プロローグ
日本で一番高い所にある私立高校として有名なこの星之耀学園。
この学園は特殊だ。標高400mなんて意味わからん位置に学園を構えるのも特殊なのだが、中でも授業内容が一番特殊だと思う。
一年前に発売され、物凄い勢いでブレイクしたVRMMORPG『スターダスト・ドラゴニア・オンライン』通称SDO、スドなんて呼ばれたりもするゲームを使って授業を行うのだ。ゲームで授業なんて出来るのか??と思う方もいるだろう。可能である理由がこのSDOというゲームがブレイクする理由でもある。それは、“何でもあり”だということ。このゲームは最初、RPGゲームらしくまず種族を選択し、ストーリーを進めてレベルを上げてスキルを取得して最終的にはラスボスの星耀龍ステラを倒すことを目的としたゲームだと皆が思っていたのだが、ゲームを進めるにつれ、家を持て、農園を作れ、スキルを使って自分の記憶にある画像、映像を相手に見せたりもできるのだ。初めは強いモンスターをどうやって倒したのか、というような情報交換用のスキルとして思われていたのだが、どうやら現実世界の映像も映せるらしく、それを知った理事長がゲーム好きの勉強嫌いのためにゲームで授業を行えないか、と立案し建設された学園なのだ。
理事長何者…と思うがまぁそれはそれだ。
学園が設立されてから1年も経っていないので、学園にいるのは皆1年生。しかしその人数は527人と、とても多い。クラスは15クラスに分かれている。1クラス35人の計算ですね。そして勿論新入生は皆少なからずSDOをやったことがあるゲーム好きなのである。そしてこの学園、体育の授業用のグラウンド、集会等に使う広間、そして職員室と生徒の住まう寮しかないのだ。そのくせ無駄に広いし校則も自由。飯もうまい。という感じでこの学園がマジk…特殊である理由が分かったとおもう。
自己紹介が遅れてしまった。俺の名前は黒峰聖、この学園に通うオタゲーマーだ。クラスは2、趣味は読書とSDO、最近ハマっている本のジャンルは異世界転移系!その影響でSDOにハマったようなものではある…
容姿はそんなにいい方ではないし、話すのが苦手なのでクラスで結構寂しい存在だと思うのだが、数少ない友達に「自分を低く見すぎだ。」と、よく言われる。その度友達いないのがその証拠だろう!!という目で睨んだりする。
「おっす聖!飯食いいくぞー!」寮のドアから犬みたいな活発男子が現れる。こいつがさっき言った数少ない友達の1人、日向陽平。こいつは俺と違って馬鹿だがカッコイイし運動神経もいい、なんでここにいるのか分からないような存在だ。
「ん?誰かいんのか??」と言って辺りを見回す陽平。
謎に勘がいいんだよなコイツ…
「誰もいない、食堂へ行こう。」さっさと飯を食ってSDOにログインしたいので陽平を置いて食堂へ向かう。
「相変わらずかっくE!惚れちゃいそうだぜ!」とか言って着いてくるホモ。少し怖かったりもする。
食堂でおばちゃんから飯を貰い、座れる席を探す。人混みは苦手なので出来るだけ端に座るよう心掛けている。すると、食堂の角の4人席のテーブルでこちらに向かって手を振る少女がいる。空いてる2席に陽平と座る。
「アンタら2人並んでると凄く見つけやすいから助かってるよ」手を振っていた少女が話しかけてくる。見るからに活発なショートの子の名前は舘風瞳奈。陽平の腐れ縁でこいつも中々のゲーマー。
「早く食べてSDOに潜りたいわ。」と言って黙々とうどんを啜る長い黒髪の美少女。名前は幸宮氷華、こっちは中学時代に俺とゲーマーとして意気投合した同志だ。中学時代はよく一緒にいたので付き合っているなんて勘違いされてからかわれた時もあったな。氷華に迷惑がかかるからからかうのはやめてくれ、と頼んだらやめてくれたけど。
「もうすぐでギルランMAXだしな。」
「そうだった!こうしちゃいられねえ!早く食べて潜ろうひじりん!!」
「ん。」
何故か凄く急かされる俺、ちょっといじめられてるんじゃないかと思ったりもする。
「はあ、貴方は相変わらずネガティブ思考なのね。」
「オタクは大体そうなんだよ。」
「貴方のそういう所、小動物みたいで私は好きよ。」
「ッ!? 黙って食え!」
仕方ないわね…とか言いながら食事を再開する氷華。ほんと笑えない冗談がお好きなことで……中学時代に勘違いされたのはこういうSっぽい所でよく俺をからかっていたからである。
なにやら陽平とひな壇が変な目でこっちを見ているが気にしない。
さっさと食べ終わりSDOに潜る。
食堂で話題に出たギルランという単語は、“ギルドランク”の略称である。ギルドとは発売から2ヶ月後のアップデートで実装された同盟システムである。ギルドに入っているとギルドクエストという特別なクエストが受けられるようになったり、ギルドランクボーナスと言って自分のステータスや経験値に追加ボーナスが入ったり、一定ランクに到達すると新しい種族が解放されそのキャラで新しくゲームを始められたりするゲーマー魂をくすぐるものなのである。最初は人間族しか選べないので、人間からスタートしている。ネットの情報ではギルランがCに到達するとエルフ族、Aに到達で鬼族、SSに到達で悪魔族が仕えるようになると載っているがSSに関しては間違いなのである。というのも、SSランク以上のギルドは俺達のギルド以外まだいないからである。つまり、俺達4人は相当の廃人であるということ。俺達以外のギルドはまだSランク昇格のクエストで躓いてるんじゃないかな??
