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異世界で『魔法幼女』になりました  作者: 藤咲ユージ
第6章 開拓する幼女
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開拓してます

シュバッ! ……ドォオーーン!!


ズババッ! ……ドォオーーン!!


轟音が響き、揺れまくる開拓地。


エクレールの「ウィンドカッター的な」大魔法を目の当たりにした俺は、木を切り倒す作業を全面的に彼女に頼る事にした。何しろ効率が違い過ぎるからな。

チェーンソーゴーレムを使って10㎞四方程もある森を切り開くにはどれだけ日数が掛かるかわからないが、エクレールなら今日中にでも終わらせてしまいそう!

手の空いたゴーレム達は倒した木の枝を切り落とす作業に回せばいい。


改めてエクレールの魔法を上空から観察すると、一撃でおよそ縦5㎞、幅は2~2.5㎞ぐらいの範囲で木々が切り倒されている。ごっそりと森が削られていくその様は何かの冗談のようにも思えるほど非現実的な光景だ。ドラゴン強いよドラゴン!


この開拓地は大きく分けて4つの面からなる予定なのだが、そのうちの1面(左下)を切り開く作業が早くも終わろうとしている。

シュバルツによる木の回収作業もめっちゃ早い! ごみを吸い取る掃除機みたいにどんどん木が「収納」されている。一度に10本ぐらい吸い取ってないか? そして全く吸引力が落ちない! (きっとサイクロン方式)


ノワールの方は最初は切り株を一つずつ引っこ抜いて収納していたので時間が掛かっていたけど、途中から広範囲の切り株を周囲の土ごとまとめて「収納」して、後から土を出すというやり方に変えてシュバルツと同等の速さまでスピードアップしている。頭良いな、ノワール。皆のお陰で開拓作業がさくさくと進んでいくよ!


そんな感じで今日中にも1面を農地にできそうなんだけど、これだけ森を切り開くのなら別にこの場所じゃなくてもいいような? 新規開発と変わらんぞ。

何か、この場所でなければならない必然性があるのかな? 2人に聞いてみるか。


クローディアとアシュリーはどうしているかというと、ぴったりとくっついて顔を寄せ合って何やら話している模様。何その距離?


「ちょっといいですか? 聞きたい事があるんですが」


2人に声を掛けると、すぐにしゃがみ込んで目線を合わせてくれるクローディアとアシュリー。そこまで気を遣わなくてもいいんだけど。っていうか、顔が近い! 近過ぎて2人から何だかいい匂いがする! 距離感おかしくない?


シュゴッ! ……ドゴォオオーーン!


「……何でしょう?」「何でも聞いてください」


近いのはうるさいからですね、わかりました。


「えっと……ここが再開発の場所に選ばれた理由は何ですか?」


「それはですね」


キスしそうなくらい近い距離でクローディアが説明してくれた。


1 水の確保が容易

2 土地が平坦で農地にしやすい

3 「魔力溜まり」の跡だから

4 主街道に接続する道が残っている

5 近くに交流できる村がある


他はわかるが3がわからない。


「『魔力溜まりの跡だから』というのは?」


「この廃村は魔力溜まりが枯れた跡に作られていたのですが、枯れた跡には『枯れたまま』と『魔力が戻る』の二通りがあるのです。ここは少しですが魔力が戻ってきています。今後更に戻る可能性が高いので選ばれたのですわ」


なるほど、勉強になります……それはいいのか?


「魔力が戻ったらまた魔物が集まってくるんじゃ……」


「何もしなければそうなりますが、農地にしてしまえば農作物が魔力を取り込むので問題ありません」


アシュリーも説明に加わる。むぅ、専門家がそう言うのなら信用していいのか?


「すると、ここはいい場所なのかな?」


「えぇ、そうですわね」


「そんないい場所がなぜ廃村に?」


「おそらく井戸が枯れたから、ですわ」


「え?」


「周辺の調査を行った結果、井戸を掘って水を得られる場所が複数あるとわかったのですが、この村にはそれがわかる人間がいなかったのでしょう」


クローディアの言う「水を得られる場所」というのは開拓予定図にあった居住区の位置らしい。一番近い所でもこの村から2㎞以上離れている。それ森の中じゃん。村の中には井戸を試掘した跡が多数あったそうだが、村の外じゃわかる訳ないよな。

この村は平民の開拓村だったそうだからクローディアのような地下の水源を感知できる水魔法使いがいなかったんだろう。


「仮にわかったとしても、平民ではこの森を切り開くのは難しいでしょう」


「そうですわね」


ん? 何か2人だけでわかり合っているけど、俺にはわからないよ?


「先ほどご説明したようにこの森の木は非常に硬いので、高性能な魔道具がなければ平民では切る事が困難だと思われます」


俺の表情に気付いたアシュリーが説明してくれる。そうか、チェーンソーゴーレムがすぱすぱ切っていたからつい忘れがちだけど、この木は硬いんだったな。あれ?


