悲劇と喜劇
放課後体育館でバスケ部が練習をしている。
体育館で僕は床にバスケットボールの当たる音を聞いて、我に帰る。
「告白しなければ良かったな…」
虚しい独り言を呟いても、辺りは誰もいないし、バスケ部の練習音にかき消されるだけで、その言葉は自分自身に返ってくる。
ここは、この学校で一番有名な告白スポットの体育館裏。
少しでも報われたい一心で自分が選んだ場所。
「トラウマ確定だ。」
その言葉を吐き捨てて、10分以上動かせなかった足を無理やり動かした。
空を見ても、自分の目には、殆ど何も映らない。
『振られても、次がある。いい人は他にもいる』
そんな言葉が心にふと浮かんだ。
ただの当たり前で、真実だとは思うけど、僕にとっての恋愛は、今の恋しかないとしか考えられなかった。
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体育館裏。
ここにいるのは、私と竜二くんだけ。
けど、私が投げ掛けた言葉に返ってきた言葉は「ごめん。」だけだった。
それでも、私は笑った。
「竜二くん、わざわざ返事をしてくれありがとう。これからも友達として宜しくね。」
私は、彼が自分の気持ちに向き合ってくれた事が嬉しかったからだ。
そして、去っていく彼の後ろ姿を見て、私の心は改めて、さっぱりとした清々しい気持ちになれた。
「私にも報われる時が来るよね。」
そう信じる事で、私は、落ち込まずに前を向けた。
私の精一杯の好きな気持ちを伝えられた。
頬には二粒の涙が流れたけれど、それでも私の告白の結果を待つ坂下千佳のところに行こうと朗らかな表情で歩き出した。
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ゴールデンウィーク前、放課後の学校は、各運動部が高校総体に向けて、いつも以上に熱のこもった練習をしていた。
それは、自分も例外ではなく、この3年間で培ってきた事を試合で出せるように、黙々と弓を引いていた
「よーし!」
試合を想定した練習で、的に矢が的中すると後輩達が声を出してくれる。
これは、試合の時にも、選手ではなく応援にまわった部員達が応援の意味を込めて発声する。
矢城高校の弓道部は、強豪校ではなく、県内でも中位に位置するため、部室兼弓道場は狭い。
だから、多数の部員が声を出すと室内に声が響く。
「よーし!」
自分の後ろに立つ同じクラスの高坂久も続けて、的に的中させた。
高校総体は、あと約1ヶ月。
自分の状態は、順調に上がってきていた。




