☆僕らの旅の予感
「おはよう、ラビィ」
「おっはよ!ノル」
突然の挨拶に吃驚して変な声になる
「ハハッ何だ今の」
プハッと吹き出して笑う友達のノル
「い、いきなり声かけるからだろ!」
「はいはい、ビビリのラビィくーん」
「なんだとぉ!!!」
「ほら、早く行かないと祈祷の時間に間に合わなくなるよ」
小走りで僕を追い抜かして走るノルに僕は慌てて走り出す
「待ってよ!」
…
祈祷の時間
それは僕ら獣人族に課せられた
毎日の日課だ
ここに住んでるみんなが水晶を囲うように座る
特にすることはないが目を瞑って手を合わせる
「ねぇばあちゃ…」
「しっ!」
隣に座るばあちゃんに話しかけようとすると
言葉を遮られ祈祷を続けるばあちゃん
ちぇ…
何が面白いんだよ…
「ほら、あんたもちゃんと創造神ナデュ様に願いなさい」
「願うって何を?」
「そりゃいろいろだよ!」
創造神ナデュ様
毎日祈ることでナデュ様の加護が与えられるんだっけ
僕は相変わらずつまらなくてキョロキョロあっち見たりこっち見たりを繰り返してた
そのうちポツポツとみんな顔をあげ始め
やっと長かった祈祷の時間が終わりだした
「ラビィ!今日は何する??」
「今日はだめだよお仕事の日だもん」
「あぁそうだっけ?」
祈祷所から家に帰る途中ノルに声をかけられる
「ノルは良いよなぁ将来が決まってて」
「んーまあね」
ノルは獣人だから将来は狩人って決まっていて僕は草食のウサギだからやれることなんて限られてる。
だから小さい頃から職業訓練でいろいろな仕事をやらないといけない
羨ましいなぁと唇を尖らせるが今更どうにもできない。でも職業訓練はいろいろなことができる。
畑仕事、荷物の運搬、狩りなど
その獣人にあった仕事をするために小さい頃からいろいろな仕事をさせてもらう。
僕はウサギだから狩りなどは全然向いてないけどね
今日の仕事は畑仕事だ
意外と好きな仕事のうちの1つなんだ!
「おはようございます!今日はよろしくお願いします!」
「おはようラビィ、よろしくね」
「ラビィ朝から元気だな!」
今日お世話になるおじさんおばさんに挨拶をして早速取り掛かる
…
「あっついな…」
ふぅとひと息ついて立ち上がる
中腰で長いこと作業をしていたから思いっきり体を伸ばすと所々ポキポキ音がなる
そのまま高く昇った太陽を見上げる
ギラギラ輝く太陽を見上げる
雲一つない晴天…平和だ…
「ラビィ!大変だ!!!」
突如その平和は崩れ落ちる
「フォンが!」
「フォン兄さんがどうしたの!?」
慌てて走ってくるおじさんに
思わず駆け寄る
「落ち着いて聞いてくれ。フォンが襲われた」
フォン兄さんが襲われた?誰に?どこで?何で?どうやって??
頭の中で聞きたいことがたくさん浮かぶ
「…兄さんは大丈夫なの?」
どうしても確かめなくてはならないことを振り絞る
どうか、どうか命だけは助かっていてください
僕の願いは虚しく
「ラビィ……すまん」
その言葉の意味を理解した
頭が真っ白になる
僕のたった一人の兄さんが
いなくなるなんて想像すらしてなかった
足の力が抜けて座り込む
「ラビィ、今日はもういいから帰りな」
「おばさん…ありがとう…」
どうやらフォン兄さんは廃獣人に襲われたらしい
廃獣人はナデュ様の加護を受けなかった者の末路、らしい
実際見たことはないが、獣そのものに近い見た目だとか
そんなやつらに襲われたらひとたまりもないよな
フラフラとした足取りで帰路につく
家につくと兄さんが先に家で寝ていた
「兄さん…」
ごめん兄さん…役立たずでごめん
兄さんの足引っ張ってばかりでごめん
やっと現実味が増してきて
ポロポロと涙が溢れる
働き詰めでボロボロの兄さんの手をそっと握る
冷たい
兄さんの手こんな傷だらけだったんだ
ギュっと手を握る
「…あ」
ある御伽話を思い出した
虹の石で死者がよみがえる話
神話なのか御伽なのか定かではない
でもこれにかけるしかない
「虹の石を探しに行こう」