第12話 説明しよう!
ワープリを始める前に大事な事。それは──
「さて、ワープリ部というがそもそもワープリが何なのかは知っているかな?」
「とーぜん、調べてきたから知ってるっしょ! 『War Pretend』、戦争ごっこの略称で『ワープリ』昔行われていたサバイバルゲームを踏襲して改良されたのが今のワープリ!」
「おお、ちゃんと調べてる」
コーチが感心した声を出してるし鈴花ちゃんも得意顔だ。
って、そっちじゃないんだけどな……まぁこれも大事だよね。
「ではワープリで必須ともされているUCIエネルギーについては?」
「むしろそっちの方が簡単っしょ! ワープリ以前の問題だって。Unibersal・万能。Creation・創造。Imagination・想像の頭文字三文字でUCI、昔隕石によってもたらせたエネルギー物質で、どんな形にも変形できて重さも調整できて鉄並の強度にできたりする不思議物質。人々の生活を助けたり──まあ、わかりやすいのと言えば駅前通りは雨の日になるとUCIで屋根作って雨避けにしてるのがそう」
これぐらいは常識だよねとうんうんと私達は頷く。小学校の授業で習うくらいUCIは私達の生活と密接に繋がってる。スクホの画面もUCI利用してるし、傘だって骨組みだけで布を使わずUCIで防ぐのも多いぐらい。
ちなみに隕石のおかげで凄まじい被害が起きたのも事実で災害が連鎖的に発生したりして世界中の地形に変化が生まれたみたいで世界の名所も建て直されてるところが多いみたい。富士山も隕石の前後で大きさが違ってたりするんだって。
でも私達世代になると災害の被害の跡はもう残ってない。むしろ恩恵の方が多いぐらいに発展すらしてる。
「流石は白華の生徒さんだ。中学生になっても何なのか知らずに使っている子は多いからな」
「ウチならもっと詳しく言えるよ! このエネルギーは当然戦争にも利用されそうになったけど高速で射出されると崩壊する性質を持っていて無限の弾薬にすることは不可能。けど逆に停止状態における強度はめっちゃ硬くて砲弾にも耐えるぐらいあんの。災害現場において崩れそうな建物の補強材に使われたり、崩れた橋に新たに橋を作ったりで復旧に役立ってる。攻めよりも守りの力が凄いのが特徴!」
「その通りだよく勉強している」
コーチの褒め言葉に鈴花ちゃんは気分が良くなったのか表情も何だかほんのりドヤ顔になってる。
「そんでもって、軍事利用しようとしていた企業が玩具として再構築したのがUCIウェポン、トイの原型。環境にも優しくてケガの心配が少ない、ゲームや特撮みたいな射撃ができて大ヒット! サバゲーで使われ、スーツも改良されて、ルールがどんどん制定されて今じゃあ世界中で楽しまれてるスポーツにまで成長!」
「ほ、本当に勉強してきたんだね」
そんでもっての後は授業で習ったりしない。自発的に調べないとわからないことばっかり。私はしっていたけど、ここまでちゃんと知るようになったのは始めて数ヶ月位先だったと思う。
「ウチ、興味を持ったことはガチで調べるんで!」
「前提知識としては十分すぎるな。正直言って驚くぐらいに調べられている。それじゃあ次はトイを選んでもらおうか」
そうそうこれこれ。
これが本当に大事なことなんだよね。
「ねえねえしつも~ん、武器のことをトイって言ってたりさ、この機関銃もグリフォンって呼ばれてるけどそれは何で?」
「その質問に答える前にちゃんと伝えておく。トイのことを武器と呼んではダメだトイは名前通り玩具として存在している。人を傷つけるためじゃなく誰かと共に遊ぶため。だから呼び方は大切にしてほしい」
コーチが凄い真面目に優しく諭すように話してる……!