「えっと、でもこの村は森を切り開いて造ったんじゃないの?」


「森の中の魔力溜まりが枯れると周辺の木も枯れて失われてしまうのです。その後に偶然ここを見つけた者が開拓地にしたのでしょう。木を切る手間が省けますから」


「枯れていても切る必要はあるでしょう?」


「単に枯れるだけでなく、消えてしまうのです」


失われる、って言葉通りの意味なのか。何というファンタジー。常識が違い過ぎるぜ。というか、そんな理由なのか。




エクレールによる伐採作業は昼頃には終わってしまった。お疲れー。

ちょうどいいから昼食にしよう。


食事をしないシュバルツとノワールは作業を続けるらしい。

休憩しないの? と聞いたらしない、という返事が。張り切っているなぁ。


他の面子に声を掛けると皆集まってきた。2人の貴族は何を食べるのかな?

またどこからかテーブルセットを取り出すアシュリー。


「それ、どこから出しているの? 魔法袋じゃないですよね?」


「『収納』からです」


さらっと答えてくれたけど、収納!?


「凄いですね、収納が使えるなんて」


「貴族であれば誰でも使えます」


そうなのか。それはあまり嬉しくない情報だ。

入れられる量には個人差があるそうだが(主に魔力量によるらしい)、貴族は一見手ぶらに見えても実際は武器や毒物を持っている可能性が常にある、という事だな。それに取り出す動作が速い! これ、「魔法で武器を作る」より危険なんじゃね? 何か対策を考えた方がいいかも。



「私達はお弁当を持ってきたのですが、お2人は?」


「これですわ」


クローディアが(収納から)取り出したのは、筒? 2本の水筒みたいな物。

まさか、栄養ドリンクではあるまいな?

片方の筒から白くて丸いピンポン玉みたいな物を出して手の平に乗せて見せてくれる。


「それは?」


「携帯糧食ですわ」


そう言って口の中に優雅に放り込むと、もう1つの筒(蓋がコップになっていた)から注いだ液体をゴクゴクと飲んで……まさか。


「それが昼食?」


「ええ」


「まさか、それで終わり?」


「そうですわ」


そうですわ、じゃねーよ。何て寂しい食事なんだ。朝の優雅で上品なお茶会と違い過ぎる!

アシュリーも全く同じ物を食べ終わっていた。フルコース料理を食べろとは言わないが、これはあんまりだろう。


「皆さんはごゆっくりどうぞ」


さっさと席を立とうとする2人。おいちょっと待て。


「お弁当がたくさんあるので、よかったら少し食べてくれませんか?」


リディアが作ってくれた弁当なのだが、量が多い! スーツケースみたいに巨大なバスケット(しかも2つもある)にぎっしり詰め込まれたサンドイッチだ。

いくらビアンカがたくさん食べるといっても、これは食べきれない量だろう。なぜこんなに気合が入っているのか。


「嬉しいですわ。ご招待をお受け致します」「ありがとうございます」


にっこり笑って座り直した2人の前に、サンドイッチの山とカップに注いだ野菜スープを提供する。ナイフとフォークを使うと言い出したらどうしよう? と思ったが、幸い2人とも手掴みで食べ始めた。


「おいいしいですわ!」「これは、蟹ですか?」


「蟹です。たくさん狩りました」


4種のサンドイッチの1つはたっぷりの蟹肉をマヨネーズで和えた蟹サンド。

プリプリとした蟹の身の甘みとマヨネーズの相性は抜群だ! こいつは旨い!

他の3つはオーソドックスなBLTサンドとたまごサンド。これも丁寧に作られていて最高に旨いぜ。さすがリディアだ。でもあと一つは何だろう、これ? ローストビーフっぽい物が挟んであるけど、牛肉の味ではないような? 何肉なんだ?


「ビアンカ、これ何の肉かわかる?」


「これはハイオークの肉ですよ」


「ハイオーク……」


初めて食べたけど美味しいじゃねーか。確か、外見は「直立した豚」みたいな魔物の筈なのに、豚とも牛とも違う、何とも言えない旨さ。見つけたら絶対狩ろう!


「そういえばビアンカはずっと周辺警戒をしてくれていたけど、異常なかった?」


「ゴブリンがいましたけど、数が少なかったので私1人で倒しました」


「ゴブリン……」


前回の時に一通り森を探索してゴブリンを狩ったつもりだったけど、またか。

あいつらすぐに増えるな。それともどこか別の場所からやってきたのか?


「何体?」


「計7体です」


大きな音を聞きつけて様子を見に来たのかもしれない。


「引き続きよろしくね」


「はい!」


元気良く返事をしてがっつり食べるビアンカ。クローディアとアシュリーも笑顔を浮かべながら優雅に食事をしている。クローディアは4種類のサンドイッチを万遍なく食べているがアシュリーは蟹サンドを何度も選んでいる。蟹が好きなのかな? わりといい雰囲気だ。この雰囲気の中なら聞いてもいいかな?


