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ブキ兄弟との出会い

「マックスやめて下ださいよ。」

ケントがマックスに止めるように言うとマックスは惚ける《トボケル》ように返してきた。

「なんのことだ?」

「しらばっくれないでください。まあ、もうニヤニヤしないんなら言いませんけど。」

マックスはしょうがないなぁと小声で呟いた。それが聞こえたケントは安心したが、それもつかの間だった。警告サインが画面に表示されたのだ。

ケント達はそれぞれに構えた。出現したのは、三首大蛇ミツクビオロチという大蛇だった。

「外して直ぐで悪いんだけど防具を装着してくれる?」

ケントはミエの方を向いて続ける。

「何かでかいし時間がかかりそうだから応援してくれると助かる。」

「えっ。応援?」

ミエが驚くように返す。そこで違和感に気付いたケントは付け加えた。

「ごめん。応援っていうのは手伝ってっていう意味。」

「お話のところ悪いんだけど手伝ってくれる?」

すでに戦闘をしていた千幸が声をかけてきた。ケントとミエはゴメンと一言返した。

「<ブラックブロウ>」

ケントの放った渾身の一撃で三首大蛇のHPバーが1/5は削れた。しかしその直後、三首大蛇の左の頭がケントを噛みつくように襲ってきた。

「ぐっ!!」

盾で防いだものの咄嗟(トッサ)の行動で防御しきれず後方に飛ばされてしまった。それを見ていたミエが心配そうな顔で近寄ってきた。

「ケント君大丈夫?」

「ダメだ。来るな!」

心配するミエの言葉を掻き消すようにケントは叫んだ。

「いやああああああああ!」

しかしケントの注意も意味をなさずミエは三首大蛇の尻尾に捕まってしまった。

「ミエ落ち着け。どうしたらいい?」

ミエは<フリー・ウィング>の頭脳、つまり司令塔だ。しかし今は羞恥心の方が上回っているのかケントの言葉は通じていない。

「しょうがないな。マックス、真ん中の頭を射って下さい。千幸は噛みつきに気を付けながら尻尾を狙って隙を見てミエを助け出して。」

マックスと千幸に指示したケントは、三首大蛇の正面に立って『ルック・ロック』を発動した。これでマックス、千幸が狙われることはないだろう。ケントはそう思っていた。しかし、ケントを攻撃した時の反動で揺れた三首大蛇の尻尾に千幸が飛ばされてしまった。ケントが『ルック・ロック』を発動して安心していたのか防御が出来てなかったためHPがかなり減っている。

まずい。そう思ったケントは三首大蛇を千幸から引き離すように走った。

「あんまり使いたくなかったんだけどな。」

と、呟いたケントは「<フィニッシュブロウ>」と叫んだ。

<フィニッシュブロウ>とは威力重視の必殺技で使用後10秒ほど動けなくなる。『ルック・ロック』を発動しているケントからするとこれは賭けであった。が、三首大蛇のHPは0となり消滅したのでケントは一息ついた。10秒が経ちミエに近寄った。