「わかった。気をつけます」
「ならよし──質問の答えだが兵器ではなく玩具としてのイメージ強くさせるためだな。ちなみにメーカーによって名前の付け方が違っていて幻獣魔獣の名前で生産しているのが大手メーカー『ジェネシス』だ。他にもアンティークシリーズの『エンシェントロマン』、フューチャーシリーズの『ネクストプラン』八重さんが使っているドローンは宇宙開発企業が作っていて星座の名前が付けられているんだ。ちなみに見た目がこんなんでも公式試合で使用することができる」
そういいながらコーチが取り出した武器は──
「ぷっは──!? 何これ太古の火星人が持ってる武器のイメージじゃん! 本当にこれも撃てるの!?」
「特撮で使われた武器をトイで再現したものだ。試してみるといい」
完全に光線銃な見た目のトイを鈴花ちゃんは笑いを堪えるようにしながら受け取り的当ての位置に立つ。宙に浮いている円形の的に向かって引き金引くと。
ピロロロみたいな音と共に光る球体の弾が発射されて──
「発射されたし当たった!」
的の隅っこにだけどしっかり当たってる。始めて撃ったのに当てられるなんてちょっと驚く……
「弾の形は違うが性能はハンドガンのペガサスと同じなんだ。それと、殆どのトイは銃声もほぼ無いしそれに反動もかなり控えめだから弾道は素直で狙ったところにまっすぐ飛んでいく」
「他にはどんなトイがあんの? 教えて教えて! 全部使ってみたい!」
「焦らない。まずは先にアップをしてもらってその後野茨さんにトイの説明をしつつ他の皆には的当てをやってもらおう」
「あ、ウチのことは野茨じゃなくて鈴花の方で呼んでいいよ。名前の方がカワイイし」
「それじゃあ鈴花さん──」
「堅苦しすぎっしょ! これから仲間になるだし。もっと砕けてかないとウチもコーチーって呼ぶし」
「それじゃあ……鈴花?」
「うん。ヨロー!」
驚くぐらいコミュ力の塊だぁ。全身から楽しいみたいなオーラが湧き出てるし。コーチは押され気味なっちゃった。
とんなわけでアップを始めるようとペアを組むと──
「ウチボッチじゃん」
「あっ、ごめんいつもの癖で」
基本的に二人一組でウォーミングアップをする、身長的にセイラちゃんと向日葵ちゃん、私と菫ちゃん、これでも身長差が少しあるから年齢とか慣れでやってるけど多分身長的に菫ちゃんと鈴花ちゃんが丁度いいかも。
「それじゃあ私がやった後に──」
「じゃあコーチー手伝って、時間勿体無いし」
「……俺?」
「だって合わせたら六人で効率いいじゃん?」
言いたいことは本当に間違っていないけど……何だか良くない気もする。コーチも全く予想していなかったのか鳩が豆鉄砲を食ったような顔してる。
「やめなさい、男の人だし無闇に触らせるなんて問題になるでしょ、男は皆心の中に獣を飼ってるって言うじゃない」
「えっ? それはおかしくない? コーチーが真剣に指導しに来ているのにそういう疑いの目を向けるのって失礼だと思うんですけど? 信頼するってこういうことじゃないんですか?」
「うぐっ……!」
ぐぅの音もでない正論だぁ……コーチは私達のワガママなお願いに対して真剣に応えてくれている。それなのに信頼していないような事を言うのは間違ってる。
でも、アップを手伝う行為は確かに体と体が触れることが多いから男の人に触られるのは警戒しちゃうし恥ずかしい。
でも、コーチから言い出している訳じゃない。邪な気持ちでコーチを受けてくれたわけじゃない。
こういうところで距離ができると多分いざという時に困ることになるかもしれない……。
「というわけでおなしゃーす」
「仕方ない……この方が効率的だし昨日のアップじゃケガに繋がるかもしれない。皆にもちゃんと教えるから見ていてくれ。全身するのはもちろんだが足と腰を念入りに行う。毎日15分~20分かけてだ!」
「はい!」
鈴花ちゃんは床にお尻を着けて180度近く開脚して、足を開いて腰を前に倒す。
「ゆっくり呼吸をしながら、反動をつけないようにしっかりと伸ばすことを意識するんだ。1、2、3、4、5──」
コーチは両肩を押しながらゆっくりと倒していく。
鈴花ちゃんの体がどんどん潰れるかのように畳まれていく。コーチは全然ムリヤリ押している様子は無くて不安と驚きが顔に出てた。
「……あぁ、効く気がするぅ~、も少し押してもいいよぉ」
「すごい柔らかいな……体操か何かやっていたのか」
「ううん、何も~」
鈴花ちゃんは全然嫌がってる様子もない。
ちなみに私達の中だとセイラちゃんが凄く柔らかくて菫ちゃんがとても固い。押す時の力加減を間違えないようにする必要があるから、それをしっかりわかってる私がやる必要がある。
「じゃあ今度は交代、鈴花も俺を使って練習だ」
「りょ!」
私達も交代しながら始めていく。今度はコーチが押される側になって──
