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「園田沙里佐」視点で、お送りします。
私が生まれた時から、父は筋金入りの変態でした。
幼心にも、我が家の父母の関係が変だという事には気付いていたのです。
だって、母は父をハイヒールで踏みつけながら、平然と命令する女王様でしたから。
だって、父は母に思いっきり踏みつけられて、興奮してしまうド変態男でしたから。
そのうち父は、母に罵られるだけでは物足りなくなったのか、私からも蔑まれることを望むようになりました。
ヘンタイ親父、虫ケラ、屑野郎…どんな言葉も、父を喜ばせる材料に過ぎませんでした。
だけど、幼かった私は気持ち悪い父を遠ざけようと、罵り続けました。
結果として、父は喜び息を荒げて私の足元に跪くだけでしたが。
ある日、母は家を出て行ったきり、帰ってきませんでした。
どうやら父に愛想を尽かして、逞しく頼りがいのある恋人の元へ行ってしまったようです。
私は少しだけ悲しかったけど、子ども嫌いの母と大した思い出は無かったので、涙を流すほどではありませんでした。
しかし、父は脱水症状に陥るまで泣き続けました。
少しばかり可哀想な気もしましたが、母からの一通の手紙で父は急浮上しました。
『別れても慰謝料が貰えそうにないから離婚はしない、別荘とマンションの所有権を自分に寄与しろ、一生困らないだけのお金を援助しろ、そして私の前には顔を見せるな。』
はっきり言って、ほんと酷い内容だった。
だけど、父は頬を紅潮させて、嬉しそうに呟いた。
「新手の、放置プレイですね。」
この時、私は悟ったのだ。
この男は、かなりヤバい。
父親と言えど、極力、関わらないようにしよう。
見ざる言わざる聞かざるの姿勢を、徹底して貫こうと心に決めた。
それが、園田沙里佐、5歳の頃の出来事である。
♪・♪・♪・♪・♪
「先生、このプリン絶品ですぅ。
やっぱり手作りだと、味が違いますねっ。」
「いや、私は少し手伝っただけで、それ作ったのほとんど如月さんだよ?」
「いやん、先生、私の前で他の男の名前は呼ばないでぇ。
特に、目の前のストーカー予備軍の二人の名は。」
変態親父の学校乱入事件から数日経過した今、私は愛しの君代先生宅で寝食を共にしていた。
それにしても、ここって、天国かしら?
先生のルームウェアの短パンからは、麗しの生脚がぁああーー!!
ふはぁーーっ、眼福、至福、極楽ですわぁ。
「おい、沙里佐、そんなに先生の足を撫で回すなよ。」
「そうだ、君はあまりにもスキンシップ過多だ。」
口を揃えて私を非難する男ども。
私が君代先生宅にお邪魔してから、稜汰は隣の如月先生宅でお世話になっている。
恐らく、恋敵同士の生活で相当なストレスを溜め込んでいるようだ。
それにしても、どうして稜汰が君代先生の家で暮らしていたのかは未だに謎であるが、私は好きな人を責め立てて秘密を暴こうとなんてしませんの。
君代先生から打ち明けられるまで、私、忍耐強く待ちますのよ。
ああ、なんて健気な乙女。
だから、これ位は許してくれますよね、先生?
「むぎゃぅんっ!?」
私は背後から、先生の小ぶりなバストをやんわりと包み込む。
不測の事態に奇妙な声をあげる先生だが、それさえも愛しく思える。
むにゅむにゅ、おお、予想以上の触り心地。
柔らかすぎず、固すぎず、最適な揉みごたえ。
主張しすぎないサイズ感も、堪らないですわぁ。
「沙里佐、お前…」
ふーんだ、稜汰め。
オンナ同士の特権を羨みなさい。
「園田さん、あなた…」
あれれん、君代先生。
何だか顔がひきつってません?
ふいに、私の前にティッシュを箱ごと差し出す、如月先生。
「…鼻血出てますよ。」
やだ、なんか皆さん、ドン引きしてない?