「大丈夫か?」

「うん。ありがとう。でも千幸は?」

「大丈夫だ。ダメージをかなり受けていたがもう回復させた。」

ミエの言葉に応えたのはケント達を追ってきたマックスだった。

「有難うございます。」

マックスにお礼を言ったケントはそのままマックスに背負われている千幸に謝った。

「ゴメン千幸。俺がもう少し気をつけていたらこんなことには...」

「良いよ。無事だったんだし。何よりミエを助けてくれてありがとう。」

「まあ、元はと言えば油断して俺がやられたのがいけなかったんだし。礼を言われるようなことじゃ無いんだけどな。」

「確かにね。でも助けてくれたのは紛れもない事実だし。」

「そうだな。じゃあ素直に...。どういたしまして。」

するとマックスが千幸に尋ねた。

「どうだ。もう歩けそうか?」

「はい。ありがとうございました。」

一段落ついてケント達は<秘薬草>を探し始めた。

「そろそろ中央部だと思うんだけど...」

<エリアマップ>を見ながらミエが呟いた。

「ああ、多分あれじゃないかな?」

マックスが紫色の草を指差して言った。

「そうですね。取り敢えず確認してみましょう。」

ケントはそう言って紫色の草を摘んだ。すると紫色の草に<秘薬草>と表示された。

「よし。間違いないみたいだな。」

「そうだね。じゃあ戻ろうか。」

ケントが確認し終わるとミエがケントに肯定した。

「千幸ー。そろそろ戻るぞー。」

ケントが呼ぶと少し奥に行っていた千幸が戻って来た。が、ケント達の目の前で千幸が穴に落ちてしまった。

「きゃああああああああ!?」

するとマックスが焦った表情で叫んだ。

「まずい!この辺の穴と言えばスネークリドラの巣穴ぐらいしかないぞ!」

「ミエ。<帰還結晶>を用意しといて。」

そう言ってケントは穴に向かって走った。無事千幸は救出したもののどうもスネークリドラを刺激したみたいで、警告サインが表示された。

「ちっ。しょうがないな。」

そう言ってケントは『ルック・ロック』を発動した。が、何故か疲労感に襲われた。

「ケント。スキルを使いすぎだ。スキルは必要ゲージがない分疲れるんだ。」

マックスがそう説明してくれると千幸が難しい顔をした。

「それって『ルック・ロック』を発動しているケントはまずいんじゃないの?」

皆の口からあっ、そういえばという言葉が漏れる。するとミエが、

「大丈夫。試したことないけど私がケントの側で『ルック・ガイダンス』を発動する。『ルック・ガイダンス』は『ルック・ロック』と違ってヘイト値を変化させるんじゃなくて敵の気をそらすスキルだから。」

と言った。

「いや駄目だ危険すぎる。それにスキルを使いすぎるとミエも動けなくなってしまうぞ。」

「確かにケントの言う通りだ。皆俺が引き付けている間に<帰還結晶>を使うんだ。」

「駄目です。それじゃあマックスが...」

ケントが否定するとマックスは首を横に振り大丈夫隙を見て俺も戻るから。と言って弓を構えた。

「分かりました。絶対戻って下さいよ。」

ケントがそう言ってマックス以外の三人三人は<帰還結晶>を使って<始まりの地>に戻った。

それから5分ぐらいたった時だった。<始まりの門>の前にマックスが現れた。

「遅かったじゃないですか。どうしたんですか?」

「すまん待たせた。」

ケントは謝るマックスの後ろに現れた二人の男女が気になった。

「後ろの二人は誰ですか?」

「<武鬼の兄と舞姫の妹>って聞いたことあるだろ?お前MMOは結構やり込んでたし。」

「もしかしてあの<ブキ兄妹>か?」

するとマックスの後ろに現れた男子の方がケントに声をかけてきた。

「はい。<武鬼>と呼ばれています恭哉です。初めまして<ソルド・ガーディアン>ことケントさん。」

「そるど...ガーディアン?よくわからんけどケントでいいよ。」

するといつものようにマックスがケントに解説をしてくれた。

「<ソルド・ガーディアン>。漢字で表すと<頑丈な守護者>。お前の異名だよケント。まあ、俺も偶然耳にしたんだけどな。」

「さっき偶然スネークリドラと戦っていたマックスさんに遭遇したので共闘したんですけど。そのまま<フリー・ウィング>に入らないかって誘われたんでついてきたんですよ。」

「それってスネークリドラを倒したってこと?それも三人で。」

「そうですよ。でもスネークリドラのレベルが7に対してマックスさんのレベルが13、妹のレナのレベルが21で私のレベルが25です。倒せても不思議はありません。むしろ倒せない方が変ですよ。」

そう恭哉に言われてケントは確かにと小さく頷いた。

「流石ブキ兄妹。俺なんてまだレベル7なのに...」

「何言ってるんですか。低レベルにして『ルック・ロック』使いなのに未だに消滅数0と言う実績がケントさんに<ソルド・ガーディアン>と言う異名を付けたんですよ。それにこれは噂なんですけどVRMMOはこれが初めてなんですよね。」