「コーチーめっちゃ硬いんだけど!? これ以上はムリそう?」
「ぜ、前線を退いだ身だからな、当時と比べたらガチガチだ……」
「これ位ならいけそう?」
「む、ムリに押さないように、これがケガに繋がることもあるからな」
「りょ~か~い」
「自らを練習道具とするとはサスガデスネ」
「すごいですよね……わたしだったら触られただけで全身に鳥肌立ってるかもしれません」
そんな訳で仰向けにさせて片足ずつ解していったり、両肩を抑えて膝を左右に倒させたり、うつ伏せにして両足を操縦幹みたいにして外側に広げたり、両肘を背中側で合わせるように引き上げたりしてちょっと絵面が危なくなりそうながらもストレッチを終えることができた。
今まで以上にしっかり行えたけど、菫ちゃんはこれだけで少しボロボロになってるコーチ以上に硬くて限界値があまりに近いんだと思う。
「これで身体も温まっただろう。では、解説に移ろうと思う。鈴花も試し撃ちをしながら聞いてくれ」
ここからはトイの解説と私達の練習。
ちなみに私達が行う的当ては時間経過でフィールドが変わる仕組みに加えて物陰から半身を出したりしている人型的を当てる練習。最低5mの距離、そこから1m毎の位置にランダムで出現。
「まずは全てのトイに共通していることを話そう。さっき言ったことに合わせて弾詰まりという概念も存在しない。リロードは一部を除きプラグを挿した状態で弾丸生成ボタンを押すだけ。まずはハンドガン種から試していこう。小型で小回りも聞いて連射も効く最初に触れるトイの代表だな」
「引き金も何もかもかるぅ~い! バンバン撃てる!」
菫ちゃんが持っているトイで姿勢を問わず射撃できるから急な襲撃にも対応できるのが特徴。最大射程距離は15m程度。
私も使ったことあるけどしっくりこなくてやめちゃったなぁ。
「マシンガン種。連射に優れトリガーを引いているだけで弾が連続で発射される装填数も最高峰。筋肉モリモリじゃなくても片腕で撃つことができるぞ」
「あわわわわわ!? 制御不能に陥りそう!?」
私も使ってたしセイラちゃんが使ってるトイ。射程距離と連射力のバランスが優れているけど威力はハンドガン以下。ダウンさせるのに10発近く当てる必要がある。でもよーいドンでやったらかかる時間はこっちのほうが短い。連射力の差って奴だね。
最大射程距離は20m程度。
反動は少ないといっても連射中はどうしても振動があってしっかり抑えないと狙いがブレちゃうのも難点。
「スナイパーライフル種。威力と射程距離に優れているが、単発式かつリロードの時間が少し長めで消費UCIも多い」
「スコープ付いてたり付いてなかったりするけどどっちがいいの?」
「合った方がいいけど、使う際は片目を閉じないようにな」
「りょ──照準の中心に的を、それで引き金を引く──当たった!」
向日葵ちゃんが使い始めたトイ。当たったらタダじゃすまないのが何よりの特徴。弾速も早い。最大射程距離は最低25m、ベルセルクの50mは本当に規格外。
でも装填時間の長さが何よりも弱点。特にベルセルクは他のトイの倍は時間がかかる。
「ショットガン種。射程距離は短めだが威力は高く直撃したらダウンは免れない。散弾だから多少狙いがズレても弾が当たるのも特徴だ」
「銃口が大きい! 的が粉砕できる! ──あれ? リロードは」
「こんな風に筒の下にあるグリップを引くとデキマス!」
「おぉ……!」
セイラちゃんが使っているトイ。確か最大射程距離は10mぐらいだけど一番威力が出るのが5mまでだったかな? 有効射程距離ならシールドを貫通するぐらいだから強いのは確かで避けるのも難しい。
「バズーカ種。単発型で特殊な弾丸を発射し着弾地点にUCIの煙を炸裂させる。人に直撃しても無害だが、即ダウンさせる威力を誇っている」
「ええ……これ玩具にしていいサイズじゃないでしょ。肩で担がないと撃てないじゃん……これ引き金引くのも怖いって」
「わ、わかります……巻き込む可能性があるので気軽に打てないんです」
向日葵ちゃんに以前持たせていたトイ。威力と射程距離に優れているけど着弾地点を考えて使わないと仲間や自分にも被害が出る危険性もある。
最大射程は25m程。
恐る恐ると鈴花ちゃんは引き金を引くとラグビーボールみたいな弾が山なりに飛んでいって床に着弾すると同時に煙が広がる。
「そしてリボルバー種。ハンドガンと比べれば威力は格段に高いが装填数は6。リロード時の消費UCIも大きいのが難点だ」
「これ映画とかで早撃ちで使われるやつだ、コーチーはそれで始めたの?」
「……ノーコメントだ」
この表情からしてそういうことなんだ……とにかくこれは私が昨日渡されて使ってるトイ。このトイは撃つ度にシリンダーが回転する。トイの弾をこの中に形成しているってことなのかな?
