第8話 これまでとこれから
何ヶ月たっただろうか。
今までとは違う暮らしになって。けど、それが日常になって。
こっちに来てからずっと1人で、メリハリのないダラダラとした生活を送っていた。
そこに迷い込んだのは今の時間を変える元でもあった。
昔の生活を恋しく感じるし、今の生活がとても楽しかったり。
左藤とは、一緒に仕事をし始めて、その帰りの途中だった。
「私の事、どう思ってる?」
唐突な質問に俺は戸惑った。
自分の足を左右交互に見ながら考えた答えは簡単だった―――
「とても楽しい友達だ。」
俺は笑みをこぼしながら言った。
「そう……」
「それ以下でもそれ以上でもない。ただ、一緒に楽しく暮らしている。それだけだ。」
俺は言い切った。
左藤はとても不満そうな顔をしていたが顔を上げて
「そうだね。」
と、ただ一言だけ喋ってそのまま無言だった。
左藤の顔はいつもより真剣で、少し悲しそうにも見えた。
なぜ真剣なのか、なぜ悲しそうなのか。理由は必ずあると思うが俺には理解ができないだろう。
いや、まだできない。
左藤のあんな顔は見たこともなかった。
俺は観察力が人一倍あるっていう訳では無い。一緒に暮らしていると言ってもまだ数ヶ月の仲、まだ分からないところしかないだろう。
もやもやしたまま終わるのは嫌だが、今答えを出さなくててもいいと思う。
これからずっと一緒に住んで色々なことを経験して、そこからだ。
俺は無言で歩く左藤の隣に付き添うように歩いた。