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器用貧乏のプロ野球サバイバル記  作者: あるでぃす
『3カード目 vs横浜シャインズ』編

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32/33

#29『7戦目⑥ 〜意地のぶつかり合い〜』





『──さぁツーアウト、ランナーは一・二塁。1発出れば同点というこの場面で、初回に先制となるツーランホームランを放っている4番の村石が打席に入ります!!』



人見のスリーランホームランから少し経過して。


場面は6回表、横浜シャインズの攻撃。

実況が高らかにそんな口上をする中、画面に鋭い眼光をマウンドに向ける横浜シャインズの主砲村石の姿が映る。


奇しくも、彼と人見がツーランを打ち合った初回とは順序が逆。村石側に同点スリーランのチャンスで回ってきたのだった。



「──ここで村石選手か。首脳陣としては、悠佑さんには少なくともこの回までは投げ切って欲しいんだろうけど……」



俊介がテレビを見ながら、そう声を漏らすように呟く。


そこに映るのは、そんな集中モードの村石に負けず劣らず鋭い眼光で相対する、マウンドの廣中悠佑だ。


この6回。初回以降は調子を取り戻しここまで順調に抑えてきた廣中であったが、不運も絡んでのピンチを迎えていた。


というのも、幸先よく先頭は三振に切ったものの、次の2番打者デュランに粘られた末、際どいところがボールの判定となり四球。続く3番一条には、初球のストレートで差し込ませたもののギリギリレフト前に落ちるポテンヒットを打たれ、結果的に二者連続での出塁を許していたのだった。


だが、不運であっても()()()()()()()()()()()()


ここで村石に痛打を浴びれば一気に同点もあり得る場面であることには変わりはない。



と、そこでブレイブハーツの諸星監督が直々にタイムをかけてマウンドに向かい、内野陣もマウンドに集まる。


……が、彼は少し廣中との会話を行って、すぐにまたベンチへと帰っていった。どうやら、投手交代はないようだ。




「──ゆーくん、ちょっと疲れてそうな感じもするけど、ほんとに続投で大丈夫かなぁ……?」


そう不安そうに呟くのは、諸星菜月。

確かに、彼女の言うとおりイニングは6回、球数もそれなりに嵩んでいる。そして、本日は中5日での登板でもある。


いくらスタミナに定評のある廣中といえども、この緊張する場面で疲れを感じていないことはないだろう。



──ただし。


「……まぁ、姉さんの心配はもっともだと思うけどさ」



そう俊介が小さな声で言ったそのとき。


廣中が打者の村石に対する一球目を投じて。




『──おおっ!! 廣中、この重要な局面で初球から自己最速タイとなる160キロォ!!』




「……悠佑さんは、()()()()()()人じゃないでしょ?」










────────────────────────────







「────ファールボール!!」



そして、それから廣中と村石の勝負は続き。


カウントはツーストライクツーボール。

廣中が持ち前の速球2球で簡単に追い込んだものの、村石もそこから食らいついて6球目。


今度はインコースに投げ込まれた157キロのストレートに臆することなく振り抜いた、三塁ベース横を襲うファール。


……確実に、タイミングは合ってきている。



(流石は村石さんだ。初回のホームランといい、やっぱただ力で押すだけじゃダメだよな)


真壁からの返球を受け取り、汗を拭いながら廣中は思う。


相手は日本代表でもクリーンナップを打つチームの主砲。

簡単に抑えられるような存在ではないことは百も承知だ。


……だが、彼にだって()()()()()




(──この前、監督にカード頭で投げたいって中5での登板を志願したのも俺。さっき、この回続投することを志願したのも俺。……だから、ここで打たれる訳にはいかねぇんだ!!)



「おらァ──ッッッ!!!!」



そんな気合いの雄叫びとともに、彼は勝負の7球目を投じる。


それは、一球前に使ったインコースのストレートとは対照的なアウトコースのスプリット。

しかも、ストライクからボールになるような絶妙なコースだ。


まさに、決め球としては完璧。

それを証明するように、村石は少しタイミングを外されており、それでいてスイングの体勢に入っている。




──しかし。


(こんな()()()()()()で、三振してたまるかよ──ッ!!)



