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第九話

『パーティー2名が儚きスライムのダンジョンをクリアしました』



 俺のビンタへの思考を遮るかの様にあの機械音声が頭の中に語りかけてきた。

 それと同時に部屋の中央に青白い魔法陣みたいな光る模様とその近くに宝箱らしき物が出現する。


「解! ダンジョンクリアって言ってるよ!」


「ああ、やっぱりあのスライム達はボスだったんだな。そしてクリアした特典で宝箱が出てくると。多分、流れ的にあの魔法陣のようなものは塔の外に出る装置、かもしれないな……いてて」


 俺は鳩尾を抑えて立ち上がる。

 その様子を見て楓はハッとし、俺に提案してくる。


「私の能力で解を治療してみてもいい!?」


 楓は少し興奮した様子で言う。


「あ、そうか。楓の〈天啓〉は治癒師だったよな。〈天啓〉の使い方ってわかるのか?」


「うーん、分かんないけど……使えないとどうしようもないし試してみるよ」


 そう言うと楓は俺の方を向いて〈天啓紙〉を出した後、目を閉じ何やら考えこんでいる。

 



(んー、こうやってまじまじ見ると楓ってやっぱり可愛いn

「出来るっぽい!」


「うわあああああ!! びっくりしたぁ!」


 楓が跳ねるように目を開ける。

(いきなり目を開けるな!)


「何驚いてんの? さあ、さっさと治すよ」


 そう言うと楓は俺の鳩尾ら辺に触れ目を閉じる。

 すると緑色の光が楓の手から溢れ、俺を包む。


(なにこれぇ、あったか〜い……)


 これはもしや優しさですか?

 わたしは今、優しさに包まれているのですか?


「多分これでオッケーだと思う……て解、あんた何て顔してんの?」


 おっと、俺は気付かないうちに人に見せてはいけない顔をしていたのやもしれない。

 人の優しさとは、さも恐ろしいものですな……(キリッ


「ん? あれ? 体が痛くない!」


 俺は右肩と鳩尾を触ってみるが全く痛みがなくなっている、それどころか洞窟の道を歩いて来た疲労感もなくなっている。


「凄いぞ楓! 攻撃を受けた痛みどころか疲労感までなくなってる!」


「うっそ! 自分にもやってみよ!」


 そう言うと、楓は自分に能力を使う。

 楓の体が緑色の光に包まれ、光はすぐにスッと消える。


「ほんとだ! 疲れが消えてる! めちゃくちゃ便利! すごーい!」


 楓はそう言いキャッキャと喜んでいる。


(自分にも使用可能か。治癒師ってめちゃくちゃ凄い〈天啓〉じゃね……? これ国が動くレベルだろ……)


「なあ楓、楓の詳しい能力の事は余り他の人に話さない方がいい。もちろん仲のいい友達にもだ。」


「んー? 解が言うならそうするけど……でもなんで? 治癒凄くない?」


「凄い、逆に凄すぎて面倒事に巻き込まれる恐れがあるんじゃないかな。それくらいすごい能力だと体験して感じた。だから安全の為にも口外しないほうがいいと思った。いやだろ? いきなり実験体になれとか言われたら?」


 俺は真剣な表情で伝える。


「こわ、怖い事言わないでよー! わかったよ、絶対言わない! ……それより解、あの宝箱開けてみようよ!」


 そう言うと、楓は先程出現した宝箱に近づき箱に手をかけた。


「お、おい。罠かもしれない、あぶないぞ……」


「えー、ボスを倒して出てきたやつだから大丈夫でしょ」


 いや、まあそうだろうけど……いやどうなんだ?

 楓はパカッ! と勢い良く宝箱を開け中身を確認する。


「おい、もうちょっと慎重に」


「ほら、大丈夫! うーんと中身は……何これビー玉?」


「本当に大丈夫なのか……? なんだそれ?」


 楓が摘んでもっている大きさ10㎝程のビー玉らしきものは、うっすら黄色に光り何とも幻想的だ。


「何だろね、……綺麗な光るビー玉? 解も触ってみる? ほい」


 楓がビー玉をぽーーーんっ! と放り投げてくる。


「ちょちょ、おい……いきなり投げるなよ」


 楓から放り投げられたビー玉を受け取った瞬間、ビー玉が強く光りだす。

 

『南條解に新たな〈天啓〉が降りました。南條解は鑑定(初級)を習得しました』


「んん!?」


 俺はつい変な声をだしてしまう。


「どうしたの解? いきなりビー玉が強く光ったけど……てあれ、ビー玉消えちゃった!?」


「なんか俺に新しい〈天啓〉が降りたみたい……」


「えええ、どゆことーーーー!!!???」


 ビー玉が俺の体に触れた途端、光って消えたと思ったら鑑定(初級)の〈天啓〉が降りたでござる。


「ちょっと解、どういう事!?」


 楓は驚いて聞いてくる。


「このビー玉は使った人に〈天啓〉を授ける物なのかもしれないな……多分」


「じゃあなんで私が先に触れてたのに〈天啓〉が降りなかったんだろ?」


 確かに先に触っていたのは楓だ……なんでだ?