それは置いといてこのトイの最大射程は20ぐらいかな? 最大威力を発揮できるのも15m近くもありそう。
ハンドガンの気持ちで高威力の弾が連射ができる……リロードはシリンダーを開いて閉じる。それで数秒待つ。なんだろう、ちょっと無駄が多いような気もする。
「遠距離トイは大体こんな感じだな気に入ったのはあったか?」
「う~ん、ウチ的には……まだこれと言ったのが無いんで全部に触れてきます!」
「悪くない判断だ。続いて近距離トイと言いたいがこれに関しては種類はほぼ無いと言ってもいい」
「どゆこと?」
「名称的にはブレード──剣みたいな近接トイだが選手の好みに作り変えることができるのが理由だな。柄に関しては公式規格に則る必要があるが刃の部分は何でもありだ」
「えぇ~? なんかいい加減な気がする」
「触ればすぐに理解できる」
コーチが渡したのは刀の形をしている基本的な形のブレード。
頭に疑問符が浮かんでいるけど鈴花ちゃんがブレードの刃を触ると今度は感嘆符が出てきた感じだ。
「この感触……スポンジに近い!?」
「そう、やわらかい特殊素材で作られている。この刃にUCIエネルギーを通すことでバトルトイとして機能するんだ。刀みたいな見た目をしているけどこれで叩かれたってケガの心配は薄い。UCIを纏っていても殺傷力は無い」
「なるほど……確かに金属とかじゃないなら加工も容易……! だから自分好みに改造できるんだ!」
「トイショップに行けば形成機があるから設計図を読み取らせればその通りに出力してくれる」
「色も形も自由自在で団扇みたいだったり七支刀みたいな見た目のブレードを作ることもできるんだよ。まぁ私のは既製品をそのまま使ってるんだけど……」
決して知らなかったわけじゃないけど、どう設計すればいいのかわかんなかったんだよね。今のままでも充分戦えてたから変える気はなかったんだけど。
「本当に近接ってこれだけなの?」
「そうなるな、というより自在に作れるから逆に無限にあるといってもいい。ナイフ形小太刀型クナイ型、」
「なるほど、確かにサイズとか小さくすれば持ちやすそうだし。じゃあさこの辺で作れる場所ってコーチーは知ってる?」
「この辺だとKANATO屋ができるな。小さいけどワープリ専門の店でトイからスーツまで揃っててバトルに必要な物は一通り手に入る」
「へぇ~今度行ってみよ」
そう答えた鈴花ちゃんに何だか複雑な表情をしてる気がする。勧めたのはコーチなのにどうしてだろう?
