伝説の剣士Kとの再会
武器屋で女子達と合流したケントと恭哉は、<ダークフォレスト>に向かうことになった事を伝えた。
「良いよ。でもあそこって平均レベル25だよね?ちょっと厳しいんじゃないの?」
ミエが疑問を口にした。すると、
「まあ確かにちょっと厳しいかもな。でも大丈夫だろ。もしもの時は<帰還結晶>を使えばいいし。」
とケントが返し、恭哉が続けた。
「そうと決まれば早速行きましょう。昼には落ちないといけないので後一時間くらいしかありませんよ。」
「そうだな。」
話が決まりケント達一行は<ダークフォレスト>に向かった。
<ダークフォレスト>の木々は他の森に比べて色が濃い。
「何か暗いですね。」
レナが見た感想を呟く。まあ、闇が名前に付くぐらいだから雰囲気的に暗い方がらしさが出るのだろう。
少し進んだぐらいだった。微かだが金属がぶつかる音が聴こえた。
「誰か居るんだろうか?」
ケントは無意識にそう呟いていた。が、その答えは直ぐにわかった。
「Kさん!?なんでここにいるのですか?」
恭哉がKの方に駆け寄った。Kの相手は<メタルクロウ>と言うモンスターの群れだった。<メタルクロウ>は攻撃力が低いが耐久が高く俊敏性にも優れている。その為一体一体はそれほど強く無いのに上級者向けのモンスターだと言われている。
「おう少年少女達。ワシは単に<烏の銀翼>を取りに来ただけだ。」
ケントはこの時、<メタルクロウ>をよそ見しながら相手にするとかあり得ないだろ!と心の中で叫んだ。
するとケント心の中の叫びなど知るよしもないKさんは続けてケント達に尋ねてきた。
「そういうお前さん達は何しに来たんだ?」
「私たちは<黒き獣毛>を取りにきたのとレベル上げをしに来ました。」
「おう、よー見たらお前さん恭哉じゃないか。それに後ろの嬢ちゃんはレナだろ。どうしたんだお前さん達が他のとパーティー組むなんて。」
「別に特に理由はありませんでしたよ。その時は...」
「どういう事だ?」
Kは疑問に思ったことを恭哉に尋ねた。
「やはりKさんも気付きませんよね。」
そう言った恭哉に続いてケントが口を開く。
「覚えていませんか?俺は今までkenと言うアバーターネームでMMOをやってたんですが。」
するとKは驚いた顔してケントの方を向いた。
「もしかして<無双の剣士>か?」
「元ですが。」
「<ソルド・ガーディアン>の異名はKさんも聞いたことあるでしょう。」
ケントの説明に恭哉が付け加えてくれた。
「VRMMOはこれが初めてなんですよ。多分今Kさんとバトルしても一方的にやられてしまいますよ。」
ケントがそう言うとKはあきれた顔で返す。
「相変わらずだな人の心を読むのは。」
「ケントは昼から用事があるか?」
続けてKが聞いてきた。
「いえ昼からは特にないですよ。」
「なら飯を食い終わったら<サラマンダー>のギルドに来い。」
「分かりました。一時くらいで良いですか?」
「おう。」
その後三十分くらい<ダークウルフ>を狩り、昼飯を食べるためそれぞれログアウトした。
現実に戻るとライン通知が一件着ていた。
ミエ「今から千幸を呼んで堅人君ちに昼御飯を食べにいって良い?」
堅人は別に良いよ。と打ってスーパーに向かった。
「堅人も買い物に来たのか?」
後ろを振り返るとマックスがいた。まあマックスはゲーム内のアバターネームで、現実では岸原和馬という。
「和馬先輩どうしたんですか?」
「いや飯の材料を買いに来ただけだ。」
「じゃあ家に来ませんか?華咲逹も来るんで。」
「じゃあ行こうかな。お前が作る飯は旨いし。」
「因みに今日は焼き飯に酢豚、卵スープです。」
「豪勢だな。」
「いや今日は皆が来るからですよ。」
材料を購入した堅人は和馬とひとまず別れて家に帰った。
料理が終わり愛未逹が来た。
「お邪魔します。」
「おう。作り終わったぞ。それと和馬先輩も一緒に飯食べることになったから。」
「分かった。じゃあ少し待っとこうか?」
愛未がそう言うのとほぼ同時にインターホンが鳴った。
「おう。旨そうな匂いがするな。」
「ありがとうございます。」
「それはそうとドラハン今日はどうだった?やったんだろ?」
和馬がそう尋ねてきた。
「今日は<ライズグレード>を倒したぐらいです。あと一時に<サラマンダー>に来いとKさんって人に呼ばれました。」
「お前。それもう時間無いぞ。」
和馬にそう言われて時計を見ると針は十二時四十五分を指していた。
「!!」
堅人は慌て御飯を口に頬って皆に、
「片付けは後でするから置いといて。」
と一言いって<ドラゴン・ハント>にログインした。
「ギリギリだなケント。少し約束の時間が早かったか?」
<サラマンダー>のギルドに着くとKにそう言われた。
「すみません。飯を作ってたら遅れました。」
「いや、遅れてはないんだけどな。」
Kはそう言うと続けて、
「急にで悪いが今から対戦しないか。」
「良いですけど。弱いですよ。」
「いやケント。お前を強くするために手伝うんだよ。ライバルってのが居ねーほどつまらんことはねーからな。」
「ありがとうございます。では全力でお願いします。」
そうしてKを相手に特訓が始まった。
隙を見てケントが降り下ろした剣はKに命中した。筈だったがKのHPは減ってなかった。
「昔はお前もやってただろ。当たり判定を利用した交わし技。」
そう言われたケントだったが外れた瞬間何があったが気づいてはいた。が同時にVRでも当たり判定がずれることもあるのかと思っていたのだった。
