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器用貧乏のプロ野球サバイバル記  作者: あるでぃす
『開幕三連戦 vs東京山手スターズ』編
18/24

#17『開幕戦⑦ 〜それからの展開について〜』





──そして。


いきなり多くの波乱があった一回の表裏が終わり。


一体今後どうなってしまうのだろうか……とも思われていた試合展開は、二回からは落ち着きを見せた。



東京山手スターズの先発中山も、3失点を喫した初回以降は本来のピッチングを取り戻し、二回三回は3奪三振無失点。


また、ブレイハーツ先発の人見についても。





『──さぁ、3回裏ツーアウトランナーなし。打席には9番打者の白神。人見、なんとここまでノーヒットに抑えています』



菜月たちが観戦する、メトロ・ドームのボックス席に備え付けられたモニターから実況音声が流れる。


そう。人見は二回以降についても、まだ見せていなかった変化球や、フォームの変更・クイックやぐらつきを使ったタイミング外しなどの小技を駆使して、東京山手スターズの強力打線をノーヒットに抑え続けていたのだった。



「蒼矢さん、やっぱすげぇ……!!」


そんな彼を見て、諸星英一監督の次男であり、人見のことを昔から知る諸星俊介が嘆息する。


世間的には賛否両論となるかもしれないが、一人の投手として、プロ野球。しかも開幕戦という大きなプレッシャーのかかる舞台で、それをやり通して結果を見せている姿は、贔屓目があったとしても彼の目にはかっこよく映っていたのだった。





「……そーくん、なんだかすっごい楽しそうにしてる。まるで昔に戻ったみたい」



一方の菜月は、人見の姿を見てそう呟く。


確かに彼女の言う通り、人見はここまで、ピッチング中に笑みを浮かべる場面を度々見せていた。



……ただ。それは当然、ふざけているからではない。


それは、野球を始めたばかりの少年のように。

ただ、野球というスポーツをプレーをしていることを楽しんでいるが故の感情の表出であった。





「──しかも、ここまでノーヒットに抑えてるんだもんね。まさか、ノーヒットノーランまでやっちゃうんじゃ……!」


「いや姉さん。それはフラグってやt──」




ぱかーん。



「「……あ」」




『おっと白神うまく捉えた!! 打球はバックスクリーンに向かって伸びていくぞ!!? センター村越下がる下がる!!』


そんな快音に、実況の声色が上がる。


ブレイブハーツのセンター、村越が迷わず後方へと駆けていって、バックスクリーンのフェンス手前にまで到達する。


……しかし、打球はその頭の上を超えていき。



『──あぁっとフェンス直撃!! 村越、うまくクッションボールを処理するも、バッターランナーは悠々二塁に到達! 白神、ツーベースヒットです!!』



「………………」


「……ま、まぁ今のは白神選手が低めの変化球を上手く打ったよね。しかも、あそこまで飛ばすなんて。……でも、ツーアウトだし大丈夫大丈夫、うん」



まさに、というような綺麗なフラグ回収に、なんとも言えない空気が渦巻くのだった。








──しかし。


9番打者の白神に初ヒットを許した人見は、なんとか後続を外野フライに抑え、次のイニングからは第二先発として、ローテ投手の川岸が登板。


こうして彼は、開幕戦という大舞台にて。

三回無失点、奪三振3、被安打1……という結果を残し、オープナーとしての役割を終えたのだった。





なお、その後の展開については。


東京山手スターズの先発中山がその後も快投を続け、終わってみれば6回3失点のQSで試合を作って降板。


そのピッチングに応えるように、スターズは裏の攻撃で3番大嶋、4番ブランドンの連続アーチで1点差まで追い上げるも、その次の回にはブレイブハーツの真壁がスターズ二番手の浦田から犠牲フライを放ち、再び2点差。


その後、4打席目の人見にデッドボール。まさか報復死球かと騒つくシーンもあったが大事には至らず。


また、第二先発の川岸は度々ピンチを招くものの、要所を抑える投球で8回まで投げ、5回2失点と粘りのピッチング。

昨季に5〜6回、80〜100球で安定した投球を見せていた『定時男』が、その強みを発揮してみせたのだった。


そして最後は、ブレイブハーツ守護神の二階堂が難なく三者凡退で切り抜けてゲームセット。



4—2。東京山手スターズと下町ブレイブハーツの東京対決初戦は、ブレイブハーツの勝利で終わったのだった──。








──ただ、これはあくまで()()()


明日になってしまえば、今日の試合の結果なんてなかったかのように、また新たな試合が幕を開ける。


()()()()()()。割合にすれば、約0.7%。

全体から見てしまえば、これは始まりの始まり。



それがプロ野球ペナントレース。


これからも、百万を超える日本の野球人口のトップ層に立つプロ野球選手たちの戦いは、約半年に渡って続いていくのだ。









「──さて、蒼矢が開幕戦でこんだけやってくれたんだ。明日は俺が頑張らないとな」



そうして。

試合終了後のハイライトを流しているテレビ中継を見ながら。



静かに気合いを入れる、一人の速球派左腕がいるのだった──。











【中山大和 選手名鑑】


《4年目》

東京山手スターズの若手右腕。完成度の高い非常に安定したピッチングで、今季は交流戦からのシーズン14先発で7勝。貯金を5つも作った。将来のエース候補とも呼ばれる右腕が、来季は開幕からローテを守り規定投球回到達を狙う。


[投手成績]

14登板 82 1/3回 2.51 7勝2敗 0完投 0完封

62奪三振 与四球22 与死球1 被安打75 自責23

K/9 6.78 BB/9 2.40 K/BB 2.82 被打率.233 WHIP1.18


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