「クローディア。朝の事なんですけど」


「何でしょう?」


「何か予定変更があったとか」


そう聞いた途端、2人の貴族は顔を見合わせて何だか気まずげな雰囲気に。あれ?


「えっと、それは、その……」


今まで何を聞いてもすぐに答えていたのに、急にクローディアは渋るような様子。


「つまりですね、えぇ……」


おい、明らかに今何か言い訳を考えているだろう?


「クローディア。わたくしが説明致します」


意を決したようなアシュリーの声。


「よろしいのですか? それは……」


「わたくしの責任ですから」


何だか緊張感が高まっている。何があるというのか……ゴクリ。


「今朝この地までご案内しなかった件について、セシリア様にご負担をお掛けした事を深くお詫び致します。ですが、ご一緒した場合、よりご迷惑をお掛けしてしまうのです」


キリッ、とした顔で説明を始めるアシュリー。


「迷惑?」


「それは、わたくしの魔石獣による移動速度が遅いからです」


「え?」


「ご覧になっていただく方が早いかと」


席を立ったアシュリーは手の中の白い魔石を俺に見せた後、その魔石を地面に放り投げる。すると、ふわっ、とした感じの何かが……何ぞこれ?


「これは?」


「わたくしの魔石獣です」


そうなのか。俺には「ふわもこ」のかわいい羊さんにしか見えないのだが。

全長は2mぐらいで実に丸々もこもこしている。羊毛がたくさん取れそう。

よく見れば肩の辺りに小さな羽が付いている。魔石獣って空を飛ぶんだっけ。でも見るからに空気抵抗が大きい感じ。これが飛ぶのか。


「これ、どれくらいの速さで飛ぶんですか?」


「時速約100㎞です」


意外と速かった。


「領主様からセシリア様は大変強い力をお持ちだと聞かされたので、きっと魔石獣による飛行速度も速いだろうと」


「ええ、まぁ」


魔石獣じゃなくてゴーレムだけど。飛行距離と時間から考えると少なくとも時速200㎞以上なのは間違いない。


「わたくしはあまり魔石獣が得意ではなくて、わたくしがいる事で移動に時間が掛かってセシリア様が不快になられるかもしれないので、先に現地に移動してお待ちする方がいいと判断したのです」


神妙な顔で話すアシュリー。魔石獣に得意とか苦手とかあるんだ。

しかし、めっちゃ気を遣われているな! 何もそこまで……でも、実際に倍以上の時間が掛かっていたらもっと速く飛べるのに、とか思っていた可能性も無きにしもあらず……もしくはシュバルツ達みたいに引っ張ってあげるよ、なんて言っていたかも。それは貴族的にはプライドが傷付くかな。


クローディアが言いよどんでいたのはアシュリーの体面を慮っていたからか? 中々気を遣っている、と思いながら彼女の顔を見ていたら、


「わたくしの魔石獣もご覧になりますか?」


と言われてしまった。そういう意味で見ていたんじゃないけど。


「え、ええ」


ついそう答えると、クローディアは銀色の魔石を取り出して地面に投げた。色が違うのか。

すぐにすっ、と背の高い何かが現れる……何だこれ? フレーム?


クローディアの魔石獣? は銀色に光る骨格、みたい。

高さ2mぐらいだが頭が無いし、腕も無い。代わりに肩から翼っぽいものが生えている。

胴体部分も空っぽで腰の部分? には椅子らしきものがあって、その下にある2本のロボットのような脚で立っている。魔石「獣」じゃなかったのか? 獣の要素がほとんど無いんだけど。パワードスーツですって言われた方がしっくりとくるわ。


「これ、どうやって乗るの?」


思わず呟くと、


「こうですわ」


乗り方を見せてくれた。

クローディアのロングなスカートが縦に2つに分かれてくるっ、と足に巻き付くとズボンみたいになった! 何それ!?

そして空っぽの胴体に入ると両足をズボッと「魔石獣」の脚の中に入れておもむろに椅子に座る。


パワードスーツ装着! みたいな。何だか強そうだけどコレジャナイ感がひしひしと……飛んだら速いのかもしれない。


「これはどれくらいの速さ?」


「クローディアは凄いのです! クローディアは中級貴族なのですが、上級貴族に遜色ない程の速さで飛ぶ事ができるのです!」


「お、おう……えっと、どれくらい?」


クローディアに聞いたのにアシュリーが説明を始めた。


「上級貴族はおおむね時速160~180㎞ぐらいですが、中には時速200㎞を越える方もいらっしゃいます。そして、クローディアは時速170㎞以上で飛ぶ事ができるのです!」


さっきまで神妙な顔をしていたのに、急に熱く語り始めたアシュリー。どうした?




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