幼なじみの君は
こんなに満天な星空があったのか。なぜ今まで気づかなかったのだろう。
僕は僕の世界を、もっと広げることの出来るものを見つけたんだ。
いつも一緒に遊んでた。
君の目には私が、私の目には君が、小さく、でも確かに映り込んでいて、この先もずっと君と私は当たり前のように同じ日々を過ごしていくんだと思ってた。
いつからだろう。
君の目に、私よりもキラキラしたものが入り込むようになったのは?
「月乃、ブラックホールに人が落ちるとどうなるか知ってるか?!」
まあものすごいワクワクしちゃって。
「死ぬ。いや、もしかしたら別の宇宙にワープするかも。てか、落ちた人いないからわかんない。」
「おおおおぉ!いや、良い線いってるよ、やっぱお前この手の話強そうだな!」
「…別に、物理の知識に長けてるわけでは全くないけど…。で、落ちたらどうなるのよ?」
彼の笑顔はますます全開に。
まあ、こんなに嬉しそうに話されれば聞いてるこっちだってにやけちゃうわよ。
「おれの話ちゃんと聞いてくれんの月乃ぐらいだからさ!嬉しくって!
ブラックホールに落ちるとな、いろんな説はあるんだけど、おれが面白いって思ったのは『頭からつま先までがものすごく伸びてスパゲティ状になる』ってやーつ!!」
ほ、ほほぉ…。
なんとも想像し難い。死ぬの?それ?
「…死ぬの?」
「うーん…次元が歪むから伸びるってなら、死なない可能性もあるのかな?詳しいとこは想像だけど、ブラックホールに入った時点で死ぬと思うな、おれは。」
3次元を生きる私たちにはちょいと難しいお話でしょうな。
でも、いつかブラックホールに入れる時代も来るのかな。ていうか、光を飲み込むブラックホールの中で電気ってどうなるんだろ?飲み込むって具体的に何がどうなってどうやって??
んーーーーー…。
はっ!
こいつのペースに巻き込まれているのではないか。
やめだ、やめ。考えたってどうしょもないんだから。
にしても、本当にいつからこんなに宇宙好きになったのかしら、この男は。
いつ会っても宇宙、宇宙、宇宙のはなし。
1日中、宇宙のはなしばっかではないけどね、1日の中で宇宙のはなしをしない日はないってだけで、さ。
人って、意識しないと空を見あげないんだなぁって、最近気づいた。
きみが空を見ながら帰るから、必然的に私も視線も追うんだよ。
満天の星空、雲の隙間からキラキラ覗く星空、満月の光で薄められた星空…。
大気の状態とか、季節とか、いろんな条件で空は毎日違う顔を見せてくれる。
その空を見るきみの表情は、いつもキラキラしていて。
こんな気持ちになるのは私だけなのかなって思うと、少しだけ寂しかったりする。
でも、幸せそうな君を見てたらなんかどうでも良くなっちゃって、やっぱり一緒にいると幸せって思っちゃうんだ。
でも、もうほんの少しだけでもいいから、今私たち高校生なんだから、心臓に負荷かけたっていいんでない??
……もう少しロマンスなドキドキをください。
…とか思ったりして。