第2章:伝説の救済と復讐の炎
「どけぇっ!!」
俺は全身の魔力を右足に込め、地下四階の巨大な黒鉄の扉を蹴り破った。
大広間の中は、地獄だった。 ゲイルさんの大盾はひしゃげ、アンジェさんは魔力切れで倒れ、キャリーさんは震える手で杖を握りしめている。 そして前頭に立つロバートさんの剣は折れ、眼前に迫る「黒い大剣」をただ見上げることしかできていなかった。
「終わりだ、暁の銀翼。お前たちの正義など、死の迷宮の糧にすぎん」
漆黒の鎧を纏ったその男が、絶望的な重圧を放ちながら大剣を振り下ろす。
「やめろぉぉぉっ!!」
俺は一瞬で間合いを詰め、ロバートさんの前に割り込んだ。 「ホーリーシールド・最大展開!!」
ガギィィィィィィィン!!
鼓膜を突き破るような衝撃音が響き渡る。 俺の目の前に展開された幾層もの聖なる光の盾が、厄災の大剣を真っ向から受け止めていた。
「……な、なんだと……!?」
漆黒の男が、驚愕にその動きを止める。
「ア……アレク……? なぜ、お前が……」 背後で、ロバートさんの掠れた声が聞こえた。
俺は盾を維持したまま、眼前の敵を「鑑定」した。
名前:アルトリウス 職業:腐敗した伝説の英雄(厄災の王) レベル:99 状態:不死・憎悪・魂の汚染
「伝説の……英雄? ……まさか、百年前の魔王戦で世界を救ったっていう、あのアルトリウスか!?」 横から追いついたジミーさんが、強化ゴーグル越しにその正体を見抜き、戦慄の声を上げた。
「くく……そうだ。英雄と呼ばれ、崇められ、そして最後には国に裏切られ、この迷宮の底に捨てられた。それが私の正義の結末だ」
アルトリウスの兜の隙間から、赤い怨念の光が漏れる。 彼は、かつて人々を救ったその力で、今は世界に飢餓と災いをもたらす根源となっていた。
「ロバートさん、下がってください。アンジェさんとキャリーさんを連れて奥へ!」
「バカ言え、アレク! 相手は伝説の英雄だ……お前一人でどうにかなる相手じゃねぇ!」 ロバートさんが叫ぶ。だが、俺は一歩も引かなかった。
「俺は凡人です。でも……ロバートさんたちが守ってくれた、この命を懸けて教わったことがある。――『生き残った奴が、一番強い』。俺は、皆と生きて帰るためにここに来たんだ!」
俺は聖剣を抜き放ち、五色の魔力を一気に解放した。 アルトリウスの放つ黒い波動を、俺の聖なる光が押し返していく。
「面白い。そのしぶとい魂……今すぐ砕いてやろう、凡人よ!」
アルトリウスが黒い大剣を構え直し、迷宮全体が震えるほどの魔力を練り始めた。
ステータス確認
アレク: 魔力:80%(「魔力吸収」継続中)
敵: 圧倒的な力だが、一部の動きに「かつての傷」による隙があることを鑑定で察知。
「凡人ごときが、この私に届くとでも……!」
アルトリウスが黒い大剣を振り上げる。その一振りで、迷宮の天井が剥がれ落ち、凄まじい闇の奔流が俺を飲み込もうと押し寄せてきた。
「アレク、逃げろ!!」
ロバートさんの叫びが聞こえる。だが、俺は逃げない。 俺は極限まで集中し、アルトリウスの全身を「鑑定」し続けた。
「……見えた!」
鎧の合わせ目、心臓のすぐ上にある小さな古い傷跡。そこだけが、不自然に魔力の循環が滞っている。かつての英雄が、かつての戦いで受けた唯一の誇りある傷。そこが、今の彼にとっては「不死の呪い」を繋ぎ止めている楔だ。
だが、今の俺の力だけでは、そこへ至る前に闇の圧力に押し潰される。
その時だ。脳裏にザックさんの飄々とした声が響いた。
『いいかい、魔法はイメージだ。火や水、属性なんてのはただの入り口さ。究極のイメージってのはね……「ただ、そこにあるべき姿」を思い描くことなんだよ』
そこにあるべき姿。 この腐った迷宮に、英雄の成れの果てに、今必要なものは何だ? それは破壊じゃない。
「……救済だ」
