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異世界で『魔法幼女』になりました  作者: 藤咲ユージ
第6章 開拓する幼女
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開拓中……

 32体のゴーレムを華麗に駆使して木を切りまくる俺! と思っていたら、ゴーレムは命令すれば動くなどという、衝撃的な話を聞かされた! 嘘だろ……マジで?


「それは、本当の話なのですか? (震え声)」

「えっ? ええ、勿論です」


 そうなのか……本当ならかなりショックなんだが……試せばわかる事だな。よし。


 チェーンソーゴーレム達の動きを一旦止めて、次に全てのゴーレムに木を切り倒せと『命令』してみる。


 すると……何という事でしょう! ゴーレム達はそれぞれ勝手に動き出すと、チェーンソーを作動させて手近にある木を切り始めた!

 おおお……俺は今、間違いなく動かしてないぞ! しかも、最初に魔法袋から取り出したゴーレムや動かせなかった残りの28体も起動して森へ入って木を切り始めている……これが本来の使い方なのか?

 ちょっと呆然としてしまった。いや、ちょっとどころではないが。


 ま、まぁいいだろう。新たなゴーレムの使い方を知る事ができた、とポジティブに受け止めようじゃないか。

 次々と森の木々を切り倒していくゴーレム達。操作しないで済むって楽だなぁ。


メキメキメキ! ドーン! グシャッ。


 む? 音を立てて倒れていく木々を見ていたら、その倒れた木に押し潰されているゴーレムがいる事に気が付いた。それも、1体や2体ではないぞ!?


 どうやらゴーレム達は他のゴーレムのいる位置など一切考慮しないで切りまくっているらしい。その結果、切り倒された木の下敷きになっているゴーレムが続出している! コントか! 何をやっているんだ……大丈夫なのか、これ?


 ……大丈夫らしい。

 倒れた木に押し潰されたゴーレムはグイッ! とその木を押し退けて起き上がると、何事も無かったかのように木を切る作業を再開している。

 さすがゴーレムだ。倒れた木が当たったぐらいでは何ともないぜ! 自力で復帰するというのもいいね!


 そんな、わりと雑な感じの作業ではあるのだが特に問題は無さそう……ん? 待てよ? 直接操作しなくてもいいという事は、その分動かせるゴーレムの数はもっと増やせるのではないだろうか? 何か、そんな気がする。試してみよう。


「クリエイトゴーレム!」


もこもこもこもこもこもこもこもこ。


 チェーンソーゴーレムを30体作成して同じ命令を下す。どうだ? 一斉に森へ向かって歩き出す。おおっ、また動いたぞ!

 そして、森の中で同じように木を切り始めた! やったぜ。成功だ! ……これ、何体までいけるんだ?


 更に、今度は40体追加。さすがに多いかな? 同じ命令を下すと、この40体も当然のように動き出して同じく木を切りだした。まだいけるのか? 限界はどこにあるのか。他の魔法を使う分も必要だから、魔力を全部使ってしまう訳にはいかないが。

 どれだけ残しておけばいいのかな、と考えながらMPの値を見ていると……おや? 今、数値が減ったような?


MP 174/280


MP 173/280


 しばらく見ていると大体2分ぐらいで1減っている。

 同時に多数のゴーレムを動かしているのだから当然かもしれないし、チェーンソーを動かす分、MPの消費も大きいだろう。


 むぅ。仮にもっと多くのゴーレムを動かせたとしても、数を増やせば切り倒せる木の本数も増やせるが同時にMPの消費量も増える訳か……どうしようかな?


 考え込んでいると、切り倒される木の数が一気に増えたから騒音や振動がひどくなっている。

 メキメキドンドンとかなりうるさいし、ずっと地面が揺れている……震度2ぐらいあるんじゃね?


