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異世界で『魔法幼女』になりました  作者: 藤咲ユージ
第6章 開拓する幼女
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報酬

「次はここから2.5㎞先になります」


 随分遠いな。測量を終えて羊型魔石獣に乗ったアシュリーに続いて今作ったばかりの水路の上をMK-Ⅲで飛行していく。


 一直線に延びる水路はまだ水が流れてないから水路というより道路みたい。まるで高速道路を走っているかのよう! これは中々楽しいけど、どうせならアシュリーのように完全に水路の中に入るぐらいに低く飛べばよりそれらしくて気分も乗るのだが、水路の幅は4mしかないからこれ以上低く飛べない。(ローターが接触してしまう)


 前を行く羊さんは幅1mもないぐらいコンパクトだ。あれぐらい小さいと汎用性が増して何かと捗るのだろうが、MK-Ⅲをもっと小さくする為にはティルトローターに代わるアイデアがないとなぁ……時間があったら考えてみよう。


 飛行を始めて2分程で、水路脇に刺さった白い板が見えてきた。あれが2.5㎞地点か。


「ここから5㎞の長さの水路を作ってください。5㎞先に目印として反射板が設置されています。また見本を作りますね」


 アシュリーがさっきと同じ大きさ、形状の水路(の一部)を作って見せてくれる。今度は横方向だが同じ物なら簡単だ。

 上空にMK-Ⅲを飛ばして確認しながら水路を延ばしていくと、前方にまた白い板が2枚。ここまでが5㎞か。MP12を消費してすぐに完成。


「ところで、反射板って?」

「この測距儀から魔力を照射して、反射板に当たって返ってくるまでの時間で距離を割り出すんです」


 ゴツい双眼鏡みたいな魔道具を使いながら説明してくれる。それ、レーザー測距儀と同じ原理じゃないの? 世界が違っても同じような物を思いつくのか、それとも転生、あるいは転移者がアイデアを持ち込んだのかな。


「次は5㎞先です」

「遠くない?」


 その距離だと「1面」に水路が横方向には1本しかない、という事になるのでは?


「大丈夫です」


 何が大丈夫なのかわからないけど、プロが言うのなら間違い無い……のか?


 再びMK-Ⅲに乗って水路の先へ。

 む? 飛行している最中に、ゴーレム達の視界を映しているマルチウィンドウ内に動きが。森の中をパトロールしているゴーレムが何かを発見した!


 木々の間を茶色くて大きな何かがゆったり、もそもそと動いている……数は2。

 あれは、ファングボア! 久しぶりに見る気がするけど、どこにでもいるんだな、こいつら。

 ゴーレムの動きを止めて様子を窺ってみるが、向こうもすぐにこちらに気付いたらしい。警戒するような仕草、と思ったら突っ込んできた! 本当に好戦的ぃ!


 名前通りのその鋭い牙を構えて真っすぐに突っ込んでくるファングボア。こちらはチェーンソーゴーレムだから当然、


ズバァッ!


 右腕のチェーンソーを前に突き出しているだけで向こうが頭というか、顔からぶち当たって勝手にやられてくれたのだが、


「うわぁ……」


 何てグロい!

 チェーンソーを縦に真っすぐ構えていたからファングボアも縦に真っ二つに!

 一応戦闘だから、ゴーレムの視覚をメインにしていたので間近でグロい画像を見てしまった! 何という事でしょう。これ、夢に見るレベルだわ。切れ味が良過ぎて断面が綺麗なところがまたニクいね! 肉だけに。


グゥオオオオッ!


 仲間がやられた事で激高したもう1体が雄叫びを上げながら突進してくる!

 バカめ! 今、やられたところを見ていたんじゃないのか? 学習しない奴だな!


ズバァッ!


 勿論こいつも突き出したチェーンソーによって真っ二つに! あっ!?


「うわぁ……」


 またもやグロ画像が! 俺のバカバカ! なぜ同じ事をした!? また間近で見てしまったではないか! 学習しないのは俺だった! はぁ……。


 凄惨な現場に立ち尽くす俺。じゃなかった、ゴーレムだったわ、今。えっと、こいつをどうにかしないと。

 これ、食べられるかな? とりあえず血抜きをする。だくだくだく。

 後は回収を、って魔法袋持ってるのは俺だから届けないと。


 そんな事をしている間に、例によって白いスキー板みたいな反射板が突き刺してある水路脇に到着。魔法袋を持っていかせるのは……地面がボッコボコだからな。こういう地形ならホバー型の出番だ。

自分で動かしてもいいけど、まず『命令』を試してみよう。


 ホバー型ゴーレムを作成。魔法袋を持たせて『ファングボアを倒したチェーンソーゴーレムの所へ持っていけ』と命令する。ちゃんとできるかな?


フォオオオオ!


 ふわり、と浮上して森へ向かって行くホバー型。その後ろ姿を見守る俺。まるで『はじめてのおつかい』みたいな。


「今のゴーレムは?」

「ただのおつかいなので気にしないでください」


 5㎞地点で水路を完成させる。次は何かな?


