表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

法徳のワイン

作者: Urs

 あなた方は法を知るべきです。

 あなた方は徳を知るべきです。

 正しくあろうとするならば、この二つを知るべきです。たとえ相反するとしてもその中から正しさは生まれるのです。

 法と徳(ザ・ダルマス)の下に、あなた方はあなた方でしかなく、救いは自ら掴まなくてはなりません。正しいあり方と正しい生き方は相反するかもしれません。あなた方は、戒律の中に徳を持たなくてはいけません。

 あなた方は何を知っているのでしょう。わたしも何を知っているのでしょう。

 わたしの教えは神の言葉を伝えたものです。ただそれだけです。わたしも神の言葉をすべて理解はできていないかもしれません。しかし、心の中に留めておくことはできます。

 教えは心の中にあるのです。戒律に縛られた心の中にあるのです。

 神とわたしを信じているとしても、ただ信じるだけでは駄目です。ましてや物を以って求めることは信じることではありません。

 確かに、信じることで救われるのであれば、パンの一欠け、ワインの一滴でも救われるでしょう。しかし、それで救われるのであれば、わたしでなくてもいいでしょう。

 石やお金、数式でさえもいいでしょう。動物、無機物、あるいは、わたしの形をして同じ言葉を話す、あるいはわたしと同じことを伝える存在でもいいのです。たとえば、鉄と火を組み合わせたものでも。それ自体が考えることをしていなくても。あるいは人の再現だとしても。

 あなた方が手にしたそれは果実と水が混じり変質した飲み物です。生物の働きによる物質の変化でしかありません。それ以上でもそれ以下でもありません。特別な力を持つとすれば、あなた方の心が見せた幻でしかありません。

 あなた方はなぜ赤ワインなど持ってきたのでしょうか。それがいったい教えとどう関係があるのでしょうか。それをわたしに与えれば預言が下ると思ったのでしょうか。それとも、自分に都合のいい預言が欲しいのでしょうか。

 これを飲むことで神の言葉が聴こえるわけでもありません。救うことも、救われることもできません。わたしと同じものになることはできません。同じこともできません。

 だとしても、あなた方は、わたしの血を飲もうとするでしょう。それが人の業なのですから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