルに飛ばすにはちょっと無理がある。


実在する輸送機の方が無難だな。オスプレイ……もっと大きな貨物室がいる。

うーん、自衛隊のC-2輸送機ならどうかな? 4セットは載せられるから2往復で済むぞ。


土魔法でジェットエンジンは作れないからローターに変更しなければならないけど、直径5mぐらいあれば足りるかな? やってみないとわからない。

という訳で早速試す。


「セシリア様?」


席を立って魔法袋から「重量軽減」の魔石を取り出す。イメージイメージ!


「クリエイトゴーレム!」


もこもこもこもこもこもこもこもこ。


いつもより長い。そして、魔石を取り込んで現れたそれは……え、こんなに大きいの?

目の前の「輸送機」がマジデカい!


スペックは知っていたけど、実物を見た事は無かった。(ネットで見ただけ)

全長全幅は約44m、高さは14mというこの機体は実際に見ると想像以上に迫力があった……圧迫感すらあるわ。


「ほへー」


思わず変な声が出る。首が痛くなるほど見上げていたらクローディアとアシュリーも傍に来ていた。


「せ、セシリア様。これは一体?」


口を大きく開けて唖然とした表情の2人。また女の子らしからぬ顔を……まぁ無理もない。俺も割と驚いているからね!


「C-2輸送機です」


「シーツー?」

「ユソウキとは?」


あれ? 翻訳してくれないのか? 輸送機は、あぁ、「機械」や「飛行機」がないと通じないのか。飛空船はあるのにな。


「空を飛ぶゴーレムです」


「まさか、飛空船ですか!?」


ゴーレムゆうてるやん。機首にゴーレムいるでしょ?

機首の下側にちょこんとくっついているゴーレムが凄く小さく見える。船首像みたいになっているな。格好良いと言えなくもない。


さて……MK-Ⅲとは比べ物にならない大きさのC-2がローター2つで離陸できるか不安だったので、4つのローターの推力を全て使えるように「ティルトウィング」構造にしてみたんだが、これで浮き上がると信じたい!


試験飛行の前に内部を確認しておくか。機体の後部に回る。

後部に貨物室に搬入する為のハッチがあるので開いてみる。ハッチオープン!


音もなく滑らかに開いたハッチはスロープになるので登って中を見ると、


「うわぁ……」


奥行きが長ーい。ボウリングができそう! 幅は4レーン分ぐらい。球を転がしてみたいわー。

トンネルみたいに丸い側面に明り取り用の窓(穴を開けただけ)を3つずつ付けてみたけど、ハッチを閉めたらだいぶ暗くなりそう。外側には風を巻き込まないようにカウルを付けてあるけど、窓を塞いで照明の魔道具を持ち込んだ方がいいかな?


「これで魔道具を運びたいって言ったら許可出ますか?」


「……少し触ってみてもいいですか?」


「ええ、どうぞ」


アシュリーが貨物室の床や側面を触って何か調べ始めたけど、何がわかるんだろう?

例によって2人はくっついた状態でひそひそ話をしている。俺もまぜて? 無理か。


「セシリア様、実際に飛行しているところを見せていただけますか?」


「勿論です」


では、飛行開始!



長大な主翼が後ろ側を支点にしてヒンジのように90度持ち上がると、4つのローターが回転を始める。

下向きの風が地面に叩きつけられて……凄い風圧だ! マズい、距離が近過ぎる! このままでは吹き飛ばされる!?


今すぐ走って機体から距離を取るか、ゴーレムを作って乗り込む? あるいは土壁の方がいいのか、と迷っていたらエクレールがすぐ横にいたのでとっさにその小さな背中に隠れる。エクレール、風魔法で何とかして!


すぐに風の圧力を感じなくなった。ありがとう、助かったわー……あ、ローターを止めればよかったのか。そういえばクローディア達は? 飛ばされてないか?


2人は(たぶんアシュリーが作った)壁の内側から輸送機の方を見ていた。まるで「家政婦は見た!」みたいな姿勢で。大丈夫そうなので離陸を続行!


(主、あれは?)


あれ? いつもの飛行型ゴーレムだよ。いつもよりちょっと大きいけどね!

離陸まで時間掛かるかな? そうでもなかった。


ゆったりと浮き上がるC-2。ゆるゆるとした動きでランディングギヤが引き込まれていく。ちゃんとタイヤの形をしているけど、あのタイヤっぽいの回るのかな?


順調に上昇しているC-2。でもMPの消費が凄い事に!


MP 253/280


離陸だけで20以上使っている!? 燃費悪っ! 急いで水平飛行にしないと!

主翼を倒して飛行モードに移行。揚力を感じたところでバンクさせて上空で旋回。


ふぅ。揚力があるとMP消費はだいぶマシになるけど、MK-Ⅲより減るのが早い。1分で2~3ぐらい減っている。空荷状態でこれでは魔道具を積んだらどうなる? 何か積んで確認する必要があるな。


(乗ってみたい)


エクレールから唐突なリクエストが。今から? 別にいいけど、じゃあ一旦降ろして、ってまた服を脱いでいる!? ドラゴンになるの? 「乗る」って言ってなかったか?


俺に服を手渡すとすぐにドラゴンになって飛んでいく。うーん、貨物室に入るつもりか? ハッチは飛行中でも開けられるけど、ドラゴン形態だと入るのは無理だと思うんだけど。


旋回中のC-2輸送機に接近したエクレールは上方に回り込むと、そのままC-2の上に「乗った」。おい。

「乗る」ってそのままの意味だったの!?


主翼の上にべったりと張り付いているエクレール。操縦していてもずっしりとした手応えが伝わってくる。エクレール、体重何キロ? 言ってみ? 恥ずかしがらなくてもいいよ。


(知らない)


そうか……測れないよな、体重。知っている筈がなかった。でも重さがわからないとテストにはならない……。


全長25mぐらいのドラゴンが上に乗っているので、当然乱流が生まれて飛行しにくくなっている。特に方向舵の効きが悪い。エクレール……。


乗るなら幼女形態で、と言いかけたが、翼を大きく広げて風を切っている姿が何だか楽しそうだから、まぁいいか。



しばらく飛ばしていたけど、一応飛ぶ事は確認できたからもう降ろしてもいいかな? 


(私も飛ばしたい)


どうやって? できるの? できるらしい。従魔だから?

えーと、どうやればいいんだ。ユーハブコントロール! これでいいの?


ふっ、と手応えが消えた。マジか。

すかさず機首を持ち上げて上昇していくC-2。俺は動かしていないから本当に操縦が移ったようだ。エクレール、街道の方には行くなよ? 人目に付くのはマズい。


(わかった)


エクレールから嬉しげな雰囲気が伝わってくる。自力で飛べるのに、何が楽しいんだろうな?

C-2は青い空に大きなループを描いてそのまま宙返り! 更に機体をバンクさせて旋回に入ろうとしている……動きが鈍いな。


(主、曲がりにくい)


えーと、それは……。

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