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夜半の母

 受験勉強は深夜放送のラジオを聞きながら行っていた。父親も母親も22時過ぎにはもう寝室に入っていて、日をまたぐ頃には小腹が空き始めるのが日課と言うか常日頃だった。夜食のカップ麺を作る頃リビングに向かうと母親が起きていた。リビングチェアに座りながら煙草を揺らしていた。交わす言葉はなく、キッチンで湯を沸かして、カップ麺のうどんとか蕎麦とかの準備をしていると、母親はふかし終えると何も言わずに寝室に戻って行った。

 大学に入学し、四年を経て卒業、一応どうにか就職ができて、三年して転職。それも良いのかどうかわからずにそれでも日々の勤労に励んでいたある日、母が倒れた。くも膜下出血だった。集中治療室での治療の甲斐もなく意識不明が続いた。それから二十日ほどして母は亡くなった。葬儀や納骨や一周忌や何のかんので時がある程度経ったとき、兄から一つの話しを聞いた。母親が生前から頼っていたこぢんまりしたお宮さんの神主さんは女性で特異体質だった。除霊やら祈祷やら、口寄せまでできたらしい。葬儀後、伺った時には母親の死に霊障はないとのことだった。が、生前とある家から逆恨みを買っているらしく、呪われているとのことだった。それで何度か祈祷を受けたそうだった。

 私はふと受験生の頃のこと思い出した。あの頃にも呪いとやらがなされていて、母親は熟睡ができなくなっていたのではないか。だから22時ころに寝室に入り、満足な熟睡ができない日をまたぐ時間になってリビングにまで来て煙草を吸っていたのではないかと。

 そんな想像をしてみた。今となってはまさに死人に口なしだ。ただ、その界隈では有名な霊能者に予約の電話をしたくなったのは偶然ではない。



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