SSランクの報酬だが、悪魔族とアンデッド族の解放と高レベルの武器だった。
ちなみに今の俺達はSSSランクで今日最高のLランクへ挑戦するつもりだ。
ギルランはEから始まり、最高でLまである、自分のギルドランクのギルドクエストを一定以上クリアすると上のランクへの昇格クエストに挑戦出来るようになる。それをクリアすると晴れて昇格。昇格報酬を貰えるという流れである。
HMDを装着し、少しの間目を閉じる、そして開ける。するとそこは城下町、と表現するとしっくりくる。ここは広間で、大体のクエストはここで受けられるのだ。4人の中で食堂から一番近い部屋が俺の部屋なので一足先に俺がクエストを受注してあいつらを待つ。
俺のアバターは男性の“ブレイバー”と呼ばれる万能剣士だ。ブレイバーはステータスやスキルが非常に強いが、その分癖も強く、並のプレイヤーでは扱えないような職業らしい。なのでブレイバー人口は200人もいないのだとか。
レベルは298。最大レベルの300まであと少しだ。頭おかしいんじゃないかと思うような量の経験値を積んでようやく298である。もちろん現時点で最高レベル。
わかりやすく言うと150レベル越えたあたりからメタルなキングを数時間狩り続けないとレベルがあがらなくなってくる。俺も297から1レベル上げるのに20時間以上かかった。一番経験値効率がいいと言われている狩り場で20時間。拷問だろ…
とまあ自分の辛い思い出に耽っていたらあいつらがやってきた。
「ちゃーす」
「また暗い顔してる…」
「元気出していこーよひじりん!!」
「俺は元気だぞ?」
今日で最高ランクになるんだよ??とはしゃいでるエルフの少女ユーザーネーム『かぜまる』、信じられないがこれがひな壇である。男みたいなUNで少女。レベルは289。中々やり込んでいる。もちろんエルフの中では最高レベルだ。職業はアーチャーの上位職『狩猟者』だそうで。回復魔法と広範囲殲滅攻撃を使える優秀な職業である。
「ちゃんと装備整えろよ?」とイカした鬼が注意する。こいつが陽平。ユーザーネームは『陽炎』。種族は鬼族でレベルは291。職業は戦士の上位職『戦闘師』である。対ボス性能とステータスが極めて高く、強ボス以外なら単身乗り込んでぶっ倒せる化け物だ。
「Lランクの報酬が楽しみね。」と危ない笑みを浮かべている女悪魔。こいつが氷華、俺に匹敵するとんでもない化け物である。ギルラン後半に解放される悪魔族なのにレベルが296。相当やり込んでいる。職業は魔道士の上位職『魔道師』である。何故かこいつ、最高ランクの攻撃魔法だけでなく回復魔法も覚えている。強すぎな。
装備の見た目がサキュバスっぽいからってユーザーネームが『リリム』というサキュバスっぽい名前になっている。氷華ェ…
ちなみに俺のユーザーネームは『ゼル』である。いい名前が思いつかなかったので厨二っぽい名前になったのは内緒だ。
3人をチームに加え、ギルドクエストを達成しに行く。俺達はソロクエストはもう全クリしているのだが、星耀龍はまだ出てきていなかった、もしかしたらギルドクエスト限定なのではないか、と予想してここまで頑張ってきた。そして予想は当たった。当たったのだが……。
「「「グオオォォ!!!」」」と軽い咆哮で威嚇する龍種3体。
Sランク昇格の時に倒した“トリプルドラゴン”と恐れられるボスの強化版。
“強フレアドラゴン”
“強アクアドラゴン”
“強フォレストドラゴン”
そしてその後ろに、“星耀龍ステラ・ドラゴン”
《よくぞ参った。いざ、尋常に!!》
かぜまるが狩猟者のスキル『鑑定解析』で相手のステータスの情報を俺たちに見せる。
「気をつけて!今までと比較出来ないくらい強いよ!!」
『個体名・ステラ・ドラゴン Lv.280 属性:全
HP 2500000
MP 1500000
物理攻撃:5000
物理防御:10000
魔法攻撃:15000
魔法防御:7000
運動速度:3500
取得スキル:「自動学習」「星耀龍★」「全智全能★」「龍之王★」「龍鱗✩」「自動回復✩」「全耐性極上昇✩」「鑑定解析」
説明:この世界の頂点にして原点、神と崇められる龍の王。』
やばすぎるだろ!!!