あちゃー、でも、仕方ないよね。
だって私、変態の娘ですから、ね。
♪・♪・♪・♪・♪
「先生、沙里佐のこと、ほんとに迷惑じゃない?」
男たちが隣に帰った後は、私と先生だけの甘~い時間なのだ。
ベッドに二人で寝そべりながら、眠るまでの間に何気ないお喋りを続けるのが、最近の日課になっていた。
「いいえ、全っ然、全くもって、迷惑なんかじゃありません!
むしろ、ピチピチな現役女子高生が隣にいると、私の肌も心なしか潤ってる気がするし。」
「クスッ、先生ったら、ありがとうございます。
……私ね、この通りひねくれた性格でこの美貌だから、女子から嫌われるんです。
男なんかは私の容姿に惹かれて寄ってくるけど、中身は全然見ていないんですよ。
まあ、例外的に稜汰だけは私の本性を知っても、態度を変えませんでした。
稜汰と私は、お互いに家庭が複雑だから、分かり合える部分が多かったんだと思います。
あっ、でも、誤解しないで下さいね。
稜汰は同志みたいなものであって、私たちの間には友情以上のものは無いんです。
私にとって、稜汰は唯一の友達だったんです。
先生に色々と意地悪したのは、稜汰を奪われそうで怖かったんです。
謝って済ませることじゃないと思うけど、本っ当にゴメンナサイ!」
先生は微笑を浮かべて、私の話を聞きながら黙って頷いてくれる。
「先生は私の嫌な面を知った上で、私を守ろうとしてくれました。
そんな人、私の周りには、今まで一人も居なかったんです。
先生が私の為に父に立ち向かってくれたこと、私、本当に嬉しかったんです。」
先生は相変わらず聖母のような微笑みで、私の瞳をじっと見つめている。
「先生がどんな事情で、稜汰と一緒に暮らしていたのかは知りません。
だけど、この数日間でそれが稜汰にとっても、先生にとっても良いことだと感じました。
気付いています?稜汰はいつも先生に、熱っぽい視線を送ってるんですよ。
本人は恐らく無自覚でしょうけど。
それに、先生も稜汰に対して、息子か恋人を見守るような、温かい眼差しを向けてますよね。」
先生は一変して、面食らった表情になる。
なるほど、稜汰と同様に、先生の方も自覚が無かったのね。
「私ね、本気で、LOVEの意味で、先生のことが好きです。
つまらない男と先生が付き合ったら、きっと発狂しちゃいます。」
神妙な面持ちになる先生は、思っていることが全部、顔に出てしまうタイプらしい。
「でも、稜汰だったら、多少未練がましくなっても、先生のこと諦められると思うんです。
稜汰ね、先生に出会ってから、よく笑うようになったの。
ポーカーフェイスの女ったらしが、先生の手作り弁当を嬉しそうに頬張る様子は、年相応の男の子って感じがして、凄く可愛かったんですよ。
先生のお陰で最近の稜汰は、今までに見たことないほど生き生きしています。
だから、先生、これからも、稜汰の傍にずっと居てあげてくださいね。
それで、たまには…私の相手もしてね。」
先生が優しく私の髪を撫で付け、とびっきりの笑顔で見つめ返してくれた。
「たまになんて、言わないで。
沙里佐ちゃんが嫌って思うほど、構い倒してやるんだから、ね。」
ううぅ、ここで名前呼びは反則です。
先生、これ以上、私を夢中にさせて、後悔しても知りませんよ?
♪・♪・♪・♪・♪
「本当に、帰っちゃうの?」
「はい、短い間でしたが、お世話になりました。
これからは、変態父とも正しい家族関係を築けるように、努力していきたいと思います。」
「園田さんったら、立派な心構えよ。」
「あーっ、先生、呼び方が戻ってるぅ。
もう、二人きりの時は、また名前で呼んで下さいねっ!!」
チュッ
先生のほっぺにキスをして、ヤり逃げする私。
見送りに来た男どもが、ギャーギャー文句を言ってるようだったけど、これくらいは許せ!
花の女子高生・園田沙里佐は、今日も立派に変態道を突き進みます!
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