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凡人  作者: 慈架太子


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第3章:2の乗数魔法と新しき国の礎

大聖堂の最奥、豪華絢爛な装飾に囲まれた教皇の間。 俺は、震える手で十字を切る教皇の前に立ちました。


「神よ……お救いください……この悪魔め、神の代理人である私に何ということを……!」


教皇は金切り声を上げますが、その瞳には民を思う慈悲など微塵もなく、ただ自分の命への執着だけが濁って見えました。俺は彼を「鑑定」しました。


名前:教皇グレゴリオ 罪状:大量虐殺の教唆、勇者の悪用、私利私欲による国政の私物化 本質:極度の自己中心的思考、他者への共感欠如


「教皇……あんたは言ったな。罪なき民を殺したのは『神の意思』だと。なら、今からあんたが受ける報いも『神の意思』だと思って受け入れろ」


俺はロバートさんに合図を送り、教皇を祭壇の上に拘束させました。 「本来、俺は人を殺したくない。だが、あんたのような悪を放置して、また別の村が焼かれるのを見過ごすことは、俺がその民を殺すのと同じだ。……俺は、その罪を背負うことに決めた」


俺は「アイテムボックス」から、特別な魔力を付与した粗塩を取り出しました。


一回目: 俺は教皇の腕を薄く切り裂き、そこに塩を擦り込みました。 「ぎゃあああああああ! 痛い、痛い! やめろ、許せ!」 俺は無表情で、アンジェさんに「ハイ・ヒール」を命じました。傷は塞がりますが、苦痛の記憶は魂に刻まれます。


二回目: 今度は足を。教皇は「金をやる! 地位をやる!」と叫びながら命乞いを始めました。


三回目: 背中一面に塩を。彼はもはや言葉にならず、獣のような悲鳴を上げ続けました。


四回目: 「助けて……誰か……神様……」と、彼は自分が踏みにじった民と同じ言葉を口にしました。しかし、その心にあるのは後悔ではなく、自分への同情だけでした。


五回目: 全身の皮膚を細かく裂き、そこに塩の山を盛りました。 「………………」 教皇はもはや声も出ず、ただ涙と涎を流してガチガチと歯を鳴らしています。


「アンジェさん、最後のリセットを」 アンジェさんの放つ純白の光が、教皇の肉体を完璧な状態にまで復元しました。


俺は教皇の目の前に立ち、彼の魂を真っ直ぐに見据えました。 「教皇。五回繰り返した。あんたが殺した村人たちが味わった、ほんの一部だ。……今、自分のしたことをどう思う? 心から悔い改め、遺族に詫びる気はあるか?」


教皇は、焦点の合わない目で俺を見上げ、震える唇で囁きました。


「……殺してやる……いつか必ず……お前たち全員……呪ってやる……。私は、神に……選ばれた……特別な……人間なのだ……」


その言葉を聞いた瞬間、ロバートさんが静かに剣を抜きました。 ジミーさんは呆れたように吐き捨てました。「あきらめろアレク。こいつは死ぬまで、自分が『特別な特権階級』だと信じてやがる。人間の心なんて、最初から持ってねぇんだ」


「そうか。……なら、あんたの信じる『特別』を、すべて奪う」


俺は「2の10乗」の魔力を指数関数的に練り上げ、聖剣の先を教皇の額に当てました。


「魔法……記憶共有メモリー・シェア


俺がこれまでの旅で見てきた、焼き払われた村の惨状、親を失い泣き叫ぶ子供たちの声、飢えに苦しみ絶望の中で死んでいった俺の両親の最期の瞬間――。 それら数千人分の「絶望」を、無理やり教皇の脳内に流し込みました。


「あ……あ、あああ……嫌だ、見たくない! 頭が……頭が壊れる!!」


教皇の精神が、あまりの負の感情の奔流に耐えきれず、完全に崩壊しました。彼が信じていた「選民思想」という盾が粉々に砕け、ただ一人の惨めな老人の魂が、無数の犠牲者の怨念に飲み込まれていく。


