此方の女神サンお手紙貰った〜で頭抱えた〜
『…………………………』
上座に座り届いた手紙にザッと目を通した後。
こめかみを押さえるが痛みは増す一方だった。
何度読み返しても文面に変化は無い。
一旦閉じてまた広げても変化はナシ。
『(ナニを考えてこの内容?むしろ考え有るのか?!)』
感想としてはコレに尽きる。
声に出さないのは目前の存在達に異変を悟らせない為。
……表情と態度とで既にモロバレだが。
時は秋。
いつもなら閑散としたその場所には『神』が溢れている。
世間一般に『神無月』とはよく言ったものだ。
全国に散らばり各地で信仰される土地神が一点に集中するこの時期を古来より人はこう呼ぶ。
俗に八百万とも表現される数多の『神』。
その中に在って、珍しくも最高神は『女神』だった。
(追記:日が女神で月が男神なのも国独特であろう)。
「最近の流行りが妙な悪影響を……!?」
小声ながらも叫ぶ器用さ。
見事に結われていた黒髪に手を突っ込み頭を抱える。
もう痛すぎて外聞もクソも無い気分。(こりゃ失敬)
その呟きすら周囲に聞こえる程度には大きくもなる。
……けれどもそれにすら気付かない『女神』。
最初は文面の無礼さのみに腹を立て。
次にその原因を知らされて首を傾げ。
最後にナンか色々と泣きたくなった。
感情を抑えきれずに顔を歪める上座の『女神』のすぐ横に、彼女とは正反対に無表情に淡々と、本年の議題についての議事進行を進める『神』が居た。
かな〜り昔の若気の至りからなのだが、かつて『女神』のやらかしで最高の迷惑を被った被害者たるその『神』は沈着冷静との定評がある。『女神』やらかしのお陰なのかせいなのかはさて置き、“彼女”と“彼”の醸し出すその空気のあまりの温度落差に周囲の戸惑いは酷い。
強弱や大小は在れど『神』と呼ばれる存在達。
正確な数を把握している者は果たして居るのだろうか?
年に一度、最高神たる『女神』の膝元へと馳せ参じるのだ。
この出張により各地の『神』の座所は空っぽと化すのだが、実は平和ボケしているのは国そのものなので無問題?
次から次へやって来ては己の座に着く、その格に応じて。
ただ有名な程に力は強いとされ、強い程に格が高いとされ、格が高いに応じて奥の座席へと通されるのはどの国にも共通の常識なので『神』の間でもコレが適用されている。
で、今現在。
奥座席の約半数が『女神』の奇行に戸惑い、残りは無視して真面目に冷静沈着な『神』の議事進行に耳を傾けていた。とはいっても毎年その議題に変化は無い。せいぜいが温暖化現象による各々の被害をどうするか?程度。
((((…………いやぁ〜、一つ、有ったかなぁ……))))
顔は真面目を気取りつつ器用に視線のみを動かして、奥座席に不自然に空いた場所に全員が目を向ける。
ぽつりと空いたその場所は二つ。
末席や縁側に近い場所にも空白はチラホラとは有るが、そちらを気にする者など居ない。何せ八百万なんだし?
下位は有象無象の集団みたいなモノ。居ても居なくても議事進行には差し支えないので気にされた試しすら無い。
格が低い=力が少ない=移動が大変or難しいとの配慮も成されてはいるが、『神』も中々に世知辛いのだ。
その月の『神』の出席は、強制では無いが絶対に等しいのは神格が高位で在れば在る程に実は強い。そして格の高さはその『神』への信仰心が主な原動力である。
…………………………一部例外もあったりするが。
『光』と『闇』のバランスが別の形で例外を生み出した。
世界の成り立ちは何処ぞも似たようなモノ。
魔素か元素かの違い程度でしか無かったりする。
その例外は、上座に席を用意される程に高位ながらも“絶対に等しい”出席を拒み、かつ他の『神』から議題にされるのを躊躇わせる程度には問題扱いされているのだ。
尚、解決策は未だに見出だせずに年月だけが流れている。
((((……自分だって同じ立場だったら籠もるしぃ……))))
実は『神』達から同情されてる共通認識だったりもする。
自身が当たらなかった幸運を密かに感謝しつつ、だ。
『神』は崇められてこその存在意義。
それが力となって『神』で在るのだ。
崇められず忌避されど高位たるのは屈辱……なのだが。
『光』と『闇』のバランスから、『神』たる格は高位を維持しながらもその屈辱を味わう羽目となってしまった『神』が居た。そう、同情共通認識な存在とも言う。
さて、ところで皆様。
『天岩戸伝説』をご存知だろうか?
また『伝説の地』が複数在る事も?
そして定番の、「諸説あります」が諸説ではなく全部が大なり小なり実在したり使われたりしている事を?
かつての最高神たる『女神』が若気の至りでやらかし、危うくこの世界のこの国が暗黒と化した『伝説の地』。複数在るその場所に、実は長らく高位の『神』が引き籠もりしていたりするのだ。しかも2体。
笑えない事態だが同時に特に害も無い。
故に毎年『神』議題に挙がりながらも放置されている。
この問題児達が異世界を救えるかどうかの鍵となる。
…………………………筈である?




