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凡人  作者: 慈架太子


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第5章:自立の種と終わらない旅

学校が設立されてから、数年が経過しました。 かつての「奴隷」や「虐げられた人々」という言葉は、この国では死語になりつつあります。


今や、元奴隷たちが育てた麦が大陸全土の食卓を支え、元娼婦の女性たちが営む診療所が各地の命を救っています。自立した彼らの瞳には、かつての濁りはなく、未来を見据える強い光が宿っていました。


そんなある日、俺は「2の20乗」の索敵魔法に、少し奇妙な反応を感じました。


1. 影の集結

「……アレク、気づいたか?」 ジミーがゴーグルを調整しながら、俺の横に並びました。


「ええ。大陸の各地で、小さな、でも確固たる『意志』が動き出しています。……でも、これは悪意じゃない」


俺たちは転移魔法で、その「意志」が集まっている北の国境付近へと飛びました。 そこには、かつての職業訓練所の卒業生たちが、数百人規模で集まっていました。


「……何をしているんですか、皆さん?」


俺が声をかけると、彼らは一斉に振り返り、そして静かに跪きました。先頭に立ったのは、元鉱山奴隷で、今は立派な建築家となった青年です。


「アレク様。私たちは相談したのです。あなたたちが与えてくれた自由と知恵を、ただ自分たちの代だけで終わらせてはいけないと」


彼らは、自分たちで書き上げた「憲法」と「大陸全土の自律ネットワーク計画」を差し出しました。


「私たちは、あなたたち『暁の銀翼』にいつまでも頼り切るわけにはいきません。それではまた、別の『王』を作ることと同じです。自分たちで悪意を監視し、自分たちで飢えを解決する……そのための連合を作らせてください」


2. 「凡人」の卒業式

ロバートさんが、その若者の肩を叩きました。 「……ははっ、参ったな。俺たちの出番を奪う気か?」


「いえ、ロバート先生。私たちはただ、先生たちが誇れる『凡人』になりたいだけです」


俺はその言葉を聞いて、胸が熱くなるのを感じました。 最強の力で悪を滅ぼすことよりも、彼らが自分たちの力で「平和を守る仕組み」を作ろうとしていることの方が、遥かに素晴らしい「奇跡」に思えたからです。


「わかりました。……今日、あなたたちは『暁の銀翼』の卒業生ではなく、この大陸の主役です。俺たちは、あなたたちが作ったこの仕組みが、正しく機能するかどうかを……一番後ろで見守らせてもらいます」


3. 次なる旅へ

その日を境に、俺たちは表舞台から姿を消しました。 統治も、審判も、すべては民たちが作った「自由連合」に託されたのです。


俺とロバート、ゲイル、ジミー、キャリー、アンジェの6人は、再び小さな旅の馬車を仕立てました。


「さて、アレク。次は何をする? 世界は平和になった。お前の『鑑定』も、当分は出番がなさそうだが」 ロバートが笑いながら馬の手綱を握ります。


「そうですね……。まずは、ザックさんを探しに行きませんか? あの人が言っていた『魔法の究極のイメージ』の続きを、少しだけ見せたいんです」


「いいわね。あの風来坊、今頃どこで油を売ってるのかしら」 キャリーが空を見上げ、アンジェが穏やかに微笑みました。


馬車は、黄金色の麦畑の中をゆっくりと進んでいきます。 背後には、誰も飢えることなく、誰も泣き寝入りすることのない、光り輝く新しい国。


俺はアレク。 かつては無能と蔑まれた凡人。 でも今は、最高の仲間と共に、終わらない自由な空を追いかける、ただの冒険者です。



「完」

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