レベルの差もありKの通常攻撃でもケントのHPは一撃で0になった。
それから三時間くらいが過ぎた。
Kの素早い攻撃をケントは盾で上手く躱わした。そのままバランスを崩したKは直ぐに体勢を立て直したがその一瞬の隙にケントは<ブラックブロウ>を発動していた。そしてケントのは放ったその一撃はKに命中した。
「ようやく昔の動きになってきたな。後はレベル上げだが、それは一人でも大丈夫だろ。」
「ありがとうございました。」
そう言ってケントはログアウトした。昼飯の片付けが終わってないからだ。
現実に戻ると既に食器は片付けてあり、机の上には明日また遊ぼうね。と書かれたメモ用紙が置いてあった。
それから一ヶ月たってケントのレベルは53になっていた。今日はミエ逹と久しぶりに狩りに出る約束をしていた。が、約束の時間をとうに過ぎているのに未だに誰一人こない。それを変に感じたケントはミエの場所を検索する。因みに場所検索はフレンド登録をすると可能になる。
場所検索するとミエ逹は<サラマンダー>のギルド付近にいることが分かった。ケントは門を使って<ネニール>に移動した。
<ネニール>に着くとミエ逹の他に<サラマンダー>のメンバーが五名いた。
「今から一緒に狩りに行こうぜ。俺らレベル高いし。」
そうサラマンダーのメンバーに誘われてミエは困ったような顔をしていた。
「嫌がっているだろやめてやれよ。後、そいつらは今から俺と狩りする予定があるだけど。」
ケントが<サラマンダー>のメンバーからミエ逹を引き離そうとした。すると<サラマンダー>の一人が、
「お前一人の癖なに格好つけてんの?レベル45の俺らとバトルでもするか?」
と言ってきたのでケントは、
「レベル40前後が五人か、なんとかいけそうだな。」
と呟いた。すると<サラマンダー>のメンバーが次々に口を開いた。
「はぁ?この状況で勝てると思ってんのかこいつ。」
「とんだヒーロー気取りだな。まあそんなことは置いといてささっとこいつ殺ってやろうぜ。」
それを聞いてケントが武器を構える。
「なら早くやろうかこっちも時間がもったいないんで。」
すると今度はミエがケントに向かって言った。
「いくらなんでも五人は無理だよ。相手のレベルが高いんだし。」
「大丈夫。Kさんと特訓したから元の動きに戻ったんだよ。後俺のレベル53だし。」
そう言ってケントは対戦の募集表示をタッチした。
メンバーが揃って、カウントダウンが始まった。
3、2、1、スタート!
スタート表示が出たのとほぼ同時に<サラマンダー>の一人が強く地面を蹴って飛び出した。
「・・・。」
カキーン!
ケントは自分目掛けて飛んでくるそれを意図も簡単に弾き返し、そのまま<ブラックブロウ>を喰らわせそのHPを0にした。
「おい。嘘だろ...」
「まだやるか?俺はもうやめたいんだが。」
ケントがそう言うと<サラマンダー>のリーダーらしき人が、
「まあ、ザックは俺らの中で一番強いしな。今回は引き下がってやるよ。」
と言って撤収していった。
「ありがとうケント君。」
「いいよ別に。」
ミエが礼を言ってきたのでケントは照れたような顔をして返した。すると今度は恭哉が、
「ケントさんいつの間にそんなに強くなったんですか?」
と尋ねてきた。
「さっき言った気がするけどKさんと少し特訓しただけだよ。VRの迫力にびびってただけだったみたいだ。」
「成る程。元々ケントは反射神経は高かったですからね。」
するとケントは思い出したようにアイテム覧を表示した。
「そういえば恭哉にこれやろうと思ってたんだった。」
そう言うとケントは<ホワイトフェザー>を実体化させて恭哉に渡した。その後、
「それとミエには<シャイニングレイピア>、千幸には<フェザーズフューチャー>、レナには<<フェアリーフェザー>な。来週裏ボスに挑戦しようと思ったから。」
と続けて女子逹にも渡した。
「こんなにも良いんですか?此だけあればほぼMAXまで強化できます。」
恭哉がそうケントにお礼を言うとミエが、
「これ全部伝説の準器だよね?すごいね。それとありがとう。」
と言った。続けてアイテム覧を表示し、
「これKさんからケント君に渡してって。」
と言って黒い片手剣をケントに渡した。
するとケントは驚いた顔をしてミエに尋ねた。
「これって伝説の伍器のひとつの<暗鬼>だよな?」
ケントが驚くのも無理なかった。伝説の伍器とは<ドラゴン・ハント>で最も強いとされる五つの武器の事だ。
「そうだよ。ケント君なら使いこなせるだろってKさんが言ってた。」
そう言ってミエがケントに<暗鬼>を渡したその時だった。ケントにクエストメールが届いた。
「黒き剣逹を持つものよ。是非<始まりの地>の武器屋に来てほしい。だって、ちょっと寄って良いか?」
クエストメールを読んだケントが皆に尋ねた。すると恭哉が、
「私は良いですよ。皆も良いですよね?」
と言って、ミエ逹もいいよ。と賛成してくれた。
ケント逹は門を使って<始まりの地>の武器屋ぬ向かった。
店に入るとそこの店員が、
「よくぞここまで来てくださった。突然ですが、<ブラックソード>と<暗鬼>を見せてください。」
と言ってきたのでケントは二本の剣を店員に渡した。すると店員が、
「この二本の剣は融合させることができますがどうしますか?」
と尋ねてきた。それに対し、
「じゃあお願いします。」
とケントは応えた。
その数分後ケントが店員から預かった剣には<暗黒鬼>と記されてあった。