「……処刑だ」


俺は一閃のもとに、教皇の首を撥ねました。 五色の光が奔り、聖国の悪徳の象徴だった男の肉体は、一瞬で浄化され、塵となって消え去りました。


大聖堂を包んでいた暗雲が晴れ、窓から光が差し込みます。


「終わったな、アレク」 ロバートさんが俺の肩に手を置きました。 「……ああ。これで、もう誰もこの男のために泣かなくて済む」


俺たちは血に汚れた大聖堂を後にしました。 外には、勇者狩りと教皇の死を知り、恐る恐る家から出てきた聖国の民たちがいました。


俺は空に向かって、静かに「2の10乗」の光魔法を放ちました。 それは攻撃ではなく、国中を優しく照らす治癒の光。 教皇が奪ってきたエネルギーを、すべて土地と民に返すための祈りでした。


「俺たちは『暁の銀翼』。……もう、支配者に怯える必要はない!」


俺の隣には、最強の力を手に入れた5人の仲間がいました。 凡人から始まった俺の復讐劇は、こうして一つの国の夜明けと共に、幕を閉じました。


「こんな穢れた場所、残しておく価値なんてないわね」


キャリーさんが冷ややかに言い放ち、一歩前へ出ました。彼女は空に向けて片手を掲げ、指数関数的な魔力を練り上げます。


「アレクに教わった通りにやるわ。……2の10乗、魔導ジャベリン・一斉掃射!」


無詠唱で展開された1024本の漆黒の魔力槍が、夜空を埋め尽くしました。彼女が振り下ろした手に合わせて、そのすべてが大聖堂へと降り注ぎます。


ドォォォォォォォォォォン!!


凄まじい轟音と共に、罪悪と私欲の象徴だった巨大な大聖堂は、瓦礫の山にすらならず、塵となって霧散しました。血に汚れた石畳も、傲慢な玉座も、すべてが消滅し、そこにはただの広い空地が残されました。


「……次は、私の番ね」


アンジェさんが優しく微笑み、杖を地面に突きました。


「魔力吸収、全開。……そして、2 de 10乗、豊穣の福音グレイス・フィールド!」


彼女が周囲の大気から吸収した膨大な魔力が、純白の光となって大地へと染み込んでいきます。 石や瓦礫が土へと還り、一瞬のうちに黒々とした肥沃な大地が広がりました。さらに光が弾けると、そこには瑞々しい若草が芽吹き、かつて絶望が支配していた場所は、国で最も豊かな「農地」へと姿を変えました。


「すごいや……アンジェさん、キャリーさん」


俺はその光景を見て、ようやく心の底から息を吐くことができました。 破壊のあとに、再生がある。 これこそが、俺たち「暁の銀翼」が本来あるべき姿なんだ。


「アレク、ここには何を植えようか?」 アンジェさんが振り返って俺に尋ねます。


「そうですね……俺の村にあった、あのおいしいジャガイモと麦がいい。これからは、誰も飢えることのない国にしましょう」


俺たちは、新しく生まれた農地の土を踏みしめました。 ロバートさんが笑い、ゲイルさんが胸を叩き、ジミーが空を仰ぐ。


復讐は終わった。 これからは、この広大な大地に新しい命を育てていくんだ。


「暁の銀翼」の冒険は、ここからまた、新しく始まっていく。



新しい国を作ろう 誰もが植えることのない国を 俺たちは落ち付くまでこの国を見守ろう


「ああ、そうだな。それが、生き残った俺たちがすべきことかもしれない」


ロバートさんが、新しく芽吹いたばかりの緑の大地を見渡しながら、力強く頷きました。


かつて「聖国」と呼ばれたこの地は、今日、名前を失いました。そして同時に、血筋や身分、教義によって人を縛り付ける古い鎖からも解き放たれたのです。


俺たちは、この農地を囲むように小さな村を作り、そこを新しい国の「礎」にすることに決めました。


俺は仲間たちと話し合い、この新しい場所で守るべきシンプルな指針を立てました。


大地の恵みは共有物とする: キャリーさんとアンジェさんが魔力で整えた肥沃な大地は、誰のものでもありません。共に耕し、共に分かち合う。


力は守るために使う: ゲイルさんとロバートさんは、自警団を組織しました。それは誰かを侵略するためではなく、理不尽な暴力から民の平和な暮らしを守るための盾です。


知識と魔法を開放する: ジミーさんは迷宮で培った「危機察知」を、俺はザックさんから教わった「魔法の真理」を、村の子供たちに教え始めました。凡人でも、知恵と工夫があれば、運命を切り拓けることを伝えるために。