SSSランクのボスのステータスは大体HPが10万で各能力が3000前後だった。それがドラゴン三兄弟のステータスで、ステラ・ドラゴンのステータスはそれを大きく上回るステータスだった。頭が痛くなる。だが。
「勝てない相手じゃない。」
「そうだね!」
「楽に死なせてあげるわ。」
「よし!行くぞ!!」
皆で笑い、立ち向かう。最強の存在に向けて。
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結果、勝ちを手に入れた。よく準備をしてきたお陰で。
自動復活のアイテムを50個ほど持ち、アイテムボックスが一杯になるくらい回復アイテムをもって、それを全部使い切りなんとか倒せた。
「いや、あいつほんとやばかったわ…奥義で15000ダメージしか与えられないしなんか回復速度えげつなかったしほんと疲れた…」
「しかも全属性極耐性✩で回復無効の魔法が効かないし、な」
「聖が“龍殺しの剣”を取得出来なかったらあのままやられていたわね。」
「ありがとう!ひじりん!!」
3人から褒められた。
先ず最初に三兄弟をどうにかしようと思い、陽平にステラの足止めを頼み三兄弟を3人で倒した。その直後とんでもない量の経験値を入手したのだが、経験値量が多すぎて少しバグが発生し、暫くレベルアップせずにステラと戦っていたのだ。そして絶体絶命の時に経験値処理が完了し、俺は一気に300レベルに到達、氷華も300、陽平は298、ひな壇は295、という感じでレベルが上がった。そして俺はシステムから《人間族でレベル300に到達、スキル「全智全能」を入手しました。》《龍種を計5体討伐、実績報酬として“龍殺し(ドラゴンハンター)”の称号と奥義「龍殺しの剣」を入手しました。》というお知らせを聞き、速攻龍殺しの剣を使用した。何のチートか、ステラに350000ものダメージを与え、それのゴリ押しでなんとか倒したのである。
ステラがドロップした宝箱を開ける。
そこには、《Congratulations!!!》の文字
《ステラ・ドラゴン討伐報酬:龍種解放》
《ギルドランクL達成報酬:称号“人の神”“鬼の神”“妖精の神”“悪魔の神”“神の領域に到達した者達”を入手しました。》
《ソロクエスト、ギルドクエスト完遂!報酬として、源初の鬼族、源初の人族、源初の悪魔族、源初の妖精族、源初の龍種が解放。転生機能解放。転生時、「勇者」「魔王」「全智全能」「万物創造」「可能性の種」から一つだけ選んでユニークスキルとして取得できます。》
《転生の注意点※転生は一度きりです。転生後、HPが0になるとそのアバターのデータが消え去ります。転生時、クエスト完遂報酬とは別に特殊なスキルを更に取得できます。転生時、転生前のステータスを50〜80%受け継ぎます。》
システムログが消える。
「転生…?」
「転生して死んだらこのデータ消えちゃうの!??」
「死ななければいいだけの話じゃないのか??」
「日向君の言うとおりね、死ななければいいのよ。」
「というか、龍種解放と源初シリーズがすげー気になるんだけど!!」
3人が廃人トークで騒いでいるが、俺はそれどころでは無かった。恐らく俺にしか見えていないこのシステムメッセージ。
《転生ウイルスをこの世界に散布出来ます。
ウイルスを散布しますか? YES/NO》
転生って…ウイルスなのか……??
ギルドランクは低い順に
E<D<C<B<A<S<SS<SSS<L
となってます。