「あの、セシリア様」


アシュリーが話しかけてきた。そういえば、さっき何かして欲しい事があるって言ってたな。


「えーと、何でしたっけ?」

「セシリア様が切られた木ですが、住居用の建材として使用するので加工を手伝って頂きたいのです」

「というと?」

「建材として使用する為には魔法で木を乾燥させる必要があるのですが、枝を切り落として頂けるとその作業が楽になるのです」

「なるほど、わかりました」


 切断面が多い方が水分を抜きやすいらしい。とりあえず10体のチェーンソーゴーレムを作成した後シュバルツを呼び戻して回収した木を出してもらう。


 枝を根元から切り落とすイメージを思い浮かべながら10体のゴーレムに『枝を全て切り落とせ』と命令すると、すぐさま木に取り付いて5秒も掛からずに作業を終えてしまった。長さ10mぐらいある木だったのに何という早業。

 切った跡を確認するとイメージ通りに綺麗に切り落としている。丁寧な仕事をしていますねぇ。


「では、後はわたくしが」


 俺の隣で作業を見ていたクローディアがすっ、と木に近付いて右手を翳すと魔法を発動させる。


ふわっ。


 木から白い水蒸気のようなものが生じてすぐに消える。早いな。中々の腕前だ。作業自体は簡単だけど……。


「これ、何本ぐらい必要なんですか?」

「可能な限りたくさん、ですわ」


 何でそんな曖昧な答えなんだよ、と思ったがそれはここで伐採した木を他の開拓村でも使いたいから、らしい。


「この木はドゥーロという木なのですが、丈夫で長持ちするので家や塀の建材として数多く使用されています」


 クローディアが説明してくれた。ドゥーロ? どこかで聞いた事があるような……確か凄く固い木だと誰かが言っていたな。そういえば何となく見覚えあるわ。


 シュバルツにたくさん出して、と頼んだら『収納』から大量に取り出した木を作業しやすいように並べてくれた。すぐにチェーンソーゴーレム達が取り付いて枝を切り始める。いい動きだ。


 枝を切り落とされた木はすぐにクローディアが乾燥させて、切り落とした枝と一緒にまたシュバルツが収納してくれるので作業する場が手狭になるという事はないが、これ、いつまでやればいいのかな?


 延々と同じ作業を続けているといつの間にか傍にエクレールが来て、じっ、と俺を見つめる。どうした? 退屈なのか?


(主は木を切りたい?)


 いや、木を切りたいんじゃなくて、森を切り開きたいんだよ。話を聞いていなかったのか?


(手伝おう)


 え? もしかして、森を切り開く魔法とかあるの?


(なくはない)


 マジで? それはぜひ手伝ってほしい! エクレールが森の木を切ってくれるならその分チェーンソーゴーレムを枝切りに回せるからな。どれぐらい切れるんだ?


 エクレールはくいっ、と頭を傾けてくる。え? あぁ、角カバーを外せって?

 角が内側に触れないように慎重にカバーを外す。これ、エクレールが自分で外せるようにすべきかな? どういう構造にすればいいのかわからないけど。工房の親方に相談してみよう。


 鋭利な角が露わになったエクレールは次に自分で服を脱ぐ。あれ? という事はドラゴン形態になるのか? クローディアとアシュリーには……一瞬でドラゴンの姿に戻るエクレール。2人に声を掛ける間もなかったわ。


「ド、ドラゴン!?」

「え?」


 すぐに気付いて悲鳴のような声を上げるアシュリー。

 木に乾燥の魔法をかけていたクローディアはアシュリーの声に振り向いて、そこに見上げるような大きさのドラゴンになったエクレールの姿を見て固まってしまっている。


「エクレールですよ? 今から彼女に魔法を使ってもらいます」


 あえて平静な声で2人に説明する。2人にパニック状態になられては困るからな。


「え、ええ」

「そ、そうでしたわね……わかっていましたわ」


 すぐに表情を取り繕おうとする2人。でも上手くいっていないような。

 まだ少し顔を引きつらせているのに無理矢理笑顔を浮かべようとしている……無理しなくてもいいんだよ? やはりドラゴンの姿は貴族にはインパクトが強いらしい。


 エクレールはその長い首を森へ巡らせると、地に伏せるような低い姿勢を取った。その姿を見ていたら何か嫌な予感が。まさか、ブレスではあるまいな?


 エクレール、一応言っておくけど『ブレス』はダメだよ? ここの木は使う予定があるからぶっ飛ばされて使い物にならなくなっては困る。


(わかった)


 その返事を聞いても嫌な予感は止まらない。なぜなのか……はっ!? エクレール、ちょっと待って!


