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彼女は動き出す。

 でまあ、そんなこんなの後、シャワー音を誤魔化すために謝罪なんだか煽りなんだかわからない配信をしたわけだ。。

 おかげでネット界隈ではあたしに対して『紛らわしい』だとか『人の配信に迷惑かけてんじゃねぇよ!』などの反応が噴き上がり、無事炎上している。

 無事炎上って、なんだそれ。

 ま、まあ、狙って炎上させたわけだから、それはそれでいい、のか?

 ともあれ、男がいるんじゃないか的な声はなくなったんで、後は、さかなんが彼氏くんと距離をおけたら一先ずはそれで解決、だったんだけど。


「言うことを聞いてくれない、と」


 数日後、事務所で聞いたさかなんからの経過報告に、あたしは小さく溜息を吐いた。

 まあ、予想はしてたんだけどさ。

 大学生くらいで性欲に振り回されてるタイプの男が、後ちょっとで手が出せそうだった相手の事情を尊重してくれるケースなんて、そう多いことじゃない。

 特に今回は、酔い潰してでもヤりたいってタイプだったわけだし。


「そうなんです。……事情を言うわけにもいかないし、どうしたものか……」


 困ったように俯くさかなん。

 これは、事前にあたしと社長が言い含めていたことでもある。

 こんな奴にVtuber活動のことを教えたら、それをネタに脅迫してくる可能性が高い。

 身バレしたくなければ、ヤらせろ。いやむしろ、ヤらせなかったら言いふらす、だろうか。

 どちらにせよ、ヤらせなければさかなんの身バレは必至、そうなったら引退しても後々の人生に大きな影響が出てしまいかねない。

 もちろんそんなことされたらこっちも脅迫だなんだで訴えることになるんだろうけど、それじゃさかなんの人生が守れないからねぇ。

 ちゃんと秘密を守ってくれそうな相手なら、話しちゃってもいいとは思うんだけど……残念ながら、この彼氏はちょっと信用できないし。


「う~ん……かといって、このままだと説得材料も弱い、かぁ」


 何せ相手は下半身直結野郎、性欲が全てになっていて理性的で理論的なお話し合いなぞ望めない相手だ。いや、まだその容疑があるってだけだけど。

 ……流石に言い過ぎ? だけど、さかなんの話を聞くにはそんな印象がめっちゃあるんだよなぁ。

 おまけに、なんでこんなに必死になるんだ、何かあるに違いない、とかでいらんこと考え出しかねないし。

 となると、もうちょい踏み込むしかない、か。


「ねえさかなん、その彼氏くんの名前とか住んでるとことか、教えてもらっていい?」

「はい? えっと、それは……名前はいいですけど、住所は……個人情報保護法とかに引っかかりません?」

「さかなんはほんっと真面目で良い子だなぁ……。わかった、名前だけ教えてもらおうかな」

「いえそんな、別に真面目だとかそんな……」


 なんて謙遜するさかなんだけど、ほんとそう思うわ。てか、あたしが世間ずれし過ぎてるのかもだけどさ。

 ま、名前と大学さえわかれば、後はどうにでも出来るんだけど、ね。

 とか考えてることはおくびにも出さず、あたしはさかなんにニッコリ笑って見せる。


「ま、そんなさかなんだから力になってあげたくなるんだけどね。

 んじゃ、ちょっとこっちで動いてみるから、しばらくさかなんは彼氏くんに対しての説得もしないで、出来る限り接触しない方向で動いてちょうだい。ある程度目処が立ったらまた教えるからさ」

「は、はい、わかりました。……すみません百合華さん、何から何までお任せしてしまう形になって……」


 そう言ってぺこりと頭を下げるさかなん。

 うん、こういう子には笑って過ごせるようになって欲しいからね。

 お姉さんちょっと頑張っちゃいますよ。

 そんなことを思いながら、ポンポンとあたしは励ますようにさかなんの肩を軽く叩いたのだった。




 さかなんと別れた後、あたしはその下半身直結野郎について周辺情報を調べ始めた。

 いや、正確に言えば下半身直結疑惑野郎、だな。

 どうしたってあたしや社長は身内であるさかなんの肩を持つし身びいきするから、相手のことを悪く見がちである。

 けど、ちゃんとどんな人物か確かめないと、流石にアンフェアってものだろう。

 

 まずは適当なネカフェからあたしんちに置いてある特殊なサーバにアクセス、いくつかのプロキシサーバを経由して『見せられないよ!』なツールを使って大学のデータベースに侵入。

 ……え、まずは、でやることじゃない? 違法だろうって?