数ヶ月が過ぎ、更地になった大聖堂の跡地には、黄金色の麦穂が波打つようになりました。 かつて教皇の圧政に怯えていた民たちは、今では泥にまみれながらも、自分たちの手で収穫する喜びを分かち合っています。


「アレク! 今日の収穫、去年の倍はいきそうだよ!」 村の子供が、俺のところに走ってきて笑います。その笑顔を見るたびに、俺の心にあった復讐の火は、穏やかな温もりへと変わっていきました。


俺は時折、村の外れにある丘に登り、北の空を見上げます。


「ザックさん、見てますか。俺たち、なんとかやってますよ」


風が吹くと、どこからか「魔法は自由なものさ」という声が聞こえた気がしました。


俺たちは、この国が自分たちの足でしっかりと歩き出せるその日まで、ここで見守り続けます。伝説の勇者でも、神の代理人でもない。ただの、しぶとい「凡人」の冒険者パーティーとして。



「……懲りない連中だな。あいつらは、あの更地になった大聖堂を見て何も学ばなかったのか」


ジミーがゴーグルを指で押し上げながら、冷たく言い放ちました。彼の「鑑定」と「千里眼」は、王都の地下深く、隠されたシェルターに集まる旧貴族たちの姿を捉えていました。


彼らは奪い取った隠し資産をテーブルに積み上げ、かつての特権階級を取り戻すべく、私兵を雇い、他国から武器を買い付け、再び民を「家畜」として支配する計画を立てていたのです。


「アレク、どうする? 奴ら、自分たちの手を汚さず、また無垢な民を煽って内乱を起こそうとしてるぜ」


ロバートさんが剣の柄に手をかけました。その瞳には、かつての「暁の銀翼」の優しさはなく、害虫を排除する冷徹な戦士の光が宿っています。


「……放置すれば、またあの干ばつの時のように、誰かが飢えて死ぬことになる。彼らが望むのは『支配』。俺たちが望むのは『平和』。両立は不可能です」


俺は聖剣を抜き、短く告げました。


「殲滅しましょう。一人の残らず。彼らには、この新しい国に一寸の土地も、一滴の水も与えません」


夜の掃除クリーニング

作戦は一瞬でした。


まず、キャリーさんが地下シェルターの周囲に「2の10乗」の遮音・遮光結界を張りました。中での断末魔は、外の民には一切聞こえません。


隠密ステルス・1024……」


ジミーが分身魔法で千人の刺客となり、影からシェルター内に侵入しました。警護の私兵たちが声を上げる暇もなく、その首を刈り取っていきます。


俺とロバートさん、ゲイルさんは正面から会議室の扉を蹴り破りました。


「な、なんだ貴様らは! 無礼者! 私は公爵だぞ! 伯爵だぞ!」


絹の服を着た肥満体の男たちが、泡を食って叫びます。


「その地位も、血筋も、この国にはもう存在しない。……お前たちが再びこの国を汚そうとした罪、その命で購ってもらう」


「や、やめろ! 命だけは助けてくれ! 宝の場所を教えるから!」


「……鑑定」


俺は彼らの脳内を覗きました。反省の色など微塵もなく、「今は命を乞い、後で暗殺者を送り込んでやる」という醜い思考が渦巻いています。


「……アンジェさん」


「ええ。……2の10乗、ホーリージャベリン。」


アンジェさんが無詠唱で放った千本の光の槍が、逃げ惑う貴族たち一人一人を正確に貫きました。彼女の魔法は「過剰な生命力」を与え、その肉体が耐えきれず光となって霧散する、最も苦痛の少ない、しかし確実な消滅です。


「キャリーさん、最後をお願いします」


「任せなさい。……消去デリート


キャリーさんが指を鳴らすと、貴族たちの死体、彼らが持ち込んだ汚れた金貨、そしてこの地下シェルターそのものが、存在しなかったかのように消滅し、ただの土へと還りました。