 適性があるなしで判別されるのか……?


「詳しい事を話すのはここを出てからにしよう、てか明日の方がいいだろ。このダンジョンに入ってから一時間はいるし、遅くなるぞ?」


「え!? もうそんな時間!?」


 楓はあたふたしながら魔法陣の方へ進む。

 俺も楓を追って魔法陣の前へ立つ。

 

「この魔法陣……ちゃんと外に出られるよね? これに入ったらまた違うダンジョンに連れてかれる……とかないよね?」


「おいやめろ、フラグになるぞ! 大丈夫だろ、多分」


「不安だねー……あ、こういう時は“いっせーのーせ!”で入ろう!」


 楓がそう提案をしてくる。


「よしわかったそれで行こう! ……ん、ちょっとまて楓、“いっせーのーせ、ハイ!”でいくのか“いっせーのーせ!”でいくのかどっちなんd」

「いっせーのーせ!」


「ちょおおおおおおおお!!!」


 楓は俺の質問を一切聞こうとせず、躊躇なく飛び込んだ。

 俺も遅れないよう楓に合わせる。

 

(楓さんは“いっせーのーせ!”派なんですね。)


 魔法陣に入った途端、視界が真っ白になる。

 次の瞬間には俺達は元いた場所に帰ってきていた。


「あー、よかった。帰ってこれなかったらどうしようかと思ったよ」


 楓はホッと胸をなでおろしていた。


「色々あったねー、疲れたし早く帰って休みたいな~」


 そう言って楓はスマホで時間を確認する。


「えっ!? 解、なんか時間おかしいよ!?」


 楓が驚いた様な反応をして俺にスマホを渡してきた。


「20:17……? なんでだ、俺達が塔に入ったのが20:15程だったから……この計算だと塔の中には1分ちょっとしかいなかった計算になるぞ……? と言う事は塔の1時間はこっちの1分程って事か……?」


 まさか二人揃って白昼夢を見ていたとか……?

 一瞬そう考え、確認の為〈天啓紙〉を出す。



【名前】南條解

【天啓】

キーメイカー☆■、鑑定(初級)☆2

【天啓力】248


(おい、〈天啓力〉)


 とりあえず〈天啓紙〉には能力が反映されてるし夢では無かったことが分かるが、なんだこの〈天啓力〉の伸びは。あとしれっと鑑定が追加されとる。


 そして、スマホの時計がバグっているのかと考えg○ogle先生で時間を調べるも時間はやっぱり20:17。

 と言う事は塔の中は時間の進むスピードが遅い、で確定か。


「何にせよ、遅くならなくて良かったな楓。色々と話したいこともあるだろうけど明日にしよう」


(警察官に見つかる前にここを離れないとな、なんか急に勝手に入った罪悪感が)

 

「よし楓、さっさとずらかるぜ……! へへっ」


「なんで泥棒口調なの?」


 バレないように来た道を戻り、車を停めてある駐車場まで帰ってきた。

 俺達は車に乗り雄島を後にする。

 


 家に帰ってきた俺はシャワーも浴びずに、すぐ様ベッドに倒れ込んだ。

 怪我や疲労は楓に治して貰ったが、日頃運動もしない、間違っても殴る蹴る事など冗談でもしない俺は精神的にかなり疲れていたのだと思う。不思議と塔の中では暴力に対する抵抗感がなかったのが謎だけど。

 俺はとても充実した気分だった。


(それにしても、ダンジョンを攻略していけば〈天啓〉や〈天啓力〉が増えていくのか……これからどうしようかな……)


 これからの事を考えようとするも、強い睡魔に邪魔をされ、俺はすぐに深い眠りに入っていのであった。

ここまで読んで頂きありがとうございます<(*_ _)>



■次回の更新は【7月18日20時】の予定です。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 八話と九話が繋がっていない気がするのですが (この九話でいきなりビー玉云々となっている)
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