第三十六話
「解、久しぶりにネェガさんのお店に顔出さない?」
「ああ、そういえばもう一週間程顔出してないな」
「前のグリグリ戦で解の防具が壊れちゃったし、ダンジョンに入る前にネェガさんのお店で装備を探そうよ」
「確かにこれからもっと強い敵が出てくるかもしれないし、しっかりした防具を買っておいた方がいいかもしれないな」
「ん? ネェガとやらは誰じゃ? 前にも話しておったかの?」
ルキは不思議そうに聞いてくる。
「ああ、ルキにはまだ言ってなかったか?」
俺は“小さな道具屋の鍵”と“小さな宿屋の鍵”の事をルキに伝える。
「ほお、そんな鍵もあるのじゃな。そうしたらその鍵達を上手く使ってダンジョン攻略をしたほうがいいの。後、そうじゃ。ダンジョンに潜る前にやっといた方がいいことがあるんじゃが」
「なんだルキ? 何かやっといた方がいいことあるか?」
ルキは「うむ」と言い俺達の目の前に、あるものを出す。
「ルキちゃん、これって風神のオーブだよね?」
そう、目の前に出されたのは前回のダンジョンで獲得した風神の〈天啓〉のオーブだった。
「おそらく今なら楓にもこのオーブは使えるはずじゃ、使えるなら早く習得するに超したことはないしの、試してみい」
「えっ……今なら私に使えるの? それなら試してみようかな」
なんで今なら使えるんだ? ……もしかして。
「ルキ、それって全人類にダンジョンが開放された事と関係があるのか?」
ルキは「そういうことじゃ」と頷く。
「なら何で俺には使えたんだ? おかしくないか?」
「解は自分の〈天啓〉を使ってダンジョンに入ったじゃろ? それなら問題なく使えるんじゃ」
「ふーん、そういうもんなのか」
そう言うと、ルキは楓に〈天啓〉のオーブを渡す。
するとオーブは光り輝き、楓の中に入っていく。
「やったー! 私にもオーブ使うことができたよ!」
楓はとても嬉しそうに俺に伝えてくる。
「良かったな! 丁度良いし俺達のステータスを確認しとくか」
「じゃあ、私から出すね」と言って楓はステータスを出し俺達に見せてくれる。
【名前】佐藤 楓
[レベル]14
[職業]守護者
[スキル]プロテクション
【天啓】治癒師☆4、風神☆4
【天啓力】1451
[MP]96
[筋力]41
[敏捷]110
[魔力]110
[運]21
えっ……風神て☆4の〈天啓〉だったんかい……てか〈天啓力〉1400超えてるんですけど。
ネットで騒がれている蒼炎使いでも確か1300だったぞ。
て事は楓って今現在、日本で確認されている〈天啓力〉の中で数値が1番って事? 全一?
ステータスも“明けゆく森”のダンジョンをクリアした後に見る機会があったが、その時より大分上昇している。
「なんか〈天啓力〉凄いことになってるね! 風神も☆4だって!」
これはまずいですよ、俺の存在意義が……ただの鍵作って増やすだけの人になってしまうっ……!
(頼むっ…次は俺に合った〈天啓〉のオーブが出てほしい……!)