翌朝、王都には何事もなかったかのように穏やかな太陽が昇りました。


「掃除」が終わったことを知る者は、俺たち以外に誰もいません。 支配を企んでいた影は、文字通りこの世から消え去りました。


「アレク。これでようやく、本当の平和が始まるな」


ロバートさんが、朝露に濡れる麦の穂を眺めながら言いました。


「ええ。……でも、もしまた影が現れたら、その時は何度でも掃除をしましょう。俺たちは、この国の『影の守護者』ですから」


俺たちは聖剣を鞘に収め、鍬を手に取りました。 新しい国の朝は、今日も静かに、そして誰も飢えることなく始まっていきます。


優秀なものにこの国の統治を任せよう 商人にこの国の麦を他国に売ろう


「そうですね。俺たちは戦い方や育て方は知っていますが、国を動かすのはまた別の専門知識が必要です。本当の意味で民が豊かになるには、公正なルールと、富を循環させる仕組みが不可欠ですから」


俺はロバートさんたちと相談し、かつて教皇や貴族に弾圧されていた者たちの中から、誠実で知恵のある「優秀な者」を鑑定し、統治の座に据えることにしました。


俺が鑑定で見つけ出したのは、かつて国の司書をしていた老人や、村々を回って不当な徴収を止めようとしていた元下級役人たちです。彼らは地位のためではなく、真に「民の生活」を第一に考える者たちでした。


「あなたたちに、この国の運営を任せたい。俺たちは、あなたたちが正しい道を進む限り、その盾となります」


俺は彼らに統治権を委譲し、俺たち「暁の銀翼」はあくまで一市民として、しかし「不当な権力には容赦しない守護者」としての立場を明確にしました。


次に、俺は近隣諸国との交易を再開させるため、信頼できる商人を呼び寄せました。


アンジェさんが再生させた大地から採れる麦は、栄養価が高く、保存性にも優れた「聖なる麦」として他国では喉から手が出るほど欲しがられる一級品です。


「この麦を他国へ売ってください。ただし、条件があります。得られた利益はまず、この国のインフラ整備と、万が一の凶作に備えた貯蔵に回すこと。そして、他国で飢えている民にも届くような適正価格で取引することです」


商人は俺の放つ威圧感と、背後に控える最強のパーティーを見て、深く頷きました。 「承知いたしました。この麦は、ただの食料ではありません。この国の『平和の象徴』として、世界中に広めてみせましょう」


数ヶ月後、国には活気溢れる市場が戻ってきました。 他国からの外貨や珍しい品物が流れ込み、民の食卓はさらに豊かになりました。麦の輸出で得た利益で、学校や病院が建設され、アレクがかつて経験したような「貧しさゆえの死」は、この国から完全に消え去ったのです。


「アレク、見てみろよ。活気が出てきたな」 ジミーがゴーグル越しに賑わう市場を眺めて笑います。


「ええ。俺たちが剣を振るう回数が減れば減るほど、この国が良くなっている証拠ですね」


俺たちは、時折農作業を手伝いながら、静かに国の成長を見守っています。 もはや、復讐のために剣を抜く必要はありません。


俺たちが守ったこの「黄金の麦畑」は、今や国境を越え、遠い異国の誰かの空腹をも満たしています。


「誰も飢えることのない世界」


アレクがかつて絶望の中で描いた夢は、今、確かな現実としてこの大陸に広がり始めていました。



平和な風が吹く麦畑に、不穏な鉄の匂いが混じりました。


「……アレク、北の国境だ。隣接するカスティア王国の領主、ゼノス公爵が動いたぜ」


ジミーが強化ゴーグルを調整しながら、吐き捨てるように言いました。 「鑑定」と「千里眼」の報告によれば、重武装の騎士団五千と、雇い入れられた魔導師団がこちらに向かって進軍しているとのこと。


「あの麦畑の豊かさを聞きつけて、横取りしに来たってわけか。強欲な奴らめ」 ゲイルが巨大な盾を叩き、重低音を響かせます。


「アレク、どうする? 統治を任せた連中や民は怯えてる。ここで俺たちが動かなきゃ、この国はまた蹂躙されるぞ」 ロバートさんが静かに、しかし鋭く俺に問いかけました。


俺は黄金色に輝く麦の穂を一度だけ撫で、それから前を向きました。


「……彼らには、この国の土は一歩も踏ませません。殲滅そうじしましょう。ただし、今回は『恐怖』を刻み込みます。二度と、この国に手を出そうなんて思わないように」



俺たち6人は、国境の平原で敵軍を待ち構えました。 地平線を埋め尽くすカスティア王国の軍勢。対するは、俺たち6人だけです。


「ハッハッハ! 6人だと? 狂ったか、農民上がりの反逆者どもめ!」 最前線で馬にまたがるゼノス公爵が、高笑いと共に剣を振り下ろしました。 「突撃せよ! 麦も女も金も、すべて奪い取れ!」