 その通りだ!


 このご時世、綺麗事だけでは守護れないこともあるんだ!

 つか、社長があたしを雇った理由の一つがこれだったりするからねぇ……お互い悪よのぉ。

 まあ、こんなことやってるせいか、さらっと彼氏の住所聞こうなんてしたし、さかなんの真面目さがまぶしかったんだけど。

 後、誓って私利私欲ではやってない。ほんとほんと。……まあ、うちの子達を守りたいってのが私利私欲と言われたら反論できないけど。


 んで、住所やら何やらスッパ抜き、ついでに所属してるのが陽キャ御用達なサークルであることもわかった。

 ……この時点でもうアウトだと思ったのはあたしの偏見だとわかってるので、もうちょい色々調べることに。

 実際の言動が見たいなと思って大学に潜入したり。いや、潜入っていうか、堂々と入っていったりしたんだけどね。これでもまだ二十代、大学生の中に混じっても違和感はない、はず。

 いやほんとほんと、不審がられてる気配はなかったし。

 で、例の彼氏くんを見つけたわけだけど。


「最近あいつが素っ気なくてさぁ……くっそ、あん時押し切れてたらなぁ」

「ばっかじゃね、先に酔い潰れるとかさぁ。だからペース上手くやれっつったじゃん」


 なんて会話してるのを聞いて、やっぱこいつだめだわ、とか思ったもんだわ……。

 この程度で終わってくれたら、どうやって別れさせるかな~って悩むくらいで終わったんだけどさ。


 酔っ払った時の言動が見たくて、社長呼び出して二人飲みしながらそのサークルの飲み会の近くキープして話聞いてたのよ。


「元々ガード堅かったけど、さらに堅くなってさぁ!」

「そんなら、これ使えばいいんじゃね? 安くで売ってくれる奴知ってるしさぁ」


 なんて会話聞こえてきたから、アウトどころかギルティ確定だわよ。

 念のためちらりと見て確認したけど、なんか妙なオクスリ手にしてるしさぁ。

 しかも、どうやら飲み会が終わったら買いに行こうだとかまで言い出してるし。


「社長。……いいよね?」

「うん、手を患わせて悪いけど、やっちゃって」


 確認したら、社長も据わった目のまま頷く。ま、そりゃそうだよね。

 流石にそれは越えちゃいけないラインだわ……なら、こっちだってそれ相応の手段で対応しちゃっても、いいよね?

 ま、答えは聞いてないんだけど。


 そんな会話をしてたら、サークルの連中が立ち上がり始めた。どうやら飲み会は終わりのようだ。

 ……見たところ、今この段階で妙な状態になってる女の子はいない。流石にあんなオクスリは最終手段でしかないか。

 だからって、使おうってんならアウトなんだけどさ。それも、うちの大事なさかなん相手に。


「ごめん社長、お会計お願い」

「任せときなさいって、どうせ経費で落とせるしさ」


 席を立つあたしに対して、社長はひらりと手を振って答えてくれる。

 こういう時は頼もしいんだよなぁ……普段からお酒飲ませてた方がいいんだろうか。いやだめだ、肝臓に悪い。


「んじゃ、行ってきます」


 そう言ってあたしは、彼らの後を追って店を出た。

※ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


 明日もまた更新を予定していますので、お楽しみいただけたら幸いです!

 

 そして、いいねや☆評価、ブックマークで評価していただけると、嬉しいです!

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