第三十五話
鳳凰院にウザ絡みされた後、楓と他愛ない話をしながら帰り、俺の家につく。
楓は学校帰り、いちいち家に帰るのが面倒くさいと言っていたので、予め家から持ってきておいた服を2階の空いている部屋に置くようにさせた。
部屋はいくらでも空いているし使わないのも勿体無いので丁度良い。
見られたくないものもあるだろうから部屋の鍵も渡しているが楓は「別に鍵はいらないよ?」と言っている。
いや、それは俺のけじめというか潔白の為というか、電車で両手を上げるあれだよ、察してくれ楓さん。
……
…………
………………………
「……と言う事があったんだ」
俺と楓は大学での事を、ソファで横になってテレビを見ながら福井名物“差月ヶ〇煎餅”を頬張っているルキに話す。
「そんな訳の分からん偽の情報を鵜呑みにして東尋坊のダンジョンに入ろうとする阿呆がおるのか。いくら〈天啓〉が優秀な奴でもレベル1のままあのダンジョンに入るのは自殺行為じゃぞ」
「ん? その言い方だと東尋坊のダンジョンと別のダンジョンの難易度は結構違うのか?」
「そうじゃ、基本的に白、青、黄、緑、赤、黒の順で難易度が上がる、色の濃淡でも強さに関係するの。あと塔の高さはダンジョンの広さに直結するんじゃ」
マジか……という事は薄青色だった東尋坊ダンジョンは下から二番目の難易度ってことか。
「最初に鍵を使って入った塔のダンジョンは武器を持ってない私たちでも攻略出来たけど、やっぱり鍵を使うと塔のダンジョンじゃなくて鍵のダンジョンに繋がるの?」
楓がルキに質問する。
「あたりじゃ、キーメイカーで作った鍵は塔のダンジョンの優先度より高いからの、割り込めるんじゃ」
「「はえー」」
そういうシステムなのか。
何故そうなってるのか聞いても「秘密じゃ☆」とかいってはぐらかされるんだろうな。
「話を戻すが……まあ、ダンジョンに入るのはその阿呆の自己責任じゃろ? おぬしらが悩んでも仕方のない事じゃ」
「それはそうだけど……」
楓が心配そうな顔をする。
「色々教えてくれて助かった。 ルキ、ありがとな」
「そんな事くらいしか出来んからの、どうせ今の儂はもう役に立たてんのじゃ……」
そう言うとルキは拗ねながら“差月ヶ○煎餅”をバリバリポロポロさせる。
「まだ落ち込んでんのかルキ、仕方ないだろ? 力が全てリセットされてもまたこれから強くなればいいだけだし」
「そうだよルキちゃん、一緒に頑張ろー!」
そう……あの2回目の地震の直後、突然ルキの力は全てリセットされ、ステータスはレベル1の真っさらの状態に戻ってしまったらしい。
それに伴って髪色も出会った時に入っていた金のメッシュが無くなりアッシュベージュだけとなっていた。イメチェンか?
「元の姿どころか、ほんの少し残った力さえ無くしてしまったんじゃ……儂はなんて可哀想な美少女なんじゃろうか……」
バリバリ煎餅食べながらそれ言うと可哀想という説得力が全くないな。てか自分で美少女言うなや。
まあルキが今こんな事もあり地震が起こった後から約1週間、俺達は1度もダンジョンに潜っていない。
ルキも立ち直ってきたし、そろそろ一度ダンジョンに潜っておきたい所だ。
「じゃあ、リハビリを兼ねて明日〈天啓力〉20くらいの鍵を作ってダンジョンに潜ろう」
「やったー! 久しぶりだね!」
楓がワクワクしながらルキがソファにこぼした“差月ヶ○煎餅”の欠片を拾っている。
「えー、面倒くさいのお」
「そんな事言うとお菓子もジュースも取り上げるぞ」
それを聞き、ルキはガバッと起き上がる。
「それは駄目なのじゃ! それは儂の生き甲斐なのじゃ! 頼むからやめてくれ! はっはーん……なるほどのう、そう言って儂の魅力的な身体を好きなようにしたいんじゃな? 本当にお主はエロガキじゃの……仕方ない、それ程まで言うなら……」
「ちゃうわ! 何でそうなる! 普通に俺達とダンジョンに来い」
「分かった分かった、まったく冗談の通じんやつだの」
こいつ……いつか泣かす。




