キャラが勝手に動く問題
チロン 「今日の、お題は、なんだろなー?(リムルル風味)」
黒崎 「キャラが勝手に動く問題」
チ 「例によって簡潔に説明しろやでございますのです」
黒 「小説家や漫画家のなかには『キャラクターが勝手に動く』と言う人がいる。これに対しては『そんなことあるわけない』『プロットが甘いだけだろ』『自分に酔ってね?』といった否定的な意見も少なくないが──てな話」
チ 「んー……まず〝キャラが勝手に動く〟って状況がイマイチ理解できないのです」
黒 「小説を書いていて興に乗ってくると、自分でも驚くほどスムーズに筆が進むことがあったりする。集中力が極まって雑多な思考が遮断された状態──アスリートの言う〝ゾーンに入る〟ってやつだ」
チ 「ふむふむ」
黒 「小難しく考察するなら、〝ゾーン〟に入った作者の心象世界にはキャラになりきった疑似的な人格が生まれていて、それを客観的に眺めているような感覚(その自覚があるかどうかは別問題)であろうと推察される。結果、あたかもキャラが勝手に動いてるかのように錯覚されるのではないかと」
チ 「自分で作ったキャラなのに?」
黒 「まぁ、そう思うのも無理はないわな。でも、キャラの設定──すなわち人物造形が緻密であればあるほど、作者の思惑通りに動かしにくいという現象は起こりうる。裏を返せば、いかなるときも作者の思い通りに動かせるキャラは御都合主義的な狂言回しでしかない、とも言えるね。作者の主観を投射したアバター型の主人公だったりすると、そうなりがちかも」
チ 「御主人は、どうなのです? キャラが勝手に動いたりします?」
黒 「こういう台詞を言わせたいけど、こいつの性格からして言わないよなー、みたいな葛藤はあったりするよ」
チ 「そういうとき、どうするのです?」
黒 「別のキャラに言わせたり、地の文で解説したり……かな。拙著『狐仙奇譚~目覚めるモノたち』から、それっぽい部分を抜粋すると──
そうつぶやく瑠姫の瞳は、しっとりと濡れていた。
しかし、それを見せまいと笑みを作り、脚を前に投げ出しておどけてみせる。
「いかん、いかん。湿っぽいのは性に合わぬわ。なぁ?」
「…………」
優しい言葉を期待されていることを察しながらも、伶人はあえてそれを無視した。気持ちは分かるよ、などという台詞は綺麗事でしかないと思うから。
──こんな感じ。「気持ちは分かるよ」的な台詞を言わせたい場面なんだけど、主人公の性格からして素直に言いそうにない。かといって無言だと冷淡な印象になっちゃうから、言わない理由を地の文で書いたわけ」
チ 「なるほど。でも、そういうのって一人称小説だとできなくないですか?」
黒 「できなくはないけど、よほど巧く書かないと言い訳がましいキャラになっちゃうだろうな。実際、先に挙げた自著の例文をモノローグに変えたら、なかなか鬱陶しいキャラになりそうだろ?」
チ 「なんか分かるかもなのです。いちいち自分に言い訳しながら〝やっちゃいました感〟を醸す典型的なやれやれ系のなろう系主人公みたいなのです」
黒 「言うまでもないとは思うが、具体例は挙げるなよ。いいな? 絶対に挙げるなよ」
チ 「なれどボク様、そう言われると無性に列挙したくなる〝禁止の魔力〟に身を任せたい気分かも」
黒 「やめれ。つーか、列挙するほど思い当たるのかよ」
チ 「御主人は、思い当たらないのです?」
黒 「…………コメントは差し控える」
チ 「こうして御主人は懲りもせず今回も敵性勢力を量産するのでした。ちゃんちゃん♥」
黒 「ああ、またもや嫌な終わり方……」
チ 「おまけに今回は1700字たらずなのです。短いのです。体たらくなのです」
黒 「あう……返す言葉もありませぬ」
チ 「お絵描きしてツイッターやピクシブにあげる時間があるなら寝る間も惜しんで小説を書けやオラァ、なのです」
黒 「…………お前、僕様に何か恨みでもあるのか?」
──終劇──