私をいじめるお姉さまが婚約者である王太子殿下に無視される訳を妹の私だけが知っている
「アルゼリア、どうしてベアトリスが殿下に無視とやらをされるかわかるかい?」
「お父様、どうして私にお尋ねに?」
「お前が一番あれのことを分かっていると思ってな」
私は本を読みつつ眼鏡を上げました。お父様は深刻な顔をされています。
「…おおよそわかります」
「改善策はあるかい?」
「ありませんわよ」
私はあのお姉さまが実家に泣き言を入れてきたとは、相当参っているなとため息をつきました。
「どうしてそう言い切るんだ?」
「…だってあのお姉さまに精神的ダメージを与えることができる方法を殿下が発見したってことは、婚約をお姉さまが解消を言い出すまで続きますわ」
私は分析結果をお父様に伝えました。
12歳の次女に尋ねる34歳の父って…ないわ~と思いますが。
「どうして婚約者を無視など……」
「お姉さまの他に愛する真実の愛の相手とやらでもできたのでは?」
私はお茶を飲み干し、お姉さまにされた数々の嫌がらせを思い出します。
あの毒舌家をやりこめるなんてある意味すごいです殿下って。
「…では解消を申し出たほうがいいと?」
「無視に耐えられないようならそれでいいかと」
私はお父様がそれは家の存続にかかわることだぞと言ってきますが、お姉さまが耐えられないのなら私でも無理ですわと返します。
「お前はまだ12だしな…」
「解消できないのなら療養のために実家に戻せば? あのお姉さまですから2ケ月もすれば復活されるのでは? 私はその間家を出ますけど」
私はお姉さまとは母も父も同じです。世間様では腹違いの姉妹が仲が悪いとされますが。
私たちは同じように等価の愛情をもって育てられたはずでした。ずっと不仲でした。
母は私を産んで亡くなり、私のせいで母が死んだと姉は詰り…姉妹の中は最悪。
父はどちらにも平等に接してくれましたが、仲は改善せず今に至る。
「…あの子がかわいそうで…」
「お父様、お姉さまの毒舌を普通の人は耐えられませんわよ」
「…そうか」
「私はあんたのせいでお母さまは死んだのよとなじられ続け、性格がひん曲がりましたし」
「…いいところはあるのだが」
「あの毒舌に腹を立て、真実の愛の相手とやらを見つけた殿下が無視とやらをはじめたのでしょう。お姉さまのあの性格、王妃向けですけどね、割と貴族令嬢は毒舌が多いですし」
「…あの子の性格が悪いといわれても、貴族女性では普通だと思っていたが、お前たちの母は公爵の家の出でおっとりしていたが」
「私達も公爵な娘ですわお父様…お姉さまは毒舌以外は平均値ですから、お父様が普通と思っていても仕方ないですわ」
私はお姉さまは実家に戻らせて、精神が回復したら王宮に戻らせればいいのではと提案しました…お姉さまに余計なことを言うな。男性の言うことは素直に聞いて頷くだけにしておけと言ってくださいと忠告します。
「それで?」
「しおらしくさえしていれば、お姉さまに同情してくれる人も現れます。その人たちを味方にすればいいと…私は魔法学園の寮に入りますわ。お姉さまと顔を合わせたくないですし」
私は支度をして、ではお父様ごきげんようと頭を下げました。
かわいい娘と会えなくなると泣きつくお父様…。これが面倒で寮は諦めてましたが、そんなことも言ってられませんわ。
お父様を振り切って魔法学園に行き、二か月が経ちまして…。
殿下が解消を言い出さないお姉さまはしびれをきらして、真実の恋の相手をいじめた罪とやらでお姉さまを婚約破棄したと聞きました。
やっぱり…。まあそうなりますわよね。
予想はしてましたがあえて言いませんでした。
あのお姉さまを手助けなんてしたくありませんわ。
私が魔法学園で仲が良い第二王子にお願いをしておきましたから、我が家に連座はなかったですが。
お姉さまが修道院送りですっきりしました…。
お父様が寝込んでしまったと手紙が来ましたから、実家にいったん戻りましょうかね。
第二王子がすぐ戻ってきてねとお願いをしてきますが、私年下は趣味じゃないのですが…。
私のことを好きだといってくるのを、むげにできずかわいがっているうちに懐かれました。利用価値はありますわね。こんなこと思っていから私も性格が悪いのかもしれませんわ。
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