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器用貧乏のプロ野球サバイバル記  作者: あるでぃす
『3カード目 vs横浜シャインズ』編

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28/33

#25『7戦目② 〜2人の因縁〜』





(……ちくしょう、また打たれたか……!!)


下町スタジアムの大歓声を背に浴びてグラウンドを一周している人見を一瞥して、服部は歯噛みする。


人見蒼矢。彼は服部にとっての天敵であった。

通算成績こそ大したことないように見えるが、少なくとも服部という投手にとっては、毎打席打たれているような感覚さえ覚えてしまう球界最強打者の1人なのである。



(アイツ、ストレート全張りしてやがったな……。一塁ランナーは俊足の諸星。盗塁警戒で変化球の可能性は比較的低いんじゃないかと心に決めて、だ)


インコースに決まった、自信のある力強い直球。

それを、初球から迷いのない綺麗なスイングであそこまで持っていったのだ。()()()()()としか考えらない。


つまり服部は、まんまと人見の思惑通りのボールを投げてしまっていたのだ。


彼はマウンド上で目を瞑って、小さく息を吐いた。





──だが。


「まぁいいさ、まだ同点。ここから抑えるだけだ」



それも束の間。彼は目を開くと、打席に入ろうとしているネクストバッター、曹浩然に目を向ける。


まだまだ試合は始まったばかり。

それに負けている訳でもない。同点なのだ。


これからゼロに抑えてしまえばいい。




そう、服部は気持ちを切り替えたのだった──。










────────────────────────────







一方の、ブレイブハーツベンチでは。



「──ナイスバッティングだな人見ィ!!!」


「宣言通り2点取ってくるとは、やるじゃねぇか!!」


「人見さんならやってくれると思ってましたよ僕は!」


グラウンドから揚々と帰ってきた人見が、仲間たちの掛け声とハイタッチの歓迎を浴びるように受けていた。

ベンチは、まさ大盛り上がりといった様相である。




そして、一通りメンバーとのハイタッチを済ませた人見がベンチに座り込むと、間を置かずに隣に諸星一輝も座る。



「──いやぁ、蒼矢兄さんナイスバッティングでしたね。ファーストベースで見てても、ほんと()()()()()って感じでした」


「………………ふっ」


「ん、どうかしたんですか?」


「……ふっふっふっ、これで俺がカズキよりも先に今季の初ホームランを達成。俺のリードだ……!」



そう一輝の目を見て宣言して、ドヤ顔の人見。


人見にとって、一輝は幼馴染でありかわいい後輩だが、この野球という世界においては昔からライバルでもあるのだ。

昨季は完敗もいいところではあったが、今季こそは、なんかしらでもいいから勝ってみせる……! と、開幕前から(勝手に)意気込んでいたのだった。



「──確かに『器用貧乏』って言う割には意外なパンチ力があったりするが、それでも総合力じゃ人見の負けだろ? 一輝は開幕直後とはいえ現状4割バッターだし、盗塁数もトップだしな」


と、そこで真壁が会話に割り込んでくる。

フィールド上では、3番打者の曹浩然が服部のアウトコースへの絶妙なスライダーで三振に仕留められていた。



「……真壁、正論ってのは時に人を傷つけるんだぞ?」


「いや、蒼矢兄さんの場合、出塁率で補って余りある活躍をしてますから。僕も見習いたいです!」


「カズキ、お前ってホント最高にいい奴だよな……!! さっきはしょうもないこと言ってごめんな……!!」


「いえ、蒼矢兄さんは昔から僕の目標ですから、むしろ張り合ってくれて嬉しいです! 負けませんよ!!」



「…………ま、相変わらず仲が良いようでなによりだけどな」


そんな2人のやりとりに、思わず苦笑いの真壁なのだった。









「──にしても蒼矢。お前、相変わらず服部さんとの相性はバツグンなのな」


「いやほんとにそうですよね。確かプロ初ヒットも服部さんから打ってましたよね?」


「……あー、そうだ。プロ初登板のときに、先制タイムリーを打ったんだ。あんときは正直がむしゃらに振ったらなんかバットに当たったって感じだったけど」



「──それどころか、蒼矢は4年目の野手転向後に打ったプロ初ホームランも、確かアイツからだろ?」


「……いや、悠佑。お前そんなことよく覚えてるな」


人見が、新たに会話に入ってきた廣中に目を向けて呟く。


確かに、野手転校1年目に放った初本塁打も、服部から広島シャークスの本拠地で放った勝ち越しツーランであった。




「──ということは、服部は人見くんにプロ初ヒット、初打点 、初ホームラン、そして初勝利すらも献上してる……という訳か。まさに因縁の相手……というモノなのだろうな」


「あっ、長谷さん。聞いてたんですか」



後ろからのそんな声に、振り返った人見がそう答える。


人見らが座っていた前列ベンチの後ろにいたのは、長谷隆行。

チーム最年長である37歳のベテラン選手で、現在の対戦相手である横浜シャインズから5年前にFA移籍でブレイブハーツに加入した経緯を持っている。


ベストナイン獲得歴もある名選手で、若い頃は守備・走塁も武器としていたものの、年齢には勝てず、近年はDHや代打での起用が中心となっている。本日も8番DHでの出場だ。




「元チームメイトという色眼鏡あれど、服部はやはり良い投手なのは間違いないんだが、人見くんはどうしてあんな簡単そうに打てるんだろうか?」


「いやぁ、別に何か特別なことをしてる訳じゃないんですよね。ただ、いい感じに()()というか」


「……ま、それが相性の良さってヤツなんだろうな。人見レベルじゃないけど、俺にも打ちやすい投手ってのはあるし」


「……確かにその通りだ。もしかしたら、その人のタイミングの取り方なりフォームなり、理論的には簡単に説明できない何かがあるのかもしれないが」




……なんて、その後も人見たちが長谷と会話をしていれば、気がついたらスリーアウトチェンジ。


3、4、5番のクリーンナップが凡退に終わり、一回裏のブレイブハーツの攻撃は終わりを告げたのだ。







──それからの試合展開については。


廣中、服部の両エースが2回以降は立ち直り、お互い二塁も踏ませないような投手戦に。


2─2の同点のまま、勝負は後半戦に突入しようとしていた。








──しかし。





『──2番セカンド、人見蒼矢!!』



そんなスタジアムDJのコールと共に、人見が本日3度目のバッターボックスに入る。





5回裏。ツーアウトでランナーは一、二塁。


試合前半部分における最後の局面。

ブレイブハーツにとっては、初の得点圏という状況下にて。




人見蒼矢が、本日3度目の打席に入るのであった。











【長谷隆行 選手名鑑】


《18年目》

ブレイブハーツにおいてチーム最年長のベテラン外野手。

18年目の昨季は、体力の衰えやルーキー日下など若手の台頭などもあり、シーズン後半戦では代打での起用なども増えた結果規定は未達。連続二桁ホームラン記録も途絶えた。

しかし、それでもここぞの場面で頼れるバッティングはまだまだ健在。代打サヨナラ打をシーズンで2度記録した。来季もチームの頼れるベテランとしての活躍が期待される。


[野手成績]

.286(297-*85) *9本 45打点 0盗塁 OPS.749

117試合 二塁打8 三塁打0 四球27 死球2 犠飛4

出塁率.345(330-114) 長打率.404(297-120)

IsoD.059 IsoP.121 0犠打 (330打席)


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