「……キャリーさん、アンジェさん。お願いします」


俺の合図で、二人が一歩前に出ました。


「ふふ、いいわ。2の10乗……魔導ジャベリン・連射」 「慈悲を。2の10乗……ホーリーバレット・連射」


空が割れました。 1024本の炎の槍と、1024発の光の弾丸。それがコンマ数秒の間隔で次々と生成され、数万の光の雨となって敵軍の頭上に降り注ぎました。


ドォォォォォォン!!


「な……なんだこの魔法の数は!? 迎撃しろ! 防御魔法を展開せよ!!」


敵の魔導師たちが必死に障壁を張りますが、指数関数的に増殖し続ける魔法の嵐の前では、紙細工も同然でした。最前線の騎士たちは、戦うことすら許されず、一瞬で蒸発していきました。



「次は俺たちの番だな。……分身、1024!」


ロバートさん、ゲイルさん、ジミーさんが同時に叫びました。 平原を埋め尽くす、1024人のロバート。1024人のゲイル。1024人のジミー。


「ぎ、ぎゃああああ! どこを見ても『暁の銀翼』がいるぞ!!」


1024人のジミーが一斉に影へ潜り、後方の補給部隊と指揮官を瞬く間に暗殺。 1024人のゲイルが巨大な壁となり、敵の逃げ場を完全に塞ぎます。 そして、1024人のロバートが同時に一閃を放ちました。


「はぁっ!!」


1024本の風刃が空気を切り裂き、残っていた騎士団を文字通り「刈り取って」いきました。



わずか数分。 五千の軍勢は全滅し、残されたのは腰を抜かして震えるゼノス公爵一人だけでした。


俺は一瞬で彼の間合いに入り、聖剣の先をその喉元に突きつけました。


「……命乞いをするか? それとも、俺の村人たちと同じ苦しみを味わいたいか?」


「ひ、ひぃぃ……! 許してくれ! 悪かった、私が間違っていた! 金なら出す、領地もやるから……!」


「いらないと言ったはずだ。あんたの汚れた金も、土地も」


俺は「鑑定」で、この男が過去にどれだけの民を搾取し、殺してきたかを確認しました。……救いようのない、真っ黒な履歴。


「アンジェさん、お願いします。教皇の時と同じように」


「ええ、アレク」


そこから始まったのは、慈悲なき「教育」でした。 傷に塩を塗り、回復させ、精神を限界まで追い詰める。


5回の繰り返しの後、ゼノス公爵の精神は完全に崩壊しました。彼は自分が奪ってきた民の絶望に飲み込まれ、最後は俺の放つ「白輝」の一撃で、その肉体ごと虚無へと消え去りました。


俺たちは返り血一つ浴びず、村へと戻りました。


「ロバートさん。隣国には、この戦いの結果を伝えておきましょう。……『この国に牙を剥く者は、神であろうと勇者であろうと、例外なく塵にする』と」


「ああ。これでもう、しばらくは静かになるだろうよ」


俺たちの背後では、平和な国の民たちが、何事もなかったかのように麦の収穫を続けています。 その穏やかな光景を守るためなら、俺たちは何度でも、最強の「凡人」として剣を取る。


新しい国の伝説は、こうして近隣諸国への「絶対的な恐怖」と共に、確固たるものとなりました。



俺は運よくロバートさんたちに助けられたけれどこの世界は悪意が多すぎる。 悪人に殺されて泣き寝入りじゃ全く浮かばれない。 どうしたらいいだろう


俺たちは自分たちの国を守るだけでなく、世界中にその名を轟かせることにしました。 「悪を働けば、暁の銀翼が来る」という恐怖を悪人に植え付けるのです。


ジミーさんは「2の10乗」の分身を世界各地の主要都市や貧民街に放ちました。彼らは「影」として潜み、権力者による虐殺や略奪、人身売買の予兆を、千里眼のゴーグルを通じて常に俺たちに報告します。