「次は居住区の整備なのですが、まだ作業は続けられますか?」


 アシュリーが心配そうな顔をしている。


MP 31/280


 そろそろ心許なくなってきた。居住区というと、あれかな?


「壁を作るだけなら何とか。家をたくさん作るとなると……」

「壁は魔法では作りません」

「え?」


 違うの?




『居住区』は4つある面のそれぞれに1つ、ほぼ中央に作るのだが、具体的な広さは予定図ではわからなかった。


「ここが居住区になるんですか?」

「ええ」


 だだっ広い更地に突き刺さった4本の(スキー板みたいな)反射板。クローディアとアシュリーがぴょんぴょん飛び跳ねるように飛行しながら測量して決められた広さは1辺が400mの正方形。さっき作った水路にくっつくような位置になる。


「結構広いですね。ここ、何人ぐらいの人が住むんですか?」

「300人前後です」


 ……少なくね? ここだけなのかな?


「居住区はあと3つ作るんですよね? そちらは?」

「同じです。他も300人程度になる予定です」

「もしかして、この村の総人数は1200人?」

「はい」

「少ないような」


 単純に考えると10㎞×10㎞で100平方㎞……100000000平方mか。それを1200で割ったら83333……8.3ヘクタール!? いやいやいや、それは広過ぎじゃないの?


 『ドーム球場何個分』という表現がよく使われるけど東京ドームが確か4.7ヘクタールだから、東京ドーム約1.7個分だ。ちなみに札幌ドームは5.5ヘクタールだから1.5個分。


 たぶん農業機械など無いであろうこの世界で、1人当たり8.3ヘクタールの農作業なんてブラックどころではないわ! 自分が作った開拓村がそんな超過酷な職場になるのは嫌なんですけど。


「大丈夫ですわ」

「十分な数です」


 2人とも問題無い、という態度だけど、本当か? もしかして、農作業にも魔法や魔道具を使うのかな? でも平民を集めるという話だったような。

 信用していいのだろうか? 実際の農作業を自分の目で確認した方がいいよな? そうしよう。




「セシリア様にやっていただきたいのは地面を均して固める作業です」

「それだけ? 他には?」

「居住区ではそれだけです。後は農地を耕して魔力を注いでいただければ、それで終了です」


 何だかすごく早く進んでいるような。開拓地の右半分はまだ回収作業が終わってないから手付かずだけど。

 地面を平らにして固めるだけならすぐにできる。軽くイメージして、消費MPは2だった。今までで一番簡単な魔法だからか、耕地魔法と変わらないかな? 

 そういえば、1MPで最大どれだけ耕せるのか確認した事なかったな。後で確認しないと。



「次は壁についてご説明します」


 平坦になった居住区の端っこでアシュリーが土魔法で「溝」を掘った。長さは1.5mぐらい、幅は30㎝かな。


「これは壁の基礎の部分です」

「まさか……」


 嘘でしょ? 居住区全体を囲う壁の基礎がこれ?

 にわかには信じ難いが、アシュリーは至って真面目な顔で説明を続ける。


「この基礎に『コンクリート』を流し込みます」

「コンクリート!?」


 今、コンクリートって言った? でも口の動きは全然違っていたから『謎翻訳』か。コンクリートのようなもの?


 アシュリーが何も無い空間から取っ手とレバーのような物が付いたホース、いや、ノズルっぽいものを取り出すと、その先端から白い液体がドロドロたぷんたぷんと溝に注ぎ込まれる……いきなりか。もう施工?


 溝がコンクリート? で満たされると今度は白っぽい色の板を取り出す。幅1.5mぐらい、長さが3mぐらいある。大きいな!

 その板をコンクリートでいっぱいになった溝にぶっ刺す! 何だか雑ぅ。


「魔力を注いでコンクリートを固めます。これで壁の完成です」


 料理番組か。3分すらたってないぞ。これが壁とか、ギャグの一歩手前ではなかろうか? 

 高さは2.5mぐらい。という事は溝の深さは50㎝か。そして板の厚さが2㎝ぐらい。って、そんな壁あるか! 薄過ぎだろ!


「あの、ついさっき森の中にファングボアがいたんですけど。この壁には強度的に若干の不安が」


 もっと頑丈な、別なのがいいなぁ、と暗にアピールしてみる。


「大丈夫ですわ」

「全く問題ありません」


2人とも自信ありげ。マジで?


「ご心配でしたら、試してくださっても構いません」


 いいのか? 本当に試すよ?


 2号機を作成。壁に対して10mの助走距離をとる。

 そしてファングボアの突進を再現する勢いで、肩から壁に体当たり!


ドカッ!


「おぉっ!?」


 壁が2号機を受け止めている! 真っすぐ立ったまま、壊れていないぞ! 

 壁に近寄って2号機がぶち当たった辺りを見てみる。わずかにへこんでいるかな? だがそれだけだ。これは凄い。でも当たった瞬間、壁がしなるような動きをした気がするんだけど、気のせいかな?