「最後にサポート系だな。身を守れるシールド。設置型で罠のコボルト。手榴弾型のバジリスク。他者回復できるエンジェル。自分のUCIエネルギーを他者に渡せるフェアリー」
「おお、幻獣魔獣のカーニバルだ。あれ? 回復ってどういうこと?」
「そういえばまだスーツの耐久について話してなかったな。バトルをする上で絶対に欠かせない要素だ。さっき答えを導き出していたが実際にダウン状態になるとどうなるか知ってもらおう──セイラ、鈴花を撃ってくれ」
「うえっ!?」
「リョウカイデース!」
再び鈴花ちゃんが酷い目に合う。おまけに今度は自分の手を汚さずに──
まあ、実際これが一番わかりやすいよね。セイラちゃんはノリノリで振り返って、鈴花ちゃんに向かって発射──
もちろん近くにいたコーチも巻き込まれてサラマンダーに打ち抜かれる。鈴花ちゃんのスーツが一気に真っ黒になって。
「いた……くないけど──全身真っ黒!? それに……スーツが固まった!? カチカチじゃん!? なにこれ!?」
「これがダウン状態だ。この状態になるとゲームに参加することはできなくなる物理的にもな」
「じゃあ試合終了までこのままってことぉ!?」
「そういうことだな。試合終了になればユニットが感知して解除してくれるし30分経っても自動的に解除される。もしくはUCIバッテリーにある解除ボタンを押すかだけど。このボタンはバトル中に押したらいけない反則になるから注意してくれ」
バトルする上で絶対に忘れちゃいけないことで守らないといけないルール。大事なことだから何回言ってもいい。
このダウン状態があるからワープリには公平性が認められてる。大昔のサバゲーでは自己申告制だったみたいだけどそんな判断はワープリだと無用。
倒れた衝撃でスイッチが入らないようにカバーが付けられているから誰かが意図的にしない限り絶対に解除はされない。もしも味方の誰かが押せば卑怯者のネクロマンサーだとか色々言われることになる。
コーチがポチっと押すとすぐに真っ白いスーツに戻る。
ちなみにコーチの服は別になんともなってない。
「なんか全身ギプスに巻かれたみたいだった……」
「スーツにはUCIに反応する素材が使われていて、着弾した位置の硬度を高めているんだ」
「じゃあ回復用のトイを使えば硬化部分がなくなって動けるようになるってことなんだ」
「その通りだ──ただし、ダウンした味方に対しては意味がない」
だからなのか使ってる人いないんだよね。時間も消費も大きいから回復するぐらいなら攻めた方が良いって言われてる。何より隠れて回復するにはフィールドは狭すぎる。
「ふ~ん……役に立つか怪しいね。あっそいえばさ、シールドってUCIの壁を作るわけじゃん? あれって実際だと戦車の砲撃を耐えるぐらい硬いはずなのに普通のトイでどうやって壊してるの? 壊せなくない?」
「おぉ、すごい良い質問をしてくれたな……! 大きな理由としては厚みと停止状態の差だな。砲撃や爆撃を防ぐUCIの壁はワープリで使うシールドよりも百倍以上厚みが違う。加えて完全停止状態で運用するんだ。すると鉄壁を越えた鉄壁であらゆる攻撃を防ぐことができる。まあ、大量の爆撃で壊せないこともないらしいが、再構築のスピードの方が圧倒的に早いからリターンに見合ってないんだがな」
「素早く動くと崩壊するから停止。なるほど……じゃあ厚くシールドを張って不動なら無敵?」
「良い指摘だ、実はUCIの弱点はUCIでもあるUCI同士による衝突によって対消滅で削れるんだ。だから一点に集中してグリフォンで連射すると穴が出来上がる。バスーカの煙も高濃度のUCIだから一気に削ることができる仕組みだ」
「なるほど……でも対処方法がわかってるなら絶対防御とか破って爆撃とかできたんじゃない?」
「ワープリとちょっと外れる話なるが、UCIの弾をガトリングで連射し壁を壊せるかの実験はあった。破壊することは可能とされているが、高速で崩壊する性質により接近が不可欠で戦場において現実的では無いとされているな。他にも気体状のUCIを詰めたミサイルを先行させ障壁を破壊後、次弾のミサイルで焦土と化す作戦もあったらしいが、厚い壁を壊すとなると相応のUCIが必要になる。しかし、厚い壁の外側に隙間を空け薄い壁を作って受け止めたら効果は激減するのがわかった。つまり工夫しだいでいかようにも防げてしまうんだ」
「だから絶対防御……!」
普通の講義みたいで私達は思わず的当てを止めていた。
世界から戦争がなくなった理由はこれなんだ……! 正確に言うと完全になくなったわけじゃないけど、兵器の介入はほぼ無くなってるのが現状みたい。
