第二十五話
『君が一番素直だった頃の姿が僕は気に入ったんだ、だからこの姿にしたんだよ』
意味わからん。
『ふふ、意味わかんないよね。けど不思議と僕の言葉、信じられるでしょ?』
「確かに意味は分からんが嘘とは思わない……なんでだ? ていうか俺声に出してたか?」
ああ、なるほど。これは夢か。
時々、夢を夢とわかる時があるけどこれもそんな感じだな。
『その通り、ここは君の夢だよ。でもここで経験したことは現実でも心に反映するよ』
今回はやけに良くできた夢だな。
『君の事よく診せてもらったよ、中々つらい思いしたんだね。その事についてのつらさは僕にはよく分からないけど、あの心の軋み方は体験してみて僕もびっくりしたよ』
ああ、両親の事か。
この子ども……いや俺なんだけど、俺だからこそ詳しく説明されなくてもなんとなく意味が通じてる……そんな気がする。
「まあ当時はな、今は乗り越えたけど」
『そっから今に至るまでの変化も良かったよ、浮いたり沈んだり寒かったり熱かったり消えたり付いたり……とにかく楽しかった!』
普段の俺なら「なんか失礼な奴だな」と距離を置くはずなのに、不思議と俺は小さい俺と会話をやめたいとは思わなかった。
『佐藤楓。君はこの子にだいぶ救われたみたいだね』
「そうだな、楓には感謝してもしきれない程救われた」
『君面白いよ。こっちの世界は命が軽いからみんなそこまで心が動かない、諦めが入ってるんだろうか。だから僕には新鮮なんだ、楓もかなり良かったけど君は別格だ』
そりゃよかったな。
てかなんか気になること言ってる気がするけど疑問に思わないのはなんだ?夢だからか?
『あと君の根源から何かこう……良い匂いがするんだよね。懐かしいような、真新しいような、優しいような、厳しいような、腹立たしいような』
「厳しいや腹立たしいのは良い匂いなのか?」
『全部良い匂いだよ、僕には同じさ。とにかく僕は君が気に入ったんだ、君に合った最高の物をプレゼントするよ』
小さい俺はそう言って手を俺の額に当ててきた。
ああ、もしかして夢が醒めるのか?
なんだか疲れる夢だったな。
『さあ最終段階だ、最後にもう一度診せてね』
“人との関係を構築したくない。無くなったときに、心を失わないように。
人との関係を構築したい。通じ合ったときに、歓びに心が震えられるように。
自分に優しくしてくれた人達に恩返しをしたい。守りたい。
心を。自分を。大切な人を危険に晒されないように、脅威を縛り付けて、それに鍵をかけて閉じ込めて蓋をする。
大切なものを失わないように。”
『そうだねぇ、君には……。 !?』
『■■■……■■■■■■■■■……』
その時、今までずっと余裕のある笑顔だった小さな俺が僅かに動揺した顔になる。
『ああ、そうか……この匂いは君の匂いだったのか。これじゃ僕は手を出せないじゃないか』
小さい俺は困ったなといったジェスチャーをしたと思ったら俺に手を振る。
『これから大変かもしれないけど僕は応援してるよ。頑張ってね』
そういうと俺の体が軽くなり満点の星空に吸い込まれ、夢から醒める時の、あの水面からぬッと顔をだすような感覚を覚える。
……
……………
………………………
「解、解!? 大丈夫!?」
楓に体を揺さぶられ、気が付く。
どうやら倒れてしまったようだ。
「俺どのくらい気を失ってたんだ?」
「たぶん一分くらいじゃないかな?」
楓はそういうとハンカチを俺に渡してくる。
俺は楓の行動に疑問を持ちながらも、ふと頬に違和感を覚え、手を当てる。
「なんで俺泣いてるんだ?」
もう涙なんて長い間、流していない。
本に触れた後の事はあんまり覚えていないから何故泣いているのか理由も分からない。
けど何となくスッキリしてるのが余計に戸惑う。
「相当深い場所まで本が診たのですね、貴方はこの本に愛されてるのかも知れません。きっと良い職業に就ける事でしょう」
神官さんはニッコリと笑い、楓に支えられ座り込んでいる俺に手を差し伸べてくれる。
「何だか不思議な体験だったな」
「そうだね、変な感じ!」
俺は自分のステータスを確認する。
【名前】南條 解
[レベル]9
[職業]鎖使い
[スキル]チェイン
【天啓】キーメイカー☆0、鑑定(初級)☆2、幸運☆1
【天啓力】415
[MP]23
[筋力]40
[敏捷]35
[魔力]19
[運]70
なんだ、鎖使いって?
あれか!? 某人気漫画で目の赤くなるあのキャラの技を使えるんか!?
ここまで読んで頂きありがとうございます<(*_ _)>
■次回の更新は【7月26日20時】の予定です。
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