「いかがでしょう?」


 ドヤッ、みたいな顔のアシュリー。


「凄いですね。これなら大丈夫そうです。ただ、少し壁が動いたように見えたんですけど」

「ええ。このコンクリートは固いだけでなく弾力性もあるので、その弾力で衝撃を吸収できるのです」


 動いたのは板じゃなくコンクリートの方だったのか……弾力? コンクリートに? どうやら俺の知っているコンクリートとは違う物らしい。むしろ、免震構造に使われるゴムみたいな?


「これで開拓地全体を囲えばいいのでは?」

「外壁は無くてもよいのですが、セシリア様が建設したいのであれば、それは可能ですわ」

「通常は居住区の壁、次に居住区内の建物を建設しますが、村民用の家を後回しにすれば外壁は作れます。冬までに必要な数を建てる事ができなくなるので、家無しで冬越しをさせると多少平民の数が減りますが」

「住居優先でお願いします!」


 あっぶねぇ! 俺がブラックな環境を作ってしまうところだった!

 この壁も居住区内の建物も実際に作るのは平民の職人らしい。


「という事は、その人達の給料も払わないといけないですよね?」

「ええ」


 人数はおよそ100人、金額は月25万ディール、日本円で2500万ぐらい。給料はちゃんと払わないと!


「ところで、このコンクリートのお値段は?」

「1m当たり100ディールです」


 居住区を囲うと1600mだから1600万円か。この性能なら安いな。


「板、いや壁材の方は?」

「少し説明が必要です」


 さっきアシュリーが取り出した『板』はここで伐採したドゥーロの木から作られた物だった。(予め試作していたらしい)つまり原材料はタダ! 素晴らしい!

 だが話はそれで終わりではなかった。


 この、木を全自動(人手がいらないという意味)で板材に加工する魔道具があって、それが必要なのだと。


「その魔道具を買えと? でも、お高いんでしょう?」

「はい、非常に高価なので購入ではなくリース契約を結んでいただきます」


 嫌な予感。


「おいくら?」

「木を板状に切る魔道具とその板を接合する魔道具2台で1セットなのですが」

「接合?」

「ええ、この壁は木を横に貼り合わせて作られています」

「横に!?」


 もう一度壁に近付いて表面をよーく見てみると、縦に線が何本も……マジか、本当に横に何枚も繋がっている! それであの強度か、厚さは2㎝ぐらいしかないのに! どんな技術、いや、魔法か?


「これは魔法でくっついているんですか?」

「いいえ、接着剤です」


 まさかの接着剤! すげー強いな、その接着剤。


「このコンクリートと接着剤は昔シオリスの技官が開発した物で、国の発展に貢献するものだと高く評価されて、国王陛下から表彰されました。今では広く王国内で使われています」


 アシュリーがどこか誇らしげな表情で教えてくれた。ふーん、なかなかやるではないか、シオリスの貴族も。


「凄いですねー。あ、すみません。話の途中で。えっと、それでおいくらでしたっけ?」

「月2万ディールになります」


 工作機械のような物だから高いのは当たり前なんだろうけど、


「1セットでいいの?」

「この規模の開拓地だと8セット必要です」


 16万ディール……1600万円か。それ、これから開拓の仕事が終わるまでずっと払い続けなきゃならないんじゃないの? ここ1か所だけじゃないんだろう? そして必要経費はこれだけではない。まだまだたくさんある。

 覚悟はしていたが、ガンガンお金が出ていくんだなー。


「後、言い難いのですが、魔道具をここまで運ぶ輸送費も必要です」


 何でそれが言い難いんだ? まさか。


「いくら?」

「16万ディール掛かります」


 またか。リース料と輸送費が同じって。


「なぜそんなに高い?」

「この魔道具は大きくて重いので、転送の魔法陣を使用する為の魔力も多く必要になるのです」


 その魔法陣の使用料(魔力代込み)が1600万円か。高い気がする。自分で運べばいいんじゃね?


「陸路で自分で運んでもいいですか?」

「あまりお勧めできません」


 ・陸路だと10日以上掛かる上、魔道具が精密なので運ぶ際に振動を受けない特別な台車が必要

 ・その台車の使用料も高いだけでなく、高価な魔道具なので輸送中は護衛を付ける決まりがあって、日数が掛かるとその護衛代も高くつく


「陸路でも12万ぐらい掛かるのであまり変わりません」


 うーむ、何かアイデアがありそうなものだが……考えてみよう。




「お疲れですか? そろそろ休まれますか?」


 ちょっと暗い顔をしていたかもしれない。クローディアが心配して声を掛けてくれた。


「別に疲れてはいないです。出費について考えていただけで。たくさんだなぁ、と」

「収益に比べれば微々たるものでしょう?」


 その収入はいつ入るんだよ……まだ収入について具体的に聞いてなかったな。


「この開拓村でどれくらいの収穫が得られるんですか?」

「それは種類にもよるのですが……例えばトウモロコシの場合、重さにして……」

「クローディア、セシリア様がお知りになりたいのは収穫量ではなく収穫によって得られるお金では?」


 アシュリーがいい事言った。そう、知りたいのはお金の話だよ!


「そうですか? ……金額で言うと、およそ4500~5000万ディールになりますわ」


空耳かな?

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