コーチってこういうこともしっかり勉強しているんだとちょっと驚いた。
「うお、何か静かになったと思ったら──練習再開なさいな。さて、話を戻して続いてはドローントイだな。探索用のリブラ。攻撃用のレオ。他にもトラップ用や防御用もあるが基本的にこの二つしか使われないな」
「はい! それはどうして?」
「ドローンとして使う意義が少ないからだな。トラップならコボルトを前衛の誰かに設置してもらう方がいいし、シールドが張れるとしても仲間との連携が難しい。相手位置の探索か不意の攻撃に割り振った方がUCIの節約にもなるんだ」
「追加で言うとドローンってシールドみたいにバトル開始してからUCIを注入する必要があるのよ。だから大量展開できないの。移動自体は電気だけど機能を行使するたびにドローン内のUCIが消費する仕組み。それにUCIが空になるとドローンも動けなくなるからブラフみたいな使い方はできないのよね」
「なるほどぉ……」
菫ちゃんと一緒に沢山色々と試してみた結果だけど初めにバッテリーが空になるぐらい沢山のドローンに注入したとしても手動だとまず操りきれない、自動操縦に任せるのもありだけど細かい調整ができなくなるのが問題で空っぽになったらその場に不時着。
トイの攻撃でダウン状態にならない限りUCIを再注入すれば再起動できるようになるけど無防備な体を晒すことになっちゃうから少ない数をしっかり満タンにして使用するのがバランスが良い。
「え~と後は……そうだサブユニットの説明もしとかないとな」
「ユニットのサブ? どゆこと?」
「そうだ、サブユニットは選手の戦い方を後押しする装備だな。ユニットというが大半はメモリーチップを挿入して効果を発揮する。自動でUCIエネルギーを回復したり、リロード時の消費を減らしたり、受けたダメージをUCIを消費して回復したりと言ったものだな。これは一つしか入れることができない」
「何ソレ面白そう! 皆はどんなの装備しているの?」
「私はUCI回復」
「あたしもね」
「わ、わたしもです」
「ワタシは消費軽減デース!」
「え? 回復系多くない? どゆこと!?」
「バトルをしていくと自ずとそうなってしまうんだ……待ちが多くなりやすいから回復が便利なんだ。俺の時でさえ消費半減か回復以外の選択肢はあがらなかったからなぁ」
「はい! り、理由はあるの?」
「他のサブの性能を見るとわかる──『スーツ回復』は直撃即ダウンしたら意味がない。『威力アップ』も人気はあったが消費も増える、元から一発でダウンを狙える武器には不要。バッテリーに入ってるUCIはサブユニットの回復を入れない限りバトル中に回復しない、バッテリーが0になった上で弾切れになれば逃げることしかできなくなる。熟練者ともなると倒されない戦い方を意識して長引きやすいから回復の恩恵が大きいんだ」
「撃ちまくるアタッカーの場合は回復が追いつかない方が多いから、軽減の方が恩恵受けやすいんだけどね」
「その通りデース!」
「もっと他に面白そうなサブはないの? 特別な拡張性があるようなのは?」
「機動力を跳ね上げる『ブースター』や姿を消せる『カメレオン』があるにはあるが、ここには無いかもしれないな。部活終わりに全部を纏めた資料を送るから、今言ったもの以外の装備を探してみるのもいい」
「りょ~かい!」
「さて、説明も終わったことだし今日から本格的に練習を始める。この的当ての命中率も後で算出しておくから全員チェックするように。次の訓練の準備をするから5分ぐらい休憩だ部屋を出て休んでおくように」
皆が返事をする。
改めてトイの性能を確認できたのは復習になって良かった。でも、何時の間に算出できるようにしていたんだろう?
この的当てといいシステム的にも大きく手が加えられていてまるでUCIルームが以前とは別物になってるみたい。コーチ好みに改造された感じだ。
鈴花ちゃんとセイラちゃんは疲れ知らずに二階の観客室に移動してどんなフィールドが出来上がるのかを確認しに行って、菫ちゃんと向日葵ちゃんは玄関広場にあるベンチに座って休んでる。
私は少し落ち着かなくてワクワクもしてる。
コーチは本格的に練習を始めると言ってくれた。これからいったいどんなことをするのか想像がつかない。漫画とかでありそうな無茶な修行を始めるんじゃないかとちょっと想像しちゃう。
二人が「すごいのできてる」なんて言いながら戻ってくると同時に扉が開かれた。
本作を読んでいただきありがとうございます!
「続きが気になる」「興味を惹かれた」と思われたら
ブックマークの追加や【★★★★★】の評価
感想等をお送り頂けると非常に喜びます!