俺は聖剣を正眼に構えた。 火、水、風、土、光。 五つの属性を混ぜ合わせるんじゃない。全ての力を一点に凝縮し、不純物を削ぎ落とし、ただ真っ白な「無」の輝きへと変えていく。
「属性統合……『白輝』」
俺の剣が、太陽よりも眩しい純白の光を放った。周囲の闇が悲鳴を上げて霧散していく。
「な……属性を消しただと!? 何を考えている!」
アルトリウスが焦燥に駆られ、大剣を叩きつけてくる。 俺は一歩踏み出した。ゲイルさんに教わった最短の踏み込み。ジミーさんに教わった死角への移動。ロバートさんに教わった、迷いのない一撃。
「これが、俺たち『凡人』の、3年間の全てだ!!」
俺はアルトリウスの懐に飛び込み、鑑定で見つけた「古傷」へ、一点に凝縮した白輝の剣先を突き立てた。
「……あ……ああ……」
アルトリウスの動きが止まった。 剣先から流れ込む純白の魔力が、彼の魂にこびりついていた黒い呪いを、優しく、それでいて圧倒的な勢いで浄化していく。
迷宮を支配していた悍ましい殺気が、見る間に温かな光へと変わっていった。 アルトリウスの漆黒の鎧が砕け散り、中から現れたのは、悲しげに微笑む一人の男の姿だった。
「……そうか。私は、誰かに止めて欲しかったのか……」
彼はそう呟くと、光の粒子となって消えていった。 後に残されたのは、彼がかつて振るっていたであろう、輝きを取り戻した伝説の聖剣だけだった。
「……終わった……のか?」
背後でロバートさんが、折れた剣を杖代わりに立ち上がる。 俺は肩で息をしながら、彼らの方を振り返った。
「ロバートさん……皆さん……怪我はないですか?」
俺がそう言った瞬間、ゲイルさんが大きな声を上げて俺に飛びつき、アンジェさんとキャリーさんは泣きながら俺の手を握った。
「アレク……お前、本当に……」 ロバートさんが、震える手で俺の肩を叩く。 「……強くなったな。俺たちの自慢の、雑用係だ」
俺は、込み上げてくる涙を堪えることができなかった。 凡人の俺でも、誰かを救うことができた。 あの時、俺を救ってくれた彼らの手を、今度は俺が握り返すことができたんだ。
迷宮の外に出ると、そこにはいつものように、干し肉をかじりながら空を見上げているザックさんがいた。
「お疲れ様、アレク。いい答えを出したじゃないか」
「ザックさん……あなたは、一体……」
「僕? 僕はただの通りすがりの、魔法が好きな凡人さ」
ザックさんはそう言うと、風に溶けるように姿を消した。 俺たちの手元には、救い出した仲間と、新しく刻まれた絆。
俺はロバートさんたちと一緒に、歩き出した。 俺はアレク。 まだ始まったばかりの、一人の冒険者だ。
アルトリウスを倒し、世界に平和が戻るかと思ったのも束の間だった。
「救世」の御旗を掲げて隣国から現れた「勇者」一行。彼らは魔王亡き後の混乱を鎮めるという名目で、アレクが守り、再生させたあの村へと軍を進めた。
「逆らう者はすべて魔族の加担者だ!」
勇者の放った聖なる炎が、俺が土魔法と水魔法で丹精込めて育てた畑を焼き払い、村人たちの悲鳴を飲み込んだ。俺が駆けつけたとき、村は再び、あの日と同じ灰色の絶望に包まれていた。
「……また、俺から奪うのか」
地面に転がった、子供たちに教えていた木剣。血に染まった大地。 俺の心の中で、何かが音を立てて壊れた。 聖なる輝きを放っていた俺の魔力に、どす黒い怒りが混ざり合う。
「アレク、落ち着け! 相手は他国の勇者だ。今戦えば、お前は世界中の敵になるぞ!」 ロバートが俺の肩を掴む。だが、彼の目もまた、怒りに震えていた。
「ロバートさん……俺はもう、ただ守るだけの凡人には戻れません。あいつらが勇者なら、俺は……勇者を狩る『厄災』にだってなってやる」
ロバートは俺の目を見て、静かに手を離した。そして、背後に控えるゲイル、ジミー、キャリー、アンジェを見回した。
「……仕方ねぇな。雑用係を一人で地獄に行かせるわけにはいかねぇ。『暁の銀翼』は今日から、勇者狩りの反逆者だ」