「まあそうだよ。だからマックスに教えてもらいながらプレイしてるんだけどね。」

ケントと恭哉が会話していると千幸が話を変えて良いかなと言って続けた。

「恭哉さん、レナさん。一応私が<フリー・ウィング>のギルマスをやらして貰ってています。頼りないと思うけど、宜しくお願いします。」

すると恭哉とレナが反応する。

「と言うことは、ギルドに入れてくれるんですか。有り難うございます。」

「ありがとうございます。これから宜しくお願いします。」

そうして<フリー・ウィング>のメンバーは<ブキ兄妹>とフレンド登録をした。

実はケントと<ブキ兄妹>こと恭哉とレナは前にMMOでパーティーを組んでいたのだがその時はケントというアバターネームじゃなかったので恭哉とレナは気づいかなかったようだ。

「ところでダメなら答えなくても良いんだけど恭哉とレナって何歳なんだ?」

ケントがそう尋ねるとミエが

「ケント君それは聞いちゃダメだよ。」

と言ったが恭哉はケントの質問に答えてくれた。

「別に良いですよ。私は17歳です。」

「私も兄さんと同じく17歳です。ケントさん達は?」

続けてレナも教えてくれた。

「二人とも教えてくれてありがとう。実は俺も同じ17歳だよ。」

ケントが言うと千幸、ミエも教えた。

「私も17歳。と言うかケント、ミエとリアルで同じ学校の同級なの。」

「私は早生まれだから16歳だけどね。」

マックスが言おうとしなかったのでケントが言うように促した。

「マックスは言わないんですか?」

「えっ?俺も言うのか?」

「別に嫌なら言わなくても良いですけど、どうせ俺達は知ってるんですよ。」

「まあそうだな。」

ケントにそう言いマックスは続ける。

「俺は皆の一個上の18だ。でもだからと言って気をつかわんでいい。」

そのまましばらく話が盛り上がったが時間も遅かったのでそのあとはそれぞれ落ちることにした。

「ふぅ。そう言えば恭哉とレナのライン登録していたっけ?」

そう言って堅人はポケットに入っていたスマートフォンを取り出して「ナイト」というグループに書き込んだ。ナイトとは<ストロング・ナイト>というゲームのことでその時のパーティーメンバーとラインのやり取りをしていたのだ。

ken「久しぶり。じゃあ無いんだけど...」

ken「キョウとれなは、最近ドラハンやってないか?」

キョウ「kensお久しぶりです。じゃないってどういうことですか?」

れな「どっかで会いましたか?」

ken「やっぱ気づいてなかったか?ソルド・ガーディアンと言ったらわかるか?」

れな「もしかしてケントsですか?」

ken「そうゆーこと。まさかお前らもドラハンやってるとはな。てかまた出会うってどんな確率だよwww」

キョウ「確かにwwwドラハンのプレイヤー数は約10万人だった筈ですし。」

れな「凄い確率ですね。にしてもkensってVRは初めてって言ってましたよね。」

れな「初めてのVR、しかもゲームが発売されてから半年で異名がつくなんて流石kensです。無双剣士の実力は健在ですね。」

kens「いや、昔みたいな芸当は出来んぞ。それと俺は始めて2週間な。」

キョウ「あれは神業でしたね。ってニ週間ですか!?」

れな「早くVRでもみてみたいです。あれはほんと凄かったですから。」

ken「出来るようになるまでどれくらい掛かるやらwwwVRゲームってやってみると迫力満点だし。」

ken「てかお前らだって十分強かったろ。」

キョウ「kensには一度も勝ったことありませんでしたけどね。まあ確かに異名はありましたけど...」

れな「あれほどの神業は日本に5人いるかいないかぐらいですよ。」

ken「まあ、あの頃はかなりやり込んでたからな。それでもあのKさんには一度も勝ったことなかったけど。」

キョウ「kenさん知らないんですか?Kさんもドラハンやってますよ。前にれなと挑んだんですけど完敗しました。相変わらずの神業ぶりでしたよ。」

ken「マジかVRでも無双って...まあ腕が上がれば挑んでみようかな。」

れな「その時は呼んでくださいよ。また見てみたいし神業バトル。」

ken「出来るようになったらな。」

ken「そう言えば話が変わるけど、明日ドラハンやるんだったら連絡くれよ。」

キョウ「了解です。」

れな「kensもお願いしますね。」

ken「わかった。」

堅人はスマホを机に置いてベッドに転げた。


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