そんな追い詰められた村石も、そう簡単には終わらない。


確かに体勢を崩されたものの、構わず踏ん張って溜めて。

アウトコース低めの一番遠い場所へ、バットをなんとか運ぶ。


そんな、彼の諦めない姿勢が功を制したのか。

打ち方こそお世辞にもまったくもって完璧とは言えないが……芯で捉えた打球は前に飛んでいく。



「──なッッッ!!?」


しかも、廣中の左足元を襲う痛烈なライナーゴロ。


彼は驚きの声をあげつつ打球へ手を伸ばすが、打球速度こそまぁまぁと言ったところでも……飛んだ位置はまさにヒットコース。


ピッチャーが捕れるはずもなく、打球は二遊間に抜けていく。





そのままセンターへと転がっていくかに思われたその打球。


ただ、そこにはまだ諦めていない1人の男がいて。



「──うおおおおおおおおおッッッ!!!」



──パシンッ!!!


グラウンド上に、そんな小さな破裂音が響く。


人見が、その村石の打球を決死のダイビングで止めたのだ。




「カズキッッ!!!」


「はいっ!!!」


そして、彼は地べたに這いつくばったまま、二塁ベースカバーに入っていく一輝へとボールをトスする。



……だが。


(──やべ……少しずらしたか……!!!)



人見が自身の投じたボールを見て、瞬間的に気づく。


二塁での封殺に間に合うよう無理な体勢でトスを行ったのが災いして、二塁ベースからボールが逸れていたのだ。


これではゲッツーはおろか、二塁でのアウトすら怪し──。




「──ふぅッッッ!!!!」


そんな人見の思いを払拭するのは諸星一輝。


彼は人見のそんなトスをギリギリのとこで捕球すると、ノールックでギリギリ二塁ベースに足をかける。

そして、その勢いのままに。そのまま倒れこんでしまうのを厭わず無理やり一塁へと送球してみせたのだ。




「…………ッッッ!!!」


そして、そんな諸星の送球。


体勢的に仕方なかったとはいえ、ノーバンで届かず一番難しいハーフバウンドとなったそれを、曹浩然が上手く掬い上げた。






「──ヒズアウト!!!」



それを見た一塁審が、僅かな沈黙ののち、そう宣告する。


村石とて諦めずに一塁まで全力疾走していたのだが、それでもブレイブハーツの内野陣がそれを上回ったのだ。







「「「う、うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」



その瞬間。球場がそんな熱狂の声に包まれる。


抜ければまず間違いなくタイムリー。

横浜シャインズの反撃の狼煙となり得るその一打を阻止した人見らブレイブハーツ内野陣の見事な守備の前に、ブレイブハーツファンかシャインズファンかなんて()()()()()


球場中の『()()()()()』の心が大きく動かされたのだ。

 






「──蒼矢ァ!! マジで助かった!! ほんと言うこと無しだよ今日のお前には!!!」


「ほんとすっごいカッコ良かったです!! やっぱり僕、蒼矢兄さんと二遊間を組めて嬉しいです!!!」


「いやいや! さっきのはあの逸れたトスを一塁に転送したカズキと、それを当たり前のように捕ってくれた曹さんのおかげだよ!! 勿論、あの場面で最高のボールを放った悠佑もな! ゲッツーってのはみんなで取るもんなんだからよ!!」 


ベンチに帰った人見たちが、そんな風にお互いを讃えあう。





(──抜けないどころか、あれを……ゲッツーにされるのか)


一方、そんな彼らにゲッツーで仕留められた村石は、駆け抜けた一塁ベース奥に立ち尽くす。




今、まさに試合の流れは()()()()()()()()()()()









──そうして、6回表を0点に抑えたブレイブハーツは。


その勢いのままに裏の攻撃でも得点を挙げ。そして、廣中の後を継いだブルペン陣も皆好投を見せて。



最終的には7対2で、勝利を納めたのだった。











【村石航 選手名鑑】


《7年目》

豪快なスイングでアーチを描く横浜シャインズの主砲。

今季は本塁打王こそ逃したものの、リーグ2位となる36発のホームランを記録し、チームの2位に貢献した。

そのパワーもさることながら、範囲こそ広くはないが堅実なサード守備や、大卒一年目から21本のホームランを放ち、入団以降7年連続20本・5年連続30本を記録している安定感も魅力。


[野手成績]

.278(518-144) 36本 96打点 1盗塁 OPS.901

142試合 二塁打30 三塁打0 四球57 死球9 犠飛6

出塁率.357(582-208) 長打率.544(503-257)

IsoD.079 IsoP.266 0犠打 (582打席)


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