俺はロバートたちの前に跪き、深く頭を下げた。 「お願いします……俺を、『暁の銀翼』の正式な一員にしてください。俺の力、すべてを皆さんのために使います」
「ああ、歓迎するぜ。アレク。地獄の果てまで付き合ってやる」
復讐の幕開け:最初の獲物
勇者パーティーは、村を蹂躙したあと、近くの城下町で祝杯を挙げていた。
「鑑定」
名前:勇者レオン(レベル85) 魔法使い:セリア(レベル78) 盾騎士:重戦車ブルック(レベル82) 神官:マリア(レベル80)
「ジミーさん、配置を」 「任せな。ゴーグルで見通した。神官と魔法使いは宿の最上階、勇者と盾は一階の酒場だ」
「キャリーさんは外からの退路を封鎖してください。アンジェさんは俺たちの支援を。ロバートさんとゲイルさんは盾を抑えてください。……勇者と魔法使いは、俺が殺ります」
闇夜に紛れ、俺たちは動いた。
まず動いたのはジミーだ。一切の音を消し、宿の護衛を無力化していく。 次にキャリーが宿全体に結界を張った。 「逃がさないわよ。一歩もね」
俺は最上階の窓から突入した。 「……何者!?」 詠唱を始めようとした魔法使いセリアの喉元を、俺の聖剣が風よりも早く切り裂く。 「がっ……あ……」 「一つ」
悲鳴を上げる間もなく、隣の部屋で祈っていた神官マリアの胸に、凝縮された光の杭を打ち込む。 「……貴女の神は、この村にいたのか?」 「……ひっ……」 光の杭が爆ぜ、神官は物言わぬ塊となった。 「二つ」
階下で異変に気づいた盾騎士ブルックが立ち上がるが、そこにはゲイルの巨大な斧と、ロバートの鋭い剣が待ち構えていた。 「俺の盾は、お前のような腐った騎士には破れん!」 ゲイルの咆哮と共に、盾騎士の自慢の大盾が真っ二つに叩き割られた。
「な、なんだ、貴様らは! 私は勇者レオンだぞ! 世界を救う宿命の――」
酒場の中心で、黄金の剣を抜こうとする勇者レオンの前に、俺は静かに降り立った。
「村の土の味を、覚えているか?」
「は? 何を言って――」
俺は「身体強化」と「瞬動」を同時に発動した。 レオンが剣を抜くより早く、俺の拳が彼の顔面を捉え、壁まで吹き飛ばす。
「……鑑定でわかった。お前のレベルは高いが、中身は空っぽだ。本当の修羅場を潜り抜けてきた、ロバートさんたちの足元にも及ばない」
俺は、這いつくばる「勇者」の髪を掴み、引きずり出した。
「さあ、狩りの時間だ。お前たちが奪った命の数だけ、絶望を味合わせてやる」
「暁の銀翼」の5人が、俺の背後に並ぶ。 かつては人を救うために振るったその力は今、傲慢な強者を屠るための牙へと変わっていた。
「おい、勇者様。そんなにすぐに死なれては困るんだ。俺の村の人たちは、もっと長く、もっと苦しんで死んでいったんだからな」
俺は「アイテムボックス」から一袋の粗塩を取り出した。 ゲイルとロバートが、身動きが取れないようにレオンの四肢を床に釘付けにしている。ジミーは冷ややかな目で出口を塞ぎ、キャリーは防音の結界をさらに強固にした。
「……や、やめろ……。私は選ばれた勇者だぞ! こんなことが許されると――」
「許すかどうかも、俺が決めることだ」
俺はレオンの腹部、先ほど切り裂いた傷口に、一掴みの塩を力任せに擦り込んだ。
「ぎ、ぎああああああああああっ!!!」
酒場に絶叫が響き渡るが、結界の外には一切漏れない。脂汗を流し、白目を剥いてのたうち回る勇者。激痛でショック死しそうになるその瞬間、俺は背後のアンジェさんに合図を送った。
「アンジェさん、お願いします」 「ええ……。ハイ・ヒール」
温かな光がレオンを包み、傷口が塞がる。だが、精神的な苦痛は消えない。 それを一回、二回、三回……。
四回目が終わる頃には、レオンの喉は枯れ、もはや悲鳴さえ出なくなっていた。視線は定まらず、かつての傲慢な輝きは見る影もない。
五回目。俺は最後の一掴みの塩を、彼の顔にある傷に塗りたくった。 「……さて、五回目だ。アンジェさん、最大出力で回復を」