SOSを感知した瞬間、俺は空間を繋ぎ、現場へ即座に急行します。「泣き寝入り」が確定する前に、その悪意の芽を摘み取るためです。


悪人に殺されてからでは遅すぎます。俺たちは、他国で虐げられている無垢な民に対し、この国への「亡命」を積極的に受け入れる路を作りました。


「暁の銀翼の国へ行けば、誰も飢えず、誰も殺されない」というメッセージを、魔法を使って各地の風や鳥に乗せ、絶望している人々の耳に届けました。


避難してくる民が追手に捕まらないよう、国境までの道に強力な防御結界と、疲労を回復させる光の導きを設置しました。


悪意が生まれる原因の多くは、無知と、他者を踏みにじらなければ生きていけないという「飢え」から来ます。


俺たちは他国から来た商人たちを通じ、**「麦を売る条件」**として、その国の貧困層への食料供給と教育機会の提供を義務付けました。 「麦が欲しければ、自国の民を大切にしろ。さもなければ、一粒も売らないし、お前たちの支配構造を根こそぎ破壊しに行く」 という、力による平和の強制です。


「アレク、甘いかもしれないがな……」 ロバートさんが、村の子供たちが駆け回る広場を見て言いました。 「悪意をゼロにすることはできねぇ。だが、『悪意を持って行動すれば、必ずそれ以上の報いを受ける』という法則を、俺たちがこの世界に刻み込むことはできる」


「ええ。俺は、運よく助けられました。その運を、次は俺たちが『必然』に変えていくんです。泣き寝入りなんて、二度とさせない」


俺は、聖剣の柄を握り直しました。 この力は、誰かの涙を止めるためにある。


たとえ世界中に敵だと思われても、「暁の銀翼」は、救いを求める声がある限り、その場所に五色の光を降らせるでしょう。



「……見つけた。やはり、よどみは尽きないな」


俺は大聖堂の跡地に築かれた見晴らしの良い丘で、精神を研ぎ澄ませました。「鑑定」と「索敵」を「2の10乗」でブーストし、大陸全土へ魔力の触手を伸ばします。


ジミーさんが各地に放った分身たちからの情報が、ゴーグルを通じて俺の脳内に直接流れ込んできます。


「アレク、どうだ。どこに腐った奴らがやがる」


ジミーさんがナイフを回しながら尋ね、ロバートさんたちが武器の点検を終えて俺の周りに集まります。


「……南の隣国、『レムス王国』。ここの辺境伯が、俺たちの国の麦を独占するために、周辺の村の井戸に毒を投げ込んでいます。民を飢えさせ、弱ったところで『暁の銀翼に毒を盛られた』と偽の情報を流し、扇動しようとしている」


「……最悪だな。自分の民を、自分の私欲のために殺すのか」 ロバートさんの声が低く、怒りで震えています。


「それだけじゃない。北の『鉄鋼公国』では、武器商人たちが戦争を望んでいる。俺たちの平和な統治が広まると武器が売れなくなるからと、孤児たちを集めて暗殺者に仕立て上げ、この国へ送り込もうとしている。今、まさに最初の一団が国境付近の洞窟に潜んでいます」


俺は目を開けました。 かつての俺のように、何も知らず、ただ「生きるため」に悪意の道具にされている子供たちがそこにいる。そして、それを笑いながら見ている肥え太った悪党たちがいる。


「泣き寝入りは、今日で終わりだ」


俺は右手を掲げ、空間を歪ませました。


「キャリーさん、アンジェさん。国境の洞窟にいる子供たちを『眠り魔法』で無力化し、聖域へ転送してください。あの子たちには、武器の代わりにパンの焼き方を教えます」


「ええ、任せて。あの子たちの悪夢は、私が焼き尽くしてあげるわ」 キャリーさんが不敵に笑います。


「ロバートさん、ゲイルさん、ジミーさん。……俺と一緒にレムス王国の辺境伯の館へ。毒を撒いた張本人たちに、自分たちが投げ込んだ毒をすべて飲み干してもらいましょう」


「ああ。分身魔法の使いどころだな。一箇所も逃さねぇ」


俺は聖剣を抜き、行き先を「レムス王国・辺境伯館」に固定しました。


「行くぞ。……世界から悪意を、一つずつ『消去』する」


閃光が走り、俺たち「暁の銀翼」は瞬時に戦場へと転移しました。 悪意を持って動いた者たちが、その報いを知るまで、あと数秒。

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