俺はそう心の中でいるのかもわからない〈天啓〉の神様に願ったのだった。
……
……………
…………………………
「おう、お前ら生きてたのか! 久しぶりじゃねぇーか!」
ああ、前回から1週間以上たってるのか。こっちでは結構日が進んだんだろうな。
「こんにちはー!」
「ええ、おかげさまで。こっちの小さいのは新しい仲間のルキって言います、めちゃくちゃ有望株です」
「へぇ、こんなちっちゃいのがなぁ。人は見かけによらないな!」
ネェガさんは目を丸くして驚く。
「小さいとは失礼な! 儂は身体も心も立派な大人じゃぞ!」
「はっはっは! 悪い悪い!」
ネェガさんは笑いながらあしらう。
まあ普通は信じれないよな、ルキが元々はあんなにワガママボディのエッチなお姉さんだなんて、知ったらネェガさんもあのワガママボディの魅力に墜ちてしまうだろう。
「んで今日は何しに来たんだ? そういえばあの“ローヤ○さわやか”反響が凄かったぞ! またあるなら売ってくれよ」
ネェガさんは嬉しそうに話す。
「今日も持ってきてますよ、あとからお売りします。で今日の目的なんですが、俺に合う防具を見繕ってほしいんです」
「……なるほどな。そうだなぁ、お前に合う防具は、っと」
そう言いネェガさんは店の奥に消える、5分程待っていると何点か防具を持って帰って来た。
「この中なら合う防具もある筈だが……」
ネェガさんが狭いカウンターの上に防具を置き始める。
俺は鑑定を使い商品を確かめる。
・レザーアーマー
・ブルーメタルアーマー
・ライトメタルアーマー
3点か……どれがいいのか。
そう考えてるとネェガさんが話し始める。
「右からレザーアーマー、ブルーメタルアーマー、ライトメタルアーマーだ。レザーアーマーは軽くて動きやすいが防御面はそこまで高くない。ブルーメタルアーマーは少し重いが防御力が高く、ブルーメタルの特性で少しずつ体力が回復する特殊能力付きだ。ライトメタルアーマーは特殊効果はないが防御力は今の2つの中間ってとこだな」
いやブルーメタルアーマー1択っしょ、なんか厨二心揺さぶられるな。
とりあえず物は試しとネェガさんに装着の仕方を教えてもらいながらアーマーをつける、レベルと〈天啓力〉か上がったおかげか、思ったより重くはなく、つけたら逆に何だか体が楽になったような気もした。これはいい!
「おー、似合うね解!」
前のボディプロテクターと防刃ベストの時と違い、楓の評判も良い。
「ブルーメタルアーマーが欲しいです、これがいいです」
俺は即答する。
「お目が高いな。けどこれは中々高いぞ?」
「えっ……いくらなんですか?」
「200,000ディルだ」
200,000ディル!?
と言うことは200万円くらいか!? いやでも200万円でこんなファンタジーチックな装備を買えるなら安いんじゃ……。
「まったくお金が足りないね……」
楓が残念そうに呟く。
「ああ、流石に200,000ディルなんて大金すぐ用意は出来ないな」
「お前らろー〇るさわやか持ってないか? あれを大量に仕入れ出来ればこっちもありがたい。今後も卸してくれるなら今回特別にろー〇るさわやか30箱で手を打つぞ」
「いや……30箱はすぐに用意できないですね」
家周辺のスーパーで買い占めても30箱もあるか?
「はあ~、おぬしらほんと儂がいないと何も出来んの。ほれ」
ルキが突然イキり出したと思ったら目の前に大量のロー〇ルさわやかが積み上げられていた。
「「「は!?」」」
ネェガさん含め俺達三人はにわかには信じられない光景に言葉を失ってしまった。
「これだけあればそのブルー何とかという鎧も買えるであろ? 解、ちゃんと儂に感謝するんじゃぞ」
「ちょちょちょ、なんでこんな大量のロー〇ルさわやかがあるんだよ」
「こういう事もあろうかと、まだわずかに残った能力があったとき複製しといたのじゃ、ほれあの時じゃ」
ルキは片手でローヤルさわやかの箱を持つ素振りをする。
「あの時かっ……てかルキ、お前複製なんか出来たのか……」
「もう使えんがの。というわけでネェガとやら、解に鎧の付け方を教えてやってくれ」
ルキはあっけにとられていたネェガさんにロー〇ルさわやかを渡し、そう伝えた。
「お、おう! 毎度あり、これでまたローヤルさわやかを販売出来るぜ!」
ルキのおかげで俺は新しい防具を手に入れた。
(早く次のダンジョンに行きてぇ!)