全身の細胞が強制的に活性化され、レオンは無理やり意識を覚醒させられた。俺は彼の髪を掴んで無理やり顔を上げさせ、濁った瞳を覗き込んだ。
「レオン。お前が踏みにじった村人たちに、心から詫びる気はあるか? 改心するか?」
「……は、はは……。あんな、ゴミのような……村……。私が……救ってやるはずだったんだ……。感謝……しろ……」
レオンは口から血を吐き出しながら、狂ったように笑った。 その目は、改心どころか、まだ自分を「正義」だと信じ込んでいる。
「そうか。お前の中には、最後まで『心』なんてものはなかったんだな」
俺は立ち上がり、静かに聖剣を抜いた。 「絶望を教えてやる。……鑑定」
対象:レオン 称号:剥奪された勇者(神に見捨てられた者) 状態:魂の崩壊・虚無
俺は聖剣に「闇」と「光」を同時に付与し、相反するエネルギーによる「消滅」のイメージを練り上げた。
「お前が信じているその『勇者の力』……今、この瞬間にすべて消してやる」
剣をレオンの胸に突き立てる。だが、体は斬らない。魔力の根源だけを焼き切る。 「……あ、あああああああ!? 力が……光が消える……やめろ、やめてくれえええ!!」
彼が最も誇りとしていた聖なる力が、黒い霧となって霧散していく。ただの「無能な男」へと成り下がったレオンの顔に、初めて本当の絶望が浮かんだ。
「死よりも重い絶望の中で、あの世へ行け」
俺は一閃のもとに、彼の首を撥ねた。
静寂が戻った酒場。 「アレク、終わったか」 ロバートが静かに近づき、俺の肩に手を置いた。
「はい。……でも、まだ終わりじゃありません。この男を送り出した『聖国』。そこに巣食う連中が残っています」
「暁の銀翼」のメンバーたちが、血に染まった床を越えて俺の横に並ぶ。
「行こうぜ、アレク。次は国一つ、掃除しなきゃならねぇみたいだからな」 ジミーがニヤリと笑い、ゴーグルを直した。
俺たちは夜の闇に紛れ、次なる復讐の舞台――聖国の王都へと向かって走り出した。
聖国への進軍を前に、俺たちは森の奥深く、かつて修行した思い出の場所に陣を張った。
「ロバートさん、皆。今のままでは聖国の物量と、数に物を言わせた魔術師団には勝てない。……俺がザックさんに教わった『魔法の真理』を、皆に伝えます」
俺はかつてザックさんが俺にしたように、皆に「魔力の循環」を意識させた。
「いいですか、詠唱はただの補助です。イメージを固定できれば、言葉はいらない」
俺は三人の体に手を当て、強制的に魔力を流し込んで回路を拡張した。
ロバート(身体強化・付与・無詠唱): 「……これが無詠唱か。思考と同時に剣が走る!」 ロバートさんの剣筋が、もはや視認できない速度に達した。さらに自分の剣に「風」と「切断」を付与し、触れるものすべてを切り裂く「風刃の剣」を完成させた。
ゲイル(身体強化・回復・無詠唱): 「ガハハ! 盾を構えながら自分で回復できれば、俺は文字通り不落だな!」 ゲイルさんは身体強化を極め、鋼鉄以上の硬度を誇る肉体を手に入れた。多少の傷なら無詠唱の回復魔法で瞬時に完治させ、前線を維持し続ける。
ジミー(身体強化・付与・無詠唱): 「……消えただろ、アレク?」 ジミーさんは「気配遮断」と身体強化を組み合わせ、完全に姿を消す「隠密」を習得。さらにナイフに「麻痺」と「腐食」を付与し、暗殺者としての格を一段上げた。
「キャリーさん、アンジェさん。魔力切れの恐怖を捨ててください。世界から魔力を奪えばいいんです」
キャリー(無詠唱・魔力吸収): 「魔法はイメージ……自由なもの……!」 キャリーさんは、大気中の魔力を常に吸収し続けることで、無限の砲火を浴びせる「魔導砲台」へと進化した。詠唱を破棄したことで、広範囲殲滅魔法を雨のように降らせることが可能になった。
アンジェ(無詠唱・魔力吸収): 「これで、誰がどんな傷を負っても、私が倒れることはありません」 アンジェさんの回復魔法は、もはや「奇跡」の域に達した。魔力吸収によって、一国を救うほどの聖域魔法を展開し続けても顔色一つ変えない。