 エクレールに『待て』をして森の中で作業中のゴーレム達に撤収命令を出す。

 俺のいる所まで戻れ、という指示に反応した全てのゴーレムが森を出てこちらに向かってくる。


ズシャッ ズシャッ ズシャッ ズシャッ ズシャッ


 右腕がチェーンソーのゴーレムが多数で向かってくるその姿には何か、俺が襲われそうな錯覚すらあるわ。思わず体に震えが……自分のゴーレムなのに!


 結構森の奥の方まで展開していたにもかかわらずあっという間に全機が集合した。それはいいのだが、俺の周りに群がるように集まってきたので360度全てゴーレムだらけになって他に何も見えない! 少しは並べよお前達。あ、命令すればいいのか。整列! ……なぜか整列しない。何でや!


全く動かないゴーレム達。『整列』という言葉だけでは通じないのか?

頭の中でゴーレム達が列を作る姿をイメージしながらもう一度『整列』を命令するとイメージ通りに並び始めた。うむ、これでよし。


 ノワールにも森から出るように伝えるとすいっ、とすぐに出てくる。エクレールの方から『まだー?』みたいな気配が。お、おう。

 後は、えーと、ビアンカはどこだ? ……俺のすぐ後ろにいた。シュバルツもいるし、これでエクレールがどんな魔法を使っても大丈夫。では、よろしくお願いします!


シュバッ!! ……ドォオオオオーン!!!


 空気を切り裂くような音。その瞬間、遠くに広がる森の姿が……消えた!? 少し遅れて大地が揺れる、いや、揺れまくっている!? 震度5ぐらい? 立っているのが辛いレベル!


「ふぉおおお!」


 必死に足を踏ん張って堪える。何が起きているのか、エクレール!


(木を切った)


 えぇー……改めて森を見るが、もうもうと砂塵が舞い上がっていて何も見えない!


 見通しが良くなるまで待つ間、クローディアとアシュリーの様子を窺ってみると……2人とも大きく目を見開き口を開けた格好で固まっている! 若い女の子がしちゃいけない顔なんじゃないの? それ。


 2人からそっと目を逸らして見なかった事にする。幸いすぐに見通しは良くなって『森だった』場所の様子が明らかになった……一面が倒れた木で埋め尽くされて、地平線の彼方まですっぱりと森が無くなっている! どこまで切ったんだよ? 果てが見えないぞ……MK-Ⅲを使ってドローンのように上から観察してみよう。


 上空から見ると一面の緑の中、エクレールを起点として扇状にごっそりと森が抉り取られてしまっている。

 エクレールの魔法の範囲は、えーと、確か遠くに見える湖まで10㎞ぐらいと言っていたな。その半分ぐらいだから5㎞弱か……5㎞!? 一撃でこの威力か! 何という……さすがドラゴンと言うべきか。


 数えきれないほどの倒木と切り株だらけで異様な光景となっている森の跡地に足を踏み入れて、エクレールが切った跡を確認してみる。切断面が非常に綺麗だ。鋭利な刃物ですっぱり切った跡みたい。

 それに切り株の高さがずいぶん低い。どれも40~50㎝ぐらいだ。低い姿勢で構えていたからか……もしかして、これ、ノワールの作業をやり易くする為か?


(そう)


 何という細やかな気配り。偉いぞ、エクレール!


 ふふん、と言わんばかりの雰囲気でこちらを見るエクレール。頭を撫でてやりたいくらいだが、ちょっと今は大き過ぎるねエクレール。手が届かないわ。ところでエクレール。これ、何て魔法?


(風魔法)


 それはもしかして、『ウィンドカッター』みたいな、あれ?


(そう)


 ちなみに名前は?


(ウィンドカッターでいい)


 いいわけあるか! ウィンドカッターなんて風魔法レベル1とかで覚えるやつでしょう? こんな凄まじい威力の魔法にその名前はダメじゃん!

 しかしエクレールはどうでもいいのか、返事をしない。ちゃんと、格好良い名前を考えろよ?



「セ、セシリア様」


 復帰したらしいクローディアとアシュリーが近付いてきた。


「今のは……」

「エクレールの風魔法です」

「そ、そうですか」



クローディアとアシュリーの声は何だか微妙に震えているけど、気が付かないふりをする。2人にも慣れてもらわないと。

何事も無いかのように振舞う俺。こんなの普通ですよ? ええ。

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