一週間に及ぶ地獄のような修行が終わった。 かつては「銀ランク」の冒険者だった彼らだが、今の「暁の銀翼」は、一人一人が伝説級の力を秘めている。
「よし。準備は整ったな」 ロバートが新しく付与された剣を鞘に収め、不敵に笑う。
「アレク。お前が教えてくれたこの力、無駄にはしねぇ。聖国の腐れ外道どもに、本当の『報い』を見せてやろうぜ」
「……はい。行きましょう、王都へ」
俺たちは迷いなく、聖国の国境を越えた。 俺の索敵魔法は、すでに王都の中心――巨大な大聖堂で贅を尽くしている「教皇」の禍々しい魔力を捉えていた。
それともう一つ
僕が見つけた魔法です。
2の乗数魔法
2の1乗 2
2の2乗 4
2の3乗 8
2の4乗 16
2の5乗 32
2の6乗 64
2の7乗 128
2の8乗 256
2の9乗 512
2の10乗 1024
この数字を覚えてください。
これ自体は何の意味もありませんが元の魔法と組み合わせて連射することができます。
「なるほど……魔法の真理はイメージ、そしてそのイメージを加速させるのが『数』というわけですね」
俺たちはその「2の乗数」の概念を共有し、さらなる修行に打ち込んだ。 単純な連射ではない。1、2、4、8、16……と指数関数的に増殖していく魔法の暴力。これこそが、凡人である俺たちに与えられた「神をも屠る数式」だ。
ロバート、ゲイル、ジミー(分身魔法・乗数連動): ロバートさんが剣を振れば、2の10乗、1024人のロバートが同時に一閃を放つ。ゲイルさんが構えれば、1024の大盾が鉄壁の城塞となる。ジミーさんが闇に潜めば、1024の刃が同時に敵の急所を貫く。 「アレク、これなら一人で軍隊を相手にできるどころか、国中の兵士を同時に相手取れるぞ……!」
キャリー(乗数連動・殲滅魔法): 「ジャベリンを1024本同時展開……。いいわね、空を埋め尽くしてあげるわ」 キャリーさんの背後に展開された魔力槍は、空を覆い尽くす黒雲のようになった。一度放てば、王都の防衛施設など一瞬で塵に帰すだろう。
アンジェ(ホーリーバレット/ジャベリン・乗数連動): 「過剰な治癒は毒と同じ。敵対するものには、慈悲なき光の雨を」 アンジェさんの放つ「ホーリージャベリン」は、着弾と同時に敵の細胞を強制活性化させ、崩壊させる。1024本の光の槍は、文字通り国を更地にする「審判の光」へと変貌した。
準備は完全に整った。俺たちは一切の隠密を捨て、正面から王都の門へと歩を進めた。
「止まれ! ここを誰と――」
門番の言葉が終わる前に、ゲイルさんが一人で歩み出る。 「分身……1024」
地響きと共に、1024人のゲイルさんが巨大な盾を構えて突撃した。城門は紙屑のように粉砕され、聖騎士団の防衛線は一瞬で瓦解する。
「何事だ!? 敵襲か!?」 慌てて飛び出してきた聖騎士たちに向け、キャリーさんとアンジェさんが同時に手を掲げた。
「2の10乗……全弾発射」
空から降り注ぐ1024の炎の槍と、1024の光の槍。 王都を守る結界はガラス細工のように砕け散り、聖国の誇る「不落の城壁」が、轟音と共に崩れ落ちていく。
「ジミーさん、ロバートさん。残ったゴミ掃除をお願いします」
「ああ、瞬きする間に終わらせてやるよ」
1024人に増殖したジミーさんが影を駆け、混乱する指揮官たちを次々と屠っていく。1024人のロバートさんの剣筋が、聖騎士団を根こそぎ切り伏せていく。
俺は、大聖堂の最奥、震えながら玉座に座る「教皇」を見据えた。 「鑑定」を使うまでもない。その魂からは、腐った肉のような悪臭が漂っている。
「……勇者を送り込み、俺の村を焼いた罪。お前の命一つで償えると思うなよ」
俺は「2の10乗」の魔力をすべて聖剣に込め、一歩、また一歩と教皇に近づいていく。




